99.イーストリアへ!!
改稿しました(2021年12月12日)
官僚の人に案内されて、城の宝物庫に入った。宝物庫というだけあって、中は沢山の宝物で埋まっている。
「ここから、使えるものをお探し下さい。場合によっては、持ち出し出来ないものもありますが、基本的には、持ち出しを許可致します」
「分かりました」
宝物庫の中を見回すと、一つのものに目が奪われた。私の目線の先には、一丁の銃があった。それは、私達の世界でアサルトライフルと呼んでいるものに見える。
「これは?」
「随分前に見付かった銃ですね。誰も使える人がいないため、ここに置いてあります。一応、少し前にアーニャ殿に整備を頼んだものが、帰ってきたところなので、手前に置いてありますね。そういえば、ルナ殿の武器は……」
「はい。銃を使っています。これ貰っても良いですか?」
「はい。構いません」
私は、宝物庫に置かれていたアサルトライフルを手に取る。
『条件を達成しました。ユニークスキル『長銃術Lv1』を修得しました。最初の修得者のため、ボーナスが付加されます』
アサルトライフルを手にしたことで、新しいスキルを手に入れた。そして、このアサルトライフルの名前を分かった。この銃の名前は『韋駄天』というらしい。
「そういえば、アーニャさんが直してくれたと言いましたけど、いつ頃直して貰ったんですか?」
「一ヶ月近く前ですね」
「そんな最近に?」
「はい。シャルロッテ殿下が、お頼みしたそうです」
「ああ、あの時に持ってきていたんだ。ついでにって感じなのかな」
そう話している間に、韋駄天の今の状態を確かめる。
「うん。大丈夫そう。マガジンは……三十発用か」
私は右の手のひらを上に向ける。
「『銃弾精製・韋駄天・三十発・マガジン』」
私の手のひらの上に、韋駄天のマガジンが生み出される。問題なく精製する事が出来た。黒闇天のように、通常弾であれば、消費魔力が少ないようだ。
「潜入に使えそうですか?」
「いえ、これは潜入に使いません。寧ろ、道中で使う事になるはずです」
「道中に?」
「はい。これは、何ですか?」
話をしている途中に、本が三冊見えた。
「スキルの書です。使い回しが出来るタイプなんですが、中身が古代言語なので、読める人が少ないんです」
「なら、私に読めるのがあるかもですね」
時間が無いので、ざっと中身を読んでいく。読めたのは、三冊中一冊だけだった。
『EXスキル『クイックチェンジLv1』を修得しました。最初の修得者のため、ボーナスが付加されます』
これは、手に持っている武器と自分の所有している武器を瞬時に入れ替える事が出来るものみたい。宝物庫というだけあって強力なスキルの書を置いてある。他の二冊も気になるけど、読めないので仕方ない。
「後、この沢山のナイフを貰っていっても良いですか?」
「大丈夫です」
束になっていた少し無骨なナイフを貰っていく。これで、準備は大丈夫かな。
「では、そろそろ行ってきます」
「分かりました。こちらもルナ殿の救出作戦が失敗に終わったときのために、少し離れた場所に騎士団を配置しておきます」
「助かります」
次善策を考えていてくれるのは、有り難い。私の救出が上手くいくとは限らないからね。私は、韋駄天のスリングを肩に掛ける。そして、宝物庫を出て行って、目的地であるイーストリアに向かった。道中、走りながらマガジンを生み出して、腰のポーチとアイテム欄に入れていく。
「アルカディアで消費した分の補充は出来ないけど、多少はマシになってるかな」
走りながら準備を進めていく。
「さてと、最初の関門は……エリアボスか……」
イーストリアに向かうには、王都とイーストリアを隔てるエリアボスを倒さないといけない。そのエリアボスを倒すために、韋駄天をもらってきたんだ。黒闇天は、アルカディアの機械人形との戦いで、耐久度が減っているから、進入したときに取っておく。隠密で、敵を排除していかないといけないから。
