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55.証拠集め!!

改稿しました(2021年11月24日)

 私は今、ルノアさんと一緒に書斎を調査している。気になる本を手に取って、軽く内容を見てから、戻すということを続けていた。


「ここにあるのは、仕事関係の本や参考書、資料がほとんどみたいですね」

「そうですね。私は机を調べますので、ルナさんは、そのまま資料を見てくれますか?」

「分かりました。気になるものを見つけたら、知らせます」

「お願いします」


 ルノアさんは、書斎に備え付けられている机を調べだした。私は、引き続き、本棚の本を調べていく。さっきもいったとおり、仕事関係の本が多い。


「裏金とかの証拠があればいいけど……」


 一冊一冊の本を取っては返して、取っては返してを繰り返していると、少し違和感を感じた。


「?」


 今、返した本を取り出して、その両隣の本も取り出す。そして、一部の本がなくなった本棚を覗き込む。すると、そこに一冊の本が横向きに置いてあった。


「分かりにくいのか、分かりやすいのか……」


 見つけた本を取り出して、中をパラパラと捲ると、今までと違う帳簿のようなものを見つけた。


「ルノアさん!」

「ルナさん!」


 私とルノアさんは同時に、互いの名前を呼んだ。ルノアさんも何かを見つける事が出来たみたい。


「ルナさんは、何を見つけましたか?」

「裏帳簿みたいなものを見つけました。そちらは?」

「手紙のようなものですね。中身は、かなりダメな内容です」


 私はルノアさんに帳簿を渡す。中身を見たルノアさんが私に向かって頷いた。どうやら、正しいものを見つけられたらしい。


「では、別の場所も探しておきましょう。余罪が増える可能性がありますから」

「そうですね」


 私達は次の部屋に向かおうと部屋の外に出る。すると、ちょうど地下から上がってきたリリさん達と合流した。


「団長」


 ルノアさんがリリさんを呼んで、さっき手に入れた証拠を手渡した。


「なるほど、そういうことでしたか。そろそろ撤退して、アトランシア卿を追及します。ルノアとルナさんは、先に外に出ていてください」

「はっ!」


 私は、ルノアさんに連れられて外に出ていく。リリさんは、騎士団の皆さんに連絡を回すために別れた。


「これで、アトランシア卿については解決ですか?」

「証拠が揃っていれば、あちらも追及を躱せないでしょう。その後に少し問題が起こりますが、それは仕方のないことです」


 ルノアさんの言う問題がどのようなことか気になるけど、それよりも気になったことがあった。


「そういえば、ルノアさん達は何でこの街にいたんですか?」


 そう、ユートリアにいたのはギルド関係のことで来たと言っていたけど、アトランティス港には、ギルドが存在しない。だから、街に来る理由が分からない。


「視察です。この街で、何かしらの不正が起こっている可能性があるという報告がありまして、その調査に派遣されたのです。通常は、専門の組織が行くのですが、そちらが別の任務で掛かりきりになっていたので、私達が来ました。その調査をする前に、街が騒がしくなっていましたが」

