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183.日向の剣道大会観戦(1)!!

二話程現実世界の話になります

 その日の夜。私は、久しぶりにシルヴィアさんと過ごしていた。ちょうど、今日の分の仕事がきりよく終わったらしい。

 私は、シルヴィアさんの膝に頭を載せて、シルヴィアさんの顔を見上げて話していた。


「そうですか。ソル様の剣術大会を観に行くのですね」

「剣術大会っていうと、ちょっと違うと思います。確か、竹で出来た剣を使って、頭と手首とお腹にしか当たり判定がないってルールだったはずですから」

「なるほど。限られた箇所に正確に攻撃を当てる必要があるという事ですね。あまり訓練に取り入れられそうにはありませんね」

「そうなんですか?」

「ええ。私達は、剣術だけでなく、体術なども駆使しないといけませんから」


 確かに、こっちの世界では命のやり取りのための訓練になるし、そこまで限定したルールだと取り入れるのは難しいのかも。


「ルナの良い勉強になるかもしれませんね」

「えっ……!? でも、剣を使った動きですよ?」

「ええ、剣を使う相手との戦いを傍から見るのも良い勉強です。ルナだったら、どう対応するかを考えてみると良いかもしれませんね」


 シルヴィアさんにそう言われて、私は自分が見た事のある日向の動きを思い出した。それは、本当に一瞬で敵を倒していた。私の眼には、その日向の動きを追う事は出来なかった。


「絶対無理だと思います」

「ちゃんと見よう。理解しよう。そういう心持ちが重要なのです。ただ見ただけで理解出来るなんてことは、ほとんどの場合はあり得ないのですから」


 シルヴィアさんは、諭すように私に語りかけた。


「心持ち……」

「はい。これは、ルナの影との戦いにも繋がってきます」

「なるほど」


 私が真剣に考え始めると、シルヴィアさんが頭を撫でてくれる。


「そういえば、シルヴィアさん達のお仕事はどんな調子ですか?」


 ふと気になったので、シルヴィアさんに訊いてみた。


「まだ地下壕を調べている最中ですね。かなり埋まっていますから」

「そうなんですか。もし、ニヴルヘイムに繋がるような物があったら、教えてくれませんか?」

「勿論です」

「やった。ありがとうございます」


 私は、膝枕の体勢から身体を起こして、シルヴィアさんと対面になるように膝に乗る。


「どうしましたか?」


 急に体勢を変えたので、シルヴィアさんも少し驚いていた。そんなシルヴィアさんに抱きつく。


「こうしたかったんです」

「ルナは、時折甘えん坊のようになりますね」

「そう……ですか?」


 自分では、あまり甘えん坊の自覚がないけど、シルヴィアさんから見たらそう見えるらしい。


「ルナの可愛らしいところですね。私は好きです」

「……えへへ」


 思わず顔がニヤけてしまう。そんな私の背中をシルヴィアさんが、触れるか触れないかくらいの力加減でなぞってきた。


「うひゃあっ……!!」


 夜烏や黒羽織では無く、薄手の部屋着なのでそのこそばゆい感覚が背中から身体全体に広がった。


「背中、弱いのですか?」

「い、いえ、ネロが背中に抱きついていた時は、何ともなかったので、その感じで触られるのが苦手みたいです」

「そうですか」


 シルヴィアさんがそう言って背中に手を回したので、私はすぐに膝から退こうとする。しかし、もう片方の手でがっしりと腰を捕まえられているので、逃げる事は出来ない。

 私が懇願するような表情をすると、シルヴィアさんはニコッと笑った。私と一緒にいると、シルヴィアさんはよく笑ってくれるけど、この笑顔は何か違う。これは、恐らく私を可愛がろうとしている時の笑顔だ。それも、私をからかう方面でだ。


「あの……」


 シルヴィアさんは、笑顔を止めない。何か、シルヴィアさんを怒らせるような事をしてしまったらしい。思い当たる事と言えば、ネロが抱きついていたと言った事だろうか。シルヴィアさんからしたら、ちょっと面白くない事だったのかも。

