表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/101

第12話 冒険者ギルド

 ついカッとなってやった。今は反省している。


 いやぁリアルにこのセリフ言いたくなる日がくるとは思ってなかったよ。


 とりあえず、我が家から金目の物はちょっと拝借してきたんで、しばらくは生活できるかなぁ~とは思ったのだけれど、如何せん箱入り娘だったんで、市勢での物の価値がまったくわからない。

 換金した貴金属とか、宿泊した宿屋の一泊料金とか、絶対にぼったくられてる気がする。

 このままでは、1年くらいしたら路頭に迷う事になる。

 せっかく貴族に生まれたのに、10歳になる前にホームレスとか、若干自業自得っぽい気がするけど、呪われてるのか私!?


 まぁともかく、自分で色々と買い物するようになって、何となくだけどこの世界の金銭感覚がわかってきた。

 まず、この世界の通貨は硬貨が基本である。

 小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨、大金貨、と7種類あり、小銅貨10枚で銅貨1枚と同価値、銅貨10枚で小銀貨1枚と同価値、といった感じで10枚ごとに次へと移る。

 前の世界の感覚で言えば、小銅貨が1円くらいな感じだろうか?

 つまるところ大金貨1枚で100万円程度の価値がある。


 そんな大金貨が手持ちで3枚……

 その大金貨はしっかりと懐にしまい込み、残った硬貨をそれぞれ小さい革袋に入れ、腰のベルトにしっかりと括り付け、左右でそれぞれ3袋づつジャラジャラさせながら持ち歩いている。


 そして……

 そんなこんなでやってきました王都!

 クルーク王国城下町。


 うん、さすがの私も犯罪犯した町に留まる度胸はなかったんだ……

 一応は、このクルーク王国も抜け出して、別の国に行こうかとも考えたんだけど、移動距離を考えると正直面倒臭い。

 ちょっと歩けば次の町に着けるゲーム世界とは違い、町から町までの移動でも1日くらいかかったりした。

 まぁ普通に考えれば、町から町の移動が数分とかだったら、どんだけ狭い世界なんだってなるだろう……どうやらその辺も、ちゃんと現実世界化されているようだった。


 もちろんこの王都に着くまでには何度も雑魚エンカした。そう、しつこいくらいに……

 そんなわけで、別の国までの移動案は、志半ばで私の心が折れたため廃案となった。


 まぁアレだよ……この世界には防犯カメラどころか、写真すらも存在していないから、目撃者さえいなければ、犯罪は立証できないってふんだんだよ。うん。……たぶん大丈夫だろう。


 そして、この町でやるべき事!それはまず冒険者ギルドに登録してハンターになる事である。


 このままではいずれ金が尽きる。

 しかし、8歳で住所不定、経歴不明、出身不詳な私が働ける場所など、おそらくは皆無だろう。そう!冒険者ギルド以外では。


 冒険者ギルドには年齢も性別も経歴もいらない。実力さえあれば問題ないのだ。

 もちろん、危険度も高いため、死んだり犯罪の片棒を担いでしまってもそれは自己責任となる。

 ゲームでもいきなり現れる、何処の馬の骨かもわからないプレイヤーキャラをあっさりと受け入れてくれている。


 そんなわけで、私は冒険者ギルドクルーク王国支店へと向かう。

 若干……いや、けっこう広大な町にはなっているものの、店などが立ち並ぶメインストリート的な部分はゲームのままだったため、私は迷う事なく冒険者ギルドへとたどり着く事ができた。


 私はできるだけ目立たないように、そっとギルドの扉を開け中の様子をうかがう。


 ギルド内は大きな酒場のような感じになっており、たくさんの椅子とテーブルが並んでいる。

 入って左手側の壁に依頼書や手配書、お知らせ等の紙が張り出された掲示板があり、その奥にギルドの受付カウンターが設置されていた。

 また、入って右手側には酒場用のカウンターがある。もちろん、酒だけでなくジュースなども取り扱っており、それなりの食事メニューなども豊富だった。


 この辺のギルドの内装は、私の設定した通りだった。


 そして、ギルド内の酒場で飲み食いしているのは、ガタイのいい屈強な男共……と、いうわけでもなく、色々な見た目の男女だった。

 ステータス値が、そのまま見た目に反映されるわけではないようなので、この様なバリエーション豊富な人達がいるのだろう。

 まぁステータス値が、そのまま見た目に反映されてたら、私はどれだけムキムキマッチョな体格になってたんだって話になるんだけどね。

 ちなみに男女比率は9:1といった感じだろうか?とはいえ、今この酒場にいる人達が全ハンターといったわけではないんで、ハンター全体の男女比率は不明である。そんなどうでもいい設定をした記憶もない。


