182.ピラミッドへ!!
翌日。私は、ピラミッドに行くために、待ち合わせ場所のアアルの噴水広場にあるベンチに座っていた。
昨日の夜は早く寝たから、いつもよりも早く起きちゃって、色々な家事が早く終わった。おかげで時間が空いたので、いつもより早くログイン出来たのだ。
私は、皆が来るまでの間に、昨日買った地図を見て、ピラミッドの位置などを確認しておく。
「ピラミッド同士は、結構離れているのか。てことは、一遍に回れるのは、二基か三基になるかな。まぁ、全部回る必要があるかは分からないけど」
その他に気になるところは、街の北西にある湖だ。ここから川が流れている感じみたい。その湖からは、もう二つ川が伸びているけど、伸びている先が二つとも北西なので、もしかしたら、湖に流れ込んでる川なのかもしれない。
「ここも調べに行った方が良いかも」
そう口に出した時、ネロがログインしてきた。こっちに気付いたネロは、すぐに私の元に駆け寄ってきた。
「ルナ、早いにゃ」
「ちょっと早起きしちゃって、暇だったからね」
「昨日の地図にゃ?」
「うん。ピラミッドの位置を確認してたんだ」
そう言って、ネロにも地図を見せる。
「こうして見ると、この砂漠は狭いにゃ?」
「ううん。縮尺が小さいから、かなり広いよ。私達は、月読とプティで高速移動しているから、あまり感じないかもしれないけどね」
「この川は、どこに繋がってるにゃ?」
「南に抜けているみたいだし、海に流れてるんじゃない?」
「なるほどにゃ」
川は地図の外まで続いている。そのため、実際にどこまで続いているかは分からない。でも、川だから海もしくは湖まで続いているはず。次にどこかへ移動する場合は、川に沿って移動するのも良いかもしれない。
「あ、皆来たにゃ」
ネロの言葉を受けて、噴水の方を見ると、ソル、シエル、メレ、ミザリーがこっちに向かってきていた。
「ルナちゃん、ネロちゃん、お待たせ」
「にゃ。これあげるにゃ」
ネロは、昨日見つけた魚の干物をソル達に渡していく。
「ん? ありがとう。干物?」
受け取ったソルは、少し首を傾げている。なぜ、干物なのだろうかと考えているんだと思う。シエルとミザリーは、匂いなどを嗅いで本当に食べられるものなのか確認している。メレだけは、受け取ってすぐに口に入れてた。元アイドルがその警戒心のなさはどうなんだろうか。
そのメレを見て、ソル達も口に入れる。そして、ほぼ同時に顔を顰めた。
「何これ……しょっぱすぎだよ……」
「不味くはないんだけど……さすがに、このしょっぱさはキツい……」
「初めての味です……」
「若干病みつきになりそう」
ミザリーだけは、この味を受け入れていた。確かに、好きな人は好きだと思う。
「ふむ。満足にゃ」
「やっぱそんな反応になるよね。それじゃあ、ピラミッドに行こう」
ネロの目的も果たせたので、早速ピラミッドに向かうため街の外に出る。ピラミッドは、基本的に南東部に設置されている。たださっき地図で確認した通り、それぞれのピラミッドはかなり離れていた。
私達は南出口から外に出て、月読に跨がる。直ぐさま後ろにネロが乗る。シエル達もプティに乗ったのを確認してから、発進する。ピラミッド自体は、既に姿が見えているので迷う事はない。ピラミッドに着くまでの間、襲ってくる敵は、これまで通りサンド・ワームとサンド・スコーピオンだけだった。そのため、特に苦労する事なく着く事が出来た。
「おぉ……でかい」
私は、目の間に聳え立つピラミッドに圧倒されていた。
「現実のピラミッドもこんな感じなの?」
「ピラミッドって、百メートル以上だから、似たような感じじゃないかな」
「へぇ~……良く知ってんね」
「何かのテレビ番組でやってたよ」
「へぇ~」
ソルとそんなやり取りをしつつ、月読を仕舞う。
「それで、入口はどこ?」
「えっと、ここのピラミッドは、確か上から四段目くらいの場所にあったはずだよ。ただ、階段はないから、この一段一段を登らないといけないみたい」
