表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユートピア・ワールド~幻想的な世界で、私は、私の理想を貫く!~  作者: 月輪林檎
第6章第2部 アガルタ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

212/253

210.アガルタの先!!

 翌日の朝。手早く家事を終わらせた私は、いつもよりも早くログインする。皆と集まる前にメアリーさんに報告するためだ。王城に来た私は、まっすぐにメアリーさんの執務室に向かい、いつも通り対面に座って話す。


「実は、メアリーさんに頼まれていた天秤を発見しました」

「このタイミングの報告って事は、アガルタにあったという事ね?」

「はい。罪の程度によらず、相手を罰するという古代兵器でした。暴発でもしてしまったら、危ないので、私の判断で破壊しました」


 私はそう言って、メアリーさんに審判の天秤の破片を見せる。


「なるほどね。私もルナちゃんの判断を支持するわ。確かに、その力が暴発した時の被害を考えれば、ルナちゃんの判断は的確だもの」

「ありがとうございます。この破片も完全に消し去ろうと思うんですが、大丈夫ですか?」

「ええ。下手に残して、再生産が可能になる方が怖いから。ルナちゃんにお願いするわ」

「わかりました」


 審判の天秤を完全に破壊する許可を得たので、後で爆破して処分する。


「他の古代兵器に関しては、まだ情報はないの。ごめんね」

「そうですか。私達は、このままアガルタの南を目指そうと思います。そろそろ海に出ると思うので」

「そうね。色々と見てくると良いかも」

「はい。それじゃあ、そろそろ集合時間なので」

「報告してくれてありがとう。気を付けてね」

「はい」


 メアリーさんと別れた私は、王都の外で天秤を跡形もなく破壊してから、アガルタへと転移した。アガルタには、既に皆の姿があり、私が最後だった。


「ごめん、お待たせ」

「ううん。皆、今来たところだよ。それで、メアリーさんは何だって?」

「まだ情報はないってさ。取りあえず、このまま砂漠を南に抜けようと思うんだけど、他に意見がある人はいる?」


 私がそう訊くと、メレが手を上げた。


「実は、アガルタの南の方に通路がありましたので、そこから行くのも良いと思うんですが」

「なるほどね。確かに、そんな通路があるなら気になるかも。それに、上だとまた流砂に飲まれる可能性もあるし、そっちにしよう」


 というわけで、私達はアガルタの南にある通路へと向かう。


「そういえば、昨日落ちた後はどうだったの?」


 シエルから昨日の事を訊かれた。私は、昨日起こった事を全部伝える。


「エグい機能だね。もしかして、裁判とかで使ってたのかな?」


 ミザリーは、私から審判の天秤の機能を聞いて、そんな考察をした。


「そうかもね。というか、それくらいしか使い道ないんじゃないかな?」

「抑止力的なものだったかもしれないけどね。これを持つ事で、独裁だったみたいな」

「あぁ……確かに、その線もあるのか」


 シエルの考えは、私の頭にはなかった。確かに、凶悪な古代兵器は、独裁を許してしまうような機能を持ち合わせている。そういう点でも審判の天秤を壊しておいて良かったと思う。

 そんな話をしている内に、通路の入口に着いた。


「ここは明かりがないみたい。ミザリー、お願い」

「うん。『照らせ』」


 ミザリーに光球を出して貰い、視界を確保する。通路の奥は見えないので、かなり続いている事が分かる。


「敵がいないと良いけど」

「結構狭いもんね。白蓮もギリギリ振れるくらいかな」

「じゃあ、ソルはメレの傍にいて。シエルとネロで正面を固めよう」


 通路が狭いという事もあって、シエルとネロを先頭に歩く事にした。いつもの月読とプティでの移動よりも格段に速度は落ちるけど、皆で和気藹々と話ながら歩くのもたまにはいい。そんなこんなで三十分程歩いていると、奥の方に光が見えた。


「出口にゃ」


 ずっと狭い通路にいたからか、ネロは少し嬉しそうにしていた。その気持ちは分からなくもない。そのまま二十分近く歩いていくと、通路の出口に着いた。そこは、崖の途中で、正面は大きな海が広がっていた。


「崖の真ん中みたいですね。向こうに砂浜が見えますよ」


 メレは左側を指さしてそう言う。そっちには、本当に砂浜があった。ただ、そこまでの道はここからは伸びていない。それどころか、ここからはどこにも道は伸びていない。


「取りあえず、上に行こうか」


 私はハープーンガンを取り出して、崖の上部に撃ち込む。


「シエル。他の人達は頼んでも良い?」

「オッケー。ムート『起きて』」


 この中で、自力で上に行けないのは、メレとミザリーだけだ。ソルとネロは、やろうと思えば崖くらい登れると思う。最近の二人の戦いを見ていると、そう思えた。


「それじゃあ、メレ」

「はい」


 メレの腰に手を回して、しっかりと抱きしめる。ミザリーは、シエルと一緒にムートに乗り、ソルとネロは本当に自力で駆け上がった。斜面になっていないのに、駆け上がっているので、本当に凄い。私とメレも無事に上の砂漠に上がる事が出来た。