 シルヴィアさんにひとしきり擽られる事になった。


────────────────────────


 そこから土曜日までは、いつも通り個人行動で過ごした。その内、月曜、水曜、金曜の三日は、ジパングで自分の影との戦いに勤しんだ。結果は、あまり芳しくなかったけど。

 そして、土曜日。私は東京にある駅で皆を待っていた。そろそろ集合時間だから、皆も到着するはず。


「朔夜さん?」

「ん?」


 名前を呼ばれたので、その方向を見てみると、見た事の無い女性がいた。茶髪を首元まで伸ばしていて、その先端は少しうねっている。

 見た事ないけど、私の名前を知っている女性。それに心当たりがあった。


「美玲……だっけ?」

「正解! 改めまして、神無月美玲(かんなづきみれい)って言います。よろしくね」

「宵町朔夜です。よろしく」


 神無月美玲と名乗ったこの女性は、ミザリーその人だ。イヤリングやネックレスなどを着けていて、向こうの世界よりも大人っぽい。


「朔夜さんって、高校一年生だっけ?」

「うん。美玲は?」

「大学一年だよ」

「うぇっ!?」


 思っていたよりも年上で驚いた。あっても舞歌くらいの年齢かと思っていたから。


「えぇ……そんなお姉さんだったの? こっちでは敬語の方が良い?」

「そんなわけないじゃん。今まで通りで良いよ」


 美玲は、笑いながらそう言う。


「本当に驚いた。でも、身長はあまり変わらないね」

「うっ……あまり成長しなかったから……まぁ、胸は勝ってるけどね!」

「私は、まだ成長するかもだから、安心するのは早いと思うけどね」

「私だって、まだ成長するかもしれないよ!」


 私と美玲が言い争っていると、


「公共の場で、何馬鹿みたいな言い争いをしてるの?」


 大空の冷たい言葉が、私達に突き刺さる。


「大空、いつの間に来てたの?」

「たった今だけど。それより舞歌は?」

「す、すみません。遅れました」


 そう言ってやって来た舞歌は、サングラスとマスクを着けていて、ものすごく怪しかった。


「舞歌……それどうにかならないの?」

「えっと……マネージャーが、変装して行きなさいって」

「ものすごく怪しいけど」

「そ、そうですか? 一応、カツラとかも持ってきたんですけど」

「ああ……じゃあ、カツラとサングラスだけにしておきな」

「はい」


 舞歌は、一度トイレに行ってマスクを外して金髪のカツラを被って戻ってきた。髪色が変わるだけでも、印象が凄く変わった。


「ど、どうでしょう?」

「うん。良いと思う。それじゃあ、皆の自己紹介もして……どうしたの、美玲?」


 美玲は、舞歌を見て固まっていた。


「な……っ!」


 美玲が口を開いた瞬間に、美玲の口を手で塞いだ。ほぼ確実に舞歌の名前を叫ぼうとしたからだ。まぁ、有名アイドルが目の前に現れたら、驚いて叫びたくもなると思う。まぁ、私は全くならなかったけど。


「ここで騒ぎになったら、まずいから」


 私が小さな声でそう言うと、美玲は縦に二回頷いた。それを見て、美玲の口から手を離す。


「取りあえず、自己紹介は移動しながらにしよう」

「そうだね。ところで、場所は分かってるの?」


 大空にそう訊かれて、私は携帯を振って分かってるという事を伝える。私を先頭にして、移動を始める。


「それじゃあ、さっき出来なかった自己紹介から。私は金井大空。よろしく」

「あ、私は、神無月美玲だよ。よろしくね」


 まずは、大空と美玲が自己紹介をしあう。


「えっと……私の事は分かっているようなのですが、一応。和水舞歌です。よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします!」


