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ユートピア・ワールド~幻想的な世界で、私は、私の理想を貫く!~  作者: 月輪林檎
第7章 アヴァロン

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222/253

220.諸島にあった石碑!!

 そんな眠気に誘われるような事をしていたが、そこから一気に覚めるような事が起きた。


「にゃ! 敵にゃ!」

「!!」


 私は、瞬時にネロを抱えたまま見張り台から飛び降りる。甲板に着地した後、ネロを放す。


「ネロが敵を感知した! ネロ、数と方向は!?」

「進行方向左側から五体にゃ! 海の中だけど、海面に近いと思うにゃ! それと大きさは小さいにゃ!」

「シエルとミザリーは、バリスタに就いて。メレは聖歌の準備。ソルは、進路このまま。ネロは、気配感知に集中して、敵の増援がないかを確認して」


 皆に指示すると、すぐに行動に移った。私は銃があるから、シエルとミザリーにはバリスタを担当して貰う。私達が配置に就くのと同時に、私達の気配感知にも反応があり、敵の位置が分かる。そして、敵が海面まで出て来る。敵の名前は、突撃鰺。


「シエル! ミザリー! 攻撃中止!」


 名前を見た瞬間、二人に攻撃を中止させ、黒闇天からハープーンガンに持ち替えた。そして、突撃鰺に向かってハープーンを撃ち、引き上げる。両方の手で二挺のハープーンガンを使い、五匹の突撃鰺を獲っていった。

 獲った突撃鰺の姿を改めて見て、確信する。


「いける!」

「え、何が?」


 シエルが若干戸惑っていたけど、ここはスルーさせて貰う。アイテム欄から取り出した籠に突撃鰺を入れ、一番下の厨房に駆け込む。そして、備え付けの包丁で手早く捌いていった。


