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213.唐突な襲撃と心強い味方!!

 そして、翌日。私は、ネロよりも先に、アトランティス港の噴水広場にログインした。その直後、私に向かって矢が飛んできた。


「うわっ!? 危なっ!」


 矢の飛んできた方を見ると、沢山のプレイヤーがこっちを見ていた。そして、その中の何人かが弓を構えて、こっちを狙っている。それどころか、また放ってきた。私は、硬化させた黒羽織で防ぐ。


(こんな街中でPK!?)


 私はすぐに吉祥天を引き抜いて、真上に向かって引き金を引いた。撃ち出した弾は、閃光弾。空で瞬いた強烈な光は、プレイヤー達の目を眩ませるのに十分だった。私は、すぐに街の外へと駆け出す。

 本当なら、ハープーンガンを使って街の屋根に登りたいところだけど、こんな街中でドンパチする事に抵抗のない人達だと、平気で魔法とかを撃ってきそうなので、なるべく街への損害が出ないように逃げる。大分離れたと思ったけど、すぐに奴等は追ってきた。


「何で私を……心当たりがないと言えば嘘になるけど……」


 この前、ピラミッドでプレイヤーキラーを倒したし、結構悪目立ちしているような自覚はもう芽生えている。黒衣の暗殺者なんて悪名以外の何物でもないだろうし。


「そういえば、プレイヤーキラーが沢山いるって言っていたっけ。私が狙いになっているって事か。お金なんて、全然持ってないけどなぁ」


 そんな風にぼやいていると、後ろから矢やら魔法やらが飛んできた。本当に何考えているのやら。

 私は、街に着弾する前に魔法を抗魔弾で撃ち抜いていく。ミリアの街を壊させる訳にはいかないからね。そっちに気を配っている間に、街の外へと出る事が出来た。ここまで来れば、もう後ろを気にしなくても大丈夫だ。

 問題は、ここからどうするかだ。迎え撃っても良いけど、正直なところ面倒くさい。


「月読で走って……って、ネロと待ち合わせしてるんだった……街の近くで悪いけど、迎え撃つか」


 私は黒闇天ではなく、韋駄天を取り出す。後ろを見ると、街から続々と敵が出て来ていた。そして、最初に出て来た敵は、もうすぐそこまで来ている。


「向こうだって殺そうしてきているんだし、殺されても文句はないよね」


 身体を反転させて、敵に向ける。


「銃技『複数射撃』」


 韋駄天のマガジンは三十発。複数射撃は、一発ごとに別の相手に撃つ事が出来る技。つまり、計三十人に向かって撃つ事が出来る。さらに、この弾を爆破弾にすれば、爆破の余波でもっと多くの敵にダメージを与えられる。

 私の目論見通り、最初に突っ込んできた敵は、一気に吹っ飛んでいった。まだ原形があるだけマシだと思う。そうして二の足を踏んだ後続に対して、私は威力、規模、爆風を最大にした爆弾を投げつけた。敵は、何故かそれを受け取った。弾き返せば、まだ助かる人数が増えたのに。

 受け取った直後に爆発し、周囲の敵も吹き飛んでいった。その余波は、私の元にも来るので、背を向けてしゃがみ、爆発をやり過ごす。衝撃が抜けて行った後、後ろを振り向くと、まだ敵がこっちに来ていた。


「しつこいな。大規模爆破は、そこまで気軽に使えるものじゃない。天照もあの人数相手じゃ、こっちの方が保たない。韋駄天の爆破弾も心許ないし……仕方ない。いつも通り普通に倒すか」


 韋駄天のマガジンをフルメタルジャケット弾に入れ替える。これなら貫通力もあるし、上手くいけば二枚抜きとかも出来るかもしれない。こっちに向かってくる敵に対して、どんどんと撃っていく。基本的に頭を狙っているので、よっぽど分厚い兜でもなければ、一発で倒れていく。何人かは生き残っているのを見ると、耐久力が高い敵もいるみたいだ。かなり面倒くさい。

 敵の人数が多いので、韋駄天の連射力でも、対応しきれない。そのためかなり接近を許してしまった。


「『クイックチェンジ』」


 韋駄天から須佐之男に入れ替える。もう片方の手で黒闇天を引き抜き、爆破弾を適当に撃ち込む。さっきの攻防で学んだのか、盾を持った敵が前に出て、爆破弾を受ける。一部の盾を除き、相手の盾は吹き飛ぶ。

 それを見つつ、私は少しずつ後退する。それを見た敵はニヤリと笑った。私の方が劣勢だと思ったようだ。まぁ、一対多だから実際劣勢なんだけど。でも、その油断が隙となる。

 敵の足元が次々に爆発していく。それは、小規模な爆発だけど、相手の足を止めるには十分だ。


「地雷だ!!」


 敵の一人が叫んだ。その通り、私は後退していくと同時に、地雷を地中に精製していったのだ。慌てふためいている敵の頭を爆破弾で吹き飛ばしていく。それで我に返った敵は、臆せず突っ込んできた。


「敵の数が減らないところを見ると、ゾンビアタックでもしているの? ステータスが低下しているのによくやるなぁ……」


 ここで呆れていても、この場は良くならない。相手がそこまでして来るのであれば、私も覚悟しないといけない。


「このままだと、負けるのは目に見えてる。だから、相手の戦意を完全に削ぐしかない……ここまで悲惨な目に遭っていて、それでも向かってくるって事は、この戦い方じゃ無理そう……ソル達に援軍を頼むか……」