 舞歌の自己紹介に、美玲は緊張しながら返事をする。


「そんな緊張しないでもいいのに。メレだって思えば、あまり緊張しないでしょ?」

「メレさんと舞歌さんだと、印象が全然違うし……」


 確かに、舞歌とメレでは、印象が異なる。何故なら、メレの方は髪も眼もピンク色でアニメのアイドル感が強いから。


「まぁ、その内慣れるよ。私達だって、慣れたんだし」

「慣れるも何も朔夜は、舞歌がアイドルだって事も知らなかったでしょ」

「うっ……」


 大空に痛いところを突かれる。ついでに、美玲から信じられないというような目を向けられる。


「あの時、正直悲しかったです」

「もう! 悪かったって!」


 舞歌には、一生このネタで遊ばれそう。

 そんなこんなで、目的地の大会会場に着いた。そこまでの間で、美玲は舞歌が傍にいる事に少し慣れたみたい。まだ、多少身体が硬いけど。


「日向は、どこにいるの?」


 会場内を見回していた大空がそう訊いてくる。


「さすがに、学校の待機場所までは分からないよ。でも、さっきパンフ貰ったから、日向の出番は分かるよ。えっと、あっ、最初の試合が日向だ」

「そうなの?」

「そうなんですか?」


 美玲と舞歌が、私が見ているパンフレットを覗き込んでくる。


「そっちの場所で試合みたいだから、あそこに座ろう」


 私は、観客席の一番前を指さして、皆と席に座る。


「そういえば、日向さんは、どのくらい強いの?」

「私も気になります。剣道部に所属している事は知っていますけど、どのくらい強いのか知らないですし」


 日向と同じ中学じゃない美玲と舞歌が興味津々に訊いてくる。


「確か、全国大会でベスト四じゃなかったかな」

「おぉ、凄いですね。じゃあ、この大会でも勝ち続けそうですね」

「どうだろう? 相手も強くなっているだろうし、まだ分からないんじゃない?」


 中学の時から、対戦相手も成長しているはずだし、そもそも対戦相手が見知った人とも限らない。中学の時に全ての人と戦うなんて事出来ないからね。

 そんな話をしていると、日向が入場してきた。今は、まだ面を着けてなかったので、手を振って応援する。そんな私に気が付いた日向は、笑顔で手を振り返してくる。

 その後は、面を着けて試合場に向かい、一連の行動をしてから、対戦相手を向かい合って立った。その瞬間、背筋がぞっとした。竹刀を握った日向から放たれる気迫が、対戦相手だけでなく私達にまで届いているのだと思う。審判の人も顔が強張っている。対戦相手は、手が震えているからか、竹刀がカタカタと震えていた。


