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ユートピア・ワールド~幻想的な世界で、私は、私の理想を貫く!~  作者: 月輪林檎
第7章 アヴァロン

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219.目的地選び!!

 シルヴィアさんの事を考えていると、ソルが私をジッと見ていた。何かを待っているようだ。


「どうしたの?」

「いや、次の目的地はどこなのかなって」

「あっ、ごめんごめん! すぐ決める。メレ手伝って」

「はい」


 最後にネロの頭を一撫でしてから、メレと一緒に船長室に戻った。二人で海図が映るテーブル型のディスプレイを見る。


「さてと、無人島に必ず何かあるわけじゃないって分かったわけだけど、そうなるとどんな感じがいいかな?」

「そうですね。ここの周辺はぽつんとした島が多いですので、少し離れていますが、こちらの諸島に行ってみるのはどうでしょうか?」

「ここで一気に数を見ていくって事?」

「はい。ここの他にも諸島はあります。もしかしたら、何かしらの法則めいたものがあるかもしれません」

「なるほどね……」


 私は、画面に映されている海図に触れてスワイプする。すると、海図が少し動いた。まさか動くとは思わず、少し驚いた。


「ハイテク……」

「そうですね。何故、他のところでもこういったものを取り入れないのでしょうか?」

「さぁね。下手に機械を取り入れないようにしている感じがする。もしかしたら、古代兵器の事を意識していたのかもね。機械を取り入れすぎれば、危険なものが出来上がるかもしれないって」


 ユートピアの中では、機械を使ったものを全然見ていない。つまり、機械は排除されている可能性も考えられる。その大きな理由が古代兵器だと、納得がいく。ずっと昔に古代兵器を忌避して、機械を遠ざけたのかも。


「この話は、ここまでにしよう」


 ここら辺は、ここで考えても仕方ないので、取りあえずは置いておく事にする。


「そうですね。取りあえずは、こちらの諸島の中でも大きな島を目指すのはどうですか?」

「う~ん……そうだね。そうしよう。相談にのってくれて、ありがとう」

「いえ、いつでもご相談ください」


 目的地を決めた私とメレは、船長室を出て、ソルの元に向かう。


「少し離れた諸島に向かおうと思う。南東に向かってくれる?」

「了解! 取舵いっぱい!」


 ソルが舵を左に向かって思いっきり回す。すると、船の針路が一気に南東へと変わった。結構船が傾いたので、隣にいたメレの腰に手を回して支える。案の定、メレはバランスを崩しかけたので、ちょうど良かった。


「船の上も、良い感じで修行になるかもね」

「最近現実でも練習して、体幹に自信が出て来たところだったんですが」

「まぁ、こっちと現実とじゃ違うしね。メレは、なるべく手すりが近い場所にいた方が良いかも」

「そうですね。なるべく早く自分でも立っていられるようになります。そうすれば、プティさんの上でもバランスを取れるようになるかもしれませんし。ところで、そろそろ放して頂けると有り難いのですが……」

「あ、ごめんごめん」


 これはチャンスだと思って、メレの腰に回した手をそのままにしていたのがバレてしまった。私は、メレの腰から手を放して、手の方を握る。そして、手すりの近くまで連れて行った。


