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193.道を塞ぐボス!!

 南へとまっすぐ進んでいると、後ろからしがみついているネロが、お腹を軽く叩いてきた。


「ん? どうしたの?」

「川に沿って進まないにゃ?」


 私達は、川ではなく出口からまっすぐ南に向かっている。一応、右側に川は見えているけど、そこに沿った移動はしていない。


「まだしないかな。このままぶつかるようだったら、面倒くさいから川に沿うけど。南に抜けるボスが、どんなモンスターになるか分からないからね。仮に川から現れるモンスターだったら、いきなり奇襲を受けるかもでしょ?」


 ソル達とボスモンスターについて話してから、色々と考えてみると、川からの奇襲が一番怖いと考えた。砂漠の場合は、地鳴りなどで分かるかもしれないけど、川からは、現れるまで分からないからだ。


「なるほどにゃ。気配感知を川に集中させるにゃ?」


 ネロがそんな事を言うものだから、私は驚いて後ろを振り向いた。でも、そこにネロはいない。いつも通り黒羽織の中に入っているからだった。いつも通りすぎて、全く気にしてなかった。


「えっと……二つ訊きたいんだけど」

「にゃ」

「その状態で、周囲の状況を把握出来るの?」

「周囲の気配と肌から受ける感覚と聞こえてくる音で、大体分かるにゃ」

「いつの間にそんな技術を……」


 私には、全く理解出来ないけど、ネロには猫としての感覚もあることだから、私達には感じない事も感じているのかもしれない。今までよりも、それが敏感になっている感じもある。もしかしたら、黒羽織の中から気配を感知している今みたいな経験が活きているのかもしれない。


「二つ目は何にゃ?」

「ああ、ごめん。気配感知を一方向に集中なんて出来るの?」

「最近身に着けたにゃ。気配感知を一方向に集中させると、より正確に気配を掴めるにゃ。ただ、意識も完全に集中させておかないといけないから、その間は無防備になるにゃ」


 私も気配感知を持っているが、ネロのような事は出来ない。気配感知に意識を集中させれば、無意識下の気配感知よりも精度は上がるけど、それも高が知れている。

 恐らく、ネロの言う気配感知の集中は、私のそれよりも、さらに精度が上がったものだ。意識を完全に集中させるらしいから、いつでも使えるわけじゃないけど、かなり重宝するものだと思う。

 ネロのスキル構成から考えると、やっぱりユニークスキルである猫が関係しているのだと思う。集中力で言うならば、精神統一を持っている私が出来ないのはおかしいからだ。


「そうなんだ。じゃあ、今はいいや。周囲の警戒をよろしく」

「にゃ」


 ネロに警戒を頼みながら進んで行くと、川が緩やかに折れ曲がって私達の進路とぶつかった。シエルに、川に沿って進もうと手振りで伝える。シエルは、頷いてプティに指示を出した。


「川に沿ったにゃ」

「うん。プティじゃ、川は渡れないからね」


 川は見た目以上に広く深い。それは、プティが沈んでしまう程だった。月読なら水上を走って渡れなくもないけど、どう考えても面倒くさいので、川に沿っているのだ。

 そのまま川に沿った移動を続けていると、ネロの手がピクッと動いた。


「ボスがいるにゃ」

「川?」

「違うにゃ。砂漠の下に埋もれている感じにゃ。距離は……十メートルくらい前にゃ」

「シエル! 止まって!」


 私の言葉にすぐ反応したシエルが、プティに急ブレーキを掛けさせる。突然の事だったので、メレがバランスを崩したけど、すぐにソルが支えた。


「この先にボスがいるみたい。メレは聖歌をお願い。最初から全力でいこう」


 私がそう言うと、皆が頷いた。メレが聖歌を歌い、ソルが鳴神を纏い、ネロが白虎を使い、シエルがプティを纏って、ムートを起こす。ミザリーは、メレの前に立って、前に手に入れたファラオの杖を持つ。

 全員の準備が出来たところで、ソルがボスに向かって歩き出す。そして、ボスから五メートル離れたところに足を踏み入れると、砂の中から、五メートルくらいの大きさをしたゴーレムが、姿を現した。真っ黒な金属の身体をしていて、名前はアダマン・ゴーレムと言う。


「アダマン・タートルのゴーレム番か。なら、まずはこれかな。『夜烏』!」


 黒闇天で撃ち出した夜烏は、アダマン・ゴーレムに命中する。これで、アダマン・ゴーレムの防御力は下がったはずだ。


「ソル!」

「うん! 『鳴神・一閃』!」


 雷を纏った鳴神の斬撃は、アダマン・ゴーレムに命中したが、小さな傷が付くだけだった。その理由は、アダマン・ゴーレムの足元にあった。そこには、ガラス化した砂があった。


「あいつ、ソルの雷を足元に逃がして、放電してるみたい。雷系のものは通用しないって考えた方が良さそう」

「だね。これだと、鳴神を使わない方が、戦いやすいかもしれない」


 ソルはそう言って、鳴神を解き、白蓮を取り出した。


「シエルちゃん!」

「分かってる! 龍人形術『ドラゴンブレス』!」


 ムートが口から炎を吐き出した。アダマン・ゴーレムは、両腕を交差させるように前に出して、防御姿勢をとった。炎が当てられている腕の部分は赤熱しているけど、まだ融けているようには見えない。アダマン・ゴーレムは、その状態で、少しずつ前に出て来る。

