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195.古代都市アガルタ!!

 身体に付いた砂を払った私達は、古代都市に向かって歩き出す。


「念のため、メレの歌は無しね」

「崩落してしまう可能性があるからですね。分かりました」


 正直なところ、崩落する事はないと思うけど、可能性はあるから控えた方が良い。ここが崩落したら、私達が助かる術はないからだ。私も爆弾系の攻撃は控える事にする。ただ、古代都市に近づいていっても、一向にモンスターの気配がしない。


「ネロ」

「モンスターも人もいないにゃ。本当にゴーストタウンみたいにゃ」


 ネロも一切気配を感じないようなので、本当に何もいないところなのだろう。古代都市の入口に着いた私達は、その入口に掛けられている大きな看板を見上げる。


「読めない文字だ」


 ミザリーが目をこらしながらそう言った。どうにかして、読めないかと思っていそうだ。でも、ミザリーが読めないのは当然だ。だって、これは古代言語なんだから。


「地底言語だから、ミザリー達には読めないよ。ここはアガルタって街だって」

「ルナさんは読めるんだ」


 私がすんなりと看板の文字を読んだら、ミザリーが驚いていた。ミザリーは、私がどの言語を習得しているか知らないからそれも仕方ない。


「私は、海洋言語、地底言語、魔界言語、草原言語、黄金言語、氷海言語を習得しているからね。メアリーさんに教えてもらってるの」

「今考えると、一国のお姫様に、勉強を教えてもらっているって、凄く変だよね」

「まぁ、現実で考えればね。そんな事よりも、中に入ってどういうところなのか調べて見よう」


 私はそう言って古代都市アガルタの中へと入っていく。その後ろから皆も付いてくる。アガルタの中には、本当に誰もいなかった。多少の生活感はあるように見えるけど、それが一体何年前のものなのかは分からない。

 取りあえず、私達はアガルタの中央を目指して進んで行った。


「えっ……」


 ソルは小さく声を出して驚いていた。その気持ちも分かる。私達の目の前には、噴水広場があったのだけど、その噴水は枯れていた。いつもの綺麗な噴水広場ではなく、寂しさを感じさせるものだった。


「壊れているのかな?」

「そうなんじゃない。でも、噴水は壊れていても、ポータルはあるから、転移する事は出来るみたい」


 シエルの言う通り、ポータルは存在するのでアガルタに転移する事も、アガルタから出る事も出来る。私達はポータルに登録してから、噴水を調べ始めた。


「う~ん……よく分からないなぁ」


 ミザリーに灯りを用意して貰って、噴水が噴き出すところを覗きこんだけど、特に異常があるようには見えない。後、考えられるのは、単純に水が尽きたかという事だ。


「どこかに噴水を操るような何かがないかな?」

「ないんじゃないかな? 私は聞いた事ないし、掲示板とかでも見てないよ」


 恐らく一番掲示板などを見ているであろうソルが知らないとなると、本当に見付かった事はないと考えられる。


「まぁ、そうかもだけど……」

「ゲームなら、こういうのを解決すると、何かが起こるって感じだよね」


 ミザリーの考えも分かる。一般的なゲームなら、こういう問題を解決すれば、何かしらのアイテムを手に入れられるみたいな事はある。でも、噴水の管理をしている場所は見付かった事がないので、本当にあり得るか分からない。


「ここが噴水広場って事は、他の街と同じで地図があるはず。ネロ、地図は見付かった?」


 噴水から離れて、噴水広場を捜索していたネロに声を掛ける。


「あるにはあったにゃ! でも、ボロボロでよく分からないにゃ!」


 私は、すぐにネロの傍まで移動する。ネロの言う通り、そこにはボロボロの地図が貼られていた。分かるのは、大まかな街の形くらいだ。八角形のような形をしていて、中央の噴水広場から、縦横十字に大通りが通っている。そこから、街を北西、北東、南東、南西のエリアに分ける事が出来そうだ。


「ここから見える限りで言えば、北西が一番怪しいかな」


 ここから見たそれぞれの景色は、北西は大きな屋敷が一軒。これは、私の屋敷よりも遙かに大きい。それは、敷地も同じだ。

 北東は……本当によく分からない。少し大きめの施設などが並んでいる。鍛冶屋のような煙突もあるから、本当に何かを作る施設なんだと思う。

 南東は、住宅街のようだ。見た感じかなり密集しているので、探索は時間が掛かりそうだ。

 南西は、大きな建物が並んでいた。ユートリアと似た感じだから、図書館とかギルド的なものだと思う。


「今日は、これで解散して、明日からは、北西から時計回りにエリアを捜索していこう。アダマン・ゴーレムを倒すのに時間が掛かっちゃったし」

「そうだね」


 今日のところは、ここで解散した。


────────────────────────


 その日の夜。私は、アガルタではなく、王都に来ていた。お風呂に入るついでに、屋敷の確認とメアリーさんへの報告が目的だ。最初は、メアリーさんへの報告から済ませる。王城に入った後、すぐにメアリーさんの執務室へと向かう。