「さてと……問題は、生食がいけるかどうか……取りあえず、私が毒味してから」


 そうして刺身にした突撃鰺を一切れ食べる。


「ふむふむ……ほどよい脂で美味しい。毒らしいものも感じない。これなら大丈夫かな」


 本当は鰺フライとかやりたいけど、揺れている船の中で作るのは怖かったので、刺身だけにした。


「味噌とかネギとかがあればなぁ……まぁ、刺身だけでも良いよね」


 色々と工夫出来なくはないけど、材料がないので、このまま醤油で頂く事にする。正直、醤油が船に載っているのは驚いた。

 お盆に用意をして甲板に持っていく。


「突撃鰺の刺身は如何?」


 私がそう言うと、操舵を握っているソル以外の皆が集まってきた。お盆の一つをシエルに渡して、もう一つのお盆をソルの元に持っていく。


「ほら、あ~ん」

「あ~ん……むぐむぐ……美味しい!」


 突撃鰺の刺身は、皆から好評だった。特にネロは大興奮だった。


「ルナ、凄いにゃ! こんなすぐに美味しいものが出来たにゃ!」

「ただ捌いただけなんだけどね」

「いや、魚を捌けるってだけでも、十分凄いから」


 シエルは、刺身を食べながら、そんな事を言う。確かに、魚を捌くのに慣れるのは、少し時間が掛かった。でも、数を熟せば、割とどうにかなったって感じもする。


「あれだったら、家に来て練習してみる? そろそろ皆でオフ会でしょ?」


 私がそう言うと、皆がハッという表情でこっちを見てきた。すっかり頭から抜けていたみたいだ。


「ちょうどいいから日程を決めちゃおうか。近日中で全員が空いている日を言っていこう」


 そうして、急遽オフ会日程会議が執り行われた。全員が空いている日を並べていき、都合が合うようにしてみる。そして、分かった事と言えば、全員が暇だという事だ。

 全員が全員、空いている日が多かったのだ、ソルだけは、大会とかがあったけど、他の皆にはそんなものはない。常に暇なのだ。

 そのためどうせなら、ソルが大会に出場する前に英気を養おうという事で、七月三十一日に集まる事になった。つまり、今から五日後という事だ。


「でも、こんな急に決めても大丈夫なの?」


 ミザリーが少し心配しながら、私に訊いてきた。会場が私の家だからだろう。


「全然大丈夫。今から一週間、両親は海外にいるから。それに、ちゃんと許可も取ってるしね」


 一応、お母さんもお父さんも快く許可を出してくれた。なので、特に心配は要らない。


「う~ん……まぁ、ご両親から許可を頂いているのなら、大丈夫なのかな」

「そうそう。それに五日あれば、皆の寝床も用意出来るしね」


 客室を整えれば、皆の寝床も完成だ。お母さん達の部屋を使うって手もあるけど、皆は遠慮しそうなので、そこはしっかりと用意する。


「何かあったら言ってね。私も手伝うから!」


 ソルは力強くそう言う。まぁ、近所に住んでいるから頼むならソル一択ではある。


「まぁ、その時は頼むよ」

「うん!」


 そうやって元気よく返事をするソルの口に刺身を放り込んでいく。五匹も捌いたけど、私達は六人なので、すぐに刺身はなくなっていった。お盆を回収して、厨房に戻ろうとすると、ネロが私のパレオを引っ張る。割とすぐ脱げそうになるので、そこは引っ張らないで欲しいが、何か言いたい事があるみたいなので、そっちを優先する。


「どうしたの?」

「また作って欲しいにゃ」


 ネロは上目遣いで、そうお願いしてきた。お刺身が余程気に入ったみたいだ。


「魚が手には入ったらね」


 そう言ってネロの頭を撫でてあげると、ネロは嬉しそうに笑った。ネロのこういうところを見たら、何でも作ってあげたくなってしまう。これが年下の魅力というものだろう。

 お盆を持って厨房に戻り、皿洗いをしてから甲板に戻る。それを見ていたシエルから、


「やってる事が、船長じゃなくて下っ端みたい」


 と言われてしまった。確かに、魚を捌いて皆に振る舞い、皿洗いまでする船長なんて聞いた事がないかもしれない。


「まぁ、庶民派船長って事で」

「何じゃそりゃ。まぁ、ルナらしいけど」


 変な所で納得されてしまった。何となく嬉しいという感じがしなかった。その後、あまり敵に襲われるという事もなく、ネロがふくれっ面になり始めたところで、島が見え始めた。


「諸島なだけあって、島と島の距離が近いね」

「そうですね。一番手前の島が、一番大きな島だったはずです」

「オッケー。ソル! 一番手前に着けて!」

「了解!」


 既に船の操縦にも慣れたらしく、危なげなく船を泊めた。そして、前の無人島と同じように小舟で無人島に向かう。案の定ソルが飛び乗るので、同じように受け止める事になった。


「さてと、ここには何かあると良いなって思いたいけど、また森の無い無人島か……」

「まぁ、さっきの島よりは大きいから、何かしらあるかもよ」


 嫌な予感に襲われている私を、ミザリーが励ましてくれた。まぁ、このくらい楽観的でいた方が探索にも実が入るかもしれない。

 一度気合いを入れ直して、島の外周から調べて行こうと砂浜を進む。皆が水着になっているという事もあり、本当にバカンスに来ているような気分だ。ソルは、海に足を浸けながら歩いて、海水を蹴ったりしている。そこにネロも混ざって水を掛け合っていた。

 ネロは、こういう海水浴的な事もした事がないだろうし、本当に楽しそうにしていた。それを見ていたら、ネロが私にも水を掛けてきたので、当然私も参戦して、どさくさに紛れて、メレ、ミザリー、シエルに向かって水を掛けた。

 その結果、火が点いたシエルがプティを出してきて、強烈な水の一撃を私にぶつけてきた。しばらくの間、水の掛け合いをした私達は、びしょ濡れの状態で探索を再開した。ソルとネロだけは、二人で手を繋いで、海を歩いていた。


