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156.焦炎童子との戦い(2)!!

改稿しました(2022年5月30日)

 こちらに向かってくる焦炎童子に、まずネロが向かって行く。ネロの青白い爪が、黄色に変わっていく。


「『タイガー・クロー』!」


 焦炎童子は腕を交差して、その一撃を受ける。腕には軽く傷が付いていた。


「はっはははははは!! お前も強いな!!」

「うるさいにゃ。『タイガー・インパクト』!」


 キャット・インパクトの倍以上ある猫型の衝撃波が広がる。


「ぐおっ!」


 焦炎童子は、予想していなかった一撃に圧される。そこに、ガーディに乗って、機動力を補ったシエルが迫る。


「『ベア・ナックル』! 狼人形術『ウルフ・ファング』!」


 赤い光を纏ったシエルの拳が、焦炎童子の顔面に命中し、仰け反った焦炎童子の首にガーディが噛み付く。


「うおおおおおおおお!!」


 焦炎童子は、首に噛み付いたガーディの腹を殴って、自分の首から放した。そのタイミングで、私は吉祥天の引き金を引く。私の攻撃は、基本的に焦炎童子に効かない。その事を知っている焦炎童子は防御をしようともしない。

 そもそも私の銃が変わっている事にも気が付いていなかった。

 私が吉祥天で撃ち出した弾は、閃光弾と呼ばれるものだ。これは、何かに着弾する前に、効果を発揮する。撃ち出された弾が、空中で破裂して辺りに眩い光を撒き散らす。


「ぐっ!?」


 一時的に視力を奪われた焦炎童子は、思わず片手で目を覆う。ちなみに、ネロは破裂する寸前、どういう効果があるかを察したみたいで、眼をぎゅっと瞑って、手で覆っていた。おかげで、ネロの視力を奪われていない。

 隙だらけになった焦炎童子に、鳴神を纏ったソルが斬り掛かる。鳴神の一撃は、初めて焦炎童子にまともな怪我を負わせることに成功した。

 ギリギリでソルの一撃を感知した焦炎童子は、腕を盾にしていた。深傷を負わせるだけになったけど、大きな一歩だ。


「ぐははははは!!! 良い!! 良いぞ!! お前達は、本物のもののふだな!! お前達のような者は、久しく会えなかったぞ!!」


 未だ視力が戻っていない焦炎童子は、何故か嬉しそうに笑っていた。さっきから、ずっと同じだ。焦炎童子は、戦いを楽しんでいる。だから、キヨミさん達に、呼び寄せられたんだ。強い者を探して彷徨うから、ジパング全土を渡ることになる。そうなれば、ジパングは壊滅状態になるだろう。

