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96.動力を停止させる!!

改稿しました(2021年12月11日)

 機械人形のボスを倒した私達は、アルカディアの動力の前に集合していた。


「ありがとう、皆。おかげで、助かったよ」

「何が何でもルナを守らないといけなかったからね」

「トドメくらいしか出来なかったけど」


 ソルが、壁により掛かって手を振る。皓月千里の代償で力が入らないんだ。


「私は、遠くから歌っていたんですけど、多分聞こえていなかったですよね」

「そうなの!?」


 メレの言うとおり、メレの歌声は、私には聞こえなかった。動力は、ガラス板で隔たれた部屋にあった。メレは、その内側にいたので、声が響いてこなかったんだと思う。


「まぁ、それは仕方ないよ。それより、私がいないと無理ってどういうこと?」

「文字の方は気にせずに、取りあえず停止レバーみたいなのを降ろそうとしたんだ」


 シエルが指さした方向には、確かにレバーがあった。


「あれがびくともしなくてさ。長年使っていないから固まっているのかとも思って、一番力があるソルに任せたんだけど、それでもダメだったんだ。そこで思いついたのが、権限を持っている人じゃないと動かせないって事なんだよ。だから、ルナがいないと無理だと思ったんだ」

「なるほどね」


 レバーの上には、緊急停止用って書かれている。これを降ろせば、アルカディアを止める事が出来るはず。まぁ、そもそも起動しているのかも怪しいんだけどね。緊急停止させても大丈夫なのかな。


「ちゃんとした手順で停止出来ればいいんだけど……」


 私は念のために、動力に付いているコンソールを操作する。流れて来ている文字は、草原言語なので、私でも読める。


「ここを操作して、ここをこうして、出力を徐々に低下させていって、最終的にゼロにする」


 設定を弄っていると、モニターに『十分な出力がなければ、この施設は崩壊します。よろしいですか?』と出てきた。


「施設が崩壊……シエル、あの入口を無理矢理開く事って出来る?」

「プティの突撃でって事だよね? 多分無理。結構分厚いし、歪みすぎてるから」

「そう……じゃあ、私が爆破して、天井に穴を開けよう。その後、メレの声で、地上まで繋げられれば」

「外への脱出路が出来上がるって事だね」

「先に作っちゃって、皆は避難しておいてくれる? どうなるか分からないし」

「分かった。ソルも動けないしね」

「ごめん」


 ソルは、皓月千里の反動で動けないので、優先的に避難して貰った方が良いかもしれない。


「じゃあ、早速避難路作るね」


 私は、天井の一部を爆破して天井を壊す。すると、天井の向こうに、土が露出した。


「メレ!」


 メレがメガホンを持って、天井に向かって叫ぶ。音の砲撃が、天井を掘っていく。地上まではかなりの厚みがあるので、一度の音の砲撃では堀きれなかった。三回程、音の砲撃を使うと、外まで抜ける穴にする事が出来た。声が嗄れかけたメレは、すぐにのど飴を舐める。


「メレ、大丈夫?」


 私が訊くと、メレはこくこくと頷いた。


「じゃあ、シエルと一緒に避難して」

「メレ、乗って」


 シエルは、既にソルと一緒にプティに乗っている。プティは、青黒い毛皮を纏ってることから、ガーディと合体している事が分かる。登り切るのに、ガーディの素早さが必要だったんだと思う。


「じゃあ、すぐに上がってきてよ?」

「分かってるよ。じゃあ、また後でね」


 プティが跳び上がり、穴の内側を駆け上がっていく。


「あれなら大丈夫そう。よし、私も自分の役目を果たさないと」


 私は、コンソールに戻ってアルカディア停止の操作をする。出力を下げていき、ゼロに変えた。


「これで、崩壊が始まるはず。他に、何か操作出来るものは……」


 動力室から出来る事は少ないみたい。やっぱり、制御室からじゃないとダメなんだ。もう壊れるから、あまり関係ないけど。


「出来る事はもうない。後は、脱出だ」


 そう思って、背後を振り返った瞬間、私の脚が止まった。血の気が引いていくのが分かる。今、私の目の前には、おじいさんが立っていた。半透明の……


「ひっ!」


 私は、背後を取られないように正面を向きながら、バックステップを踏み、動力の影に隠れる。


(何で、いきなり幽霊なんて現れるの!? 確か、幽霊とかのアンデット系モンスターに効く弾があったはず。それを撃ち込めば、倒せるはず。倒せるよね……)


