表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/101

第9話 再突入

 私が呆けていると、後ろから教員が追いついてくる。

 私と、私の足元で倒れている誘拐犯を見ると、何かを察したのか、何も言わずにすぐさま倒れている男にヒールをかける。


「……あ」


 その行為を見て、私も若干正気に戻り、教員と一緒にヒールを発動する。


「仲間割れですか?……ルーナさんは無事ですか?ケガはないですか?」


 色々と質問されるが、私は何も答えず、うつむいたままヒールを唱え続けた。


「大丈夫です!この人は必ず助かりますから安心してください!」


 教員はよくわからない言葉で私を励ましてくる。


 何だろう?コイツが私を助けるために仲間を裏切って制裁された、みたいな流れでも想像しているのだろうか?

 むしろコイツが私に襲い掛かってきた張本人なのだが……

 私が必死に回復魔法かけてるのは、まだ人殺しになる覚悟ができてないからなんだけどなぁ……


「ルーナさん、喋れますか?ゆっくりでいいので、さらわれた子達がどこに行ったか、知っていたら教えてください」


 教員が私を若干気遣いつつ、誘拐された子供達の事を質問してくる。


 そうだった……ルカ達を早く助けなきゃ……アイツ等は……


「……グレイルの……森に……」


「え!?ルーナさん町の外に出るのは初めてのハズなのに、どうしてあの森が『グレイルの森』だと……?」


 私に向かって不審な視線を向けてくる教員。

 うるせぇよ……今はそんな揚げ足取りしてる場合じゃないだろうが……


「しかし『グレイルの森』ですか……あの森はまだ開拓されてなく未知の魔物が生息する危険な森……そんな場所にアジトがあるとは思えませんが……それとも、たんに知らずに逃げ込んだだけなんでしょうか?」


 何やらブツブツ言いながら色々と推理をしている教員。

 たぶん連中、知っててあえて逃げ込んだんだと思うよ。


 アイツ等は私の総合戦闘力を知っているし、仲間の一人が、私の腕の一振りで瀕死にさせられたのを見ている。

 まともに戦えば瞬殺されるのは目に見えている。

 だったら逃げるしかない。

 でも、私が物凄い速度で追っかけてくるのも知っている。逃げても、隠れる場所が何もない草原では、すぐに追いつかれてしまう。

 じゃあどうしたらいいか?


 賭けに出るしかない。


 森に入ったからといって、すぐさま魔物とエンカウントするわけではない。

 うまい具合に隠れられて、私も魔物もやり過ごせれば、助かる確率が高くなる。


 さらにうまくいけば、追って来た私が、森の魔物とエンカウントし潰し合う。

 むしろそれを狙って、グレイルの森に入ったのだろう。


 しかし私にはそんな事は問題にはならない。

 私には『シーフ』の上位職である『アサシン』が覚える、自分の周辺の一定範囲にどれだけの魔物・プレイヤーがいるのかがわかる『索敵』スキルや、見つけたいプレイヤーが何処にいるのかがわかる『探索』スキルがある。

 どんなに上手く隠れたところで、私にとってはまったくの無意味だ。


 私にとって一番の問題になるのは、連中が魔物とエンカウントしてしまう事である。

 誘拐犯達がどうなろうと知った事ではないのだけれど、ルカ達クラスメイトの子供達は別である。


 きっとアイツ等、金目当てで行動しているのだろうけど、自分の命がヤバイと思ったら、迷わず持ってる人質を生贄に捧げて逃げ出すだろう。

 誰でもいいから「金は命より重い……!」って説いてやれよ。


 そんなわけで、いきなりの初体験にショックを受けてる場合じゃない。

 早く助けに行かないと取り返しのつかない事になる。


「先生はこの方をお願いいたします……私は、クロエさん達を助けて参ります……」


 私はヒールをかけるのをやめ、立ち上がると、すぐにグレイルの森へと走り出す。


「ルーナさん!!?ちょっとルーナさん!危険です!!戻ってください!!」


 教員は抗議の声を上げつつも、倒れた男にヒールをかけ続け、私を追って来る事はなかった。

 私にお願いされたからかな?律儀な人だなぁ……


 いや、違うか。

 グレイルの森に入るのが怖いから、追ってこないだけか。


 まぁ、それならそれで好都合だ。


 私は再び『韋駄天』スキルを使い、一気に森へと入って行く。

 そして、フィールドが森へと変わったのを確認すると、その場で『索敵』スキルを発動させる。


「これは……ヤバイかな?」


 状況は私が恐れていた事が、今まさに起きようとしていた。

 誘拐犯とさらわれたクラスメイトの集団に、魔物が5匹ほど近づいており、接敵する直前のような状態だった。


 近づいている魔物が何なのかはわからないが、このMAPに出る魔物は、雷属性に弱い傾向があるため、雷の範囲攻撃魔法をセットしながら現場へと駆け出す。


 このゲーム世界での魔法の使い方は、まず使いたい魔法をセットする。これは頭の中でだろうが、口に出してだろうが構わない。


(スキル『エクストリーム・サンダーバースト』……)


 ゲームではセットすると、その瞬間からゲージが貯まりだすのだが、現実世界となった今は、左手に魔力の塊のようなものが貯まり始めた。

 もしかしたら、杖とか装備してたら、そこに魔力が貯まったりするのかな?


 そして、そのゲージが貯まりきればセット完了となり、後は好きなタイミングで魔法名を口に出せば、魔法が発動する仕組みになっている。


 私がセットした魔法は、雷系範囲攻撃魔法の最上位魔法なので、本来ならゲージが貯まりきるまで長いウェイトタイムが発生するのだが、私には『高速詠唱』スキルがあるため、現場へと走っていく間に完全に貯まりきっていた。


「やべぇぞ!!コイツら一匹あたり総合戦闘力が5000~6000ありやがる!?」


 誘拐犯のリーダーの男の声が響き渡る。

 目の前には、直径が2mくらいあり、長さが10m以上あるちょっと毛の生えたミミズの様な『ブラッディワーム』3匹と、これまた長さが10m以上ある巨大なムカデの様な『グレイト・マンイーター』が2匹。


 よくもまぁこの森の入り口付近で出る魔物の中で1・2位を争うデカさのやつを引き寄せたなぁ……


 そりゃあ中級職になりたての戦闘力1000前後の連中には化物にしか見えないよね?見た目的にもボスモンスターにしか見えないような外見だし。

 でも上級職の戦闘職だったら、なりたてでも総合戦闘力10000弱はあるから、敵が5匹だとソロだとちょっとキツイけどパーティプレイなら問題なく対処できるんだよ。


 いやぁ……やっぱ推奨レベルって大事だよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