224.無人島の恐怖!!
そこから何度かスターヴ・シャークの襲撃があったけど、天照とバリスタで迎撃出来た。そんなこんなで、目的地の諸島に着いた。
「あっつ~……」
段々と日差しが強くなっていて、砂漠程ではないけど暑さが凄い。
「肌寒くなる前に暑くなりましたね。赤道が近いのでしょうか?」
「ああ、なるほどね。地球と同じ感じだったら、ユートピアは北半球で今は赤道付近まで降りてきたってなるのか」
「はい。なので、あの砂漠は亜熱帯砂漠と考えても良いかもしれません」
「地球の常識に当てはめたら、そう考えられるのか」
私達がそんな話をしていると、ネロが首を傾げていた。そんなネロに、ミザリーが亜熱帯とはというところから説明していた。あそこら辺の話はややこしいから、ネロがちゃんと理解出来るか心配だ。まぁ、そこはミザリーに任せよう。
「さてと、いつも通り無人島探索を始めますか」
「そうですね。ですが、今回は先に服を着ましょう」
「ああ、そうだね」
私達は、いつもとは違い、水着ではなく普通の装備を着て無人島に向かう。この無人島は、今までの無人島と違って、中央に小さな丘みたいなものやその手前に森がある。なので、水着のままだと色々と問題がありそうだったのだ。
小舟を使って無人島に上陸した私達は、まっすぐ丘を見ていた。
「あの丘から行ってみる?」
ミザリーが私に訊く。
「う~ん……そうだね。周辺はあまり期待出来ないし、怪しい所から潰していこう」
私達は丘に向かうため森の中を歩いていく。すると、ネロがすぐに丘とは違う方向を向く。それと同時に、私も気配感知に反応がある事に気付く。
「何か凄い勢いで来るにゃ」
「本当だ。ミザリー、防壁をお願い」
「『阻み拒む光の障壁』」
敵が向かってくる方向に、ミザリーが光の壁を張ってくれる。そこに突っ込んできたのは、ラウンド・ボアというまん丸と太ったイノシシだった。光の壁に阻まれているけど、その壁に罅が入っている。結構な威力みたいだ。その壁を回り込んで、心臓に撃ち込む。同時に、ソルが首を刎ねた。これで確実に倒せているはずだ。
「ここには普通にモンスターがいるみたい。気を引き締めていこう」
「そうだね。それに、ルナさんとソルさんが倒してくれたけど、ここのモンスターかなり強いと思う。あの防壁、最近は一撃で罅割れるなんて事なかったから」
「ミザリーとメレは特に注意した方が良いかもね。シエル、メリーを付けてあげてくれる?」
「分かった。メリー『起きて』」
羊のメリーが大きくなり、メレの傍に寄る。どちらかと言えば、ミザリーの方が戦えるので、その判断で間違いはない。
「よろしくお願いします」
メレがそう言いながら身体を撫でると、メリーはこくりと頷いた。二人をメリーに任せて、私達は丘に向かって進んで行った。その後、マッスル・モンキーという筋骨隆々の猿と先頭になったけど、ソルがすぐに首を刎ねた。
「ちょっと硬いかも」
という感想だったけど、問題無く倒せるのは分かった。私も頭を撃ち抜いて倒す事が出来たので、ネロやシエルでも倒せると思う。昔は同じようなモンスターのソード・モンキーに苦戦していたのが懐かしい。
それにネロの索敵範囲が広いので、基本的に相手の奇襲などが起こりにくい。なので、順調に丘まで辿り着いた。
「にゃ?」
「どうしたの?」
唐突に索敵をしていたネロが首を傾げた。何か見つけたんだと思うけど、今のところ私の視界に変わったものはない。
「あの丘の中から変な気配がするにゃ」
「それってアガルタの時みたいな?」
「にゃ。もしかしたら、休眠状態の気配は、こんな感じなのかもしれないにゃ」
ネロがアガルタで感じていた気配は、私達が戦ったミイラの可能性が高い。それと似たような気配を感じているという事は、ここにミイラがいる可能性が高い。
「多分、この丘の麓に洞窟があるんだと思う。このまま丘を登らず一周回ってみよう。気配に動きがあったら教えて」
「にゃ」