 そんな考察が頭を過ぎっていると、焦炎童子の様子が変わっていった。夜烏によって勢いを失っていたはずの炎が噴き出て、焦炎童子の身体を覆っていく。


「ここからが本番って事……?」

「実体がなくなっているとしたら、本当に厄介だね。ルナちゃん、黒闇天はまだ使えるの?」


 ソルが、黒闇天を見てそう訊いてくる。黒闇天は、先端が若干溶けている。でも、まだ撃てる状態ではある。


「大丈夫。零距離射撃も後一回は使えるよ」

「じゃあ、まだ戦えるね」

「もちろん!」


 私とソルは、同時に駆け出す。ソルは、パチパチと静電気を発すると、凄い速度で移動し始めた。


「銃術『一斉射撃』!」


 ソルが攻撃する前に、氷結弾を状態が変わり始めた焦炎童子に撃ち込む。一気に身体が凍結するが、すぐに蒸発させられた。


「やっぱり、さっきよりも熱量が高い。でも、勢いを衰えさせることは出来る!」


 氷結弾が命中する度に、本当に僅かだけど、炎の勢いが衰えていった。


「はぁっ!!」


 その衰えた一瞬の隙に、ソルが鳴神を振う。その一撃を焦炎童子は、身体を反らして避ける。そう。態々身体を反らして避けたのだ。


「実体はある!! まだ、倒せる!」


 私の言葉に反応して、ネロとシエルが動く。


「『タイガー・クロー』!」

「『ベア・ナックル』!」


 前後からの攻撃に焦炎童子は、片手ずつで対応した。シエルの拳を受け流し、ネロの爪を掴み取る。


「にゃ!?」


 ネロの光の爪を掴んだ焦炎童子は、ネロを投げ飛ばす。ネロは、神社の中に消えていった。


「ネロ!! ミザリー!! お願い!!」

「うん!!」


 ミザリーが、ネロが消えていった方に向かう。


「『ベア・タックル』!!」


 その声で、焦炎童子の方に視線を戻すと、赤い光を纏ったシエルが焦炎童子にタックルをしていた。しかし、それすらも焦炎童子に片手で受け止められてしまった。


「『夜烏』!」


 黒闇天で氷結弾を夜烏にして撃ち出す。夜烏によって、炎を抑えられた経験から、焦炎童子は、夜烏に向けて炎の球を撃ち出した。自分に当たる前に撃ち落とそうという魂胆だろう。

 でも、夜烏は、そんなもので撃ち落とせない。炎の球を避けた夜烏は、焦炎童子の左腕へと命中し、腕を完全に凍結させた。さらに、炎の勢いも衰えた。黒闇天の真価を発揮しつつ、氷結弾の強化もしているのだ。だけど、炎が焦炎童子の身を包んでいる事は変わらない。


「やはり、お前が一番厄介だな!!」


 焦炎童子はそう言うと、陽炎を残して、私の目の前まで移動してきた。予想外の速さに、すぐに反応する事が出来なかった。

 その結果、焦炎童子の蹴りが私のお腹に刺さった。


「うぐっ……」


 まともに受けてしまった私は、地面を転がっていく。お腹が焼け付くように痛い。それもそのはず。夜烏自体は、ちょっと焦げるくらいだったけど、その奥にある私のお腹は火傷を負っていた。

 痛みに耐えて立ち上がろうとすると、既に私の元まで移動していた焦炎童子の右拳が、またお腹に命中する。


「うげっ……」


 私は、また地面を転がる事になる。今度こそ、夜烏のお腹に穴が空いた。夜烏の防御力が高かったおかげで、生身には、火傷だけしか被害がない。ただ、苦しみで、すぐに動く事が出来ない。

 再び私に接近してきた焦炎童子は、既に攻撃態勢になっている。私が動き出す前に、右拳を振り下ろしてくる。


(まずっ……)


 私がそう思うと同時に、肌にピリッとした痛みが走る。


「ルナちゃん!!」


 ソルが身体を雷へと変えて、こちらに落ちてきた。そして、焦炎童子の拳を受け止める。ソルは、しっかりと受け止めているけど、若干力負けをしてしまっている。少しずつ押されていた。


「うっ……はああああああああああああああ!!!!」


 ソルが気合いを入れると、身体が激しく帯電する。すると、力が拮抗し始める。


「ソル! そのまま!」


 私は、ソルの影から黒闇天を構える。


「『夜烏』!!」


 至近距離から氷結弾の夜烏を放つ。焦炎童子は、既に凍り付いている左手を盾にした。左手が更に凍り付く。夜烏の効果を、既に使えない左手で受ける事で、最小限に抑えたのだ。焦炎童子は、構わず右に力を集中させてきた。

 ソルも負けじと力を振り絞って、押し潰されんとする。ソルがやろうと思えば、雷化して逃げることも出来る。でも、それをしないのは、後ろに動けない私がいるからだ。

 二人のぶつかり合いで、辺りに炎と雷が撒き散らされる。そのせいで、シエルも加勢出来ない。メレも聖歌を止める事は出来ないので、ソルの手助けは無理だ。


(早く動けるように、ならないと……)


 そう思っていると、焦炎童子に白い影がぶつかる。それは、白い毛皮の服を着たネロだった。毛皮と同じように黒い毛が白くなっている。


「『白虎双爪』!」


 両方の手から真っ白の光の爪を生やしたネロが、クロスさせるように爪を振う。すると、白い斬撃のようなものが、焦炎童子の身体を走っていく。


「ぐっ……」


 その攻撃が効いたのか、一瞬だけ力が弱くなった。その隙を見逃さず、ソルが焦炎童子の拳を跳ね上げる。


「『白虎双波』!」


 ネロが爪では無く掌底を打ち込む。すると、白い猫型の波動が焦炎童子を駆け巡り、吹き飛ばす。吹き飛ばされた焦炎童子は、神社の中に突っ込んだ。さっきの仕返しのつもりだったのかもしれない。


