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92.古代兵器の資料室!!

改稿しました(2021年12月9日)

 資料室を見つけた私達は、早速古代兵器の取扱説明書を探し始めた。しかし、ここで、ある問題が邪魔をする。


「草原言語を読めるの、私しかいない……」

「……ルナちゃん、頑張れ!!」


 そう。ここにある本は、基本的に草原言語で書かれている。そして、この中で、草原言語を含む古代言語を読めるのは、私しかいない。必然的に、私一人で探すことになる。


「はぁ……じゃあ、皆は、この先を調べてきてくれる?」

「分かった。じゃあ、シルヴィアさんは、ルナの護衛に残ってくれますか? ルナちゃんは、集中すると周りが見えなくなることがあるので」

「分かりました。お気を付けて」


 ソル達は、通路の先を調べに向かった。部屋の位置だけでも分かれば、後で調べやすい。でも、私、集中しすぎて、周りが見えなくなったことなんてあったかな。


「この資料室、結構広いですね」

「そうですね。恐らく、資料だけがあるわけではないのでしょう」

「他のもの……報告書でしょうか?」

「それもありそうですね。私は、何をすれば?」


 シルヴィアさんにそう問われて、少し考え込む。この古代兵器の中で、何か特徴的な事が無かったかを考える。すると、住居区で最初に調べた部屋を思い出した。あの時は、ベッドに書類が隠されていた。ここもそんな感じで、何かが隠されているかもしれない。


「棚の奥や裏みたいな、普通は何も無い場所を調べて下さい」

「分かりました」


 シルヴィアさんは、私の意図を一切聞くことなく、すぐに行動に移った。それだけ、信用して貰っているって事なのかもしれない。そうだったら、嬉しいな。


「私は、ここの書物をひっくり返して、説明書を探す!」


 私は、床に落ちているものから、拾い上げて中身を確認する。


「違う……違う……違う……」


 基本的に、古代兵器の没アイデアのようなものばかりだった。何故、没だと分かったかというと、資料の端に、×印が書かれていたからだ。これは、資料が散らばっていた部屋の一つにも同じような感じで×印が付いていた。


「ここら辺のパーツは、システム面に関係ないかな。意外と、そういうところは整理されているの?」


 今必要なのは、システムの操作方法あるいは、自壊の方法だ。そして、それらをする時の注意点だ。下手して出力を上げてしまえば、色々とまずいことになる。コンソールを壊したりして、暴走なんて引き起こした日には、この辺り一帯が崩壊する可能性もある。


「システムにアクセスする方法……どの部分にあるかな……」


 私は棚をひっくり返す勢いで、本の中身を調べていく。三十分くらい調べていると、シルヴィアさんが、いくつかの紙束を持ってきた。


「ルナ様の言うとおり、本棚の奥や間に、いくつか挟まっていました」

「ありがとうございます。ここに、私が求めている情報があると良いんですけど」


 紙束を捲って、中身を確認していく。紙束に書かれているのは、没アイデアではない採用されたパーツのようだった。


「これは……外周? こっちは、住居区……こっちは、入口……あった! 制御室!」


 紙束の中に、制御室の資料を見つけた。それは三束に分かれていた。古代兵器の中枢だけに、パーツが細かいみたいだ。


「それとこれを見つけました」


 シルヴィアさんは、そう言って一枚の紙をくれる。


「これは、古代兵器の地図!? これで、ここの全貌が分かります!」

「ルナ様の地図と比べてみましょう」

「はい!」


 私が書いた地図とシルヴィアさんが見つけた地図を見比べる。私の方は、自分で書いたもので、あまり正確とは言えないけど、大体合っていた。


「色々書き込んである。これは……草原言語だから分かる。えっと……えっ!?」

「どうしました?」


 シルヴィアさんは、草原言語が読めないので、私が狼狽えた理由を分かっていなかった。


「ここに書いてあるのが、この古代兵器名前のようなんです。『地形操作兵器アルカディア』と書かれています」

「アルカディア……確か、この平原の名前では?」

「はい。そのはずなんです。偶々同じ名前とは考えにくい……」

「そうですね。古代兵器の開発者が、移動集落を作り、この平原をアルカディアと呼称した感じでしょうか?」


 シルヴィアさんの意見は、結構有力っぽいけど、住居区の一室で見つけた日記に、『知らないうちに移動集落が出来ていた』とあったので、多分違う。でも、この古代兵器から逃げ出した人達が合流して、名前だけ伝えていった可能性がある。ただ、今このことを気にしても仕方ない。私は、制御室の資料の方を読み込む。