「えっ……これを……?」
ミザリーは、ピラミッドを見上げて呆然としていた。それも当然だろう。ピラミッドの一段は、二メートルくらいあるから。
「まぁ、そこまで悲観的にならないでも大丈夫」
私は、ピラミッドの上部に向かってハープーンガンを撃つ。ハープーンが上から二段目に引っかかる。
「ほら、ソル」
「うん」
ソルの腰を抱いて、ハープーンで引っ張る。二人くらいなら、速度も出るので、途中の段にぶつかるといった事もなく、上から四段目に着地する。
「おぉ……」
思ったよりも出力が上がっていたので、驚いた。そして、同時にある事に気が付いた。
「……私、これを五往復するの……?」
「ファイト! ルナちゃん!」
「はぁ……いい事を思いついたと思ったんだけどな」
私は、ハープーンのロックを解除して、下に飛び降りていく。十段くらいずつ飛び降りて、地上に戻り、また一人ずつ上へと運んでいく。
「さて、これで全員運び終えたね。それじゃあ、メレは、聖歌を歌って。シエルは、プティを着て、メリーをメレの護衛に付けて。ソルとネロとシエルで正面の敵を排除。ミザリーは、明かりと回復の準備、それとメレの護衛。私は、後ろから遊撃する」
私が指示をすると、全員が頷く。メレが聖歌を歌い、シエルがプティを纏い、メリーを起こす。同時にミザリーが、周囲を照らすように明かりを灯す。それを確認して、ソルとネロが先頭になってピラミッドの中に入っていった。
中は、幅が広い通路になっていた。巨石を積み上げて作ったものだけど、かなり安定しているし全く崩れそうにない。
「来たよ、ルナちゃん!」
正面を見ると、奥の方からミイラが多数押し寄せてきた。鬼気迫るミイラ達は、通路の幅一杯にいる。そして、その最後尾は全く見えない。誰もクリア出来ていないというのも納得だ。
「皆、下がってて」
そう言って、ソルが前に出る。
「抜刀術『皓月千里』」
ソルが白蓮を抜き放つ。その斬撃の延長線上にいたミイラ達が、上半身と下半身に分かれた。
「ソル、それ使っても大丈夫なの?」
「うん。連続で二回までだったら、大丈夫だよ」
前までは一回使えば、しばらく動けなかったものが、今では二回連続で使えるようになったみたい。
「でも、これじゃあ駄目みたい」
ソルがそう言った直後、ミイラ達の死体を踏み越えて、新たなミイラ達が押し寄せてきていた。
「この感じだと、無限湧きかな。どんだけミイラを作ってるんだか」
「ネクロマンサーみたいな敵がボスだったりしてね」
「二人とも、無駄話はそこまでにして、来るよ」
シエルにそう言われて、私とソルは、それぞれの武器を構える。ミイラ達が、メレの聖歌の効果範囲内入る。すると、ただでさえ鈍い動きをしていたミイラが、さらに鈍くなる。
「おぉ……これが、聖歌のアンデット特効か。でも、ミイラを倒すまではいかないんだね。即死は幽霊のみって事かな。これは、有り難い」
「幽霊が現れたら、ルナちゃんは何も出来ないもんね」
「苦手なんだから、仕方ないでしょ」
私はそう言いながら、韋駄天でミイラ達を撃っていく。聖歌で弱体化しているミイラ達は、この銃弾を一発受けるだけ頭が吹き飛ばされていく。
その私の銃弾をくぐり抜けながら、ソル、シエル、ネロが突っ込んでいく。三人がミイラ達を蹴散らしていくので、少しずつ進んで行く事が出来た。ミザリーが、後方を確認してくれるから、安心して進む事が出来る。
三人が撃ち漏らすミイラを黒闇天で倒していると、壁に一条の線が入っているのが見えた。
「これ……ソルの皓月千里?」
「ソルさんの奥義で傷が付くだけって、結構硬い岩なんだね」
「結構硬いってレベルじゃないと思うよ。今のソルは、白蓮を使っているから、そんじょそこらのものなら両断出来るはず。このくらいの岩なら、確実に叩き斬れるはずなんだけど、線が付いただけっていうのがなぁ……この感じだと、私の爆破物精製でも破壊出来ないだろうし」
