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ユートピア・ワールド~幻想的な世界で、私は、私の理想を貫く!~  作者: 月輪林檎
第7章 アヴァロン

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226.役立たずのルナ!!

 翌日。私達は船の上にログインする。昨日は放置してしまったわけだから、最初は船の点検から始めた。皆には、内側から調べて貰って、私は海に潜って外側から確認する。


「こっちは、大丈夫そう。そっちは?」

「内側も問題なし」


 シエルがそう言いながらタオルを渡してくれる。


「ありがとう」


 身体を拭きながら、船長室へと向かう。当然のようにメレも一緒に来てくれる。メレに相談しながら、目的地を決めたいので有り難い。


「諸島が古代海洋人の住処じゃないのは、前回の探索で分かったし、諸島を狙っていく必要はないかな」

「でしたら、まっすぐ南に行ってみませんか? 海図が途切れている場所に何かあるかもしれません」

「なるほどね」

「ところで、お気づきですか?」

「何に?」


 何のことを言っているのか分からない。すると、メレが窓の外を指す。指示された通り、窓の外を覗くと、太陽が見えるだけで、後は海ばかりだ。


「何も無いけど?」

「太陽の方角が北なんです。因みに、最初の諸島にいた時は、南でした」

「じゃあ、ここの地軸はちゃんと傾いているって事?」

「だと思います」

「あっ、メレが、提案してきた理由が分かった。南極まで行ってみたらって事でしょ?」


 私がそう言うと、メレはニコッと笑う。


「正解です。南に大陸がないと聞いてから、少し気になっていたんです。では、南極はどうなっているのかと。かなり危険な船旅になるとは思いますが」

「私も気になるから良いと思う。もしかしたら、他の海洋人の痕跡があるかもしれないし」

「では、決まりですね」


 私とメレは、船長室を出て行く。


「次は、ずっと南に下っていこう。目的地は得に無し!」

「南極でも目指すの?」

「そういう事。出来そう?」

「どうだろう? でも、やってみるよ」

「ありがとう。それじゃあ、出港!」


 私の合図で、船が動き始める。これから、まっすぐ南を目指す。何があるか分からないが、そういう冒険の方が燃えるものだ。

 出港直後、ネロが抱きついてくる。昨日のビデオ通話が途中で終わってしまって、不満が溜まっているのだろう。ネロの頭を撫でてあげながら、進行方向を見る。


「この先、本当に大陸はないと思う?」


 私は、目の前にいるネロでは無く、隣にいるシエルに訊いた。


「さぁね。でも、交流はないって言っていたんだし、実際ないんじゃない?」

「下手したら、このまま北に抜けるとかあるのかな?」

「さすがに、それはないでしょ。ここが惑星のようになっているのなら、北極みたいな氷の大地はあるはずだし、ユートピアの反対側に着くはずでしょ?」

「ユートピアの大陸が反対まで続いているか、別の大陸があるって事?」

「可能性としてね。だから、このまま北まで抜けるなんて事はないと思う」


 テレビゲームだと、船で南に向かったら、北から出て来る事がほとんどだった。でも、ここまで精緻に作られているここなら、シエルの言う通りな可能性が高い。


「何はともあれ、そろそろ水着でいるのも無理かもしれない」

「ああ、それはそうかもね。もう南半球に入っているわけだし、段々寒くなるでしょ」

「もう水着は着ないのにゃ?」


 水着でいる事を気に入っているのかネロがそう訊いてきた。


「さすがに、寒くなったら着替えないとね。こっちで風邪を引くかは分からないけど」

「風邪は引きたくないにゃ」

「でしょ? ユートピアに戻ったら、アトランティス港の近くにある砂浜で一緒に海水浴でもしよう」

「にゃ」


 ネロは嬉しそうに頷く。前に無人島の海で遊んだのが、余程楽しかったと見える。アトランティス港なら、基本的に暖かいし、真冬とかじゃなかったら海水浴は出来るはずだ。

 そんな話をしていると、ネロがミザリーに呼ばれた。どうやら、時間のある内に簡単な授業をしていくようだ。思っていた以上にミザリーは、先生をする気満々のようで、楽しそうに授業をしている。そして、教えるのも上手いのかネロは熱心に話を聞いていて、時折質問なんかもしていた。