「あっ、ごめんなさい……」


 街の騒ぎと言われたら、絶対に私が関わっていることしかない。かなり申し訳なくなる。


「そうですよ。ルナさんは、色々な街で問題を起こすんですから」

「うぐっ……」


 そう言われると否定出来ない。得に、ルノアさんと会った時は、二回ともトラブルに巻き込まれている。というか、トラブルの中心に私がいる感じがする。


「お待たせしました。駐在所に戻りましょう」


 ミリアの家から出てきたリリさんが、そう言って、先に進んで行った。私も後を追う。


 ────────────────────────


 駐在所に着くと、入り口にアザレアさんが立っていた。


「団長、先程の件について認めました」

「そうですか。ありがとうございました。それでは、私の方でも取り調べようと思います」

「分かりました。お願いします。では、私は、ルナさんをもてなしておきます」

「頼みました」


 アザレアさんとすれ違う形で、リリさんが中に入っていった。


「では、ルナさんは、こちらにお越しください」

「はい」


 アザレアさんの案内で、テラスのような場所に案内される。


「ルノアは、何か飲み物を持ってきてください」

「はっ!」


 ルノアさんがどこかに向かっているうちに、私とアザレアさんは、席に座る。


「さて、今日はお付き合いさせてしまい、申し訳ありません」

「い、いえ、お世話になりましたし、手伝うのは当たり前です」


 アザレアさんは開口一番謝罪から入った。捜索を手伝ったこと言ってるんだと思う。


「そう言ってもらえると助かります」

「でも、私のせいで、ミリアにも迷惑を掛ける事になったんじゃないかと思うんです」


 リリさんの手伝いと思って色々と探したけど、そのせいでミリアに影響が出るかもしれないことを考えられてなかった。


「そうですね。ミリア嬢の生活も一変するでしょう。ですが、それはルナさんがいなくても同じ事でしたよ」

「どういうことですか?」

「私達が、ここに来た理由は知っていますか?」

「街で起こっている不正を……って、まさか!?」

「そのまさかです。対象はアトランシア卿だったのです。なので、どのみちミリア嬢には影響が及んでいたでしょうね」


 リリさん達が来た理由は、アトランシア卿だった。ルノアさんの話でも予想出来たはずだったけど、すぐにその発想には至らなかった。


「お待たせしました」


 そこで、ルノアさんがトレイで三つのマグカップを持ってきた。その中には、紅茶が淹れてある。


「団長の聴取が進んでいるみたいです」

「そうですか。なら、すぐにでも帰れそうですね」


 二人はそんな風に話している。少しばかり、世間話をしながら、紅茶を飲んでいると、リリさんが歩いてきた。


「アトランシア卿が自白してくれました。王都に連れて行き、裁判に掛けます。アザレア、ルノア、準備をしてください」

「「はっ!」」


 二人は、一気に紅茶を飲み干して、この場を去っていった。去り際に、私に手を振ってから行く。


「ルナさんも、手伝って頂きありがとうございます」


 リリさんは、頭を下げてお礼を言う。


「いえ、私は出来る事をしただけなので」

「私達は、王都に帰ることになりました。ルナさんともお別れですね」

「そうですね。あの、これから、この街はどうなるんですか?」


 ここを治めていたアトランシア卿がいなくなる。ということは、新しい領主が必要になってくる。


「そうですね。アトランシア卿に代わる領主が必要になりますね。出来れば、アトランシア卿の血族が望ましいところではありますが……」

「私ではダメですか!?」

「「!?」」


 いきなり私とリリさん以外の声がした。そのため、私とリリさんは驚いて、そちらを振り返った。そこには、別れたはずのミリアがそこに立っていた。


「ミリア!?」

「はい。さっきぶりですね、ルナさん」


 ────────────────────────


 私、ミリア、リリさんで、さっきと同じ席に座った。


「ソルさんとシエルさんからの伝言で、一応、アトランティス港にいるから探して、だそうです」

「あ~、分かった」


 二人は、自分達がやれることはないと判断したみたい。


「えっと、ミリアさんで合っていますね?」

「はい。ミリア・アトランシアです。私は、アトランシア卿の直系です」


 ミリアは真剣な顔でリリさんを見る。


「……ミリアさんなら、任せることは出来ますが、今の状態ではダメです」

「っというと?」

「ミリアさんが、ここを統治するには、経験も知識も不足しています。なので、今のミリアさんには任せられません」


 リリさんにそう言われて、ミリアが落ち込む。


「それって、経験と知識を積めば、任せられるということですよね?」


 一応、助け船を出してみた。本当に助け船になるかは分からないけど。


「そうですね……」


 リリさんは顎に手を当てて考え込み始める。さすがに、ミリアの若さじゃ無理があるとかもありそう。


「なら、私の家に来て下さい。そこで、知識を積みましょう。少しばかり、経験も積んで貰う事になるかもですが」

「へ……?」


 リリさんの提案にミリアが少し呆けた顔になる。


「ミリアさんは、私と共に王都に来る気がありますか?」

「……はい! 私はこの街のために、出来る事をしたいんです。私は、この街が好きですから!」


 ミリアの答えにリリさんが満足げに頷く。


「出発は、明日にします。今日は、ここに泊まって下さい。それと、少し話がありますので、夜に時間を下さい」

「はい」

「では、私は、アザレア達に予定の変更を言いに行きます。ルナさんは、明日の朝から時間はありますか?」


 リリさんに問われて、予定を思い出してから、


「大丈夫です」


 と答えた。


「では、九時に、ここに来て下さい。大丈夫ですか?」

「大丈夫です」

「約束ですよ。では、失礼します」


 リリさんはそう言うと、アザレアさん達が向かった方向に進んでいった。


「ところで、ミリアは、どうしてここに来たの?」


 二人きりになったので、ミリアに訊いてみた。


「えっと、最初は、ソルさんとシエルさんと一緒に逃げようとしていたんです。ですが、私がお願いして引き返してもらいました。自分の育ったこの街を、捨てることが出来なかったんです。街に戻って、家に行こうとしたら、こっちに父上がいらっしゃると聞いたので、ここに来ました。そうしたら、先程の話を聞いたんです」

「なるほどね」


 ミリアが戻ってきた理由は、理解出来るものだった。


「これが、ミリアのやりたいこと?」


 私は、ミリアの眼を見て訊く。


「はい!」


 ミリアは笑顔でそう言った。ミリアのやりたいことが見付かったのなら、良かった。


『クエスト『アトランティスの巫女』をクリアしました。報酬として、五〇万ゴールドを取得しました。特別報酬として、『アトランティスの巫女との繋がり』を手に入れました』


 ────────────────────────


 この後、ミリアと別れて、ソルとシエルに合流した。事の顛末を説明すると、二人は、「また!?」と言われた。そんなに、トラブルに巻き込まれているかな?


「じゃあ、今日はこれでログアウトしようか」

「そうだね。あ~あ、今回、私は全然役に立てなかったなぁ」

「まぁ、そんな事もあるんじゃない? また、今度一緒にイベントやるときには、期待してるよ」

「何だとぉ!? ルナのくせに生意気だ!」


 シエルは、そう言うと私の頬を引っ張ってきた。私もやり返して、その状態が続くと、ソルから脳天をチョップされた。


「うぐっ!」

「痛っ!」

「馬鹿やってないで、明日からどうするか決めなきゃでしょ?」


 ソルの言うとおり、ログアウトするなら明日の予定を決めておかないといけない。


「クエストはクリアしたもんね」

「しばらくは、個人個人で動く?」


 シエルとソルがそう話し合い始める。


「あっ! 私は、明日朝からリリさんに呼ばれてるんだ。だから、どのみち一緒に行動出来ないかも……」

「じゃあ、明日からは、個人で動こうか」

「また、イベントとかがあれば、一緒にやろう」


 明日から、ソルとシエルとは、別行動をする事になった。


「じゃあ、またね」

「また」

「じゃあね」


 ソルとシエルと別れる。


 アトランティスのイベントが終わった。これで、大陸が沈むこともない。私達は世界を救うことが、この美しくて、時に残酷なこの理想郷を救うことが出来た。

 これによって、私は、この世界に渦巻く大きな流れに巻き込まれる事になる。

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