「あ、ルナさん。あそこに石の建造物がありますよ」

「ん?」


 メレに言われて、そっちを見ると、少し遠くに石で出来た何かがあった。見ようによっては、ストーンヘンジみたいに見えなくも無い。


「ソル、ネロ、内側に移動するよ。念のため、靴だけは履いておきな」


 尖った石とかあったら、足を怪我するかもしれないので、靴を履くように言う。そう言ってから、私達の防御力なら素の状態でも怪我はしないかと思ったけど、まぁ、用心に越した事はないと思いながら、私も靴を履く。水着に普通の靴というちぐはぐなスタイルで、私達はメレが見つけた石の何かを見に向かう。


「う~ん、小さな遺跡跡って感じかな」

「この島に人がいたって事にゃ?」


 建造物があるのであれば、この島は元々は無人島じゃなかったとも考えられる。でも、他に人の痕跡がないのが引っ掛かる。


「その可能性はあるかもね。でも、それにしては人の痕跡がなさ過ぎるのが気になるかな」

「家の跡とかにゃ?」

「そういう事。どのくらい人がいないのか分からないけど、もう少し角材とかがあってもおかしくはないと思うんだ」

「なるほどにゃ」


 メレが見つけた遺跡跡には、中央に小さな石碑が置かれていた。綺麗に加工されているところから、何かしらの言葉が彫られている可能性が高いと思い、よく観察する。


「文字は書かれている……でも、掠れすぎて読めないな。でも、この感じは……海洋言語かな」

「じゃあ、アトランティス関係?」

「どうかな。これが読めたら良いんだけど、これじゃあ単語も読めないから分からないや。でも、ここからアトランティスまで結構距離があるし、アトランティス関係ではないと思う……いや、この周辺から流されてあそこに着いた? いや、そこまでは考えすぎかな」

「詳しいところは分からないけど、一つだけ確定している事があるでしょ?」


 シエルが、私の考察を中断させる。これだけから答えを導き出すのは無理だからだ。そして、シエルの言う通り一つだけ確定している事はある。


「うん。十中八九古代海洋人が書いたものだ。ここはアトランティス港とは別の古代海洋人が住んでいたのかもしれない。だから、人の痕跡が見当たらないんだ。アトランティスが沈んだ原因が海面上昇なら、ここに住んでいた古代海洋人の街は沈んでいる可能性が高い」

「なるほど……だとすると、ここはどこかの山頂だったのかもしれませんね」

「だね。他の島も調べよう。同じような石碑があるかもしれない」


 私達は小舟に戻って船で近くの無人島を回り続ける。結果、この諸島にある九つの島の内、六つの島に石碑があった。だけど、その全部字が掠れていて、何も読めなかった。

 でも、何かしらの手掛かりにはなるかもしれないので、島の座標はメモしておく事にした。そこまで来ると夕方になっていたので、ここで解散する事になった。これは一種の実験で、船でログアウトした後、再びログインした時全く同じ場所から始まるかどうかを確かめるというものだ。船は錨を降ろして停泊させたままにするけど、誰もいない間にどうなるか分からないので、ちょっとだけ怖かった。

 ログアウトした私の視界に、部屋の天井が映る。


「ふぅ……揺れてない床って、何だか変な感じ」


 船にいた時間が長かったからか、揺れていない事に若干違和感を覚えた。


「あっ、というか、これって船にポータルがあるわけじゃないから、どこかでポータルを見つけないと、シルヴィアさんに会えないんじゃ……」


 完全に失念していた事実に、そのまま膝から崩れた。


「何日くらい航海するんだろう……でも、色々と気になる事が多いしなぁ」


 しばらくシルヴィアさんに会えない事にショックを受けつつも、リビングに降りて夕食を作って食べる。そして、ゆっくりとお風呂に入ってから、ふと思い立って再びユートピア・ワールドにログインした。

 船の上はかなり暗かった。月明かりと暗視のおかげで視界を保てている。そして、明かりがない事で星空が凄く綺麗に見える。


「船の上から見る星空っていうのも乙だね」


 見張り台の上でマストに背を預けながら星空を眺める。


「綺麗だなぁ。今度、シルヴィアさんと星空を見るのも良いかも。今度提案してみよ」


 ログインしても船に出て来る事が分かり、星空も楽しんだところで、ログアウトして就寝した。

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