「このピラミッドに何か秘密があるって事?」
「かもね。まぁ、それを調べるには、この状況を突破出来ないといけないんだけど」
私はそう言って、また三人をすり抜けてきたミイラ達を倒す。三人が倒してくれて、進んでこられているけど、まだ十メートルくらいしか進められていなかった。
「一日くらい掛かりそう……」
「いや、そうでもないよ。ソル達の戦い方が少しずつ変わってる。ミイラに対して、どういう戦い方が効率的になってきてる。ほら、後ろに抜けてくるミイラがいなくなってるでしょ?」
「え? あ、本当だ」
さっきまで少しずつミイラが抜けてきていたのだけど、それが一体もいなくなっていた。それは、ソル達が効率良くミイラを倒せている事を証明している。そのおかげで、さっきよりも遙かに早く前に進めるようになった。それもこれも、ミイラを弱体化させているメレのおかげだ。
「あっ。ルナさん、あそこ分かれ道だよ」
「ん? 本当だ。ソル!」
「うん!」
ソルが舞うように動いて、分かれ道までの道を確保してくれる。私は、ミザリー達をその場で待つように手振りで伝え、分かれ道を覗く。そこからミイラが出て来ていたら、困る事になるからだ。
幸い、そこからミイラが来る事はなかった。
「私が奥を調べてくる。悪いんだけど、ここで耐えてくれる?」
「オッケー!」
ソルが軽く返事をする。このくらいなら余裕だからかな。私は、全力で分かれ道の奥まで走る。ここで単独行動をするのは、下手にここに入ると、ミイラの軍勢に追われる事になるからだ。
突き当たりまで移動すると、そこには宝箱があった。
「こういう時の宝箱って、モンスターの擬態の可能性もあるよね……」
私は、黒闇天で宝箱の鍵部分を撃つ。それで特に、宝箱が襲ってくるという事はなかった。中を開けて見てみると、そこには大量のお金が入っていた。それらはすぐに私のアイテム欄に入っていく。
「えっと、五万ゴールドか。そこそこのお金だ。六人で割るのは難しいけど」
周囲を見回しても、特に何もないので、すぐに皆の元に戻る。
「お金が入った宝箱だけだった」
「それじゃあ、分かれ道には宝箱がある可能性が高いって事なんだ」
「みたいだね。取りあえず、分かれ道は、帰りに寄る事にしよう。今は、ミイラ達の発生源まで突き進む方が良いと思う」
私がそう言うと、ソル達がまたミイラの軍勢を倒して前に進み出す。途中分かれ道が幾度もあったけど、それらは無視をする。さらに、下り階段を四つ程見つけて、どんどんと下に降りていった。もちろん、その下り階段にもミイラが犇めいていたので、通るのに苦労した。
そうして、二時間程掛けて、ミイラの発生源まで辿り着く事が出来た。そこは、広いホールのような場所で、その最奥に金色のマスクを被った人のようなモンスターが、棺の中で立っていた。
「ファラオみたいなモンスターか。ミイラの王って感じかな。あれが呼び出しているみたいだし」
ミイラは、そこにいるファラオが呪文を唱えることで呼び出している。それも際限なくだ。
「あれを倒せば、これも終わるかな」
私は、天照を取り出して、ミイラの壁の向こうにいるファラオに向ける。そして、引き金を引いた。大気を震わす銃声と共に、銃弾が放たれ、ファラオに向かって飛んでいく。だけど、その銃弾がファラオに命中する事はなかった。間にあったミイラの壁は、難なく貫いていったのだけど、ファラオに命中する直前に弾かれた。何も無い場所で弾かれたので、多分魔法による物理防御か何かだと思う。
「ミザリー。魔法で狙える?」
「狙えるけど、多分、通用しないと思うよ。『万物を貫く清浄なる光』!」
ミザリーが光線を放つ。ファラオに向かって、まっすぐ伸びていく光線は、その間にいるミイラ達に当たって、威力が減衰していった。