 そんなところまで考えを巡らせていると、敵集団の中央に大きな光の柱が建った。


「あぁ……あんな事出来るのは、一人しかいないか」


 それと同時に敵の一部が凍結していった。これで、確定だ。


「でも、何で二人が……」


 それを呟いた直後、敵集団を迂回して、ジークとエラがこっちに駆け寄ってきた。


「大丈夫? 手助けに来たよ」


 エラが手を振りながらそう言った。


「何で、二人がこんな所にいるの? てか、よく私が襲われているって分かったね」

「掲示板を見てなかったのか。今、プレイヤーキラーの標的はルナになっているんだ。そして、昨日、掲示板でアトランティス港に来るルナを襲うという計画が共有されていた。だから、俺達も来られたという事だ」

「掲示板で計画を話すって……」


 誰でも見られる掲示板で人を襲う計画を話し合うって、かなり杜撰な気がする。


「お粗末な計画だが、物量で攻めるから問題ないと判断したんだろう。こいつらが話していた掲示板自体かなり奥にあったからな」

「ジークが偶々見つけたの。さすがに放っておけないでしょ? ルナが知っていれば、別だけど、知らなかったら襲われるわけだし」

「そして、実際に襲われていたと。まぁ、助けに来てくれてありがとう。正直、ゾンビアタックになっていて、かなり困ってたから」

「ルナは、エラに付いて戦ってくれ。俺は正面に立って戦う。援護は頼んだ」

「オッケー」


 前がいるってだけで、結構安心出来る。私とエラは、その場でパーティー設定をしておく。


「もしかしたら、後ろから来るかもしれないから、そっちの警戒もしておいて」

「なるほどね。ユートピアから来れば挟み撃ちに出来るか。めんど」

「そう言わない。今は正面を倒せばいいんだから」

「は~い」


 前にジークがいるし、防御はエラもやってくれるはず。だから、私は天照を取り出した。


「敵の指揮官は分かる?」

「さすがに、そこまでは分からない。でも、多分奥の方で動かない敵だと思う」

「了解」


 その会話をした直後、私の足元が氷で少し上がる。そのおかげで、奥の方まで見えるようになる。エラは、こっちの考えをしっかりと理解してサポートしてくれている。

 私は、天照のスコープで、敵の指揮官を探した。その場から動かず、ただ指示を飛ばしているような人。もしかしたら、動き回りながら指示しているかもとも思ったけど、しっかりとその人を見つけた。


「いた」

「敵の反撃は任せて」

「了解」


 私は、深呼吸で呼吸を安定させる。


「銃技『精密射撃』」


 撃ち出された銃弾は、正確に指揮官らしき敵の頭を撃ち抜いた。


「倒した」

「敵は……すぐに反撃を撃ってこない」

「見た感じ混乱してるみたい。副指揮官が現れ……た」

「了解。ジークが前の方を荒らしてくれるから、そっちの対応にも追われてる。そのまま撃ち抜いて良いよ」

「了解。銃技『精密射撃』」


 もう一人の指揮官の頭も撃ち抜く。その間に、エラが私達とジークの間に乱立する氷壁を張る。これで敵が近づいても、こっちに来るまで時間が掛かる。それに、エラは私の知らない魔法を常時展開しているみたいだ。そっちの方は、私の感覚で分かるだけだ。何で分かるのか分からないけど。


「次の指揮官発見」

「了解。敵も魔法で応戦してるけど、私で対応出来るから、そのまま撃って」

「了解。今度は、他の敵も巻き込んでみる。銃技『精密射撃』」


 銃弾を爆破弾に変えて撃ち抜くと、指揮官とその周囲の敵が派手に舞い上がった。

 こうして冷静に見てみると、敵の数は、百人以上いるみたい。どんだけ私に恨みがあるんだか。


「街から指揮官が走ってくる」

「合流させる前に撃っちゃって」

「了解」


 合流しようとする指揮官を次々に撃ち抜いていく。


「ねぇ、ジークの方は大丈夫?」

「えっ? まぁ、大丈夫じゃない? 笑ってるし」

「ああ、戦闘狂だったね。まぁ、それなら良いか」


 敵の指揮官が合流出来ない状況が続くので、敵の指揮系統が崩れて、迷走している感じがする。そんな中、私達の背後から気配を感じた。でも、それは私がよく知っている気配だった。


「大丈夫。味方だよ」


 エラが警戒していたので、そう言って安心させる。


「そう? なら、大丈夫か。それと、そろそろ敵に包囲されそうだから、準備して」


 エラの言う通り、敵が結構近づいていた。


「本当にしつこい」


 私は、天照を仕舞って、須佐之男を取り出す。さっきから撃ち続けていたので、肩がかなり痛い。ミザリーがいれば回復出来るんだけどね。


「攻撃に反動があるの?」

「あ、うん」

「じゃあ、ほら回復薬」


 エラから存在そのものを忘れていた回復薬を受け取って飲む。


「……苦い」

「我が儘言わない」


 その間にも、エラが氷壁を出して、場を乱していく。その間に、後ろから援軍がやってきた。

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