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177.いざ砂漠へ

 シャングリラに転移したところでシエルがジト目になって私を見る。


「それにしても、砂漠に古代兵器があるなんて、聞いてないけど」


 メアリーさんのところから戻って、すぐにヘルメスの館に向かったから、解読した話を伝えられていなかった。


「古代兵器かどうかは、まだ分からないよ。でも、砂漠の街にある事と天秤って事は確定だと思う。メアリーさんの解読が間違ってなかったらね」


 私はそう言って、メアリーさんから貰った紙を皆に見せる。


「審判を下すってところが引っかかるね。確か、エジプト神話の死者の審判で天秤が使われていたんじゃなかったっけ?」

「そうなの? よく知ってるね」

「古代兵器が、現実の神話に出て来るものと同じような名前をしていたから、色々な神話を調べてみた事があるんだ。マアトって女神様の羽と死者の心臓を秤に掛けて、心臓が羽より重かったら、怪物に心臓を食べさせちゃうんだって。そうすると、死者の魂は、アアルって楽園にいけず、二度と転生出来ないんだって。この審判をするのは、有名なアヌビスなんだ。あ、ちなみに、アヌビスはミイラ作りの神らしいよ」


 ソルが豆知識混じりに教えてくれた。そんな事まで調べている事に感心していると、シャングリラの外に着いた。そこで月読を出して、黒闇天などを仕舞い、跨がる。すると、すぐにネロが後ろに乗った。その間に、ソル達もプティに乗る。


「それじゃあ、行こうか」


 月読とプティを走らせて、砂漠へと向かう。同時にメレが沈静の歌を歌い始めた。

 出発から少しすると、突然ネロが私の服の裾を引っ張った。


「そういえば、お知らせで前のイベントモンスターの一部を恒常化するって書いてあったにゃ」

「え? そうなの? チェックし忘れてた。ソル達は知ってる?」


 少し大きな声を出して、プティに乗っている皆に訊く。


「うん。私も見たよ。この前のイベントが好評だったんだって。だから、全部とはいかないけど、一部のイベントモンスターを恒常化するってさ」


 ミザリーもネロと同じくお知らせを確認していたらしい。


「イベントに参加してなかったから、ちょっと嬉しいかな」

「倒しに行くにゃ?」

「まぁ、時折倒しに行くのも良いんじゃないかな。アイテムも貰えるし」

「にゃ」


 そんな話をしている間に、砂漠の入口に着いた。皆、ゴーレムは倒しているようで、非アクティブ状態になっていた。


「じゃあ、皆は、遮光マントを被って。暑いからって、フードを取らないように」


 そう言うと、皆は遮光マント被って頷いた。それを見て、私も黒闇天のフードを被り、念のためマスクも上げた。


「それじゃあ、行くよ。多分、月読の後ろに入ったら、砂が撒き散らされるだろうから、基本並走で行こう」

「オッケー」


 シエルの返事を聞いてから、月読を走らせる。

 砂漠の中を走り出すと、やっぱり、かなりの暑さを感じた。それでも最初に来た時程の暑さでは無いので、このまま走り続けても問題はない。多分、遮光マントの効果だけでなく、黒羽織にある温度調節機能が働いているからだと思う。そうなると、ソルも大分マシなんじゃないかな。


「ネロ、大丈夫?」

「大丈夫にゃ……」


 一番身近にいるネロに確認を取ってみると、いつもの元気がなかった。ちょっと心配だけど、この暑さなら元気がなくなっても仕方ない。


「あまり暑いなら、黒羽織の中に入っても良いよ。温度調節機能があるから、普通に日にさらされているより増しだと思う」


 私がそう言うと、ネロは黒羽織の裾を手繰って内側に入り込んだ。背中からネロが息を吐く音が聞こえる。同時に、背中がちょっと暑くなる。ネロが溜め込んだ暑さが背中に伝わっているんだ。私の背中がひんやりとしていたのか、ネロは背中にぎゅっと抱きついてきた。若干暑さが増すけど、仕方ない。


「プティは大丈夫そう?」


 月読は、どんな場所でも走行出来るけど、プティはどうなのかよく分からないので、シエルに確認を取る。


「うん。今のところ問題無し。元に戻した後、砂がどうなってるのかが心配だけどね」

「ああ、洗濯はした方が良いかもしれないね。問題無く走れるなら、このまま行っちゃおう。皆の体調は?」

「私は大丈夫だよ」

「私も平気です」

「大丈夫」

「私も大丈夫。でも、ネロさんは大丈夫なの?」


 黒羽織の中に入り込んでいるネロを見て、ミザリーが少し心配した。ネロは、黒羽織の裾から手を出してサムズアップする。黒羽織の中で、少し回復したみたい。

 そんなネロが一瞬ピクッと動いた。


「後ろの地面の中から、敵が来るにゃ。全部で五体にゃ」

「モンスターが後ろの地面から来る!」


 ソル達にも知らせて、後ろを振り返ると、地面からミミズのようなモンスターが飛び出してきた。その全長は十メートル程ある。それだけでなく幅も二メートル程あった。名前をサンド・ワームという。