「すご……」

「ルナさん! すぐ治すよ! 『恵みの泉・彼の者の傷を癒やし賜え』」


 緑色に光った水が、私の火傷に掛けられる。傷口に消毒液を掛けられたような痛みが走る。


「うぐぐぐ……」

「我慢して。火傷の治療は初めてだけど、これで治るはずだから」

「ネロのあの姿は?」


 痛みに耐えながら、焦炎童子に追撃を掛けるネロについて訊いた。一緒にシエルとソルも戦っている。


「実は、ネロさんが吹き飛ばされた先に、白虎の像があったの。それに触れたら、新しいユニークスキルである『白虎』を手に入れたらしいよ」

「ネロの猫に連なるスキルみたいだね。そろそろ大丈夫そう。ありがとう、ミザリー」

「ううん。これくらいしか出来ないから。私が拘束しようか?」

「いや、今までと同じように、回復役で待機して。いざという時、この回復がないと厳しい」

「分かった」


 ミザリーは、素直に頷いて後ろに下がっていった。ミザリーは、自分が役立たずだと考えていそうだけど、実際のところ、ミザリーの回復がなかったら、私とネロは戦線離脱していたところなので、かなり重要な立ち位置にいる。後で、改めてお礼しないとね。

 私は黒闇天と黒影を握って、ソル達の元に向かう。


「ルナ! ガーディに乗って!」


 シエルが、私の接近に気が付いて、そう言った。その直後、ガーディが併走する。私は、ガーディの上に跨がる。


「よろしく、ガーディ」


 私がそう言うと、ガーディがこくりと頷いた。焦炎童子は、ソル達を近づけないために身体の炎を散弾のように周囲に飛ばしている。

 そして、私が近づいてくるのを見るや否や、地面に手を突いた。


「『軻遇突智カグツチ』!!」


 焦炎童子が突いた地面から放射状に罅が広がり、地面から炎が噴き出す。吹きだした炎が龍のようにうねりながら、私達に襲い掛かってくる。機動力がないシエルは、後ろに下がっていった。速度があるネロ、ソル、そしてガーディに跨がった私が焦炎童子に向かって行く。


「銃技『連続射撃・十連』!」


 氷結弾を焦炎童子ではなく、地面に向かって撃っていく。そうやって氷の壁を作っておくことで、炎の散弾と龍から身を守る場所を作り出す。私達はそれを使って、焦炎童子に近づいていった。相手が炎なので、氷の壁もそこまで保たない。すぐに溶かされてしまう。

 でも、その頃には、私達は焦炎童子の傍まで近づいている。


「ここで決める!!」

「うん!」

「にゃ!!」


 私達のそんな声が聞こえたのか、焦炎童子はにやっと笑う。


「面白い!! 全力を出し切ってみろ!!!」


 焦炎童子の身体が、更に激しく燃え盛る。


「銃術『一斉射撃』!!」


 燃え盛る焦炎童子に氷結弾を撃ち込む。焦炎童子は、身体に纏う炎で盾を作り出し、氷結弾が身体に至るのを防ぐ。その横からネロが突っ込む。


「『白虎双波』!!」


 力強い踏み込みと共に、ネロの掌底が焦炎童子に打ち込まれる。白い猫型の衝撃波が焦炎童子に伝わっていく。しかし、焦炎童子も散々やられている手段なので、既に対策もしていた。ネロの掌底が触れる場所に、厚めの炎を用意しておいたのだ。


「にゃ……」


 ネロの手が黒く焦げてしまう。しかし、衝撃自体は、焦炎童子に伝わっているので、無駄には終わっていない。


「ガーディ!」


 私がガーディに呼び掛けると、私を置いてネロの元に向かい、後ろに運んでいった。

 まだ厄介な炎は、焦炎童子を包んでいる。私は、少し離れているソルと目だけで会話して、行動に起こす。


「『夜烏』!!」


 私が放った夜烏は、焦炎童子に真っ直ぐ向かって行く。避ける事は出来ないと分かっているので、焦炎童子は、未だに使い物にならない左腕を前に突きだして、夜烏を受ける。その結果、炎の勢いだけが削がれる。

