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189.新技新人形!!

 私達は次のピラミッドに向かうために、ピラミッドから出た。


「さてと、次のピラミッドは……」


 地図を広げて、次のピラミッドの場所を調べる。


「!! ルナちゃん!」

「ん?」


 地図を見ていたら、ソルに声を掛けられて顔を上げる。それで気が付いた。下から氷の槍が飛んできている事に。身体を横にずらして、氷の槍を避ける。


「プレイヤーにゃ! 敵と思わなかったから、報告してなかったにゃ。ごめんにゃ」

「良いよ。プレイヤー全員が敵って訳でもないんだから。私も気にしてなかったし。それにしても、まさかプレイヤーキラーが出るとはね。何かメリットある?」

「そういえば、前のアップデートの一つに所持金を一部奪えるみたいなのが追加されていたような」

「それ本当?」


 聞き返すと、シエルが頷いた。そんな私達に下の方から声が掛けられる。


「有り金と素材を置いていけば、見逃してやっても良いぞ!!」


 下に居るプレイヤーは、十人。装備的に、魔法職が四人で近接職が六人だ。遠距離攻撃は、魔法くらいしかないみたい。この感じだと、初犯じゃなくて継続的にやっていそう。


「蹴散らすにゃ?」


 ネロが爪を出しながら確認してくる。それを受けて皆も武器を手に取る。


「まぁ、それでも良いんだけど……二度と私達に同じ事をしないようにさせたいかな。一々相手にするのも面倒くさいし」

「どうするんですか?」

「こうする」


 私は、天照を取り出して、相手の魔法職の一人に照準を合わせて撃つ。一人の頭が吹き飛んだ。これで倒せるのは、自分の影との戦いで、身に染みて分かっている。

 仲間の一人が無残なやられ方をしたせいで、相手の動きが固まる。その間に、他の魔法職を倒した。四発連続で撃ったため、やっぱり肩が痛む。


「ルナ……むごいにゃ……」

「凄い背筋がゾクッとしたよ」

「あっ、ごめん」


 ミザリーが、若干青い顔になっていたので、謝った。ミザリーのトラウマになった私との戦いもこうして仲間達が一方的に倒されていった感じだったから仕方ない。


「あいつ……もしかして、黒衣の暗殺者か!?」


 そんな声が下から聞こえた。その言葉で、下がざわめいている。あまり嬉しくない二つ名は、どこまで広がっているのだろうか。


「くそっ! こうなったら……!」


 敵の一人が、装備を変えて弓を手に取って、引き絞った。


「あ、大丈夫です」


 メレはそう言うと、軽く歌を歌い始める。同時に、矢が放たれた。その矢は、私に届く事なく弾かれた。


「なっ!?」


 相手の驚く声が聞こえる。


「矢ぐらいでしたら、歌で弾けます」

「おぉ……何かそんな話を聞いた事があるようなないような……確か、遠距離攻撃が効かないとか」

「それは、尾ひれが付いているだけですね。実際は、矢くらいしか弾けません」

「あ、そうなんだ」


 そう言いつつ、リーダー格っぽい人以外の敵を撃ち抜く。障害物も少ないこんな所で喧嘩を売ったのが悪いね。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 最後に残ったリーダー格っぽい人が手を伸ばして、そう言う。


「あっ」


 順番に倒していって、狩られる恐怖を味遭わせようと思っていたので、普通にリーダー格っぽい人にも撃ったのだけど、直後にそんな行動をするから、狙いがズレてしまって、伸ばしていた腕が吹き飛んだ。リーダー格っぽい人は、肩に手を当てて蹲る。

 多分、命乞いでもしようとしたんだと思う。まぁ、聞くつもりはないけど。天照で頭を吹き飛ばして、プレイヤーキラー集団を倒した。


「これで、私達に喧嘩を売ることはないでしょ」

「ルナって、こんな事をミザリーにもやったわけ?」


 シエルからドン引きの視線を受ける。


「さすがに、ここまで酷い事はしてない……と思う。あの時は、ミザリーを倒してはないし」

「そうだね。ナイフを投げられたり、麻酔撃たれたりはしたけど」

「ほらね」


 ミザリーからの援護もあって、シエルのドン引きの視線はなくなった。ここは、すぐに話題を変えるべきだ。


「それにしても、こんな所でプレイヤーキラーに会うって事は、他の所でも増えてるのかな?」

「どうだろう? 先週、掲示板を見た時には、そこまで話題に上がってはなかったよ?」

「それじゃあ、最近増え始めたって感じか」


 ソルの確認も完璧ではないだろうから、もしかしたら一部の掲示板に載っていたかもしれないけど、全体的な話題にはなってなかったみたい。この事から、つい最近からプレイヤーキラーが増えたと考えられる。