 つうか今お昼だぞ?何でこいつ等真昼間っから飲んだくれてるんだよ!?いや、ハンターだから依頼がない時は自由時間だとは思うんだけどさぁ……なにぶん前世が勤勉な日本人なもんで、この状況にちょっとツッコミ入れたくなるってだけなんだろうけど……まぁ前世日本じゃ、真昼間っから居酒屋として営業してる店が少なかったから、そういうイメージなのかもしれない。


 ともかく私は、そんなギルド内の隅の方のテーブルに座り食事を注文する。

 本来なら真っ先にギルドの受付カウンターに向かってハンター登録すべきなのかもしれないが、それは別に一分一秒を争うような事ではない。食事をとってからでも遅くはない。

 それに今はお昼。そして私は長旅でお疲れである。なによりも腹が減った。


 注文をして数分、手慣れた感じでウェイトレスが魚介系のパスタのような物を私の元へと運んでくる。

 さすがはプロだ。フード付きマントを羽織ってはいるが、服装がバリバリの貴族で見た目幼女、という不審人物オーラ全開の私を見ても、特にツッコミを入れる事なく去っていった。


 感心しながら私は目深くかぶっていたフードを外し、食事に口をつける。


「どうしたよお嬢ちゃん?迷子か?おウチまで送ってくれ、って依頼でもしに来たんだったら俺が格安で受けてやってもいいぞ」


 いきなり絡まれた……

 そりゃそうだよな……見た目はバリエーション豊富でも、中身は全員そろってただの酔っ払いだもんね。


「いえ、ハンター登録しに来ただけですのでお構いなく……」


 事を荒立てる気はなかったので、とりあえず丁寧な口調で答えておく。

 無視した、とかでケンカ吹っ掛けられても色々と面倒だ。


「何?ハンター登録?お嬢ちゃんが?」

「おいおい大丈夫か?お嬢ちゃん貴族だろ?実戦経験あるか?もちろん対人での実戦だぞ」

「悪い事は言わねぇからやめときな。ハンターは貴族様が遊びでやるような事じゃねぇぞ」


 酔っ払いAは仲間を呼んだ。

 酔っ払いBが現れた。

 酔っ払いCが現れた。

 酔っ払いDが現れた。


 静かに食事したいのに増えるなよお前等!?

 何?8人集まったら合体して「キング酔っ払い」とかになるの!?


「ご心配なく。死ぬ時は皆さまに迷惑かけないように致しますので」


 適当にあしらっておく。


「見た目のわりには随分とクールだなお嬢ちゃん」

「いいねぇ俺は気に入ったよ。お嬢ちゃんがハンターになるお祝いに何か奢ってやるよ!何でも好きなモン注文していいぞ」

「よし!じゃあ俺も奢ってやるよ!お嬢ちゃん将来美人になりそうだから先行投資も悪くねぇ」

「お、いいなソレ。俺ものった!お嬢ちゃん好きな物頼みな!」


 そんなにいっぱい食えねぇよ!!

 何?コイツ等の世界じゃ、8歳の女の子って一食で4人前とか平気で食べるの!?


「おお!お前等こんな所に集まってたのか?ちょっとコレ見てみろよ」


 酔っ払いEが現れた。


 もういいよ。これ以上増えないでくれ。頼むから静かに食事させてよ!


「さっきギルドマスターにコレを掲示板にはっといてくれって頼まれたんだけど、かなり美味しそうだぞ。こんなガキを殺すだけで大金貨2枚もらえ……」


 こちらの集団に近づいてきた男が、私の顔を見た瞬間に動きが止まる。

 どうやら大勢の酔っ払いに囲まれていたせいで、座っていた私は、遠くからは見えていなかったようだ。

 動きが止まった男の手から1枚の紙が落ち、私の目の前、テーブルの上に置かれていたパスタのすぐ横でヒラヒラとした動きを止める。


 そこに書かれていたのは、私の似顔絵と私の名前、『Dead or Alive(生死問わず)』と『褒賞金・大金貨2枚』という文字。


 どういう事なのコレ!?

 私もっとかわいい顔してると思うよ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