95.アルカディアの激闘!!
改稿しました(2022年1月21日)
私達の正面に立ちはだかるのは、小さな機械人形だ。小さいと言っても、さっきの戦車型機械人形と比べたらと言う話で、私達と同じ身長がある。装備は、二本の刀だった。さっきの戦車型機械人形から出てきたことを考えれば、かなり強い敵と思った方がいい。
「シエルとメレは、下がって。私とソルでなるべく相手をする」
私は吉祥天をホルスターに収めて、黒影を引き抜く。金属溶解弾が底を尽きたため、吉祥天では、機械人形にダメージを与えることが出来ないからだ。
その直後、機械人形が動いた。まっすぐ私達に向かって駆けてくる。ソルが、前に出て迎撃しようとすると、ソルの攻撃を避けて、私の方まで来た。
「何で!?」
ソルは、攻撃を避けられた事よりも、自分を無視して私の方に行ったことに驚いている。私も同じだ。ソルが狙われるなら、まだ分かる。ソルは、戦車型機械人形の破壊に一番貢献しているから。私は、ちまちま装甲を剥いだだけだ。それだけで、ヘイトが私に傾いているっていうのは、少しおかしいと思う。
「!!」
私が避けたら、シエルやメレに矛先が向かうかもしれない。ここで、迎撃する。私は、黒闇天で向かってくる機械人形に対して、爆破弾を撃つ。機械人形は、爆破弾を正確に斬った。
「あの騎士と同じ!? もう! 面倒くさいな! 銃技『一斉射撃』!」
マガジンに入っている九発の爆破弾を一度に撃ち出す。機械人形は、刀二本を使って、全て斬り裂いてきた。
「刀が多い分、黒騎士よりも厄介かも……」
機械人形は攻撃の間合いに入ると、二刀を振ってくる。片方を黒闇天で迎撃して、もう片方を黒影で逸らす。そして機械人形と自分の間に、威力を極小にして、爆風を最大まで上げた中規模の爆発を即座に起こす。
「ぐっ……」
爆風に煽られて、私も吹き飛ぶけど、機械人形も吹き飛ばすことが出来た。そして、機械人形が吹き飛んだ先には、ソルがいる。
「抜刀術『双葉』!」
高速の二連撃が、機械人形を襲う。機械人形は、空中という不安定な状態の中、二刀を巧みに使い、ソルの二連撃を防いだ。
「刀術『百花繚乱』!!」
ソルが、今回二度目の奥義を放つ。この奥義は、刀の耐久度がごっそりと減るらしいから、あまり多発出来ないはず。それでも、これを使わないと、勝てないと判断したみたい。
機械人形は、ソルが放った無数の斬撃に対して、防御姿勢をとるのでは無く、二刀を振って無数の攻撃を迎撃していた。
「嘘……」
ソルの最大の攻撃を機械人形は、いとも簡単に防いで見せた。そして、防ぎきった機械人形がソルの脇腹を蹴った。
「うぐっ……!」
ソルは、凄い勢いで蹴り飛ばされていき、壁に激突した。瀕死のソルに追撃することは無く、機械人形は私に向かって走り出す。
「シエル! メレ! ソルを連れて、動力の部屋に行って! こいつは、私しか狙ってない! あそこは、ガラス張りになっているから、攻撃の余波が来ることはあまりないと思う! こいつは、私に任せて! そっちは、頼んだ!」
「出来るか分からないけど、分かった!」
シエル達は、プティに乗ってソルを回収しに向かう。私は、何とか機械人形の連撃を避けていく。機械人形の動きは、かなり速い。避けるのにも凄く神経を使う。
「……!」
何度か黒闇天と黒影で、反撃を試みているけど、全部機械人形に防がれてしまう。
「速い……攻撃速度で言えば、黒騎士以上だ」
機械人形の攻撃を避けきれずに、何回か攻撃が掠ってしまう。黒羽織と夜烏の硬化で、防御力を底上げしているから、ダメージは負っていない。シルヴィアさんとの修行がなかったら、五回くらい死んでいると思う。機械人形の攻撃を避けるためには、もっと集中した方が良さそう。
「もっと集中しないと。もっと……もっと……もっと……」
どんどんのめり込んでいき、周囲の動きが緩慢になっていく。
『条件を達成しました。スキル『集中』が『超集中』に進化しました』
スキルが進化した結果、集中力が更に増していった。
(もっと……もっと……もっと……)
今のままでも足りないと思い、更にのめり込む。
『条件を達成しました。EXスキル『精神統一』を修得しました。最初の修得者のため、ボーナスが付加されます』
