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197.アガルタ北西部!!

 翌日。私達は、アガルタの枯れた噴水広場に集まった。今日は、街の北西部にある屋敷を調べる。


「大きいにゃ」


 屋敷の敷地前に来たネロはそう感想をこぼした。


「確かにね。私の屋敷の何倍もの敷地面積だもん。ここを治めていた人のものなんじゃないかな」


 屋敷の見た目の豪華さと敷地面積から、私は、ここがアガルタを治めた者が所有していた場所だと考えた。屋敷は、敷地を区切るように、鉄柵で囲われている。入るには、鉄柵を乗り越えるか門から入るしかない。幸いな事に門はすぐに見つけられた。ただ、そこは硬く施錠されていた。


「……えい!」


 廃墟だという事を良いことに、後ろ回し蹴りで鍵を壊そうとしたら、鍵どころか門ごと蹴り飛ばしてしまった。


「馬鹿力」

「門が弱いだけだよ……」


 シエルにツッコまれるけど、絶対私の力が強いからとかじゃなくて、門が古くて弱いからのはず。馬鹿力と言われるほどじゃないと思いたい。


「まぁ、そんな事はいいや。モンスターはいないみたいだし、二人一組で手分けして探索しよう。ソルとメレ、ネロとミザリー、私とシエルで別れよう」

「オッケー。じゃあ、私とメレちゃんは、向こうの別邸みたいなところを調べてくるよ」


 ソルはそう言って、メレの背中を押して別邸の方に向かって行った。別邸と言っても、ここの屋敷より小さいくらいで、私の屋敷よりは大きい。


「それなら、私達は庭を探すにゃ」

「そうだね。ルナさんとシエルさんは、本邸の方をよろしく」


 ネロとミザリーは、庭を端から見ていくつもりのようだ。残された私とシエルは、本邸に向かって歩き出す。


「どうしてこの組み合わせなの?」


 歩き始めて少しした時に、シエルが訊いてきた。


「ソルとメレを一緒にしたのは、メレの安全を確保するためかな。私達の中で、一番強いのはソルだから。それとネロとシエルは離しておこうかなって。ガーディ達なら、ネロと似たような感覚を持っているでしょ?」

