93.動力室への道!!
改稿しました(2021年12月9日)
シルヴィアさん達に伝えた時間になったので、私達は、アルカディアの動力室に向けて進んで行った。
「全く、勝手に私達だけで攻略する事にするなんて」
シエルがため息交じりにそう言った。まぁ、戦力が半減どころの問題じゃないから仕方ないかも。
「ダメだった?」
「ううん、事情を知ったら、それが最善だと私も思うから良いけど。ちょっと、無謀かなって思っただけ」
一応、納得はしてくれているみたい。確かに、色々と無謀な挑戦ではあると思うけど、これしかやれないし納得してくれたのは助かる。
「アトランティスを攻略した事があるから大丈夫……とは言えないのが、厳しさを表しているよね。ルナちゃん、動力室の場所は分かってるの?」
「うん。地図を見つけたからね。資料室の本も全部回収したし、ここが崩壊しても大丈夫なはず。他の部屋にめぼしいものはなさそうだからね」
「私は、古代兵器は初めてなんですが、何か注意した方が良いことなどはあるんですか?」
メレが、少し怯えながら訊いてきた。古代兵器という名前だけで、少し怖いみたい。国王様やメアリーさんから、そういう話を聞いているから仕方ない。私達も緊張していないわけじゃないしね。
「えっと……全部に注意した方がいいかな。何が起こるか分からないし、アトランティスは街みたいだったけど、ここは地下施設だから、色々と違う点があると思うしね」
私達がいるアルカディアと攻略したアトランティスでは、構造が全く違う。アトランティスで、一番気を付けないといけなかったのは、最初の海流だった。逆にいえば、アトランティス内では、巨大な機械人形だけが脅威だった。アトランティスの崩壊というイレギュラーを抜けばね。だから、正直なところアルカディアで何に気を付ければ良いのか、私達にも分からない。
「古代兵器は、何も分からないという部分が一番怖いんだ。対策も何もしようがない。アトランティスでも、いきなり機械人形が襲ってきたし。今みたいに」
私達の正面から、大量の機械人形が進軍してきた。
「プティ! 熊人形術『ベア・タックル』!!」
赤いオーラを纏ったプティが、機械人形を蹴散らしていく。事前に、機械人形の弱点は伝えておいたので、それぞれで効率的なダメージの与え方を心得ている。
「プティさんを下がらせて下さい!」
メレの言葉に瞬時に反応して、シエルがプティを下がらせる。プティのタックルによって、機械人形の前列がほとんど砕け散っている。その残骸のせいで、後方が進みにくくなっていた。シエルが、プティに突撃させた理由がこれだ。プティのタックルで、正面にいた機械人形を破壊する事で、後方の動きを阻害する事が出来る。
プティがシエルの元に戻ったのを見て、メレが一番前に立つ。そして、手にメガホンを持って正面を向く。
『わああああああああああああああああああああ!!』
どこかで用意したメガホンによって、指向性を得たメレの声が、詰まっている機械人形達を破壊していく。メレの音の砲撃は、機械人形にも有効みたいだ。メガホンのおかげで、後ろにいる私達に被害はない。味方に被害を出さない
「いつの間に、メガホンなんて買ったの?」
「えっと、王都を一人で観光している時に見つけまして。どのくらい使えるか確かめてみたら、私に合っていたみたいです」
「へぇ~、やったじゃん。これから、あの騎士達に纏わり付かれないですむかもしれないよ」
「あっ、そっちは解決しました。ルナさん達と一緒に行動するって言ったら、マネージャーも納得してくれましたから」
今まで、メレを守っていた騎士達は、もうメレの周りにはいないみたい。マネージャーが納得してくれたというだから、良かった。いつまでも過保護のままいられないもんね。
「メガホンのおかげで、声を枯らさなくても敵を攻撃することが出来ました。前に誰もいなければ、私も攻撃出来ますよ」
「メレの攻撃は、無差別範囲攻撃だからね。使いどころは限られてくるかもだけど、結構便利だね。攻撃力も高いしね」