 その途中、タッタッタッという軽快な足音が聞こえた。音がする方を振り返らなくても、誰が来ているのかすぐにわかった。シャルがいない王城の中で、私に駆け寄ってくる人は一人しかいない。

 私は、音の方向に振り返って、アリスちゃんを受け止める。


「こんにちは、ルナお姉ちゃん!」

「こんにちは、アリスちゃん。元気にしてた?」

「はい!」


 アリスちゃんと会うのは結構久しぶりだ。最近は、時間が合わなかったからか、こうして遭遇しなかった。

 それが寂しかったのか、アリスちゃんは私にぎゅっと抱きついていた。このままだと、移動も出来ないので、アリスちゃんを持ち上げて抱き抱える。


「お付きの人は?」

「多分、もうすぐ来ます」


 アリスちゃんの言葉通り、息を切らしてメイドさんが、こっちに走ってきていた。


「はぁ……はぁ……ア、アリス様……いきなり走り出さないで下さいと……何度申し上げれば……良いのでしょうか?」


 メイドさんは、かなり怒っていた。


「アリスちゃん。あまりお転婆なのは駄目だよ。ちゃんと謝らなきゃ」

「はい、ルナお姉ちゃん。ごめんなさい」


 アリスちゃんは、床に降りてメイドさんに頭を下げる。メイドさんは、少し長めに息を吐く。


「ちゃんと反省して下さいね。ルナ様もご迷惑をお掛けして申し訳ありません」

「いえいえ、お気になさらず。アリスちゃんと会えて、私も嬉しいですから」


 私がそう言うと、アリスちゃんは嬉しそうにしていた。


「それじゃあ、私は、メアリーさんに用事があるから、また今度ね」

「メアリーゼ姉様の用事が終わったら会えませんか?」


 アリスちゃんは、私と遊びたいみたい。でも、屋敷の確認は、私の仕事の一つでもあるので、さすがに後回しには出来ない。


「ごめんね。それが終わったら、屋敷の方に行かないとなんだ。明後日のこの時間くらいからだったら、空いているから、明後日じゃ駄目かな?」


 私がそう言うと、アリスちゃんは輝く笑顔になっていった。アリスちゃんは、すぐにメイドさんの方を見る。


「予定に入れておきます」

「ルナお姉ちゃん、約束ですよ!」

「うん。約束。ちゃんと良い子にしていてね」

「はい!」


 元気な返事をするアリスちゃんと別れて、私はメアリーさんの執務室に向かう。ノックをし、返事を貰ってから中に入る。


「失礼します」

「いらっしゃい、ルナちゃん。今日はどうしたの?」

「少しメアリーさんの耳に入れておきたい事がありまして」


 私がそう言うと、メアリーさんはいつものソファに移動した。私も移動して、メアリーさんの正面に座る。


「実は、南の砂漠を渡っている最中に流砂に飲まれたんです」

「流砂に!?」


 メアリーさんが驚くが、どう見ても無事な私を見て一旦落ち着いた。


「その流砂に飲まれた後、私達は砂漠の地下に流されました。そこに、大きな都市があったんです」

「都市? 地下都市という事?」

「そうですね。ですが、もう誰も住んでいないので、古代都市という方が近いかもしれません。噴水も止まっていました」

「噴水広場がある都市? アアルの南に都市があるなんて話は、聞いた事がないけど……」

「アガルタという名前なんですが」

「アガルタ……」


 メアリーさんが考え込み始める。この様子だと、メアリーさんはアガルタについては知らないみたいだ。


「私達の移動方法が激しすぎて、引っ掛かったって感じですかね?」

「そうね。これまで砂漠の調査は徒歩で行っていたから、もしかしたらそうかもしれない。どういうところだったか教えてくれる?」


 私は、本格的な探索はまだという事も含めて、自分が見た所感を伝えた。


「そう……何か分かったら教えてちょうだい。こっちでも色々と調べて見るから。書いてあった言語は地底言語で間違いないのよね?」

「はい。間違いないです」

「じゃあ、そっちの文献を調べて見るわ。何が起こるか分からないから、十分に気を付けること。ソルちゃん達にも伝えておいてね」

「はい。分かりました。では、失礼します」

「あら、もう行っちゃうの?」

「はい。屋敷の方にも顔を出しておきたいので」

「それなら仕方ないか。マイアによろしく」

「はい」


 メアリーさんの執務室を後にした私は、自分の屋敷に向かう。

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