「まぁね。じゃあ、ルナとミザリーは、本当に適当か」

「そういう事」


 本邸の前に着くと、シエルがガーディを起こす。


「それじゃあ、中に入るよ」


 そう言って扉を開けようとすると、ここも鍵が掛かっていた。戸締まりをしっかりするなんて、ここに住んでいた人は真面目なんだな。


「よろしく」

「何か複雑……」


 私は、門を蹴り飛ばした時と同じ要領で、扉を蹴り飛ばす。すると、門と同じように、扉が吹っ飛んでいった。


「さすが馬鹿力。プティと良い勝負かもね」

「さすがにそれはない。それよりも、早速探索をするよ」

「分かった。ガーディ『起きて』」


 大きくなったガーディは、シエルに顔を近づけて挨拶をする。


「何かを感じたら、教えて」


 シエルがそう言うと、ガーディはこくりと頷いた。その後に、私のところにも挨拶にくるので、頭を撫でてあげる。


「さてと、まずは、このエントランスかな」

「エントランスと言うには、広すぎだけどね。ここでパーティー出来るんじゃない?」


 シエルの言う通り、このエントランスは、屋敷のエントランスと言うには、かなり広い。洋画などで出てくる金持ちの屋敷でも、ここまで広くはない。

 エントランスは、二階に上がる階段と私の家にもあるようなソファとテーブルが置かれている。その他は、小さな棚が並んでいる。

 私とシエルは片っ端から棚を開けていった。


「何かあった?」

「何も。ここら辺の物も全部持って出ていったような感じ」


 棚の中には、何も入ってなかった。小物の一つでも入っていると思っていたのに、その予想は裏切られた。


「だよね。でも、そんな事物理的に可能だと思う? 地下都市だよ?」


 アガルタは、砂漠の下にある。そんなところに暮らしていて、こんなところに入っていたであろう小物も全部持っていくのは、結構厳しいんじゃないかと思った。


「その考え自体が間違いなのかもしれないけど」


 シエルがそう言った瞬間、私の頭の中に、ある考えが過ぎった。


「元々地上にあったものが砂漠の下に沈んだって事?」

「かもしれないだけど。どのみち、ここまでしっかりと物を持ち出しているって事は、緊急事態だったとかじゃなくて、計画的に出て行った事は確実じゃない?」

「計画的に出て行った……でも、家具はそのままにして行った?」

「……いる家具を選別したとかだったら、違和感はないはずだけど」

「そうか。現実でも、引っ越し時に家具を一新するみたいな話は聞いた事あるし」


 そう考えると、嵩張る家具は置いて、小物を全部持っていったと考える事が出来る。ただ、この大きさの屋敷にある小物を全部持っていく事は厳しいと思う。


「情報になるものが残っていると良いけど」


 そんな話をしつつ、私達は一階の探索に移った。


────────────────────────


 別邸の方を探索に来たソルとメレは、ルナ達と同じく鍵の掛かった扉に当たった。


「閉まっていますね」

「うん。ちょっと離れてて」

「はい」


 メレが離れた事を確認して、ソルは白蓮を抜く。そして、二枚扉の中心目掛けて、振り下ろした。ルナとは異なり、扉を壊す事なく開く事が出来た。


「綺麗に開きましたね」

「ルナちゃんは、また壊してるかな?」

「ルナさんならそうなっていてもおかしくないですね。それにシエルさんも物理型ですから、本邸の扉は壊れていると思います」

「それもそうだね。それじゃあ、早速中に入ろう」

「はい」


 別邸の中は、本邸と異なり、小さなエントランスとなっていた。それでも、ソル達基準で考えれば大きいことには変わりない。

 他の違いといえば、エントランスには何もない事だった。


「殺風景だね」

「そうですね。むしろ、この方が怪しいと感じますが」

「ああ、何もない方が怪しいってやつでしょ? 私も分かる。ゲームやってると何も無い場所に本当は何か無いかとか調べたくなるもん」

「他のゲームでもそうなんですね」

「ああ、そうか。メレちゃんは、ゲームとかしないんだもんね。今度、おすすめのゲームを貸してあげるよ」

「ありがとうございます」


 ソルとメレは、そのまま一階にある最初の部屋に入っていった。


「ここは、鍵は掛かっていないんですね」

「家の中だし、外付けの鍵は付けてないんじゃない?」

「本当ですね。内側からは掛けられるみたいです」


 ソルの話を聞いて、扉を確認したメレは、内側から掛ける用の鍵を見つけた。ソルの言う通り、外側からは掛けられないという事が分かる。

 そして、部屋の中には、最低限の家具が置かれていた。それは、テーブル、ソファ、棚だ。その配置から、ソル達は応接室だと判断した。


「う~ん……何かあった?」

「いえ、こちらの棚には何もありません。中身は全部持っていた後のようですね」

「ね。私の方も同じ感じ。大規模な引っ越しでもしたのかな? でも、これだけ中身を取り出して、家具は放置する?」

「置いていったというよりも、置いて行かざるを得なかったのでは?」

「……持ち運びが出来なかった。つまり、これを持ち運ぶことの出来る輸送手段がなかったって事?」

「はい。この場で組み立てたのなら、ここまで来たのは材料だけですし、これを綺麗に解体するのは厳しかったのかもしれません」

「なるほどね。確かに、馬車に乗せるにしても、この家具達じゃ厳しいだろうしね。自動車があれば別だっただろうけど」


 ソルとメレは、ルナ達とは違う観点から家具が残っている理由を導き出していた。実際の答えを知る事は出来ないが、それぞれが答えに近いと思われる。

 そんな中で、ソルがテーブルの下に潜り込んだ。


「どうしたんですか?」

「ほら、へそくりとかを隠すなら、テーブルとかの下が怪しくない?」

「さすがに安直すぎると思いますが。それなら、額縁や絵画の裏の方が怪しくありませんか?」


 メレがそう言うと、ソルは、それがあったかという風に目を輝かせた。


「よし! いざへそくり探しだよ!」

「目的が変わっているような気がしますが、やる気があるのが一番ですね」


 若干趣旨が変わっているソルを見て、メレは苦笑いをしながら見ていた。ただ、それでもメレは、特に深く指摘はせずに、そのまま付いていった。ソルが楽しそうなら、それで良いかと思っているのだ。

 二人は、別邸の一階を隈無く探索しに向かった。


────────────────────────


 ネロとミザリーの年齢差組は、庭を端っこから見て回っていた。


「う~ん……何もない庭だね」

「にゃ。走り回りたいにゃ」

「ちょっとくらいなら走り回っても良いよ」

「でも、探索も大事にゃ」

「走り回っているうちに見付かるものもあると思わない?」

「にゃ……確かににゃ! 走ってくるにゃ!」

「うん。いってらっしゃい」


 ミザリーに送り出されて、ネロは広い庭の中を走り回りに向かった。しばらくの間、一人で端っこから練り歩く事になるが、ミザリーは一切気にしていなかった。


「妹がいたら、こんな感じなのかな。可愛いなぁ」


 走り回るネロをちらっと見ながら、ミザリーは庭の練り歩きを進めていく。その途中で、小さな石碑のようなものを見つける。


「私の言語学じゃ読めないな……てことは古代言語ってやつだね。これは、後でルナさんに読んでもらおう」


 ミザリーは、念のため庭の地図を作って、石碑の場所が分かるようにしていた。他にも生えている木に何か変わった事がないかなど細かいところも調べて行く。そこに、満足したネロが帰ってきた。


「楽しかった?」

「にゃ!」


 ネロは満足げに頷く。ミザリーは、そんなネロの頭を撫でてあげる。


「何か変わったものとかはあった?」

「特に何もなかったにゃ。でも、何だか変な感じはするにゃ?」

「変な感じ?」

「にゃ。よく分からないにゃ」

「ふぅん……一応、後で皆に相談しようか」

「にゃ」


 ミザリーは、地図の端っこにネロが何かを感じたとメモしておく。そこから、ミザリー達は、庭の練り歩きを再開した。

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