「キモっ! デカっ!」


 思わず本音が溢れる。


「『戒めの光よ』『輝く杭の抑圧』!」


 光の鎖と杭が、現れたサンド・ワームを拘束する。


「銃技『複数射撃』」


 後ろを振り向いて、爆破弾を撃ち込む。サンド・ワームの頭(?)を吹き飛ばして倒す事に成功した。弱点は口が付いている部分という事だ。


「そこまでの強さではないみたい。ミザリーの拘束と私の銃弾で、十分に対処出来る」

「でも、メレの歌が通用しないにゃ」

「砂の中だから、音が聞こえづらいとかあるんじゃない?」

「なるほどにゃ。ところで、前にも敵にゃ」

「!」


 そう言われて、前を向くと遠くにキラリと光るものが見えた。それは、サソリの尾っぽだった。名前はサンド・スコーピオン。荒れ地にいたレッド・スコーピオンと同じような見た目だけど、色が違う。周囲の環境に溶け込むような色だ。

 目で見た数は、十体。一体一体丁寧に倒すのは、面倒くさい。


「他の敵は?」

「左後ろからサンド・ワームが二体、右後ろにサンド・スコーピオンの群れが六体にゃ」

「シエル! 速度を上げて!」

「ガーディ『起きて』『人形合体──プティ──』」


 プティとガーディを合体させて、速度を上げる。これで後ろの追っ手を撒けるはず。問題は目の前にいるサンド・スコーピオンの群れだ。

 私は、月読の収納から韋駄天を取り出し、マガジンを入れ替える。


「ネロ。かなり揺れるから、しっかりとしがみついて」

「分かったにゃ」


 私は、ミザリーに目配せする。すると、ミザリーはすぐに頷いた。こっちの意図を察してくれたらしい。ミザリーは、後ろを向く。それを確認してから、月読の速度を上げた。そして、サンド・スコーピオンの群れに突っ込む。相手の攻撃は、レッド・スコーピオンと同じであれば、鋏と尻尾による攻撃のみだ。

 自動操縦を使い、両手で韋駄天を構える。私は、サンド・スコーピオンに向かって引き金を引く。サンド・スコーピオン達に穴が空いていく。マガジン一つ使っても、倒せたのは六体まで。残り四体の内、二体が尻尾を振り下ろしてくる。

 それに合わせて、片手で月読を操り、速度を上げる。サンド・スコーピオンの尻尾は空振りとなった。少し離れたところで、アーニャさんが増やしてくれたグレネードランチャーを撃つ。撃ち出された弾は、尻尾を振り下ろしたサンド・スコーピオンの間に落ち、二体を吹き飛ばした。

 最後の二体は、尻尾を後ろに引き絞った体勢を取っていた。その姿をよく見ると、尻尾の針から液体が垂れていた。


「うげっ……!」


 私は、韋駄天を仕舞って、両手で月読のハンドルを握る。サンド・スコーピオンは、私の読み通り、尻尾の毒液を飛ばしてきた。私は、着弾場所を予想して、月読を蛇行させる事で避ける。連続してばら撒く事は出来ない様で、サンド・スコーピオンは溜めの姿勢を見せた。

 私は、すぐに黒闇天を引き抜いて、マガジンを入れ替える。そして、サッと後ろを向く。黒羽織の中から外に出されたネロが突然明かりに照らされて目を瞑る。そのネロを落とさないように抱きしめて、黒闇天を構える。


「銃技『精密射撃』『複数射撃』」


 サンド・スコーピオンの弱点を撃ち抜く。二体のサンド・スコーピオンは、それで倒れた。これで前にいたサンド・スコーピオンを全部倒す事が出来た。私は、ネロを黒羽織の中に入れながら、前を向き、手早くサンド・スコーピオンを数体回収してから、ソル達と合流した。


「後ろは振り切れたかな。ソル達の方に問題は?」

「ないよ。全員無事。ルナちゃん達こそ、大丈夫?」

「こっちも問題なし。サンド・スコーピオンは、毒液を飛ばしてくるから、気を付けて」

「どういう毒かにもよるけど、解毒の魔法は使えるから、そこは安心して。まぁ、喰らわないこした事はないけど」


 ミザリーがいれば、毒を受けても大丈夫みたい。どんな毒なのかは喰らわないと分からないから、その時じゃないと本当に解毒出来るか分からないみたいだけど。


「大分進んだけど、まだ街は見えずか。この暑さだし、そろそろ喉の心配も出て来そう。皆は、水筒とか持ってきた?」

「うん。砂漠を渡るって話だったから、買っておいたよ」


 私は、屋敷から貰ってきたけど、皆は王都とかで水を買ってきたみたい。これで、喉の渇きの心配はしなくても大丈夫かな。ソルの話だと、喉が死ぬ程乾くみたいな話だったから、警戒はしておいた方が良い。私は、黒闇天のマスクを下げて、水筒から水を飲む。背中から、ネロも水を飲んでいる感覚がする。あまり揺れがないとはいえ、器用な事をしているなと思うのと同時に、その時くらいは外にでも良いんじゃないかとも思っていた。まぁ、ネロが良いのなら良いのだけど。

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