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202.北東部探索!!

 翌日から金曜日まで、屋敷で手に入れた本を調べた。結果、分かったのは、普通の本だという事だった。どこかの童話や小説みたいなものが地底言語で書かれている。一応、メアリーさんにいくつか見せて確認は取った。実際、メアリーさんも同じ本を持っていた。

 屋敷にあった本は、全部娯楽用の本だった。ということは、何も情報に繋がるものはなかったと言える。情報を得られなかった事が悔しかったので、私は、屋敷のベランダの欄干で、蝙蝠のようにぶら下がっていた。そこに、マイアさんがやって来た。


「ルナ様。大丈夫だとは分かっているのですが、その……サレンや他のメイドが、ギョッとしてしまうので、控えて頂ければと」

「は~い」


 身体を起こして、欄干に腰を掛ける。


「執務室にある本は、書斎に置きますか?」

「ううん。数が多いから、私が持っておく。これだけで、書斎がいっぱいになっちゃうし」

「なるほど。分かりました。書斎の拡張などもしますか?」

「う~ん、今はいいや。私が持っていれば良いだけだし」

「分かりました。では、お茶を淹れますね」

「うん。ありがとう」


 そんな風なやり取りをして、屋敷で一服した後にログアウトした。


────────────────────────


 翌日の土曜日。私達は、またアガルタに集まった。今日は、北東部の探索だ。


「ルナちゃん、ルナちゃん」


 北東部に向かって歩いていると、ソルが袖を引っ張りながら呼んできた。


「何?」

「今日も、手分けして探索するの?」


 そう訊かれて、私は少し考える。北東部は、色々な施設みたいなのが多くある。だから、軽く区分けして、分担して探すのは有りと言えば有りだ。


「良いかもね。それじゃあ」

「それじゃあ、私とミザリーちゃん、ルナちゃんとメレちゃん、シエルちゃんとネロちゃんでどう?」


 この前と同じ組み合わせで良いかなと考えていると、ソルが先に提案してきた。何か、事前に考えていたみたいだ。訊いてきた時には、既に考えていたのかも。ただ、ちょっと気になる点がある。


「でも、ネロとシエルは離した方が良いんじゃない? 二人とも探索は得意な訳だし」

「逆に、探索特化で調べて見るのもありだと思うんだけど……」

「う~ん……まぁ、良いか。それで行こう。じゃあ、北から三等分って考えて、一番北を私とメレ、中央をソルとミザリー、南をネロとシエルが担当で。オッケー?」

「うん!」

「了解」


 ソルは元気に返事をし、シエルは普段通りに返事をした。ソルが凄く喜んでいるけど、何でなんだろう。そう思って、ジッとソルを見るけど、ソルは、ニコニコ笑うだけだった。いつも通りかな。何か微妙に変な感じだけど、それを追及するより、探索に移った方が良い。


「それじゃあ、行こうか」

「はい」


 私とメレは、まっすぐ北の出口まで向かってから、一番近くにある建物に入った。


「さてと、ここはどういう建物なんだろう?」

「見たところ、鍛冶屋のような印象を受けますが」


 メレの言う通り、この建物は鍛冶屋のような印象を受ける。金床みたいなものやハンマーみたいなものが転がっている。


「ここは持ち出して去る事が出来なかったのかな?」

「金床やハンマーは重いからじゃないでしょうか?」

「やっぱり、重いものは、置いていくって事になるんだね。ここには、炉もあるし、鍛冶屋って考えて良いのかも」


 私は、炉の中に手を突っ込んで、何かないか探ってみた。


「炉に秘密があるとかではないみたい。中は、真っ黒だし」

「燃料の残りみたいなものはありますか?」


 メレに訊かれて、炉の奥に手を伸ばし、探ってみる。


「う~ん……特に中身はないよ。煤みたいなものが付いているだけ」


 そう言いながら、手袋に付いた煤を払う。


「煤という事は、もしかしたら、燃料に関しては現実と変わらなかったのかもしれないですね」

「ということは、石炭?」

「という事になりますね。この近くで石炭が採れる場所があるのかもですね」


 この世界特有の何かの可能性もあるけど、正直、メレの言っている事が正しい気がする。普通の鍛冶屋っぽいし。


「他に怪しい物ってある?」

「錆びた剣があります」

「錆びた剣……危ないから触らないようにね」

「はい」


 メレは力がないし、下手に持ち上げて、怪我をされるのは嫌なので、取りあえず触らないように伝えておく。

 私は、力はある方なので、念のため持ち上げてみる。すると、剣はボロボロと崩れていった。


「とても昔に作られたもののようですね。強度が著しく落ちています」

「うん。使い物にはならないね。次の施設に行こう」

「はい」


 私達は、鍛冶屋の裏にある建物に入った。そこは、さっきの鍛冶屋よりも綺麗な場所だった。それに何かよく分からないものが並んでいた。


「……メレは、これが何か分かる?」

「いえ、私も分かりません。これは、現実にはないものと考えた方が良いかと」

「だね。予想は出来る? 私には、ただの白い塊にしか見えないんだけど」


 私の目の前にあるのは、白い直方体だった。直方体は、大きさ違いのものがいくつかある。その全て、表面はすべすべで凹凸がない。どこも欠けていないところを見ると、かなりの硬度を持っていると思って良いと思う。でも、それしか分からない。