私達は、丘の麓を右回りで歩いていく。すると、丘の一部が大きく開いている場所があった。ミザリーに光球を飛ばして貰って、ソルとネロを先頭に中に入っていく。入口が広いだけで、中は結構狭い。三人並んで歩くのが限界だ。メリーと並んで歩いているメレは、身体の三分の一を羊毛に埋められていた。本人は嫌がっていないから、そこだけは良かった。
「あっ、宝物」
先頭を歩いていたソルが、洞窟の奥に宝物を見つけた。ソルの後ろから覗くと、本当に木の宝箱が置いてあった。
「罠っぽいけど。ネロの感覚は?」
「あの近くから感じるにゃ」
「だって。ミイラは?」
「宝箱以外ないよ?」
私は嫌な予感がしてくる。変な感覚はあるのに、ミイラはいない。アガルタのあの場には、ミイラ以外にもいた存在がいた。
「来るにゃ」
ネロがそう言った瞬間、宝箱の前に半透明の存在が出て来た。
「いやああああああああああああ!!」
私は、後ろに逃げ出そうとしてメリーにぶつかる。そのメリーは何を思ったのか頭を器用に使って私を羊毛の中に仕舞った。
「ルナが使い物にならないから早く倒そう。ミザリーの出番だよ」
「うん。『万物を貫く清浄なる光』『金色の閃槍』」
白い光線と金色の槍が、幽霊を消し去ったらしい。というのも私はメリーの羊毛に埋まっていたので、状況を把握していないからだ。
「ルナちゃん。倒し終わったよ」
「本当にどこにもいない!?」
「いないいない。ね、ネロちゃん?」
「にゃ。気配はないにゃ」
ネロからもそう言われたので、メリーの羊毛から頭を出す。恐る恐る周囲を見回しても幽霊の姿はない。本当にいなくなったようだ。涙目の私の頭をメレが撫でる。
「もう大丈夫ですよ」
「うぅ……こんなところ早く出たい……」
メリーから降りて、すぐ近くにいるメレの手を掴む。本当に早く出たい。
「それじゃあ、宝獲っちゃうね」
「うん……」
ソルが宝箱を開けて、中身を回収して戻ってきた。
「何か宝石の付いたアクセサリーだった。特に効果はなさそうだし、換金用かな」
「じゃあ、海賊が残した財宝とかだったのかもね……もう何も無い……?」
「うん。なさそう。もう出て良いよ」
「よし! 行こう!」
メレの手を引いて洞窟の外に向かう。メリーは、私達の後ろを付いてきてくれる。さすがに横に並ぶのは遠慮してくれたらしい。
そうして無事に洞窟から出る事が出来た。
「はぁ……」
「怖かったですね。もう大丈夫ですよ」
メレが頭を撫でてくれる。それだけでも少し落ち着くから有り難い。本当に心臓に悪いモンスターだ。
「それにしても、ネロちゃんの変な気配っていうのは幽霊の事なんだね」
「にゃ。スキルレベルが上がったからか、区別が付くようになったみたいにゃ」
「じゃあ、これからは幽霊を避けられるって事か。ネロは本当に良い子だね」
ネロの頭をわしゃわしゃと撫でてあげると、ネロは嬉しそうにする。
「そろそろ幽霊克服に挑戦してみれば?」
「無理一回幽霊系の映画見たけど、基本的にソファに顔を突っ込んでた」
「それは見たとは言わない」
シエルの冷静なツッコみが辛い。
「まぁ、それはおいておこう。取りあえず、丘の上に行って無人島を半周したら船に戻ろう。そこから逆方向を船の上から見て探索するって形で」
「了解。どうせだから、ガーティとプティも呼んで探索範囲を広げよう」
シエルは、ガーディとプティも呼び出す。そうして、大人数の編成で無人島を巡ってみると、ヤシの実を見つけた以外特に何もなかった。そうして船に戻り、逆方向を回る形で無人島を見たが、特に何も無かった。
そうして今日は他の無人島も回っていった。他の無人島は丘などはなく、森に熊のモンスターが増えただけだった。さすがに、どこにでも宝が置いてあるわけではないみたい。
そして、前の諸島にあったような石碑はどこにもなかった。ここら辺には、古代海洋人はいなかったようだ。それが分かっただけでも収穫だったと考える事にした。




