90.気になる事!!
改稿しました(2021年12月7日)
リリさんの家の前まで来て、ある事に気が付いた。リリさんが在宅している可能性って、かなり少ないんじゃないかということに。
「取りあえず、門番の人と話してみよう」
私は、門の前に立っている門番の人の元に向かった。門の前には、二人の門番が立っていた。
「すみません、ちょっと良いですか?」
「うん? 君は……」
「お嬢様のご友人のルナ様ですね。一度、姿を拝見した事があります」
「そうだった。今、お嬢様は、任務で出掛けているけど」
やっぱりリリさんは、今任務中だった。国王様が、戦乙女騎士団が忙しくしているって言ってたし、いないのは当たり前だよね。でも、今日、用があるのはリリさんじゃない。
「ミリアはいますか?」
「ミリア様ですか? それでしたら、中にどうぞ。階段を上がって、右に曲がったところにある三番目の部屋にいらっしゃると思います」
門番の人達は、あっさりと中に入れてくれた。まさか、ここまで信用されているとは思わなかった。だから、リリさんに直接会って入れてもらおうと考えていたんだ。
(リリさんの友人だって気付いてもらえたのが、大きいかな。そうじゃないと、簡単に入れてはくれないだろうし)
私は、リリさんの家に入ると、階段を上がって右に曲がった。そして、そこから三番目の部屋の前に立つ。
「ここだよね?」
私は、二、三度確認してから、扉をノックする。
『はい、どうぞ』
中から、ミリアの声が聞こえた。どうやら、間違っていなかったみたい。
「失礼しま~す」
そう言いながら、扉を開ける。そこには机に向かって、何かを勉強しているミリアの姿があった。
「ルナさん!?」
突然、私が現れたので、ミリアはすごく驚いていた。全くのアポ無しだから、当然と言えば当然だけど。
「久しぶり、ミリア。今日は、ちょっと話があって来たんだ」
「お話ですか?」
「うん。今、大丈夫?」
「はい。こっちに座ってください」
ミリアは、自分の横に置いてある椅子を、私に勧める。私は、遠慮せずに、そこに座る。
「それで、お話とは何ですか?」
「うん。ミリアは、アトランティスの巫女だよね?」
「はい。アトランティスが無くなった後も、私は巫女のままです。役割は終えていますが、感覚的に自覚しています」
アトランティスが無くなっても、ミリアの巫女としての感覚は生きているって事かな。どんな感覚なのかは分からないけど。
「アトランティスを起動させるときに、祈っていたでしょ? あの時の感覚ってどんな感じなの?」
ミリアは、アトランティスを起動させるために祈りを捧げていた。あれが、アトランティスを起動するために必要なのは、アトランティスでの出来事で確定している。
「えっと……アトランティスのシステムに入り込むような感じです。身体の感覚が遠のいて、意識だけが別の場所に行くといえば、分かりやすいでしょうか」
「その時になんだけど、知らない言語が流れてこなかった?」
「知らない言語ですか?」
ミリアは、少しの間考え込む。
「確か、聞いた事のない言葉を聞いたような気がします。何を言っているのか、一切理解が出来ませんでした」
「文字は見なかった?」
「見ていないですね。私は、言葉を聞いただけです」
「そうなんだ」
私が、ミリアに訊きたかったことは、アトランティスに天界言語が使われているかどうかだ。ミリアが祈り始めた時に、ディスプレイに流れてきた言語は、私の記憶が正しければ、海洋言語だけだったはず。
「そうか。私は最後まで、あそこにいなかったから、ディスプレイを見れてないんだ。あそこから脱出する時に、変な文字が流れてなかった?」
「すみません。あの時は、脱出するのに必死で……」
「そう……」
アトランティスが崩壊したとき、私は制御室にいなかった。もしかしたら、崩壊時にディスプレイの表示が変わっていた可能性がある。
「でも、これで、決まりかな」
「何がですか?」
「古代兵器には、天界言語が関わっているって事」
アトランティスとアルカディアにある古代兵器の共通点は、ディストピア、天界言語の二つ……いや、もしかしたら、日記に書いてあった組織っていうのも関係してきているのかもしれない。
「また、古代兵器に関わっているんですか?」
「偶々……なのか、分からないけどね」
「危険だと思います……」
ミリアは、心配そうに私を見る。アトランティスの真の能力などを知って、危険じゃないと考える方が難しい。
「私もそう思う。でも、出来る限り、古代兵器を破壊したいんだ。アトランティスを知って思ったけど、古代兵器のほとんどは存在しちゃいけないものなんだと思う。それに、国王様に依頼されてもいるからね」
「そうなんですか……」
安心して欲しいという思いで話したけど、ミリアは、まだ心配そうにしている。
「私に出来る事があったら、何でも言って下さい。アトランティスではないので、起動させたりするのは無理だと思いますが、何かしら手伝える事はあると思います」
ミリアは、私の手を両手で掴んで詰め寄る。
「うん。今まさに、手伝ってもらったよ。古代兵器を知るには、他の古代兵器も知った方が良いと思ったからね」
「少しでも役に立てたのなら嬉しいです」
ミリアは、嬉しそうに笑った。ミリアに戦闘能力はないので、直接頼ることは出来ないけど、こういうことや頭を使うことなら、手伝って貰えると思う。これからも頼りにさせてもらおう。
「そういえば、勉強は順調なの?」
ちょうど話が切れるタイミングだったので、別の話題を振ってみた。そしたら、ミリアは、目に見えて分かるくらい沈んだ表情になった。
「元々、街の領主の娘として、少しの作法は学んでいたのですが、領主そのものとなると、話が別なようで、色々と詰め込まれています」
ミリアは、そう言いながら、机の上にあるノートのようなものを見た。
「これは……場合別の礼儀作法について?」
「はい。相手が誰かによって、作法が変わってくるみたいなんです。王族、貴族、商人、平民と身分で分かれているので、覚えるのも一苦労なんです」
「なるほどね。そりゃあそうだよね。私みたいに、国王様とも普通に話す方がおかしいもんね」
国王様自身から、言葉遣いをあまり気にしなくて良いと言われているから、本当に気にせずに話していたけど、普通に考えたら、ただただ不敬なだけなんだよね。
「私、良く生きていられたなぁ」
「さすがに、国王様が気に入っている人を殺すなんて真似、誰もしないと思いますよ」
「そういうものかな? そういえば、最近、王城の中に知り合いが増えた気がする」
「使用人の方々ですか?」
「うん。シャルやメアリーさんのところに行くから、必然的にメイドさん達の知り合いが増えるんだよね。でも、この前は、大臣さんみたいな人とも喋ったよ」
この前、メアリーさんのところに行こうとしたら、渋いおじさんに遭遇した。何か軍務大臣の人みたいで、少し喋ったんだ。
「怒られませんでしたか?」
「全然。寧ろ、今度、騎士団の訓練に参加しないかって誘われた」
「騎士団の訓練にですか。それはまた、すごいですね」
「うん。でも、今は、シルヴィアさんに師事しているから、遠慮しておいたんだ。向こうもそれで納得してくれた。まぁ、時間があれば参加してくれって言われたけど」
「大変ですね。それより、シルヴィア様と訓練しているんですか!?」
そういえば、ミリアは、シルヴィアさんの熱狂的なファンだったっけ……
それから、ミリアにシルヴィアさんについての話をする事になった。まぁ、結構楽しかったけど、これからは、ミリアの前でシルヴィアさんの話は控えておこう。確実に長引くことになるから……