208.見つけた手掛かり!!
四時間後に合流した私達は、情報の報告会をし始めた。
「手掛かりはあった?」
私がそう訊くと、メレとミザリーは首を横に振った。二人の調べた場所に手掛かりはなかったみたいだ。次にソル達を見ると、硬貨と白紙を渡してきた。
「何これ?」
「硬貨と紙」
「見たままだよ」
硬貨は前に見たけど、紙の方は初めて見る。ただ、あまり劣化はしていない。ここにある本と全く同じ状態だ。
「これなら、私達が一番の手掛かりを見つけたね」
「にゃ」
私達がそう言うと、皆がこっちに注目した。そんな中で、私は見つけた本を取り出す。
「これによると、街にある空き地に地下通路があるみたいなの。で、その先に自分の財を隠したって。まぁ、その空き地がどこにあるかは、まだ分かってないんだけど」
「あっ、それなら私達が見つけたよ」
「でも、ガーディは何も感じなかった」
「なるほど。つまり、ガーディの探知から逃れられるような場所なのかもね。案内してくれる?」
「了解」
ソルとシエルの案内で、手掛かりにあった空き地へと向かう。その空き地は、本当に何の変哲もない空き地だった。
「ここに地下通路へと繋がる場所があるの?」
「そのはず。でも、どこにあるかは分からないんだよね。何か怪しい場所はない?」
「あそこはどうにゃ?」
ネロは空き地の中にある少し大きめの岩を指さした。
「あの下って事? でも、それなら、ガーディでも分かるんじゃない?」
「にゃ。私もあそこからは何も感じないにゃ。でも、この中で一番怪しいのは、あそこにゃ」
「まぁ、そうだね。シエル、プティで退かせる事は出来る?」
「やってみる」
プティが岩を押していく。そこそこ重そうだとは思っていたけど、プティでもほんの少しずつしか動かせなかった。私とソルとネロも一緒に手伝って押すと、岩の下からマンホールのようなものが出て来た。
「おお、本当にあった。」
「にゃ。私の言う通りにゃ」
ネロが自慢げにそう言うので、取りあえず撫でてあげる。その間に、ソルがマンホールを持ち上げて、どかしてくれた。そこには、下へと続くはしごがある。
「結構深そうだね。ミザリー、灯りよろしく」
「はい。『照らせ』」
ミザリーが光の球で、視界を確保出来るので、私、メレ、ネロ、シエル、ミザリー、ソルの順番で降りていく。
出来心で視線を上に向けてみると、メレの下着が見えた。まさかのピンク色の下着で、声には出さなかったけど、滅茶苦茶びっくりした。
「ルナさん。もしかしてですけど、今、上を見ました?」
「え!? 見てないよ!」
まだ動揺している時に訊かれたので、声が上擦ってしまった。
「…………」
「…………」
私とメレの間で沈黙が生まれる。下手すると、ここで蹴りが降ってくるかと思っていたから、何も起こらなかったのは良かった。
「ルナちゃんって、根が変態だよね」
「聞こえてるよ、ソル」
「聞こえるように言ったもん」
「ショーパンじゃなきゃ、スカート捲りしてやれるのに……」
「やっぱり変態じゃん」
そんな馬鹿みたいな事をしている間に、地下通路に着いた。足を床に着けて、すぐにはしごから離れる。そして、順番に皆が到着していった。
「上るときは、ルナさんからにしましょう」
「全く、人のパンツがみたいなんて、メレも変態だなぁ」
「ル・ナ・さ・ん・か・ら、見たんですよ!?」
若干怒っているメレが頬を引っ張ってくる。どう考えても私の方が悪いので、大人しく引っ張られる事にした。
そんなやり取りをした後、私達は地下通路を進み始めた。地下通路は一本道だったので、特に迷う事もなく進んでいける。
「何だか、屋敷のところと同じ感じがするにゃ」
進み始めたところで、ネロがそう言った。
「って事は、この先は、屋敷の墓場の下に続いているって事になるね。皆、戦闘になるかもだから、用心はしておいて」
私がそう言うと、皆が頷いた。警戒しながら進んで行くと、少し大きめの部屋に出た。そして、その中央には一つの天秤が置かれている。多分、私達の目的である古代兵器だ。
「ネロの変な感じって、あの天秤?」
「違うにゃ。ここよりも少し先にゃ」
もしかして、古代兵器の気配を感じるようになったのかと思ったけど、そうではないみたい。でも、一体、何を感じ取っているのだろう。ちょっと気になるけど、確かめようがないので、そこはひとまず置いておいて、天秤に近づいていく。
「これが審判を下す天秤……」
砂漠を探索し続けた目的の天秤を手に取る。名前は『審判の天秤』。どう考えても、私達の目的で間違いない。ようやく見つけたので、喜ぼうとした瞬間、私の足元がパカッと開いて、穴が現れた。
「!?」
さすがに、空中を駆けるスキルなどなく、穴に落ちていく。若干焦ったけど、身についた反射でハープーンガンを上に向かって撃つ。これで上る事が出来るはずだ。
そう思っていたけど、天井にハープーンが弾かれた。
「はぁ!?」
まさか、ハープーンが弾かれると思わず、かなり驚いた。ハープーンが巻き戻ってくるのと同時に、開いた穴が閉じようとしていた。
「ルナ!」
シエルの声が聞こえるのと同時に、何故かソルが飛び込んできた。そのすぐ後に、完全に穴が塞がる。
「ルナちゃん!」
ソルは、壁を蹴って加速し、私を抱き抱えると、勢いを殺すために足の裏を壁に押しつけた。ちょっとずつ減速しているけど、それでも完全に勢いを殺す事は出来ない。私は、威力をなくして、爆風を最大まで上げた爆弾を精製して、下に投げる。そして、自分はフードを被って、両手でソルの耳を塞ぐ。
その二秒後、私達の下から吹き荒れる爆風で私達の落下速度が、緩やかになって安全に着地する事が出来た。
「ふぅ……ありがとう、ルナちゃん」
「こっちこそ、ありがとう。ハープーンガンを弾かれたし、態勢も崩してたから助かった」
互いにお礼を言った後、上を見上げる。そこにあるのは、漆黒。小さな光も見えない。暗視のスキルのおかげで、多少の視界は確保出来ているので、ここが行き止まりではなく、先がある事は分かっていた。
「取りあえず、上に戻るのは難しそうかな。シエルに連絡して、今日はここで解散って事にするけど、大丈夫?」
「うん。ここがどのくらい続いているのか分からないし、そうした方が良いと思う」
ソルも同意見である事を確認した後、シエルに連絡する。
「あ、シエル?」
『連絡が来るって事は、二人とも無事って事で良いんだよね?』
「うん。二人とも無事。そっちに変化は?」
『二人程取り乱してた事を除けば、何もなし。ネロが、穴の上に立ってジャンプとかしてるけど、特に開く気配はないから、条件は天秤だったんだと思う』
「やっぱりそうなんだ。こっちは、すぐに上に戻れないと思うから、今日はここで解散しよう。ソルに時間があれば……」
そう言いながらソルの方を見ると、人差し指と親指でオッケーサインを出していたので、時間はあるという事だろう。
「あるみたいだから、こっちは今日の内に脱出しておく。明日は、広場で集まろう」
『了解』
そこで通話を切る。
「さてと、一旦ログアウトして、ご飯食べてから集合で良い?」
「うん」
私達は一旦ログアウトして、それぞれで食事とお風呂を済ませた後に、再びログインした。




