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181.久しぶりのシルヴィアさん!!

 スノーフィリアに来た私は、まっすぐ拠点にしていた屋敷へと向かった。段々と暗くなってきているので、良い時間帯だと思う。門番の人にも顔パスで中に入れて貰い、まずはシャルの執務室に向かう。

 扉の前でノックをすると、すぐにシャルから返事が来る。


「どうぞ~」

「お疲れ様、シャル」

「ルナ! 久しぶり!」


 シャルは、机から立ち上がって私に抱きついた。


「久しぶり。仕事の方は大丈夫?」

「大分、マシになったって感じかな。まだ、調査のまとめが残ってるから、王都に帰るのは先になりそうだけどね。まぁ、ルナとシルヴィアで、軽く調べていてくれたから、一からやるより早く終わりそうだけど」

「そうなんだ。厄介事を見つけてごめんね」

「気にしないでって言ったでしょ? どのみちいつかは発見していたんだろうし、早く見つけられてよかったよ」


 シャルはそう言いながら、机に戻っていく。そして、机の上から一枚の紙を取る。


「はい、これ」

「何これ?」


 貰った紙を見てみると、滅びた街の地図みたいに見える。ただ、色々な書き込みがある。


「調査で分かった街の地図。どこがどういう建物なのかとかが書いてある。一応、ルナも持ってた方が良いかと思って複製しといた」

「そうなんだ。ありがとう」


 ざっと地図の書き込みを読んでいく。


「神殿の他に教会らしきもの……埋まっている地下壕……ニヴルヘイムに繋がるものは無し……か」


 アルカディアの権限で浮島に行けた事から、あの街はアルカディアを作った組織のものと考えていた。そして、ニヴルヘイムではアルカディアの権限は使えなかった。つまり、ニヴルヘイムは別の組織が作った物と考えられる。

 ただ、アルカディアの権限で動く様に設定していないだけの可能性もある。でも、あの街にニヴルヘイムに繋がる物はなかった。この事から、その可能性を否定する事も出来る。ちょっと根拠に欠けるけど。


「今は、その地下壕を掘り起こしているところ。そこでニヴルヘイムに繋がる何かがあるかもしれないよ」

「そうなると、ますますアルカディアの権限が使えない事が謎なんだよね。まぁ、あそこのシステムを理解出来ていないのに、分かるはずもないか。ところで、シルヴィアさんはいる?」

「さっき戻ってきたから、今はお風呂にいるんじゃない? 身体を温めてくるようにって言っておいたから」

「そう……シャルの仕事の邪魔だし、部屋に戻ってる」

「えっ!? あ、うん。分かった」


 シャルは、若干落ち込み気味そう言った。せっかく私が来たから、まだ話したいと思っていたけど、実際まだ仕事が片付け終わっていないので、引き留められないって事だと思う。


「じゃあ、また今度来るね。仕事頑張って」

「うん。ありがとう」


 シャルに手を振って、自分に充てられた部屋に入る。シルヴィアさんのお風呂は、そこまで長くないはずだから、二、三十分くらいここで待っていれば良い。ただ待っているだけではあれなので、舞踏術のスキルレベルを上げる事にした。ここで安全に上げられて、スキルレベルが低いのは、舞踏術だったので、これにしたのだ。

 三十分踊り続けていると、部屋がノックされる。


「どうぞ」


 返事をすると、扉が開きお風呂上がりのシルヴィアさんが入ってきた。


「お久しぶりですね、ルナ」

「ご無沙汰してます、シルヴィアさん」


 そんな挨拶をした直後、シルヴィアさんは私の事を抱きしめた。ただ抱きしめる力が、いつもよりも強い気がする。


「シルヴィアさん?」

「すみません。もう少しこうさせてください」

「……はい」


 私もシルヴィアさんの背中に手を回す。メレの言う通り、シルヴィアさんも寂しいと思ってくれていた。その事が嬉しいと同時に申し訳ないと思った。

 そのまま一分程抱きしめ合った後、私達はベッドに腰を掛けた。そして、私が今まで会いに来なかった理由をシルヴィアさんに話した。


「なるほど……そういう事でしたか」


 シルヴィアさんは合点がいったという表情をしてから、私の頭に拳を振り下ろした。


「ふぐっ……」


 メレの一撃よりも、かなり効く一撃だった。


「全く、メレ様の言う通りですよ。一人で何も聞かずに早合点しないでください。あなたが来て下さるのに、私が迷惑と思う事はそうそうありません。仕事でここにいない時もありますが、夜ならいると思いますので、いつでも来て下さって構いません。分かりましたか?」

「はい。すみません」

「よく出来ました」


 シルヴィアさんはそう言って、私の頭を撫でる。その優しい手付きに蕩けていると、シルヴィアさんが立ち上がる。


「本当は、もう少し一緒にいたいのですが、私も仕事が残っていますので、ここで失礼します」

「はい。忙しい中、会ってくれてありがとうございました」


 そう言うと、シルヴィアさんは少しきょとんとしてから、私の頬に手を添えて、キスをしてくれた。


「明日は来て頂けますか?」

「あ、はい。大丈夫です」

「では、夜にお待ちしています」


 シルヴィアさんは、もう一度キスをしてから部屋を出て行った。一人になった部屋で、私はベッドに倒れる。


「……うぅ」


 私は、両手で顔を覆って悶える。自分じゃ分からないけど、絶対に顔が真っ赤だと思う。久しぶりにシルヴィアさんと会えた事もあるが、キスまでしてくれるとは思わなかったから。