メガホンで指向性を持たせられたことで、こういう直線の通路とかだったら、敵を一掃出来るのでかなり使える。私達が、全員後ろにいるのが必要条件だけどね。
「でも、メレの喉が枯れると困るから、多用することは出来ないのか」
「いえ、実は王都でのど飴を手に入れたので、回復が早くなります。枯れても、すぐ使える様になります」
「そんなものまであるんだね。ルナちゃんは知ってた?」
「ううん、私も知らないや。シエルは?」
「私も同じ。どうする? メレの攻撃を中心に進んで行く?」
メレの攻撃を中心に進んで行けば、かなり楽に進めるようになる。でも、これから先、どんな敵が来るか分からない。メレの攻撃が、何回使えるか分からないし、節約した方が良いかもしれない。
(回復用ののど飴があるにしても、温存しておく方が硬いかな)
メレの声は温存する方向で、進んでいく事にしよう。
「本当に敵が多いときにメレの声を使おう。最悪な状況になっても、メレの声があれば、打開出来る可能性が高いし」
「分かりました。歌はどうします?」
「『増強の歌』でお願い。ガーディとソルが前衛と警戒。メレとシエル、プティが真ん中で、私が最後尾に付く。これで進んでいこう。道を曲がるときに教えるから」
「分かった」
私達は、動力室を目指して進んで行く。さっきの機械人形が、最大の守りだったのか、動力室に行くまでの道で、他の機械人形にあうことはなかった。
(さっきの機械人形で全部だったって事?)
だけど、何だか少し違和感がある。
「さっきので、全部?」
シエルも違和感がしたのかそう言った。
「私も同じ事考えていたところ。リリさん達も機械人形を倒していたって言うから、意外と殲滅出来たのかもしれないね。それか……動力室の前で待ち構えているのかも。この施設で、一番に重要な場所だから」
私が冗談交じりにそう言うと、皆がジッと私の事を見てきた。
「どうしたの?」
「はぁ……ルナちゃん、またフラグ建てたの気付いてないの?」
「へ? そんなの考えすぎだって」
笑いながらそう言って、五分後に私は、この台詞を後悔した。
「ほら、だから言ったでしょ?」
「う~ん……ほんとごめん」
私達の向かう先、動力室の前に、さっき以上に大量の機械人形が待ち受けていた。本当にフラグになるとは思わなかったんだもん。仕方ないよね。
「声を使いますか?」
「ううん、この先の動力室がどんな構造になってるか分からないから、下手に刺激したくない。出来る事なら、中の構造を見て安全に崩壊させたいから」
「じゃあ、範囲攻撃は控えめにして、丁寧に倒していこうか」
ソルがそう言って、突撃する。機械人形の集団の中に飛び込み、刀を一閃。機械人形達の首を完全に切断する。動力と演算機構を切断してしまえば、機械人形は動かなくなるので、正しい攻撃だ。
「首を切り離せば良いんだよね?」
「うん。脳を破壊もしくは切り離せば、簡単に倒せる。動力は、胴体に満遍なくあるから、胴体そのものを完全に破壊しても良いよ」
私はそう言いながら、ソルに攻撃しようとしていた機械人形の頭に銃弾を撃ち込んだ。一応、これだけでも倒せることは分かっているから、これで大丈夫。
「ガーディ!」
シエルの呼び掛けで、ガーディが機械人形の首目掛けて噛み付く。首も金属で出来ているはずだけど、ガーディの牙は易々と突き破り、中の重要なケーブルを噛み千切った。この間も、メレが『増強の歌』を使い、私達の力を上げている。
そうして、十分程戦うと、機械人形を全滅させることが出来た。
「ふぅ……かなりの数だったね」
「そうだね。それだけ動力室を守りたかったということなのかな?」
動力室の前にいたのは、これまで見た事もない程の量の機械人形だった。ここの全戦力がいると考えて良いかもしれない。
「じゃあ、中に入るよ。これで、終わったかもしれないけど、何が起こるか分からないからね。油断はしないで」
私がそう言うと、皆がこくりと頷いた。私達は、アルカディアの動力室に入っていく。