「ネロも熱心だね」

「ちょっとは見習えば?」


 ネロが真剣に授業を受けているのを見て、感心しているとシエルがそう言ってきた。


「……嫌だな。勉強は古代言語だけで十分」

「何で、そんなので点数が良いのやら」

「一夜漬けは楽で良いよ」

「普通は逆なはずなんだけど」


 シエルの呆れた視線が、私に注がれる。私は、知らんぷりを決め込んだ。そこに、ソルと話していたメレが合流する。


「何の話をされていたんですか?」

「勉強の話。まぁ、これは置いておこう。シエルから睨まれるし」

「そういえば、ルナさんは一夜漬け派でしたね」


 メレからも苦笑いをされてしまった。コツコツ勉強派の二人には、一夜漬け派の私を理解出来ないようだ。というか、授業だけで全て完璧に出来るソルは、一体何派に入るのだろうか。


「それにしても、ここまでポータルがないっていうのもどうなの? 海に出て死んだら、船を残して、港からやり直しって事でしょ?」


 シエルが話題を変えた。


「船が自動で戻ってくれば良いけど、多分、そこまで都合良くはないだろうしね。船旅には、それだけのリスクがあるって事でしょ。普通のゲームなら、それだけリターンも大きいんだろうけど、このゲームは色々と規格外だからなぁ……」

「もしかしたら、海に出ても何もないという事があり得るという訳ですね。ですが、実際に、私達は海賊の財宝を手にいれました。売ったら、リターンとして十分なのかもしれませんよ?」

「ああ、なるほどね。確かに、ソルが見つけたやつね。完全に忘れてた」


 幽霊が出て来たから、重要でもないし記憶から削除していた。でも、確かに、あの財宝を売って、船を作って貰った分のお金を回収出来たとしたら、リターンとしては十分なのかもしれない。


「まぁ、ルナとしては、シルヴィアさんに会えないのが一番痛いんじゃないの?」

「うん。シルヴィアさんには会いたいかな」

「これだから恋人持ちは……」


 自分で言ったくせに、シエルから睨まれてしまった。


「シエルも作れば?」

「気軽に言ってくれるけど、付き合いたい人なんて、そうそう現れないから。ねぇ、メレ……って、メレに訊いても意味ないか」

「えっ!? えっと、どういう意味なんでしょうか?」

「そのままそのまま。深い意味なんてないよ」


 メレが追及されたけど、シエルは軽く受け流していた。メレは少し顔を赤くしてあわあわとしているところから、メレに好きな人がいるみたいに思える。アイドルだから、そんな暇なさそうだけど。


「まぁ、言っても私達まだ十代半ばだし、運命の出会いなんて、まだまだ先でしょ」

「運命の出会いをしている人に言われるとむかつく」

「助けて、メレ。さっきから、シエルに睨まれまくって怖いよぉ」


 棒読みでそう言いながらメレの後ろに隠れる。すると、メレは目に見えて慌て始める。そこで、シエルが私を強く睨む演技をするので、メレはさらに慌て始めた。

 そんな風に遊びながら、ちらっと船の後ろを見た私はそのまま固まった。


「ん? どうしたの、ルナ?」


 私の異変に気付いたシエルが、私に訊く。私は、少し震える指で後方を指す。それに従って、後ろを見たシエルとメレも表情が固まった。

 そこには、ボロボロの帆とボロボロの船体の幽霊船がこっちに向かってきていた。それも一隻だけではなく、四隻も来ていた。


「ソル! 速度上げて!」

「うぇ!? う、うん! 分かった!」


 私の指示で、ソルが船の速度を上げる。そのタイミングで、ネロも反応した。後ろを振り向いた。


「どうしたの?」


 一人だけ何も知らないミザリーだけが戸惑っていた。


「幽霊にゃ。それもいっぱい……違うにゃ。これは大きい感じにゃ」


 ネロのその言葉で確定した。あれは、幽霊船。つまり、幽霊が沢山いるという事だろう。足に力が入らず、ガクガクとしてしまう。


「プティ『起きて』! ルナを船長室に放り込んで!」


 幽霊相手では、役立たずの私は、プティによって船長室に放り込まれた。

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