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ユートピア・ワールド~幻想的な世界で、私は、私の理想を貫く!~  作者: 月輪林檎
第6章第2部 アガルタ

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207.南西部探索!!

 翌週の土曜日。私達は最後のエリアである南西部の探索を始める。


「さてと、じゃあ、今日も分かれて探そうか。まだやっていない組み合わせを優先しようか。私とネロ、メレとミザリー、ソルとシエルでいこうか。それで、私達が北、メレ達が真ん中、ソル達が南という形で」

「分かりました」

「うん」


 私達は決めた二人組に分かれて探索を始めた。

 私とネロが向かった一番北にある大きな建物は、なんと図書館だった。そして、その図書館内には、大量の本が残っていた。施設としての大きさは、屋敷の倍ほどなので、当然貯蔵されている本も多い。


「うわぁ……人手が欲しいところを選んじゃったなぁ……」

「この感じだと、一々ルナに渡しに行くよりも、それぞれで回収した方が早いにゃ」

「だね。持ち前の素早さを活かした回収を期待しているよ」

「任せるにゃ!」


 私達は中身を見る事なく、どんどんと本を回収していく。一時間程回収をしていると、他の本に比べて、遙かに薄い本がある事に気が付いた。


「ん? 何だろう?」


 周囲を見回しても、同じような薄い本がない事から、さらに異質さを感じた。そんな自分の感覚を信じて、本の中身を見てみる。中身は、地底言語で書かれていた。これで天界言語で書かれていたら、いつも通りお手上げだった。


「えっと……これは……」

「どうしたにゃ?」


 何故か上から降ってきて、私の目の前に着地したネロがそう訊いてきた。私が立ち止まっていたから、心配してきてくれたんだと思う。


「ちょっと手掛かりを見つけてね」

「にゃ? ……よく分からないにゃ」

「まぁ、地底言語だからね。これによると、街にある空き地に地下通路があって、どこかに繋がっているみたい。その先に、自分の財を隠したって書いてある。それと……正しき者のためにって書かれてる」

「じゃあ、危険なものがあるという事にゃ?」

「書いてある事から判断したら、そうなるね」

「他には、何が書いてあるにゃ?」


 今教えた他に情報はないのかとネロが訊いてきたので、もう一度本の中を見てみる。


「ないね。この本、実質一枚しか書いてないから」


 ものすごく薄い本だなとは思ったけど、開いてみて一枚にしか文字が書かれていないのは、びっくりした。その他は白紙が二枚と少し厚い装丁がされているだけなのだ。


「ここに来る人が善人だと信じて、何かを託したのかもしれないね」

「にゃ。早速行くにゃ?」


 手掛かりを見つけたのだから、すぐにそこを調べるかと訊いてくる。私は、それに対して首を横に振った。


「これに食いついて、他の手掛かりを見落としたくないから、一応私達の担当部分は調べるよ」

「分かったにゃ」


 ネロはすんなりと頷いた。こういうとき、こっちの指示にちゃんと従ってくれるのは有り難い。ネロは基本的に良い子だから、こういう所で揉める事はほとんどない。それは嬉しい事だけど、自分を抑圧していないか心配にもなる。


「ネロ的には、すぐに調べたかった?」


 念のため確認してみる。


「最初から、ルナの指示に従うつもりだったから、特に考えてないにゃ。こういうのは、私があれこれ考えるよりも、ルナの指示に従う方が良いに決まってるにゃ」


 それだけ頼りにされているという事だろう。ちょっと嬉しいので、ネロの頭を撫でてあげる。


「それで、ネロはどのくらい回収した?」

「私が担当する部分は全部回収したにゃ。それを言いに来たら、ルナが立ち止まっていたにゃ」


 ネロがそう言ったので、ネロに頼んでいた箇所をちらっと見てみると、本当に本が一つもなかった。本当に全部回収したみたいだ。


「ごめん、待たせて。出来れば、私の所も手伝ってくれる?」

「にゃ!」


 元気よく返事をしたネロは、すぐに走って本を回収していった。私も負けじと本を回収していく。いや、もう既に負けは確定か。

 結局三十分程で全ての本の回収が完了した。


「ご苦労様」

「にゃ。これで全部にゃ」


 ネロはそう言って、本の山を、私の目の前に築いていった。屋敷にあった本の倍以上の本に、若干げんなりとしつつ全部回収する。今週もひたすら本と向き合う日々になりそうだ。