「おっ、本当にお金増えてる」


 念のためと思って確認して見たら、少しだけお金が増えていた。


「あの人達は、あまりお金を持ってなかったのかな? こんな少しだったら、普通に稼いだ方が早い気がする」

「お金に困って一攫千金を狙うなら、これが良いって事なんじゃない? サービス開始から結構経って、お金の消費が落ち着いたプレイヤーも多くなっているだろうし」

「ああ、なるほど」


 シエルの指摘で納得する。常に金欠な私とは違って、ソルとかはお金を結構持っていたわけだし、そういう人からならもっと多く貰えるって事なんだろう。


「それじゃあ、気を取り直して、ピラミッドに行こうか」


 プレイヤーキラーを倒した私達は、次のピラミッドへと向かった。その際、ミザリーの顔色が優れなかったので、ネロと交代して、私の後ろに乗って貰った。


「ミザリー、大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ。ちょっと、ルナさんが敵だった時を思い出しちゃっただけ。本当に、仲間に入れて貰って良かったと思ってるよ」


 ミザリーの抱きつく力が少し強まる。


「多分、また同じように襲われたら、同じ事をすると思うんだ。そんな簡単に人が変われるわけないし」

「うん。ルナさんが優しい人って事は分かってるから」

「ただ我が儘なだけだと思うけどね」


 私はそう言いながら、自分のお腹に回されているミザリーの手を上から握る。すると、ミザリーの手がピクッと一瞬震えて強張る。でも、すぐに力が抜けた。ちらっと後ろにいるミザリーを確認してみると、ミザリーがジト目で私を見ていた。


「ルナさんって、本当にたらしだよね……浮気しちゃ駄目だよ?」

「しないよ! なんでそんな話になるのさ!」


 そう言い返してもミザリーのジト目は変わらなかった。全く、私がシルヴィアさんから心移りする事なんてあるわけないのに。

 次のピラミッドも同じように鳴神、白虎、着せ替え人形のおかげで、すんなりと進んでいき、ボス部屋まで辿りつく事が出来た。


「今回は、私が行くにゃ」


 白い毛皮の服を着たネロが、ふんすふんすと鼻息荒くして、手を高くあげ、その場で小さくジャンプしながら、そう宣言した。何だか興奮しているみたいだ。


「良いよ。でも、気を付けてね」

「にゃ!」


 ネロは笑顔で頷くと、ファラオに向かって駆けていく。その間を大量のミイラが邪魔をする。


「『鳴神・聚蚊成雷(しゅうぶんせいらい)』!」


 ソルがミイラの大群に向かって、鳴神を振り下ろす。鳴神は空を斬るが、ミイラの大群には、小さな雷が殺到していく。鉛筆くらいの大きさしかない雷だが、ミイラ達には即死の威力を兼ね備えているらしく、ネロの前のミイラが一時的に消える。

 ソルによって作られたファラオへの道を、ネロが駆けていく。


「そんな技もあるんだ?」

「うん。雑魚処理用の技だから、ボスには通用しないけどね。こうやって、壁を倒して道を作る時には便利でしょ?」

「まぁ、そうだね。見た感じ、ソルが普通に倒すのとほぼ同じくらいの早さかな」

「そうなんだよね。鳴神での移動速度がかなり早いから、技を使って倒すのと自分で移動しながら倒していくのが、ほぼ同じくらいの早さになっちゃうんだ。実際は、技の方がちょっとだけ早いんだけどね」


 そんな事を言っている間に、ネロがファラオに襲い掛かる。


「『白虎双爪』!」


 ネロの爪による二撃がファラオを襲う。最初の一撃が障壁で弾かれ、残る一撃がファラオの身体を引き裂く。私やソルは、ファラオの頭を攻撃したので、即死させる事が出来たが、ネロのこの一撃は、ファラオの身体に命中したので、まだ倒せていなかった。

 ファラオは、ネロに向かって水の弾をいくつも放ってくる。ネロは、その悉くを避けて行く。だが、決して、ファラオから離れることは無かった。


「『白虎十字爪(びゃっこじゅうじそう)』!」


 ネロが十字に空をひっかくと、四重の十字になった爪撃が、ファラオに向かって飛んでいく。白虎双爪が直接攻撃系の技なら、白虎十字爪は、遠距離攻撃系の技みたいだ。その技でファラオの障壁が消えるが、まだ白虎十字爪は残っていた。よく見てみると、四重になっていた爪撃が三重に減っている。つまり、あれは四連撃技という事になる。残りの三撃がファラオに命中して、首、腕、下半身と四分割された。