 ムートの攻撃がどのくらい通用するのか確認していた私は、天照を取り出した。


「ネロ! ソル! アダマン・ゴーレムの膝を狙おう! 関節部分は弱いはずだし、相手の動きを完全に止められるはず!」

「分かったにゃ!」

「オッケー!」


 シエルがムートと正面で戦っている間に、私達はアダマン・ゴーレムの動きを完全に止めるために足への攻撃を始めた。


「刀術『百花繚乱』!」


 無数の斬撃が、アダマン・ゴーレムの足を襲う。アダマン・ゴーレムの硬さは、鳴神でも小さな傷しか付けられないくらい硬い。だけど、ソルは、奥義の斬撃を同じところに命中させて、小さいけど少し深い傷を作り出していた。


「『白虎双爪』!」


 ネロも、爪による二撃をその傷に合わせるようにして放った。その結果、一箇所だけ深い傷を作り出す事が出来た。


「銃術『連続射撃・三連』」


 天照から撃ち出された三発の弾が、その傷の部分に命中する。一発目は弾かれ、二発目も弾かれ、三発目で、ようやく傷から罅を作り出せた。


「もう一発……」


 私が照準を合わせようとすると、アダマン・ゴーレムは、ムートからの炎を受けながら、足を後ろに振り上げた。


「! ソル! ネロ!」


 アダマン・ゴーレムの傍にいたソルとネロは、私が呼び掛ける直前に後ろに飛び退くように動き出していた。同時に、砂を蹴って、私達に被せようとしてきた。


「『阻み拒む光の障壁』!」


 私達の前に、光の壁が生み出される。それは、アダマン・ゴーレムが巻き上げた砂を防いだ。


「『着せ替え人形・龍』!」


 シエルは、プティからムートに着替えた。私も天照から須佐之男に入れ替える。天照から入れ替えたのは、私に反動が返ってくるからではなく、あの罅を広げるには、須佐之男を使う方が良いはずだと思ったからだ。

 そして、もう片方の手で黒闇天を握った。


「『夜烏』!」


 黒闇天による夜烏を重ね掛ける。ただそれだけが夜烏を使った目的じゃない。砂が巻き上がった事により、アダマン・ゴーレムの姿が見えないので、ホーミング機能を使って、位置を特定するのだ。その夜烏を追って、シエルが飛び出す。同時に、ネロとソルを先頭にして、私達も突っ込んで行った。二人が先行したのは、私をアダマン・ゴーレムの攻撃から守るためだ。


「『ボルケーノ・スピア』!」


 シエルの攻撃が着弾した音が聞こえる。直後、私達の元にアダマン・ゴーレムの拳が振り下ろされた。その拳は、ボルケーノ・スピアがあったため、炎に包まれていた。


「抜刀術『一刀両断』!」

「『白虎双波』!」


 二人の攻撃が、アダマン・ゴーレムの拳を受け止める。その間に、アダマン・ゴーレムの拳の下を潜り抜け、アダマン・ゴーレムの膝の位置まで跳び上がる。


「銃技『零距離射撃』『一斉射撃』」


 須佐之男内の散弾を全て撃ち出した。この攻撃で、アダマン・ゴーレムの膝に付いた罅が少し広がった。正直なところ、これで膝を壊すくらいまで出来ると思っていたから、少し焦った。


(ほんっとうに、硬い金属だな! ん? 金属?)


 そんな事を考えていると、ネロが飛び込んできた。


「『白虎十字爪』!」


 八撃の爪撃が、アダマン・ゴーレムの膝に命中する。さらに罅が広がる。

 さらに、そこにソルが飛び込んできた。


「刀術『七花八裂』!」


 ソルの奥義が、アダマン・ゴーレムの膝に致命的なダメージを与え、罅が膝全体に広がった。この間に、須佐之男を仕舞い、吉祥天を取り出した。正直、あまり使わないものだから、存在を忘れていた。


「『夜烏』!」


 吉祥天で夜烏を放ち、膝に命中させる。使った弾は、金属溶解弾。アルカディアで使ったきり、全く使う機会がなかったから忘れていた存在だ。いつか作ったものが残っていて良かった。

 夜烏で強化された吉祥天の力によって、薬効が強化された金属溶解弾は、アダマン・ゴーレムの膝を多少溶かした。


「効かなすぎ!」


 アダマンタイトの耐性を舐めすぎていた。もっとどろっといくと思ったんだけど。私は、ダメ押しとして、威力を最大にして、規模を最小にした爆弾を投げる。その爆弾が、本当にダメ押しとなり、アダマン・ゴーレムの膝が崩れた。

 後は、身動きの取れなくなったアダマン・ゴーレムを、ひたすらに燃やし、斬り、爆破し続けた。一時間もやり続けて、ようやくアダマン・ゴーレムを倒す事が出来た。

 そして、私達の目の前には、ボロボロのアダマン・ゴーレムが転がっていた。


「……これ、材料で使えるかな?」

「使えるんじゃない? 中身まで全部アダマンタイトみたいだし。まぁ、ルナが溶かしたところと、私が融かしたところは、使えなさそうだけど」

「金属溶解弾は、余計だったなぁ」

「そうでもないと思いますよ。見て下さい」


 メレが、私が壊したアダマン・ゴーレムの膝を指さす。それを見てみると、表面だけでなく若干中身まで染みこんでいる事が分かった。


「おぉ……見た目には現れてないだけで、結構効果はあったのか……」

「良かったね、ルナちゃん」

「うん。良かった……のか?」


 アダマンタイトを溶かせる事を知ったのは大きな進展だけど、実際、これを使う機会がいつあるのか分からないので、正直なところいい事なのか判断が難しかった。


「まぁ、いいや。回収して先に向かおう」


 砂漠エリアの南ボスを倒した私達は、再び月読とプティに乗って移動を始めた。延々と続いている砂漠を。

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