「そうですね……これだけでは、私も予想は出来ません。そもそも本当に何かに使う物かも分かりません。触ってみても大丈夫でしょうか?」

「ああ……私が触るから、メレは離れていて」

「はい」


 メレが十分に離れたのを見てから、私は白い直方体に触れる。特に何も起きない。なので、色々な箇所を触っていく。すると、側面の中央上部で音がなり、直方体が開いて、中から何かが書かれた黒い板が出て来た。


「……IH?」

「いえ、さすがに、それはないと思いますが……」

「じゃあ、何だろう? ファンタジー系で、よくあるのは……錬金術とかかな?」

「錬金術……卑金属を金に変えるやつですね」


 メレの言っている錬金術は、現実でやろうとされていた錬金術だ。ゲームをやる機会がなかったので、錬金術と言われて、そっちが出て来るのは。


「ちょっと違うかな。ゲームだと、色々な物を掛け合わせて、何かを作るみたいなやつって事になってるから」

「そうなんですね。そのための道具は、こういうもの何ですか?」

「う~ん……私が知っているのは、釜みたいな感じかな。でも、他のゲームと同じとは限らないし、これが錬金術に使う物の可能性はあるよ」


 私はそう言いながら、黒い板に触れる。すると、黒い板の模様が光った。本当に少しだけど、力が抜ける感覚がした。もしかしたら、魔力か何かに反応したのかもしれない。


「ルナさん……」

「大丈夫。魔力か何かを吸い取って、起動したみたい。地底言語で何か書かれていればいいんだけど……文字は書いてないね」

「ホログラムで出来たキーボードのようですね」

「キーボード? なるほど」


 メレの言っている事は意外と的を射ている気がする。これが、操作盤か何かなのかもしれない。適当に操作盤らしきものを操作する。すると、近くの直方体が開き、内側が空洞の箱みたいなものになった。ただ、一面がガラス張りみたいになっている。


「ドラフトみたいですね」

「ん? 野球?」

「いえ、化学実験で使うものです。有害な気体が発生してしまうような時に使うのです。もしかしたら、そういった実験で使うものなのかもしれませんね」

「へぇ~、そうなんだ」


 やっぱりメレは博識だ。何で知っているのか分からないけど。


「他には、何か出て来ますか?」

「ああ、そうだね。これだけボタンが付いていて、開閉しか出来ないとかだったら、拍子抜けだし」


 私は、キーボードを操作する。すると、ドラフトではなくて、別の直方体が開いた。そこは、ドラフトのようにガラス張りの一面がなく、釜が置いてあった。釜には、複雑な模様が描かれている。


「これは……先程言っていた錬金術のものでは?」

「う~ん……分かんない」


 私はそう言いながら、釜の蓋を開ける。中身は、何も入っていない。


「何も入ってない。お米を炊く物ではなさそうだし、本当に錬金術に使うものなのかも」

「錬金術と化学で、何をしていたんでしょうか?」

「何だろう? 錬金術と化学……合成した物の分析……いや、錬金術だけじゃなくて化学でも、同時に合成していたって考える方が正しいかも……」

「化学だけで合成出来ないものを、錬金術で作っていた可能性もあります」

「なるほどね」


 謎の施設という事しか分からない。他には、何かないのかキーボードを弄る。すると、他の直方体も開いていった。それらは、ドラフトではなく、全部釜が入っていた。


「錬金術が基本みたいだね。本当に何をしていた施設なんだろう?」

「そもそも、技術力が高すぎると思うのですが?」

「まぁ、確かに……」

「つまり、アガルタは、古代兵器の製造に関わっていたのではないでしょうか?」


 メレの言葉に、私も納得する。確かに、古代に出来たもので、ここまでの技術力を持っているとしたら、古代兵器に関わっていた可能性は高い。実際、ジパングでもアルカディアでもアトランティスでも、同様に高度な技術で作られていた。


「なるほどね……どこかに、繋がるものがあればいいんだけど……」


 私はそう言いながら、置いてあった釜を回収しておく。


「他のところも回って、本などがないか調べましょう。どこかに忘れられているかもしれません」

「そうだね。行こうか」


 私達は、次の建物へと移動する。

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