 ファラオが倒された事によって、ミイラの出現が止まる。ボスを倒したので、私達はミイラ達を掃討した。全部が終わると、白虎を解いたネロが期待の籠もった目をしながら、私に寄ってきた。


「よく頑張りました」


 そう言いながら、ネロの頭を撫でてあげると嬉しそうに喉を鳴らしていた。段々と本当の猫に近づいている気がしてならない。


「それにしても、ネロのあの技も結構エグいね。命中したら、ほぼ確実に四回当たるわけだし」

「にゃ。つい最近覚えたにゃ。ちょっと使ってみたかったのにゃ」

「そうなんだ。もしかして、ソルも最近覚えたの?」


 さっきの技は、私も初見だったので、もしかしたらと思って訊いてみた。


「ううん。大分前に使えるようになったよ」

「あ、そうなんだ」


 ただ単純に使い所がなかっただけみたいだ。まぁ、ボスに通用しないのであれば、私達の前で使うタイミングはなかっただろうし。


「それじゃあ、隠し部屋を探しに行こうか」


 安全に探索出来るようになったピラミッドで、また隠し部屋を探す。今回も何も問題無く隠し部屋を発見して、鍵を手に入れる事が出来た。

 まだ時間も余っていたので、予定通りもう一箇所のピラミッドに向かった。そこも、三人の尽力でボス部屋まで格段に早く向かう事が出来た。そこで、今度はシエルが前に出る。


「ちょっと私も試したい事があるから、やっても良い?」

「良いよ。でも、試したい事って?」

「ちょうど新しい人形が出来たんだ」


 そう言って、シエルはこれまでとは違う少し硬そうな人形を取り出す。硬そうな理由は、表面がつるつるとしているからだ。


「あっ、それって……」

「ルナが考えているので、合ってると思う。『起きて』」


 シエルが起こした人形は、皮膜の張った翼と四本の脚を持ち、硬い鱗で覆われたドラゴンだった。とは言ってもネザードラゴンのように巨大なわけではなく、プティより一回り大きいくらいのドラゴンだった。ただ羽の大きさも含めると、プティよりもかなり大きい。


「ムート! 龍人形術『ドラゴンブレス』!」


 ドラゴンの人形は、ムートという名前らしい。

 ムートは、口を大きく開けると、ミイラ達に向かって炎を吐き出した。ただでさえ乾燥しているミイラ達は、一気に燃え上がった。


「よし。『着せ替え人形・龍』!」


 いつものプティやガーディ風の毛皮服じゃなくて、龍の鱗で出来た鎧みたいなのを着ていた。その鎧には、シエルの身体の大きさに合わせた羽も付いている。

 シエルは、その羽を使って、ファラオまで飛んでいく。


「『ボルケーノ・スピア』!」


 シエルの手に溶岩のような槍が生成される。シエルは、それをファラオに向かって投げつける。これが最初の一撃なので、当然弾かれる。ただ、それが命中する前に、シエルはファラオの真横に移動していた。


「『ドラゴンブレス』!」


 大きく口を開けたシエルから炎が勢いよく吐き出される。先程の槍で、既に障壁は消えている。ファラオに、シエルの炎を防ぐ術はない。ファラオは、勢いよく燃え上がった。そこに、勢いよく振られたシエルの尻尾が襲い掛かり、ファラオの首を刎ねた。

 これでこのピラミッドも攻略完了だ。残りのミイラは、ムートが全て焼き払った。


「……ムートいれば良くない?」


 目の前に広がる地獄のような光景を見ながら、そんな感想が漏れてしまった。


「ちょうど私もそう思ってた」


 持ち主であるシエルも同じ感想を持っていた。


「ただ、ムートの消費魔力って、かなり多いから、あまり長い間使えないんだ。私が一人で使った時は、五分くらいでへばった」

「へぇ~、そんなヤバいんだ。じゃあ、着せ替え人形もすぐに解ける感じ?」

「着せ替え人形は、一分で解けたかな」

「それじゃあ、普通は緊急時に使うって感じか」


 凄い強力な味方が出来た。でも、使える時間は限られているみたいなので、そんなに頻繁には出てこなさそう。

 ファラオの討伐報酬である杖を回収して、隠し部屋を探しに向かい、鍵を回収した。それを終わらせて外に出ると、ちょうど空が赤く染まり始めた頃合いだった。


「おっ、ちょうど良いね。予定通り今日はこれで終わりにして、残り二つは明日にしよう」

「うん。じゃあ、街まで戻ろう!」


 今日はこれで解散し、残りは明日行う事にした。

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