「それにしても、やっぱり見た目通り細いね。どうやったら、そこまで細くなれるの?」

「何でしょう? 定期的な運動とバランスの取れた食事でしょうか?」

「特別な事は?」

「してないと思います。あっ、一応ヨガをやっていた事もありますけど、そこまで関係あるかは分かりません」


 メレは特別な事は何もしていないと言う。ヨガもやっていた事があるという事は、継続して続けている事では無いという事だ。


「つまり……メレの細さは天然物……」

「あっ、いえ、ちゃんと健康的な生活はしないと駄目だと思いますよ?」

「くっ……私が不健康すぎるという事か……」

「まぁ、ルナちゃんは、寝るのが遅いのと運動をあまりしないしね。不健康と言えば不健康だよ」


 話を聞いていたソルが追い打ちを掛けてきた。


「で、でも、食事は健康的なのを意識してるし」

「まぁ、インスタント系じゃなくて、自炊で野菜は多く摂っていたりするもんね。食事だけは健康を意識しているって言って良いかも」

「では、少し早寝と運動をすると良いかもしれませんね」

「…………」


 メレの言葉に、私は視線を逸らした。寝る時間を早くしたら、シルヴィアさんとの時間が減るし、運動は面倒くさいから。


「いや、この考えがくびれの出来ない理由か……」

「ルナさんは言う程太っている訳では無いと思いますが、そこまで気になりますか?」

「シルヴィアさんに見合う女性になりたいとは思うから」


 私がそう言うと、メレは小さく笑った。


「何で笑うのさ」

「すみません。恋する乙女だなと思いまして」

「うぐっ……」


 メレの大人の余裕めいたものを見せつけられ、完全に負けた気がしてくる。


「ん? ルナさん、首に赤い……」


 そこまで言ったところで、メレの顔が一気に赤くなった。同時に、私も赤面する。昨日の夜にシルヴィアさんが付けたキスマークが見付かったからだ。いつもは黒羽織で隠れるから、すっかり忘れていた。


「そ、その……ルナさんには、まだ早いかと……」


 メレは、視線を左右に揺らしながらそう言った。そこで、メレが何を考えているのかを察した。


「ち、違う! 違う! まだしてないから!」

「あ、そ、そうなんですか? びっびっくりしちゃいました」

「全く、メレって少しえっちだよね」

「そ、そんな事ないですよ!」


 そういう事は私が成長してからという約束になっている。だから、メレが心配したような事は、まだしていない。


「何の話にゃ?」


 私とメレの話についていけなかったネロは、首を傾げていた。そんなネロの肩にミザリーが手を置く。


「ネロさんには、まだ早いかな」

「またにゃ」

「学ぶのに適した年齢があるの。だから、もう少し我慢だよ」

「にゃ~……じゃあ、その時が来たら教えてにゃ」

「うん。その時が来たらね」

「にゃ」


 ミザリーとネロはそんな約束をしていた。あの教育をミザリーが担当する事になりそうだ。そんな軽はずみな約束をして、後々後悔しないのかだけ心配だ。


「さてと、私はマストに上ってくる。転ばないように気を付けてね」

「はい」


 私はメレと別れて、メインマストの上にある見張り台に向かって梯子を上がっていく。結構高いところだから、甲板にいるよりも、広い範囲を見渡せる。それに、日差しと風が少し心地よく感じる。水着でしばらくいたから、この暑さにも慣れたみたいだ。

 私は星見の筒を取り出して、周囲を見ていく。海図によれば、しばらくの間は何もないはずだけど、あの海図が必ずしも正しいとは限らない。


「う~ん……特に何もなさそう。島影でも見えたら気分も上がるのになぁ」

「にゃ。ものの見事に何もないにゃ」


 星見の筒で遠くを見ていたから、いつの間にかネロが隣に来ていた事に気付かなかった。見張り台は、そこまで大きいわけではないので、二人だと少し狭い。


「落ちないように、もう少し近づいておきな」

「にゃ」


 ネロはその返事と共に、私に抱きついた。そこまで近づけとは言っていないのだけど、まぁ、これが一番落ちる心配がないから良しとしよう。


「ネロは、何か気配を感じる?」

「にゃ。感じるけど、こっちには来ていないにゃ」

「じゃあ、回遊でもしているのかもね」

「かいゆう?」


 言葉を意味が分からなかったのか、ネロが聞き返してきた。


「回遊。くるくる回るに遊ぶって書いて、回遊。色々なところを見て回る事や魚が季節の移り変わりで移動するって事。今回は、後者の意味ね」

「にゃ。確かに、敵の塊が、一直線にどこかに行っているのは感じるにゃ」

「じゃあ、本当に回遊なのかも。取りあえず、まっすぐこっちに来ている気配があったら、教えて」

「にゃ」


 それからしばらく星見の筒で見ていたけど、何かが見える事はなかった。本当にここら辺に島はないみたいだ。なので、見張り台の床に座って、ネロを膝に載せ、お話と勉強をする事にした。これは、ネロからの要望だ。

 まぁ、教えられる事は私の知っている事限定になるけど、少しでもネロの知識欲を埋められればと思い、快諾した。

 この勉強もそうだが、他にもいつもと違うところがあった。それは、私達の服装だ。水着を着ているので、いつもよりも軽装だ。だから、互いの体温が直に感じられる。そして、ネロの体温が心地よい体温で、思わずうつらうつらと船を漕いでしまう事があった。

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