「……」

「あ、あの……」


 上に上がってもメレの腰から手を放してなかったので、メレが少し戸惑っていた。


「メレのウェストが細すぎる気がする……」


 自分のウェストを確認してみたけど、どう考えても細い気がする。


「メレ、現実でプールに行こ。メレの裸が見たい」

「ルナちゃん、ただの変態にしか聞こえないよ?」

「だって、現実でも、こんな細い腰だとしたら、見てみたいじゃん! この前のお風呂の時に見ておかなかったのが悔やまれる……」

「てか、プールだったら水着姿になるんじゃないの?」


 シエルからの指摘に、虚を突かれた。


「そういえばそうだ……じゃあ、家に泊まりにくればいいのか」

「家風呂で、一緒には入らないでしょ……」


 シエルがまた指摘する。だが、この部分では私も反論が出来る。


「ソルと入っても大丈夫だから、メレと入っても大丈夫でしょ」

「風呂の大きさの話じゃないわ」


 またまたシエルから素早くツッコまれた。シエルが指摘したのは、お風呂の大きさじゃなくて、一緒に入るかどうかの気持ちの問題だった。


「メレなら一緒に入ってくれるよね?」

「あ、は、はい」


 メレは顔を真っ赤にしながら頷いた。嫌そうではないけど、恥ずかしそうだ。ゲーム内では、一緒に入っているけど、屋敷のお風呂は温泉チックだから入れたみたいな感じなのかもしれない。家風呂は狭いから二人きりになるだろし、恥ずかしいという気持ちは理解出来る。でも、諦めきれない気持ちが、私にはあった。


「アイドルの裸って、背徳感があるね」

「背徳感にゃ?」

「うん。後ろめたいとか罪悪感があるとかそんな感じだよ」


 ソルが背徳感の意味を教えると、ミザリーがネロの耳を手で塞ぐ。


「はいはい。皆、ネロさんの教育にも悪いから、そこまで。取りあえず、目的の砂浜に行こう」

「は~い」


 ミザリーに叱られてしまったので、メレから手を放し、砂浜へと歩いていく。ネロが何も言わない事から、砂漠から私達を襲ってくるようなモンスターはいないみたいだ。

 だけど、砂浜の近くに来たら、ネロが耳を動かして反応した。


「にゃ……海から何か来るにゃ」

「皆、いつも通りに。シエルは、場合によって着替えて」

「了解」


 全員が戦闘態勢に移行したタイミングで、メレが聖歌を歌う。そして、海からモンスターが現れた。モンスターは、大きな亀で、尻尾が蛇のように伸びている。四神の玄武のような感じだ。でも、名前は違う。このモンスターは、サーペント・タートルと言うらしい。大きさは、私達の二倍くらいの大きさだ。

 まずは、ソルが攻める。鳴神を使い、一瞬でサーペント・タートルの上に移動したソルは、落下する勢いのまま鳴神を振う。


「『鳴神・一閃』!」


 ソルの攻撃を先読みしたかのように、サーペント・タートルは殻に籠もった。でも、鳴神の一撃を完全に無効化する事は出来ないみたいで、殻に大きな罅が入っただけでなく、雷の追加攻撃で内部にもダメージを与えたみたいだ。


「ネロ! シエル! 準備して!」


 私は天照を取り出して、殻に引っ込んだサーペント・タートルの身体を狙い撃った。使った弾は、新しく作る事が出来た衝撃弾というものだ。これは、命中した箇所から命中したもの全体に衝撃を与えるというもの。天照で撃ち出す衝撃弾の威力は、他の銃と比較にならない程強い。

 衝撃弾を受けたサーペント・タートルの身体は、中で激しく打ち震え、同時に罅の入った殻が完全に割れた。そこに、ムートを着て飛び上がったシエルと地上から駆けてきたネロが襲い掛かる。


「『ボルケーノ・スピア』!」

「『白虎十字爪』!」


 燃えたゆる槍が投げ込まれたサーペント・タートルは、背中の一部が吹き飛び、その周辺が炭化していた。その痛みで、飛び出した顔に、ネロの合計八撃の攻撃が襲い掛かり、ズタズタに引き裂いた。

 ここまでの攻撃を受けたサーペント・タートルは、さすがに限界らしく、地面に倒れ伏した。相変わらず、攻撃力全振りなパーティーだ。


「ネロ、他に敵は?」

「こっちを襲ってきそうな気配はないにゃ」

「了解。メレ、もう良いよ」


 すぐにこっちを襲ってくるモンスターがいないのであれば、メレに聖歌を歌い続けてもらう必要もない。


「このモンスターは、海に出る前のボスって感じなのかな?」


 鳴神を解いて、こっちに来たソルがそう言った。


「まぁ、そんな感じだろうね。個人で船を所有している人なんて、そうそういないだろうから、どのみちこのルートはここまでって事になりそう」

「私達は、潜水艦を持ってるけどね」


 シエルに言われて、アトランティス港に置いている自分達の潜水艦を思い出した。アトランティスに行くのに使ったっきり、そのままだ。


「その潜水艦で海に行くにゃ?」

「う~ん……そうしようか。次の冒険は、海に行こう」

「本当に未知の冒険になりそうだね。そうと決まれば、アトランティス港に行って、マイルズさんに相談してみよう。もしかしたら、潜水艦で進んで行くのは無理って言われるかもしれないし」

「ああ、それもそうか。それじゃあ、アガルタに戻って、アトランティス港に行こう」


 私達は、さっき使った通路でアガルタに戻る。通路に戻る時もメレを抱えていったけど、やっぱり現実でのメレのウェストが気になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