「馬でも借りるべきだったかな? でも、移動集落で乗りこなすのは難しそうって感じたからなぁ」
私も結構速く走れるようになったけど、さすがに街から街の移動では、少し時間が掛かってしまう。前はプティに乗ることが出来たから、かなり早く移動出来たんだよね。
(そろそろ私専用の移動手段が欲しいなぁ)
そんな事を考えつつ、走り続けた。王都とイーストリアの間にあるエリアは、深い森だった。ユートリアの南の森に似ていたけど、このイーストリアに繋がる道は、綺麗に舗装されていた。
「舗装のおかげで、移動速度が落ちないし、道に迷わないのは助かるね」
ずっと走っていると、森の中から狼のモンスターが現れた。すぐに韋駄天を構えて、引き金を引く。幾発の弾が、狼の頭と身体に穴を開ける。
「八発出たように見えたけど、五発しか当たってない。フルオートの状態だと、狙いがばらけてしまうみたい。走りながらだったこともあるのかな? 後は、黒闇天とかと反動の感じが違う。それも影響しているのかもしれない。ここら辺は、慣れの問題かな」
狼の死体を回収して、すぐに駆け出す。なるべく早く、イーストリアに着きたいから、途中で現れるモンスターを次々に倒していく。その死体の回収は諦める。弾の消費は激しくなるけど、邪魔をされると困るから仕方ない。敵の種類は、狼、鳥、猿、兎とユートリア周辺のモンスターを強化したような感じだった。
そして、ここのエリアボスは、大きな白い鷲だった。その名前は、ホワイト・イーグル。見たまんまの名前だ。
「悪いけど急いでるんだ。速攻で倒させて貰うよ!」
すぐに韋駄天の引き金を引いて、ホワイト・イーグルを攻撃する。ホワイト・イーグルは素早く動いていて、狙いが付けにくいけど、動きを先読みして、ばらまいていく。
「さすがに一筋縄ではいかないか。なら……」
私は、一度銃を撃つのをやめる。すると、ホワイト・イーグルは、私に向かって降下してくる。弾幕が無くなれば、そうなるに決まっている。そして、十分に引きつけたところで、撃つ。勢いよくこっちに向かってきたホワイト・イーグルは、急な方向転換をするために、一時的にでも動きを止めないといけない。でも、その前に、私の弾が身体を撃ち抜いていく。ホワイト・イーグルは、降りていた勢いのまま地面に落ちた。
「夜烏と同じ戦法でいけた。やっぱり、急降下攻撃を利用するのが良いね」
ホワイト・イーグルを回収して、すぐに駆け出す。空が赤く染まっているので、もうすぐ夜が訪れる。その前に、街の近くまで向かいたい。イーストリアという街を知らないので、外から観察しておきたいからだ。
急いで駆けていった結果、夜になる前にイーストリアの近くに来ることが出来た。イーストリアの近くには、おあつらえ向きに少し高い丘が存在した。そこに移動して、単眼鏡を取り出す。
「どんな街だろう?」
イーストリアは、ユートリアに似た街だった。でも、少し違う部分があって、東西南北に伸びた大通りの突き当たりにある門が西側にしかない。そして、東側の突き当たりには、大きな屋敷が存在した。ミリアの家に似ているけど、こっちの方が大きい。
「領主の家? でも、それなら、それなりの軍隊みたいなのが駐留していると思うんだけど……」
その領主の家の周りには、武器を持った人達が多くいた。装備が整っている人達もいれば、全く異なった装備をしている人もいる。装備が整っている方の人達は、王都でなんとなく見覚えがある装備だった。
「そうだ。王都の兵士の装備に似てるんだ。でも、なんであんな蛮族みたいな装備の人達といるんだろう……もしかして、領主が黒幕?」
アトランティス港の事を思い出して、そう考えてしまう。もし、領主が黒幕なんだとしたら、街が簡単に掌握されることにも納得がいく。
「無いと信じたいけど」
そうこうしている間に、日が沈んでいった。十分な量の情報が集まったとは言いにくいけど仕方ない。ここからは、現地で情報を仕入れよう。私は、闇夜に紛れて動き始める。