「あ、そうだ。ネロ……じゃなかった。黒江のために動画を撮らなきゃ」


 ネロの本名は、逢坂黒江(あいさかくろえ)という。その黒江に動画を送らないといけないので、携帯を試合場に向ける。


「始め!」


 審判が試合開始を宣言する。同時に、日向は最小限の動きで、相手の竹刀を横に弾く。


「あっ……」


 相手は、手に力が入っていなかったのか、それだけで竹刀を取り落としてしまった。その直後に、日向の竹刀が相手の面に命中した。しかし、それで一本にはならなかった。


「あれ? 何で、日向さんの勝ちにならないの?」


 日向の攻撃が有効打に見えた美玲が、首を傾げていた。


「多分、声じゃない? あれがないと気勢がないってみなされちゃうんだって。正直、声がなくても、さっきの日向は気が満ちていたと思うけどね」


 対戦相手が竹刀を拾って、試合の取り直しになった。再び始まった試合では、日向が気合いのこもった声と共に放った面で一本取って、さらにまた速攻で面を取り勝利した。


「凄い試合でしたね。何というか……一方的でした」

「相手が、ほぼ戦意喪失していたしね。なんか、中学の時に見た日向よりも、威圧感がある気がする」

「日向も成長しているって事でしょ」

「ですね。でも、あれだけ強い日向さんが、中学校の時に優勝していないというのが信じられません。日向さんを打ち倒した方は、どのくらい強いのでしょうか?」


 舞歌は、これから日向が戦うかもしれない強敵の事を考えていた。


「ああ、それ、さっき思い出したんだけど、確かあの時の日向は、途中から高熱だか何だかで、体調が悪かったんじゃなかったかな?」

「何で、そんな状態で戦ってたんだか……」


 大空は少し呆れていた。まぁ、正直なところ、私もそれなら休めって思うけどね。


「そういえば、さっきの日向が成長しているってので、思い出した事があるんだけど」

「何?」

「ユートピア・ワールドをやって、動体視力とか反射神経とか運動神経が鍛えられたって話」


 大空の話を聞いて、私はぽかんとしてしまう。


「それ、本当なの?」

「あくまで噂話だけど」

「噂話かい」

「でも、日向が強くなった理由が、それっていう可能性はあるでしょ」

「そりゃあ、命を賭けた戦いは、何度もしているけどさ」


 日向のあの気迫が、ユートピア・ワールドをやったおかげというのは、ちょっと信じがたい。自分がそんな成長を感じていないというのが大きいのかもしれない。


「私は、ユートピア・ワールドをやってから歌唱力が上がった気がします」


 疑っている私に、舞歌がそう言った。舞歌自身の感覚が正しければ、大空の話が真実になる。


「現実の身体を動かしている訳でも無いのに、現実の身体も鍛えられるって事……? いや、違うか。鍛えられているのは感覚的なものだから、向こうの感覚がこっちの身体に影響しているとか?」

「私の歌唱力に関しても、喉が鍛えられたとかではないですし、その可能性はあり得ますね。そうなると、日向さんは向こうでの死闘で試合における心構えが変わったという事でしょうか?」

「おぉ……私も何か鍛えられてないかな?」


 美玲は、ちょっとした期待を込めてそう言った。


「こっちでの美玲を知らないから、何とも言えないかな。何か特技ないの?」

「何だろう? プログラミングとか?」

「……うん。無理じゃないかな」

「うっ……確かに……向こうでプログラミングする機会なんてないし……」

「ん? プログラミング……?」


 その言葉が、何かに引っ掛かった。


「あ、また日向さんの試合ですよ」

「おっ、動画撮らなきゃ」


 思い出す前に日向の試合が始まったので、一旦思考を中断して、黒江のための動画を撮る。日向はこの試合も速攻で面を二回取って勝利した。


「何というか、他の試合と比べて、駆け引きが見えませんね」

「もう試合が始まる前から駆け引きが始まってるんじゃない? 達人同士は、動かないでも駆け引きしてるみたいな事言うじゃん?」

「そう考えると、ちょっと面白いですね」


 舞歌と大空がそんな話をしているけど、多分、駆け引きにもなっていないんだと思う。日向は、相手が駆け引きをしようと動いた瞬間に、攻撃をしているように見えた。一回戦でもそうだけど、日向の気迫で相手が動じているというのも大きいと思う。

 こうして考えてみると、私もしっかり試合の流れを見れているんじゃないかな。シルヴィアさんには、ああ言ったけど、ちゃんと見れていて良かった。でも、ただ見るだけじゃ駄目だ。ここから、何か得られないといけない。


「日向さんは、しっかりと相手の動きを見ているという感じでしょうか?」

「相手のちょっとした動きから、どんな行動をするのか先読みしているのかもね。日向なら、そのくらい出来そうだし」

「日向さん、凄い」


 その後も日向は、相手に一度も攻撃させずに勝利していき、とうとう決勝まで進んで行った。


「これに勝てたら、優勝だね。ちょっと緊張してきた……」

「私もです……」


 美玲と舞歌は、凄くハラハラした様子で試合場を見ている。


「まぁ、心配要らないと思うよ。日向の集中力は、全く途切れてないし」


 日向は、第一試合から変わらずに、気に満ちている。だけど、それは対戦相手も同じみたい。さすがに、ここまで勝ち上がってきただけある。それでも、私は、今の日向が負けるイメージが出来なかった。