周りの動きが更に緩慢になった。ようやく機械人形の動きが、よく見えるようになる。
「反撃だ」
全ての動きが緩慢になった世界で、黒闇天を機械人形の攻撃の隙にねじ込んで引き金を引く。初めて私の攻撃が、機械人形にまともに命中した。
「いける! 銃技『一斉射撃』!」
機械人形の身体に九発の銃弾が命中する。装甲が厚いのか、普通の弾じゃ貫通は出来ない。これは、普通の機械人形と同じだ。
「リロード術『クイック・リロード』」
すぐにリロードして、すぐに機械人形に向かって撃つ。込めている弾は、爆破弾。私も巻き込んで、爆発が連鎖する。私はその爆発を黒羽織で、防ぎつつ後ろに下がる。機械人形も爆発の衝撃で、後退していった。でも、すぐに接近してくる。
振われる二刀の内の一刀を、黒影を使って防ぎ、もう一刀を機械人形の手首を蹴って軌道を逸らす。
「体術『円月』!」
手首を弾いた脚で、そのまま機械人形の頭に蹴りを入れる。砕くことは叶わなかったけど、バランスを崩すことは出来た。
「体術『衝波』!」
バランスを崩した機械人形の身体に掌底を打ち込む。弱点が今までの機械人形と同じなら、身体に衝波を撃ち込むだけでも、動力を壊せるはず。機械人形は、衝波の衝撃によって吹き飛んでいく。
「リロード術『クイック・リロード』 銃技『精密射撃』」
フルメタルジャケット弾に入れ替えて、今度は、機械人形の頭を狙って撃つ。しかし、その攻撃は、機械人形の刀によって防がれる。つまり、まだ動力を破壊しきれていないということみたい。メインの動力を破壊する事は出来なかったみたい。せめて、予備動力を破壊できていると良いんだけど。
「今までと性能が段違いすぎる……でも!」
すぐにリロードして、追撃を欠かさない。狙いを頭に絞らず、身体のあらゆる場所に向けて引き金を引く。機械人形は、正確に銃弾を斬ってくる。
「私は、一人じゃない」
私の攻撃に掛かりきりになっていた機械人形の真横から、茶色い毛皮を被ったガーディがタックルをした。普段のガーディであれば、そこまでの威力はないはずだが、恐らくプティと合体しているんだろう。プティの膂力が加わり、機械人形を吹き飛ばす威力になっていた。
「ルナ! 動力の操作とかよく分からないから、ルナがいないと無理! 早く倒しちゃって!」
シエルが遠くから声を飛ばした。
「分かった!」
どう攻撃しても、多分あの刀二本で、防がれてしまう。だから、近距離からの一撃で決める。
「ガーディ! 足止め!」
シエルの命令で、ガーディが機械人形に突っ込む。ガーディの素早さとプティの膂力で、機械人形の攻撃をギリギリで躱して、翻弄していった。その隙に、突っ込んでいく。機械人形が、私の接近気が付いて、ガーディを全力で引き剥がした。
極大の威力で、小規模の範囲の爆発を機械人形の目の前で起こす。機械人形の中で起こせればいいんだけど、それは出来なかった。そこら辺も条件がありそう。機械人形は、爆発の威力で後退することになる。
「今だ!」
黒影を、機械人形の影に投げつける。黒影の効果で、機械人形の動きが止まる。機械人形程の強さでは、黒影の束縛も一時的な効果しかない。だから、すぐにけりを付ける。機械人形の頭に銃口を付ける。
「銃技『零距離射撃』」
私の銃弾が、機械人形の頭を吹き飛ばした。これで、終わりのはず。そう思っていると、機械人形が刀を振り回し始めた。黒影の楔が外れてしまったみたい。いや、それよりも……
「こいつ、演算機構を破壊したのに!」
私は黒影を回収して、攻撃を避けていく。
「ルナちゃん!」
ソルの声が聞こえたと同時に、機械人形の影からガーディが出て来る。私は、こっちに向かってくるガーディに跨がった。ガーディは、そのまま壁を駆け上がっていく。機械人形が追ってこようとすると、その上半身と下半身が分離した。それだけでなく、周囲の壁などにも真一文字の傷が走っている。ソルの皓月千里だ。ガーディが着地したのと同時に、私も地上に降りて黒闇天を機械人形に向ける。
「今度こそ、これで終わり?」
しばらく待っても、機械人形が動く様子はない。これで、アルカディアのボスを倒す事が出来たかな。後は、アルカディアを壊すだけだ。