「さてと、他に変わった所はあった?」

「特にないにゃ」

「屋敷で感じてた変な感じってやつは?」

「それも特にないにゃ」

「そう。じゃあ、次の場所に行こうか」

「にゃ!」


 私とネロは、次の建物へと向かう。取りあえず、手掛かりを一つ手に入れたので、一歩前進だ。


────────────────────────


 メレとミザリーが最初に入った建物は、よく見知った場所に似ていた。


「これってギルドかな?」

「恐らくはそうだと思います。カウンターなどが、ユートリアやユートピアのギルドと同じような配置ですから。ギルドの配置には、規格があるのかもしれませんね」

「普段は見ることが出来ないギルドの裏側が見られそう。ちょっとわくわくしてきた」

「私もです。ですが、少し気になる事が」

「気になる事?」


 メレが気になっている事がなんなのか見当が付かず、ミザリーは首を傾げる。


「ここがいつ頃建てられ、いつ頃放棄されたかです。同じく砂漠に建っているアアルの建物と異なるところから、かなり古いものと予想出来ます。ですが、それを踏まえて考えてみると、明らかに劣化が遅いのです」

「そういえば、ルナさんは本を読むって言ってた。メレさんの予想通りなら、本自体もかなり劣化してないとおかしいもんね。でも、それなら、メレさんの予想が間違っているってなるんじゃない?」


 メレの話から一番に考えられる事をミザリーは遠慮無しに言った。この考察なら、変に遠慮しない方が答えに近づけるかもしれないと考えたからだった。


「はい。私もそう思ったのですが、それでもここが数年、数十年前のものとは思えないのです。仮に、そのくらい前のものであるのならば、メアリーさんがここを知らないというのは、おかしいと思うのです」


 メレ達は、ルナからメアリーがアガルタを知らないという話を聞いている。


「そうか……そこまでの年月なら、ここに住んでいた人が生き残っている可能性は高いし、他の人に知れ渡っていてもおかしくないのか……」

「そうです。そもそも共通言語が出来たのが、いつかも気になります。それが分かれば、古代言語が廃れた年代が分かります。ここの常用語が地底言語だった事を考えると、そこからこの都市がどのくらい前のものなのかを、ある程度導き出せるかと」

「おぉ……凄い」

「まぁ、ちょっと前から考えていた事ではありますから」

「へぇ~、それでも、劣化の話は解決してないよ?」


 先程メレが話していた内容は、古代都市がどれくらい前にあるかを調べる方法であり、本の劣化が遅い理由ではなかった。


「ジパングでは、本が劣化して読めなかったし」

「出来た年代が違うからと考えられます。砂漠の下というのも要因の一つなのかもしれません」

「そうなのかな?」

「明確な答えは分かりませんので、後は何とも言えません」

「だよね。はぁ……誰か答えが分かる人はいないのかなぁ……」


 メレの考察を面白いと感じていたミザリーだが、やはり、その答えが気になっていた。


「それを知っている人がいるのだとすれば、私達もここまで苦労はしていないと思いま……」


 メレは、そこで言葉を切って、少し考え込み始めた。途切れた理由が気になって、声を掛けようかと思ったミザリーだったが、そこでメレの思考を切らない方が良いのではと思い、メレが話し始めるのを待ち続ける。


「黒騎士」


 不意にメレがそう呟いた。その言葉を聞いたミザリーは、自分の記憶にある黒騎士を引っ張り出す。


「黒騎士って、ルナさんがユートピアの森で遭遇しためちゃ強の人だっけ?」

「はい。確か、黒騎士の伝説のようなものは、かなり昔からあったという話だったはずです。そして、黒騎士がルナさんに渡した本は、天界言語を初めとした古代言語で書かれたものでした」

「つまり、私達が気になっている答えを黒騎士が知っている可能性があるって事?」

「はい。可能性としては、ほぼ確実と言っていいと思います。そして、恐らくはアーニャさんも知っているはずです」

「えっ……何で?」


 黒騎士について軽くしか聞いていないミザリーは、アーニャとの関連性がないと思っており、少し混乱していた。


「ルナさんが、黒騎士についての情報を集めていた際、二人が黒騎士という言葉に反応していたらしいんです。そして、アーニャさんには、秘密が多すぎるというのも理由の一つです」

「秘密が多すぎるのが理由……? あっ、もしかして、ルナさんが黒騎士と話した時に、言葉が聞こえない時があったってやつ?」

「はい。アーニャさんも同じように、言葉に出来ない何かを抱えているのだと思います。だから、秘密と言って流しているのかと」

「そうか。話しても意味がないから秘密。それなら、納得がいくね。じゃあ、古代にあった何かにアーニャさんや黒騎士が関係しているって事になるのか」

「仮説でしかないですが、十中八九そうかと。恐らく、ルナさんも同じ考えのはずです」

「う~ん……段々と話が難しくなってきた……」


 ミザリーは、頭の中にある情報を整理していく。


「えっと、この古代都市は、かなり昔のものだけど、その年月に合わないくらい劣化の少ない本がある。それらは、古代言語で書かれている事から、最近のものではない事は分かっている。何でこうなっているのか、断片でも知っていそうなのは、異常なまでに長生きをしていると予想される黒騎士。そして、その黒騎士と繋がりを持っているかもしれないアーニャさんって感じかな?」