 この試合も黒江に送るために動画を撮る。


「始め!」


 試合が始まると、日向は、またその場で止まって相手の動きを見ていた。その日向の動きをずっと見ていたからか、相手も不用意に動く事はなかった。


「相手もこの短い間に、日向の研究をしていたみたい。これだと、分からないんじゃない?」

「う~ん、それでも、日向は負けないと思うよ」


 日向の勝利を疑わない私に、大空は苦笑いをしていた。

 先に動いたのは、対戦相手の方だった。全く動く気配のない日向に痺れを切らしたのだと思う。日向に向かって近づいていき、鍔迫り合いに持ち込もうとする。恐らく、日向を動かして、隙を作り出すという考えだろう。

 それに対して、日向は後ろに下がる。それを好機と見た対戦相手は、一気に攻めようとする。日向は、その攻撃を予期していたかのようにいなして、距離を取る。自分の攻撃が通用しなかった事に腹を立てたのか、対戦相手はさっきまでの大人しさが嘘のように、果敢に攻めていた。日向は、それを全ていなし続けた。そして、相手が見せた小さな隙を突いて、一本を取る。続いての一本も日向が場を支配して勝ち取った。つまり、日向の優勝だ。


「やった!」

「やりました!」


 私は、隣にいた舞歌と手を合わせて、喜んだ。絶対に日向が勝つとは思っていたものの、やっぱり勝利した姿を目の前で見ると、喜びがこみ上げてくる。女子個人戦と同時に行われていた男子団体戦の全行程が終わったので、今日はこれで終わりだ。

 競技を終えた日向は、まっすぐこっちに向かってきた。


「さくちゃん! さくちゃん! 優勝したよ!」

「見てたんだから、分かってるって。おめでとう。それはそうと、日向はこれからどうするの?」


 一応試合も全部終わったから、今日の大会は、これで終了のはずだ。でも、その後の日向の予定は分かってない。


「多分、先生からの話を聞いてから、解散だと思う。帰りは、私も一緒に行くから! じゃあ、また後でね!」


 日向はそう言って、先生や部員がいる方へと走っていった。


「慌ただしいのは、向こうと変わらないね」


 今、日向と対面したばかりの美玲だけど、向こうと変わらない感じだと知って、少し安堵していた。


「まぁ、あれが日向だからね。取りあえず、日向がああ言っていたし、合流するまで外で待ってようか」

「そうですね」


 私達は、日向を待つために会場の外に出て待つ事にした。それから十分もしないうちに日向が合流する。


「お待たせ! それじゃ、まずは自己紹介だね。私は、日輪日向。よろしくね」

「私は神無月美玲。よろしく」

「美玲ちゃんだね。何だかお姉さんって感じ」

「実際、舞歌よりも年上だから、お姉さんって感じじゃなくてお姉さんだよ」


 私がそう言うと、日向は驚いて目を見開いていた。


「うん。これでも大学生だから」

「うぇ~……びっくりした」

「本当にね。さすがに、黒江は年下だよね……」


 謎の心配に駆られた私は、黒江に今何歳なのかメールをする。


『十三歳だよ』


 という返事が来たので、一安心した。私達は、そのまま帰路につく。


「そういえば、皆、明日は予定あるの?」


 日向が、唐突にそう訊く。


「日向の団体戦を観に行くけど」

「その後だよ。もし、何も用事がなかったら、カラオケとかで遊ばない? せっかく集まれたんだし」

「なるほどね。私は全然平気だけど」

「私も大丈夫です」

「私も平気」


 そう返事をした私達は、一斉に美玲の方を見る。美玲が一番遠い場所に住んでいるからだ。


「私も大丈夫だよ」


 美玲も平気という事で、明日は大会の後にカラオケに行くことが決まった。今日行こうと言わないのは、唐突過ぎるからだと思う。

 そんなこんなで、今日はこのまま帰宅となった。

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