78.王都にて!!
改稿しました(2021年12月2日)
王都に着いた私達は、真っ先に噴水広場のポータルへと登録しに向かった。
「よし! これで、いつでも王都に来れるね!」
シエルは、身体を伸ばしながらそう言った。
「この後は、どうする? 王都を回る?」
「私は、それで良いよ」
「私も大丈夫です」
「私も見て回りたい!」
私の提案に、ソル、メレ、シエルが乗る。新しい街だから、皆気になって仕方ないんだと思う。正直、私も全部回ったわけではないから、皆で回るのは楽しみだ。
「じゃあ、適当に回っていこう」
私達は、王都の中を適当に歩いていく。この前、シルヴィアさんに紹介された場所から、全く行ったこと無い場所まで、色々な場所を回っていった。これまで、見た事のないものもあったから、かなり新鮮だった。
「色々と、ユートリアと違うね」
「そりゃあ、王都だからね。武器屋一つとっても色々違うよ」
「裁縫屋もあったしね。プティとガーディが更に強化されるかも」
「コンサート会場みたいな場所もありましたしね。あそこで、歌えたら楽しそうです」
それぞれ、王都に惹かれる要素があるみたいだ。これも皆で一緒に回る利点の一つだね。自分じゃ気がつけないところに気が付くことが出来る。
「じゃあ、一応、今日は解散しておこうか。次はさ、ユートリアの西側に行こうよ!」
解散になる前に、ソルがそう言った。
「今日、王都に来たのに?」
「そうだよ。王都に来れたけど、他にも行ける範囲を増やしておくべきなんじゃないかな。前は、敵うような場所ではなかったけど、今なら、少しくらいなら戦えるかもしれないし?」
ソルの言うとおり、昔の私達が行ったら負けるかもしれないけど、今の私達なら、少しは進めるかもしれない。いや、もしかしたら、突破出来る可能性もある。
ユートリアの西側は、そのくらい危険な場所だという話を聞いている。西側にあるは霧がかった森で、その中には、今まで行ったエリアをも上回る数のモンスターがいるらしい。つまり、見通しの悪い森の中で、大量のモンスターに襲われるということだ。このモンスターが強いのと数が多いので、初期段階で攻略出来るプレイヤーがいなかった。
「行くだけ行くのはありだね。攻略出来るなら、出来るにこしたことはないし。先の街にも行けるかもだしね」
「もしかしたら、もっと楽に攻略出来るかもしれませんよ」
「楽に……? あっ! 沈静の歌か!」
すっかり、メレの歌を忘れていた。
「沈静の歌で、モンスターを鎮めれば、楽に進めるはずだもんね」
「そういえば、そんな話を聞いた気がする。でも、効くのかな?」
「そればかりは、向こうで試さないとね。じゃあ、また来週に攻略しよう」
私がそう言うと、皆が頷いた。そして、その場で解散する。
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翌日と翌々日は、メアリーさんのところで古代言語を教わった。今、習っているのは、今までよりも難易度の高い『魔界言語』というものだった。
「魔族が使ってた言語だけど、随分前に廃れたんだよね」
「魔族が使っていたなら、まだ、使われているのでは? まだ、魔族はいますよね?」
色々な本を読む内に、そう言った種族が今も存在しているという事を知った。ただ、一部の種族を除いて、その存在がどこにいるかは分からなくなっているみたいだ。
「そうなんだけどね。今は使われていないって言われているの。私達が使っている言語を全種族が使っているわ。だから、今の言語は共通言語なんて呼ばれたりもしてるの」
「共通して、今の言語を?」
少し引っかかる。なんで、今の言語に統一されたんだろう。私達がいる現実でさえ、そんな風にはならない。そのくらい難しい事だと思うんだけど……
「今使っている言語は誰が使い始めて、広まったものなのか、分かりませんか?」
「う~ん……色々な本を読んできたけど……明確な理由は、どこにも書いてなかったはず。納得いく理由かは分からないけど、一度文明が滅んだからって書かれた本があったはず」