「これは、関係ない。これだ! 操作方法は……う~ん、やっぱり天界言語のまま操作するしかない。これに書いてある通りにやれば、操れるはず。取りあえず、停止方法……ん?」


 紙束のどこにも停止の方法が書かれてない。


「どういうこと?」

「問題ですか?」

「はい。停止の方法が書かれていないんです。これじゃ、停止させることが出来ません」

「もしかすると、停止する事自体出来ないのかもしれませんね」

「!!」


 それは考えていなかった。あのアトランティスですら、停止させる方法があった。それなのに、このアルカディアには、停止させる方法がないってどういうことなんだろう。私があり得ないと思った理由は、他にもある。ここの職員の日記だ。あの様子だと、ここの建造に反対していた。例え、組織が停止方法をなくしていても、裏をかいて何かしらを用意している可能性はあるはずだ。


「いや、待って……だから、天界言語……?」

「何か思いついたのですか?」

「私が、最初に探索に来た時に、天界言語で書かれた紙束を見つけたんです。今は、メアリーさんの手元にありますが、もしかしたら、あれが停止方法が書かれたものだったのかもなんです」

「天界言語となると、誰も読めませんね。ということは、現状、アルカディアを停止させられないという事ですね。他に何かしらの方法があると良いのですが」


 他の方法か。何か良い方法はあるかな。私は、地図を見て色々と考える。


「動力室……」

「確かに、動力を破壊すれば、停止する可能性はありますが……」

「暴走の恐れですよね?」

「はい。動力を破壊することによる暴走、あるいは、大爆発する可能性もあります。やるとしても、最終手段になるかと」


 シルヴィアさんの言うとおり、動力の破壊は最終手段にするとして、他に何かしらのアプローチが欲しい。でも、制御室の停止方法が分からないなら、この方法しかない。そうして地図を見ていると、端っこにメモ書きのように、何かが書かれていた。


「メメント・モリ?」

「古代兵器の名前ですね。ですが、どういうことでしょうか?」

「分かりません。命を奪うという点で言えば、同じといえるのでは?」

「前にも、メアリーゼ様がお伝えした通り、メメント・モリは、アンデットに対するものと言われています。アルカディアの能力とは、別物だと思いますが」

「これも謎ですね。取りあえず、置いておきましょう」


 ちょっと気になる事があって話が逸れたけど、問題は、このアルカディアだ。これを止める方法……


「選べる手段がありません。私とソル達だけで、動力室を破壊しにいきます。私達なら、仮に爆発に巻き込まれても復活しますから」

「それを私が了承すると思いですか?」


 シルヴィアさんはそう言って、私の眼をジッと見てきた。ただそれだけのはずなのに、少しだけ気圧される。でも、私も意見を曲げる気がないので、しっかりと見返す。


「それが、一番良い方法のはずです。シルヴィアさん達は、移動集落の皆さんを避難させて下さい。お願いします」


 私は、真剣な顔でそう言った。シルヴィアさんも真剣な顔になっている。


「私達を、信用して下さい」

「……はぁ、こうと決めたら、頑なに考えを変えませんね。本当に、あの子と似ています」


 シルヴィアさんは、私の頭を優しく撫でる。


「分かりました。ここの破壊を頼みます。私は、リリウム達と共に、移動集落の皆さんを、ここから離れた場所にお連れします」

「ありがとうございます、シルヴィアさん!」


 私とシルヴィアさんは、ソル達が帰ってくるのを待って、入口の方に戻っていった。そこでリリさん達と合流して、このことを伝えた。シルヴィアさん同様、リリさんも猛反対したけど、シルヴィアさんも一緒に説得してくれたのもあって、渋々納得してくれた。


「ルナさん、一つだけ約束して下さい。絶対に、無茶な事はしないこと。自身を犠牲にして、破壊しようとは思わないで下さい。良いですね」

「えっと、善処します」

「ルナ様、無事に帰ってくるのを待っていますよ」


 シルヴィアさんが、剣の柄に付いた月のストラップに手を添えながらそう言った。リリさんもシルヴィアさんも、私達の無事を本当に祈ってくれているのが分かる。


「三十分後に移動を始めます。その間に避難をお願いしますね」

「分かりました。ご武運を」


 私達は、シルヴィアさん達と別れて、それぞれの役割を果たすために動き始める。

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