「そうですね」

「最後に、これらの事を聞き出そうにも、向こうには何かの誓約めいたものがあって、アーニャさん達は話すことが出来ないって事だね。でも、ゲーム内で話せない誓約って何だろう? これからのアップデートに関係するものとかかな?」


 ミザリーの話した最後の内容に、メレは、あまりピンときていなかった。あまりゲームをしないので、それは仕方ない。


「えっと……この前もアップデートがあったでしょ? 今後のアップデートで追加する要素を最初から仕込んでいたのかもしれないって話」

「ゲームの仕込み……」


 ミザリーの説明で、ちゃんと理解したメレだが、それでも何か引っ掛かっているようだった。


「メレさんは、あまりしっくりきてないみたいだけど」

「そうですね。やっぱり、私はこの世界をゲームだけの世界とは思えないんです。現実感が強すぎると言いますか……」

「ここが異世界かもって事? でも、実際にアップデートは入るし、ゲームのシステムは機能しているように思えるけど」


 どちらかと言うと、ミザリーの言っている事の方が正論だろう。だが、メレの考えは変わらない。


「そもそも、あのゲーム機とソフトが、異世界に意識を飛ばすものだったらどうでしょうか?」

「可能性はあるけど、そんな超技術が現代にあるのかな? それに、異世界そのものの存在も疑わしいし」

「それは……その通りですが……」


 さすがに、ここまで来るとメレも説得力のある言葉を紡げなくなる。ここまでの事は、全て憶測でしかないからだ。


「取りあえず、この話し合いは、ここまでにしておこう。キリがなさそうだし」

「そうですね。こっちに、下に降りる階段がありました。それと、向こうには上へと上がる階段が。どちらから探索しますか?」

「下から行こう。何かありそうだし」

「分かりました」


 二人は、長い考察を終えて、本格的に探索へと戻った。


────────────────────────


 ソルとシエルは、二人並んで空き地を見ていた。


「何にもない……っていうか、ここだけ綺麗に開発されていないって感じ」

「確かに。もしかしたら、この時代の公園とかだったのかもよ?」

「ああ、そういう見方も出来るのか。ガーディ、何かありそう?」


 シエルがそう尋ねると、ガーディは首を横に振る。


「特に何もないみたい」

「そうなんだ。じゃあ、普通に建物の探索を進めようか」

「了解」


 二人は、空き地から離れて、近くの建物に入った。その建物の中には、広いカウンターがあり、その奥には多くの机が並んでいた。


「銀行みたい」

「じゃあ、奥に金銀財宝がうっはうっはだね」

「そこまでお金に困ってるの?」

「別に困ってないよ。でも、こういう所だとそういうのがお決まりでしょ?」

「かもね」


 そんな話をしながら、どんどんと奥に進んだ二人は、一つの扉の前で止まった。ソルが取っ手を掴んで開けようとする。しかし、扉はウンともスンとも言わない。


「シエルちゃん」

「オッケー。プティ『起きて』」


 シエルは、プティを起こすと、扉を指さす。


「壊して」


 プティは、命令された通り、扉を破壊する。扉には鍵が掛かっていた事が分かった。そして、その向こうは、多くの扉が並んでいる通路だった。


「この先は……何だろう?」

「扉の中を見てみれば分かるんじゃない?」


 そう言って、シエルが扉に手を掛ける。シエルは、また鍵が掛かっているかもしれないと思っていたが、ここはすんなりと開いた。その中は、沢山の棚が並んでいた。

 そして、棚の引き出しを開けると、そこには前にソルが見つけた硬貨が入っていた。


「ここって、もしかしなくても金庫?」

「だろうね。それにしてはセキュリティが甘すぎるけど」

「ここが出来た時代に、そこまでのセキュリティはなかったんじゃないかな」

「まぁ、それもそうか。ここは私とガーディ達で引き受けるから、他の部屋をお願い」

「オッケー」


 二人は手分けして、別々の扉の中を調べて行く。扉の中は、全部金庫になっていて、大量の硬貨が入っていた。


「これだと……お金は持ち出せなかったって事だよね……つまり、引っ越しはかなり急いでいたって事の証明になる」


 ソル達は、念のため硬貨を回収していった。そうして、全てを回収した二人は合流する。


「どうだった? お金以外には何か見つけた?」

「全く。この硬貨以外、何もなし。取りあえず、他の場所にガーディを向かわせた」


 シエルがそう言った直後、ガーディが戻ってくる。


「どうだった?」


 シエルの問いに、ガーディは首を横に振る。


「特に何もないみたい。次の建物に向かう?」

「そうだね。それが良いと思う」

「それじゃあ、行こう」


 ソルとシエルは、次に役所のようなところを探索したが、そこには白紙の紙が落ちていたくらいで、他には何も残っていなかった。二人は、その紙を回収して、次の建物に移動した。

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