「ああ、そうです。一つ確認を……」


 シルヴィアさんが扉を開けて固まる。私がベッドでゴロゴロと悶えていたからだ。

 姿勢を正して、ベッドに座り直す。さっきとは別の意味で顔が真っ赤になっていた。シルヴィアさんは、指を手に当てて笑うのを堪えている。


「確認って何ですか?」


 いじられる前に早く話題に入る。


「そうでしたね。鬼の力の方は、どうですか?」

「ジパングで、力を抑えるために自分の影と戦っているところです。ちょっと手強くて苦戦中ですけど」

「そうですか。ルナ自身と戦って打ち勝つ事が条件なのであれば、私から何も言わない方が良さそうですね」

「えぇ~、アドバイスはくれないんですか?」

「ご自身と向き合うのでしょう? でしたら、私から送れるものはありません」


 シルヴィアさんはそう言うと、私の頭を撫でる。シルヴィアさんの言うとおり、自分と向き合うって事だから、ちゃんと自分だけで挑んだ方が良いのかもしれない。


「良い機会ですから、ルナの戦い方を見直してみると良いでしょう」


 シルヴィアさんのこの言葉で、私はシルヴィアさんがアドバイスをくれない理由を察した。私の影との戦いを私の修行になると考えているみたい。まぁ、確かに良い修行にはなるだろうけど。


「ただし、一つだけ約束して下さい。絶対に無理はしないと」

「分かりました」


 そう言って笑うと、シルヴィアさんも小さく笑う。


「では、今度こそ失礼します。また、明日」

「はい。また明日」


 シルヴィアさんは、今度こそ部屋から出て行き仕事に向かった。


「はぁ……」


 シルヴィアさんに恥ずかしい姿を見られたので、ちょっとだけ凹む。シルヴィアさんは、あまり気にしてなさそうだったけど。


「ジパング行こ」


 シルヴィアさんも仕事に行ってしまったので、日課の自分との向き合いに向かう。今日は、今までと違い、夜烏や黒闇天があるので、良い勝負が出来るかもしれない。

 覚り村に来た私は、まっすぐ神社に入る。


「うっ……」


 来ると分かっていても、この頭痛を防げないでいる。すぐに深呼吸をしながら、溢れ出てくる力を抑え込み、中央の魔法陣に入る。そして、真っ白な空間に飛ばされた。

 正面には、この二週間で嫌になる程見た自分の影がいる。


「それじゃあ、今日こそ、突破させて貰うよ!」


 私は、黒闇天を引き抜き、影に向かって撃つ。影は、私が引き金を引く直前に横に跳んで避けた。その避けた場所に、吉祥天で麻酔弾を撃つ。飛んでくる麻酔弾を黒影で斬る。弾速で言えば、麻酔弾は通常の弾よりも遅い。だからといって、普通はナイフで弾ける物ではないと思う。


「銃技『一斉射撃』!」


 爆破弾を撃ち込む。影は、黒羽織で身体を覆った。連続した爆発が影を襲う。


「リロード術『クイック・リロード』銃技『一斉射撃』!」


 更なる多重爆発が影を襲った。さすがの私も、爆破弾二十発受けたら、無事じゃ済まないと思う。まぁ、実際に受けた事ないから分からないけど。


「『クイックチェンジ』」


 黒闇天から韋駄天に入れ替えて、影がいた場所に向かってグレネードを撃ち込む。爆発で生じた衝撃が、私の身体も叩く。

 それで攻撃を止める事なく、韋駄天で爆煙の中を撃ちまくる。その爆煙の中を横切って、影が出て来る。


「『クイックチェンジ』」


 韋駄天を須佐之男に入れ替えて、影を撃つ。


「!?」


 思ったよりも反動があったので、少し驚く。天照と同じで、今までの銃とは違うというのが分かる。影は、散弾を黒羽織で防いだ。


「黒羽織って、そんなに硬いの!?」


 攻撃を防いだ影は、こっちに黒闇天を構えて引き金を引いた。私も黒羽織を使って銃弾を防いだ。まさか本当に防げるとは思わなかった。


「『クイックチェンジ』『夜烏』!」


 須佐之男から黒闇天に入れ替えて、夜烏を撃つ。同時に、影も夜烏を撃った。夜烏同士がぶつかり合って、相殺される。いつもは、夜烏自体に意思があるから、相手の迎撃も避けるけど、意思のある夜烏同士だと互いにぶつかり合ってしまうみたい。つまり、影との戦いで夜烏は使えない。

 どう戦うかを考え出した瞬間、目の前に爆弾が生まれる。影は、既に黒羽織で身体を守っている。起爆時間は一、二秒のはず。


「体術『円月』!」


 私はサマーソルトキックで、爆弾を上に蹴り飛ばす。しかし、それで十分に離すことは出来ず、爆発を受ける事になった。


「うぐっ……」


 衝撃波で、吹き飛ばされた私は、地面を転がっていくことになる。それでもまだ倒れはしなかった。吹き飛ばされた勢いを利用しながら起き上がると、いきなり視界が暗転した。そして、次に目を開けた時には、また神社の中にいた。


「また負けた……」


 突如の暗転。これは、恐らく天照によるものだと思う。頭を吹き飛ばされたから、何をされたかも分からずに即死したんだ。私は、頭痛を収めるために、神社から離れる。


「私は、自分の装備をちゃんと理解出来てない。対して、影は自分の力を理解している……はぁ……シルヴィアさんの言うとおり、自分の戦い方を見直さないといけないかな」


 今日は、これでログアウトして就寝する事にした。たまには夜更かししないで寝るのも良いしね。

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