「見ての通り、この光線は、モンスターに当たる度に威力が減衰していくの。だから、あのミイラの壁をどうにかしないと駄目。光魔法が百を超えたら、広域浄化魔法を使えるみたいなんだけど」
「無い物ねだりは無し。取りあえず、あの物理無効が、連続して発動出来ない事に賭けるか」
ミザリーの広域浄化魔法は魅力的だけど、今すぐスキルレベルを百にするのは不可能だ。だから、天照を連射する方向で行く。そのつもりでスコープを覗くと、ファラオがこっちに杖を向けていた。
「ヤバっ!」
私は、とっさにミザリーとメレの手を掴んで、メリーの後ろに入る。
「メリー、防御お願い!」
通じるかどうかは賭けだったけど、メリーは私のお願いにも反応してくれて、身体の綿をもこもこと増やしてガード状態になった。そこに、ファラオが光線を放った。
「えっ……どう見ても闇の見た目なのに、光魔法を使うの?」
まさかの光魔法に驚きを隠せない。そんな光線でも、メリーは難なく防いで見せた。その光線が途切れる隙を突いて、メリーから飛び出し、天照で二回撃つ。一発目は、先程と同じように弾かれる。続いて撃った弾は、弾かれる事なくファラオの黄金の仮面に突き刺さった。
ファラオは、一瞬ビクンと身体を跳ねさせてから、力なく崩れ落ちた。同時に、ミイラの無限湧きが止まった。後は、ミイラを殲滅するだけだ。
「ミザリーは、メリーと一緒にメレの護衛をお願い。私は、ソル達を手伝ってくるから」
「分かった」
韋駄天を持った私は、ソル達と共に残りのミイラを殲滅しに掛かる。ものの十分で、百単位のミイラを殲滅した。
「お疲れ様、三人とも」
「結構良い運動になったよ」
「私も接近戦の良い練習になった」
「にゃ」
三人とも疲れたような様子がないので、本当に軽く戦えていたみたい。二時間ぶっ続けだったはずなんだけどね。
私達は、揃ってファラオがいた棺の傍に移動する。ミイラは湧かなくなったけど、念のためメレには聖歌を続けて貰っている。
「メレ、喉は大丈夫?」
念のため確認してみると、ニコッと笑って頷いた。スキルレベルが上がって、喉への負担が消えたのかあるいは、喉に負担の掛からない歌い方のコツとかでも掴んだのかな。
そんな事を思いつつ、棺の中を覗く。そこには、さっきファラオが使っていた杖が入っていた。
「これだけ?」
「みたいだね。これは、ミザリーちゃんのかな」
ソルが杖を取って、ミザリーに渡す。
「ありがとう。これ、光属性強化が付いてるんだ。これ棍棒の代わりになるかな?」
「……それは、さすがに別物なんじゃない?」
「う~ん、まぁ、棍棒はあまり使わないし、基本的にはこっちを持っていれば良いかな」
ミザリーのメインウェポンは、棍棒だけど、基本的には魔法を使うので、杖を使っていても問題無いという事だろう。
「その内、杖術も手に入れるんじゃない?」
「それはそれで良いかも」
ミザリーは、杖をバットのように見立てて素振りをする。
「まぁ、報酬はこれで良いとして、問題は鍵がどこにあるかだけど」
「ルナは、このピラミッドにあると思うにゃ?」
「まぁね」
正直、ここ以外に鍵がありそうな場所もないので、私はピラミッドが怪しいと睨んでいる。
「後は、分かれ道を調べる感じかな。新しいミイラも湧かなさそうだし、安全に調べられると思う。メレももう歌わないで良いよ」
「……はい。分かりました」
メレは、聖歌を止めてのど飴を舐める。歌い続ける事は出来ていても、喉を消耗しないわけではないみたい。
「それじゃあ、分かれ道を探索しよう」
「そうだね。レッツゴー!」
さっきまで戦いっぱなしだったソルは、元気よくそう言うと、元来た道を戻っていく。階層を一つ上がって、分かれ道を曲がって奥に向かう。またまっすぐな道の先に宝箱が一つある部屋に出た。
「中身は……またお金か」
「ルナちゃんが金欠だから?」
「人を貧乏人みたいに……これでも貴族なんですけど」
「や~い、貧乏貴族」
「なんだと!」