 そんな事を思っていると……


『いや、倒さないで欲しいんだが』

「ぎゃああああああ!! 喋ったああああああ!!」


 いきなり喋られたから、驚いて頭を抱えてしまう。


(本当に……怖い……誰か……助けて……)


 機械人形と対峙したとき以上のピンチを迎えている。


『いや、何もしないぞ。少し話を聞いて欲しいんだ』

「???」


 私は、恐る恐る、幽霊のいる方を見る。幽霊のおじいさんは、腕を組んでこっちを見てる。背筋に悪寒が走る。


「やっぱ無理!」

『なら、そのままの状態で良い。少し話を聞いてくれ』

「いや、私、ここからすぐに出ないと。ここ、もうすぐ崩壊するので。せめて、上に出てきて貰えます? 私の友達が、ちゃんと話を聞いてくれますから」


 私は、早口でそう捲し立てた。さっさと、ここから出たいけど、入口の前には幽霊のおじいさんがいるから、動力の後ろから出られない。あと少しで、動力が完全に止まるし、早く逃げたい。


『それは、無理だ。私は、ここに縛られているからな』

「縛られてる? じゃあ、地縛霊って事?」

『そういうことだな。我々の作ったアルカディアに縛られた存在とでも思ってくれ』

「はぁ……?」


 私は、なるべくおじいさんを見ないようにして、話を聞く。姿を見ちゃうと、身体が硬直しちゃうし、なにより、恐怖でそれどころじゃなくなってしまうから、今は、ちゃんと見ていない。それでも、寒気がすごいけど。


「じゃあ、手早くお願いします」

『ああ、色々見ていたから、アルカディアについておおよその事は知っているだろう。だから、組織について教える』

「何で、いきなり……」


 話が飛びすぎてよく分からなくなっている。そもそも、この人は何で現れたのかも分からない。理由を問い詰めたいけど、幽霊だし、時間ないし、聞くことしか出来ない。なんか喋りたいみたいだし。


『組織は、基本的にディストピアの人間で構成されている。その本拠地もディストピアにあった。今は、どこにあるかは分からないが』


 それは、日記の内容と古代兵器の技術力から、簡単に予想が出来た。


『だが、それだけではない。■△※○●が大きく関わっている。ちっ、ここは、言論統制が掛かるか。とにかく組織の目的は、世界の統一だ。そのために、アルカディアのような兵器を複数作っている。だが、それだけじゃない。これら、組織に対抗するために、兵器を作り出している反乱軍もいる。それぞれが、兵器を作り出し、戦争へと発展した』

「古代兵器を作った組織は、一つじゃないって事!?」


 てっきり、ディストピアを中心とした何らかの組織が、古代兵器を沢山作っているのだと思っていた。でも、複数の組織が、それぞれで古代兵器を作っていたんだとしたら、この世界にある古代兵器は、かなりの量になってしまう。いや、それらが見付かっていないから、もう壊れているものが多いのかもしれない。


『その通り、それらの多くは、世界中に散らばっている。ここ、アルカディアのように地中深くにあるものもあれば、その土地に溶け込んでいるものもある。そして、アルカディアのように大きいものもあれば、手のひらサイズのものもある。注意して観察しないと分からない事がほとんどだ。探せば、すぐそこにあるかもしれない。それが、私達の作った兵器だ。そこに、兵器があると分からない。それが、どんなに恐ろしいことか分かるだろう。更に言えば、それらが壊れている可能性は、かなり小さいだろう』


 私の予想は裏切られた。これらの古代兵器に気が付いている人は、どれくらいいるんだろう。悪用するような人が、見つけていなければいいんだけど。


「結局、そんな事を知っているあなたは何者なの?」

『私は、このアルカディアを作った者の一人だ』

「この日記の人?」


 私はアイテム欄から、アルカディアの一室で見つけた日記を取り出す。そして、幽霊のおじいさんを見ないようにして、日記を見せる。


『違う。関係はあるが』

「なるほどね。それで、あなたは何のために、私の前に現れたの?」

『この世界を……●△×■●※○●□を守ってくれ。これが私の望みだ。忘れるな。お前達は、この世界に()()()()()()()()()

「……どういうこと?」


 私がそう訊くと同時に、アルカディアが揺れ始めた。崩壊が始まったのだ。

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