「文明が滅んだ……どの文明ですか?」
この世界には、沢山の文明がある。それは、海洋人がいた事からも明らかだ。
「この古代言語を使っていた文明のほとんどだと思う。海洋人も、子孫がいたみたいだけど、その技術力とかは残っていないからね。天界言語なんて、誰も読めないし、地底言語を使っていた古代地底人も今はいないと言われているからね。唯一残っているのは、魔族くらいのものだけど、どこにいるのか定かじゃないし……」
この謎も、あの男の住処から取ってきた本を読めば分かるのかな。
「今は、この本を解読するのが先決だね。まだ、一冊も解読出来ていないからね」
大分、解読でいているけど、まだ、天界言語の部分が解読出来ていない。そして、その天界言語の部分が、重要な部分らしい。他の言語だけで、アナグラムを解こうとしても、その根幹に当たる部分が天界言語みたいだ。
「天界言語の解読が全然進まないんだよね……」
「すみません。お時間を奪ってしまって」
「ううん。全然平気だよ。寧ろ、こうして教えている方が、良いかもしれないし」
「そうですか? なら、良いんですが……」
「そうだよ。ほら、手が止まってるよ。ここの訳を進めて」
「はい」
私は、魔界言語の勉強を続ける。結局、この日に魔界言語を習得する事は出来なかった。
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その翌日は、シルヴィアさんに修行をお願いした。そして、今、私とシルヴィアさんは、王都にある闘技場のような場所にいた。
「突然、修行を頼んでしまってすみません」
「いえ、構いませんよ。この前の騎士との戦いが要因ですね?」
「……はい。あの騎士との戦いで、私は、あまり対抗することが出来ませんでした。得に、一対一になったら、歯が立ちませんでした」
あの黒騎士との戦いは、シルヴィアさんがいて、ようやく勝てる感じだった。私一人だったら、自滅覚悟で零距離射撃するしかない。そんな戦い方じゃ、ダメだということに気が付いた。だから、シルヴィアさんに修行を頼んだのだ。
「取りあえず、接近戦になった時の対処を練習しましょうか。私が、あの騎士のように攻めますので、対応して下さい」
「え? でも、私の武器は、銃ですし……」
私の黒闇天だと、どう考えてもシルヴィアさんに怪我を負わせる可能性が出てきてしまう。そこら辺が心配だ。そんな風に思っていると、剣を抜いたシルヴィアさんは、安心させるように微笑んだ。
「大丈夫ですよ。この闘技場は、特殊な結界で覆われていますので、身体に及ぶダメージが、精神へのダメージに変わります。つまり、怪我は負わないということです。ただ、ある一定の段階までダメージを受けると気絶してしまいますから、気を付けて下さい」
「な、なるほど……じゃあ、遠慮なしにいきます!」
私がそう言うと同時に、シルヴィアさんが、一気に懐まで踏み込んできた。
「!!」
シルヴィアさんの斬り上げを、上体を逸らすことで避ける。しかし、すぐに回し蹴りが私の脇腹に刺さる。
「うぐっ!」
シルヴィアさんが言ったとおり、身体的なダメージはなかったけど、くらった瞬間、視界がぐらっと揺れた。これが、精神にダメージを受けるということみたい。身体的なダメージを受けていたら、ほぼ確実に骨がいっていたと思う。
「銃技『一斉射撃』!」
揺れる視界の中で、私は、銃弾を十発放つ。しかし、シルヴィアさんは、その全てを一瞬で斬った。それも至近距離で……
「嘘っ!?」
そのまま踏み込んできたシルヴィアさんの拳が、私の鳩尾にめり込む。
(シルヴィアさん……黒騎士よりもすごい速いんだけど……)
その一撃によって、私は気絶してしまった。その後も、起きては気絶しを繰り返して、修行は続いて行った。結局、シルヴィアさんに一撃入れる事は叶わず、その日の修行は終わった。
そして、メアリーさんに古代言語を教わりながら、シルヴィアさんに修行をつけてもらう事が日課になった。