唐突にからかってきたシエルを追いかけ回す。そんな馬鹿みたいな事をしている間に、ネロが耳をぱたぱたとさせて、周囲を見回していた。
「ネロ? どうしたの?」
ネロの様子に気付いて訊いた。
「風が抜ける音が聞こえるにゃ」
「!! どこ!?」
ネロは、もう一度耳をそばだててから、一方向の壁を指さす。
「皆、壁を調べて」
ネロが指した壁を、全員で触っていく。ここの壁は、かなり固い。それこそソルでも斬れない程に。もしかしたら、ミザリーのメイスでぶっ壊す事が出来るかもしれないけど、正式な方法で開けられるのであれば、その方が良いに決まっている。
「あ」
ミザリーが声を上げる。私達は一斉にミザリーの方を見た。すると、ミザリーが触ったところが凹んでいるのが見えた。同時に、壁が静かに動いて狭い下り階段が現れた。
「おお! ナイス! ミザリー!」
私は、開いた壁を覗きこんだ。
「結構下まで続いているみたい。狭いところだし、私が先行するね」
「分かりました。聖歌は要りますか?」
「ううん。今はいいや」
「分かりました」
全員に目配せしてから、私は階段を下っていった。片手には黒闇天を握って、いつでも戦闘出来るようにしている。だけど、そんな心配は杞憂に終わった。二分程下りた先に、小さな小部屋を発見したからだ。その中央には、一基の棺が置かれていた。
「……ソル、開けてくれる?」
「うん」
鬼が出るか蛇が出るか。私は、開けた瞬間に敵が出て来る可能性に備えて、黒闇天を棺に向ける。
「いい? いくよ?」
「オッケー」
ソルが棺の蓋を押す。少しずつ棺が開いて中が見えてくる。私は、その中に黒闇天を向けて覗きこむ。
「……特に危険はなさそう。ネロ、手伝って」
「にゃ」
私、ソル、ネロで、一気に蓋を開ける。シエル、メレ、ミザリーも一緒に棺の中を見る。
「鍵……ですね」
メレがそう口に出す。メレの言う通り、棺には鍵があった。むしろ、鍵しかなかった。
「鍵のための棺って事?」
「なんじゃないかな」
シエルは、若干呆れ気味だった。でも、確かにシエルの言う通り、これは鍵のための棺だ。
「でも、こんな小さいもののために、態々こんなでかい棺を用意する?」
ミザリーは、この棺にも秘密があるのではと思っているみたいだ。
「一応、棺そのものも調べておこうか」
私は、そう言いながら鍵を拾ってアイテム欄に入れる。そして、皆で棺をよく調べてみた。でも、特に変わったところはなかった。至ってシンプルな棺だ。
「本当にただ棺に鍵を入れていただけみたいですね」
「何だろう……大切な物を棺に入れる習慣でもあったのかな?」
「さすがに、それはないと思うけど……」
私の考えに、ソルは苦笑いする。
「取りあえず、ピラミッドのダンジョンに鍵がある事は分かったね。後五つのダンジョンで隠し部屋を見つければ、鍵が集められそう。まぁ、全部のダンジョンが、この感じだと時間が掛かりそう。いけても、一日二つが限界かな。今日は、ここだけにして、来週の土日で攻略しようか」
「あっ」
いつも通り土日で攻略するという話を出したら、ソルが声を上げる。
「どうしたの?」
「来週の土日は、剣道部の大会があって、私は一緒に行けそうにないんだ」
「そうなんだ。さすがに、大会をサボるわけにはいかないもんね。ソルがいないとなると、突破が難しいかもしれないなぁ」
シエルとネロだけでも進む事は出来ると思うけど、安全マージンをとるなら、ソルがいた方がいい。
「なら、ソルの大会を観に行ったらいいにゃ」
ネロがそんな提案をする。
「良いの?」
ネロは、家から出る事が出来ない。だから、必然的にネロはお留守番になる。
「良いにゃ。出来れば、動画撮ってきて欲しいにゃ」
「分かった。じゃあ、来週はソルの大会を観に行くって事で。ミザリーはどうする?」
「せっかくだから、私も行こうかな」
ミザリーも一緒に観に行くことに決まった。来週は、ソルの剣道大会に応援をしに行く事が決まった。