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196.屋敷の運営!!

 屋敷の中に入ると、サレンが掃除をしているところだった。サレンは、私が帰ってきた事に気付くと、少し狼狽えた。多少は慣れてきたみたいだけど、まだ緊張してしまうのは変わらないみたい。


「お疲れ様、サレン」

「ル、ルナ様!? お、お帰りなさいませ!」

「うん。ただいま。マイアさんはいる?」

「えっと、ただ今、ラメリア様と商談中です」


 ラメリアさんは、私と取引をしている商会の人だ。まぁ、取引のほとんどはマイアさんに任せているだけどね。


「私も行った方が良いかな?」

「ど、どうでしょうか……?」


 思わず訊いちゃったけど、サレンに相談するような事じゃなかった。せっかくラメリアさんが来訪している時に来たんだし、この屋敷の主人として、顔は出した方が良いかもしれない。どんな感じで取引をしているのかも気になるしね。


「私も行って来るよ。応接室?」

「はい」


 サレンと別れて、一階にある応接室に向かう。一応屋敷の主人な訳だし、特に気にせず中に入っても良いはず。そう考えた私は、そのまま応接室に入った。

 私が入った事にすぐ気付いたマイアさんは、一切もたつく事なく、立ち上がり、私に頭を下げた。


「お帰りなさいませ、ルナ様」

「ただいま、マイアさん。お邪魔してすみません、ラメリアさん」


 話が中断されてしまったので、一応謝っておく。


「いえ、お気になさらないでください。こうしてお会い出来て光栄です」


 ラメリアさんは特に気にしている素振りも見せずに、柔らかく微笑んだ。正直感情が読めないので、本当に怒っていないのかは分からない。取りあえず、ここは堂々としておこう。

 突っ立っているのもおかしいので、ラメリアさんの前、マイアさんが座っていた場所の隣に座る。それを見ずに、マイアさんはカートに乗ったポットから紅茶を注いでいた。私の分だ。

 そうして出された紅茶は、ミルクティーになっていた。マイアさんとラメリアさんのは、ストレートティーだったので、少し違和感があった。特に私が好きなわけでは無いので、マイアさんが自主的に選んでくれたものだ。

 どうしてなんだろうと思いつつ、ミルクティーを口にすると甘みの中に、紅茶の渋みを感じた。恐らく、渋みの強い紅茶だから、飲みやすくしてくれたんだ。この方が私の好みなので、少し嬉しい。まだ仕えてくれてから、一ヶ月や二ヶ月くらいで、ずっとここにいるわけでもないのに、私の好みを把握してくれているのは、本当に凄いと思う。

 マイアさんは、そのまま私の後ろに立った。私がいるから座るわけにはいかなくなっちゃったみたい。ちょっと悪い事をしてしまった。


「ちょうどルナ様もいらっしゃった事ですし、少し依頼をしても構いませんか?」


 お茶を一口飲んだ後、ラメリアさんがそんな事を言った。


「依頼……何かの素材を獲ってきて欲しいという事ですか?」

「話が早くて助かります。少し危険な素材ですが、スワロー・スネークの皮が欲しいのです。出来れば二匹分を」


 スワロー・スネークは、ユートピア・ワールドを始めたてくらいの時に、倒した事がある。確か、ユートリアの南の森にいたはずだ。今の私なら余裕で倒せるだろう。


「分かりました。いつまでに納品すれば良いですか?」

「出来れば明後日までにお願いしたいです」

「では、明後日にまたお越しください。マイアさんに預けておきます」

「助かります」


 何に使うか分からないけど、いつもお世話になっているし、これくらいはしないとね。その後、マイアさんとラメリアさんで、商談をまとめて、ラメリアさんは帰っていった。

 ラメリアさんを見送った後、マイアさんは深く息を吐いた。


「まさかルナ様が入ってくるとは思わず、驚きました」

「あ、ごめん。邪魔だったよね」

「いえ、驚いただけですので。今日は、お風呂に入りますか?」

「うん。それと倉庫とかの確認もしに来たんだ」

「分かりました。書類の準備をしておきます」

「後、服の砂も払っておいてくれる? この前に流砂に飲まれて、軽くはたいただけなんだ」

「それはまた、大変な場所に行っているようですね。分かりました。砂は払っておきます」

「ありがとう」


 脱衣所で服を脱いで、マイアさんに渡す。こういう時は、貴族で良かったと感じる。まぁ、人任せにしているだけなんだけどね。

 マイアさんに服を任せた後、お風呂に入る。もちろん先にシャワーを先に浴びて、身体の砂は完全に落としている。


「ふぅ……やっぱり家のお風呂は最高だなぁ」


 身体の芯まで温まった後、部屋着に着替えた私は、自分の執務室に向かった。執務室には、砂を払ったであろう夜烏や黒羽織などが、掛けられていた。

 そして、机の傍には書類を持ったマイアさんが立っていた。


「ありがとう」

「いえ。こちらが、現在倉庫に置いてある素材の一覧です」


 受け取った書類を見ていく。私がいない間に、屋敷の運営をする上で分かりやすいように作っておいたんだと思う。マイアさんもどんどん仕事の出来るメイド長になってきている。たった今、お茶を淹れに行こうとして、何もないところでこけそうになっていたけど。


「最近、補充をしておいたから、かなり余裕があるかな。スワロー・スネークの他に、集めた方がいい素材ってある?」

「満遍なく揃っていますから、今のところ特定の何かが必要というものはありません」

「そうなんだ。じゃあ、適当に持ってくるね」

「はい。お願いします」


 そう言ってから、マイアさんは、別の書類を渡してきた。それに目を通す。そこに書かれていたのは、屋敷運営の収支報告書だった。マイアさんが調整しているのか、現状黒字のままだった。というよりも、資金がかなり貯まっている。支出よりも収入が遙かに大きい。


「もう少し色々使っても良いんじゃない?」

「いえ、今は資金を貯めている最中なのです」

「?」


 元々使われていた屋敷なので、基本的なものは揃っている。それに、庭に作られているブランコやらガゼボも作られているし、他に何か使うものがあるかと考えてみるけど、特に思いつかない。


「実は、浴場の改修をしようかと思いまして」

「浴場の?」


 かなり広い浴場で、サウナも併設されている良いところのはずだけど、どうするんだろうか。


「はい。お風呂の種類を増やそうと考えています。現状でも、かなり良いところなのは、私も理解していますが、少々単調とも言えますので」


 確かに、サウナ、水風呂があるだけで後は普通のお風呂だ。それらを踏まえると、確かに単調と言えなくもない。


「空を含んだ水が噴き出す箇所を湯船内に付け、マッサージをするというものがあるのです」

「ああ、ジャグジーか」


 いったい何を作るんだろうと思ったら、ジャグジーだった。まぁ、確かにあれば嬉しい。


「ご存知でしたか。それもそうですよね。異界人からのアイデアと言われていましたから」


 どうやらプレイヤーが職人に教えたみたいだ。それを聞いたマイアさんが興味を持ったというところだろう。


「なら、もっと素材を集めて、資金を貯めないとね。私も頑張ろ」

「よろしくお願いします」


 その後、働いていたサリアも交えて、三人でお茶を飲んだ。労働環境の話など、屋敷に関する話をしていった。取りあえず、今の職場でサリアが不満を持っているという事はなさそう。そこまで心配していなかったけど、一安心ではある。この調子でいけたら良いな。

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