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第14話 ギルドマスター

「お前さぁ……もうちょっと空気読んだ行動してくれないか?」


 とりあえず話し合いをしよう、という事になり、私はギルドマスター室へと案内された。

 そしてその後のギルマスの第一声がコレである。


「せっかくカッコよく登場したんだから、ちょっとくらい暴れてくれないと俺の立場がないんだが」


 何言ってんだろうこの人。

 もしかして頭弱い人?それとも若干中二病発症しちゃってる残念な人?


「私が本気で暴れたら、秒で全員死んでしまうと思うのですが?」


「だからこそ『ちょっとくらい』なんだよ。せめて俺の面子が保てる程度でな」


 あ、コレ本気で残念な人だ。


「あ~……で?何だっけか?ハンター登録したいんだっけか?お前自分の立場わかってるか?指名手配されてるんだぞ」


「お言葉ですが、そちらも立場をわかっておりますか?私がその気になれば、一瞬でこの建物内にいる全員を消す事ができるのですよ。もちろんアナタ含めて……」


 ちょっと脅しも入れておく。

 少しでも交渉に使えるカードは惜しみなく使っていく。


「そうくるか。確かに総合戦闘力が10万を余裕で超えてるお前をどうこうできる奴はここには……いや、この世界にはいないだろうな」


 どうやら既に『鑑定』で私の能力を見ていたようだ。

 まぁギルドマスターなんてやってるんだ、下級職ってわけじゃないよね。

 ともかく話が早くて助かる。


「ハンター登録をしていただける、というのであれば、ギルド員には手出ししない事をお約束いたします……もっとも、手出しされた場合はその範囲ではありませんがね」


 いくらなんでも黙って殺されるわけにはいかないので保険はかけておく。

 といっても私にダメージ与えられるような猛者は今のところいないだろうから、手を出されても無視してて問題無いのかもしれない。


「取引ってわけか……何でそんなにハンターになりたいんだ?」


「ハンターになる以外で、今の私がまっとうな職につけると思っておりますか?私も生きるためにはお金が必要なんですよ」


「金なんて、その辺の貴族の屋敷を襲って奪ってくればいいだろ?どうせ既に指名手配されてるんだから、懸賞金が上がるくらいしかデメリットないぞ」


 あ、その手があったか……じゃない!!


「何も悪い事をなさってはいない、ただ普通に生きている方達を襲う事は私のポリシーに反しますので」


 ちなみに、私に襲い掛かってくる行為は「悪い事」に分類されるので、躊躇なく返り討ちにする。


「だったら……悪い事してる連中を選べばいいんじゃないか?」


 しつこいな。そんなに私をハンター登録したくないのか?って、そりゃあそうか。私犯罪者だし。でもなおさら、ハンターになれなかったら他の職業は絶望的って事だよね?

 ここは、何としてでもハンター登録させてもらわなくては……


「選ぶとか、そういう問題ではありません……とにかく私は……」


「そういう仕事を率先してまわしてやる」


 ……ん?何て?


「ギルドにくる仕事には表に出せないような依頼もある。誘拐やら暗殺やらといったな……報酬は高いが、依頼失敗した時の責任は個人で受け持ち、ギルド側も依頼者側も一切関与しない……そういう依頼だ」


 え?どういう事?何が何だって?


「本来なら、ハンターとしてある程度信頼できるようになってからでないと情報開示しない、『裏依頼』と呼ばれるものなんだが、お前に与えられる仕事はこういう危険なやつだけだ」


「それって……」


「一般的に出回っている依頼を、指名手配されているお前に受けさせるわけにはいかない。それくらいは我慢しろ」


「あの……それって私をハンターとしてギルド登録していただける、という事でしょうか?」


「ん?そういう話だろ?何を言ってるんだ?」


 それは私のセリフだよ!?何言ってんのコイツ?


「私をハンター登録するのに反対していたのでは?」


「いつ反対した?ギルド側は基本は来るもの拒まずだ。俺が言ってたのは、指名手配状態のお前が、堂々と普通にハンターとして目立った行動をとる事を懸念してだよ」


 わかりにくい行動とるなよ!!?ってかわざとか!?


「ただ一応条件はつけさせてくれ。ギルドに出入りする時は、そのフードを目深くかぶって顔をわかりにくくしておけ。あと、登録する名前は偽名にしてくれ。ギルドは国には属してはいないが、国からも依頼を受ける……お前みたいなのを捕まえろ、とかな。本来なら捕まえる側が匿ってるみたいな事してるのがバレたら、ちょっと立場がまずくなるからな」


 そりゃあそうだ。

 犯罪者を匿うとか、日本ですら立派な犯罪行為だ。


「何で……そんな危険を冒してまで私を優遇してくださるのですか?今日初めて会っただけの犯罪者ですよ……私は」


「ギルドとしては、お前と敵対して全滅するよりも、お前のその戦闘力を加えた方がメリットになるからだ。今まで誰も達成できなかった未開拓地の調査依頼とかも達成できるだろうしな……匿うのがバレるリスクよりも、ギルド支部としての実績値向上のリターンの方がデカい」


 たしかにそうかもしれない。

 私なら、最終ダンジョンでもラスボス以外はソロ可能だ。

 誰もが達成できなかった偉業を、このギルドは達成できるようになる可能性がかなり高い。


「そうですか……ハンター登録していただき、仕事がもらえるのでしたら私は何も文句はございません。アナタが提示した条件は全てのみます」


 私の答えを聞いたギルドマスターは、ニヤリと笑いご機嫌そうな表情になる。


「決まりだな。俺の名前はライアンだ。今後よろしく頼む」


 そう言って、手を差し出してくる。

 私はそれに応えギルドマスターの手を握る。


「ルーナ・ルイスです。アナタとは信頼し合える関係性を築きたいと思っております。()()()()()()()()さん」


 私の『鑑定:改』を舐めてもらっては困る。

 ただの『鑑定』と違って、偽名は通じない。


「……恐ろしい8歳児だな。色々と自信をなくしそうだ」


 ギルドマスターは最初に見た時と同じような複雑な表情になっていた。

 私をギルドの一員に加えた事を既に後悔しているのだろうか?


 はっはっは~!もう撤回は許されないぞ。わかっているだろう?


 私はそんな意味合いをこめて、ギルドマスターの手をしっかりと握るのだった。


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