 その瞬間を見逃さず、雷化したソルが近づく。


「『鳴神・一閃』!!」


 もはや雷と化した鳴神を振う。


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 焦炎童子は、これまでで最大の叫びを上げる。それもそのはず、焦炎童子の身体には今までにないくらいの深い傷が刻まれている。それだけではなく、鳴神による雷の追加攻撃もあるのだ。

 だけど、それでも退かない。右の拳に炎を集中させて、ソルに向かって振り下ろす。

 その前に気配を極限まで消して、近づいた私が、先程胸に刻まれた傷口に棒手裏剣を突き刺す。


「ぐおっ!? ちょこざいな!!」


 焦炎童子の拳の向かう先が、ソルから私に変わる。その前に後ろから青黒い毛皮を纏ったシエルが近づいていた。


「『ウルフ・ファング』!」


 両手を左右に広げ、勢いよく焦炎童子の首を挟む。その爪が、牙のように首に突き立てられたので、焦炎童子は、思わず攻撃を中断する。

 だけど、すぐに背中から炎を噴き出して、シエルを振り払った。


「『鳴神・一突』!」


 直後に、ソルの突きが打ち込まれる。それは、正確に棒手裏剣が刺さっている場所に吸い込まれる。あたかも棒手裏剣が避雷針になったかのように。


「ぐはっ……!!」


 その一撃で、焦炎童子の口から血が溢れる。

 だが、ソルが攻撃した瞬間は、実体化している瞬間ともとれる。それを見逃さず、焦炎童子の拳が振う。焦炎童子の拳は、ソルのお腹に命中して、吹き飛ばした。

 ソルの無事が気になるけど、今は目の前の焦炎童子に集中する。


「体術『衝波』!!」


 突き刺さった棒手裏剣に掌底を当てて、更に奥へと突き刺す。


「ぐっ……おらっ!!」


 焦炎童子は、凍った左手を振って、私を殴り飛ばそうとしたけど、私はその左手をハンドスプリングの要領で、上を通って避ける。

 燃えていなければ、触れても問題は無い。焦炎童子の攻撃を避けた私は、銃口を身体に付ける。


「銃技『零距離射撃』『一斉射撃』!!」


 爆破弾を装填した黒闇天の引き金を引く。私と焦炎童子の間で爆発が連鎖する。衝撃で、少し後ろに押されてしまう。焦炎童子はというと、お腹に大きな傷が出来ていた。


「ふっ、我の勝利だ!」


 勝ちを確信した焦炎童子が炎を集中させて、青白い炎になった右拳を振ってくる。そこに、不可視の衝撃が襲い掛かってきた。衝撃によって、焦炎童子の攻撃が中断される。


「ぐおっ!?」


 衝撃の正体はメレの音の砲撃だ。私の耳にも、メレの叫び声が聞こえた。集中しすぎて、聖歌が止んでいるのに気が付かなかった。


「私達の勝利だよ!!」


 黒影を固く握って、思いっきり踏み込む。そして、棒手裏剣を突き刺した場所に黒影を突き出す。


「短剣術『ピアース・エッジ』!!」


 突き出された黒影は、焦炎童子の身体に根元まで埋まった。


「ぐふっ……」

「体術『二対衝波』!!」


 黒影に向けて撃ち出した掌底によって、黒影は柄まで焦炎童子に埋まる。


「うぐ……」


 さらに追い打ちとして、黒影を引き抜き、その中に威力最大、爆風最大、規模中規模の爆弾を突っ込み、後ろに下がる。私が一歩下がったと同時に、爆弾が爆発した。


「うわっ!」


 爆風で、私も飛ばされる。でも、すぐに何かに受け止められた。誰に受け止められたのかを確認するために視線を上に上げると、そこにはプティの姿があった。

 いつの間にか、シエルと分かれていたみたい。


「ありがとう、シエル、プティ」


 二人にお礼を言って、焦炎童子の方を見る。そこには、身体の左半身を失った焦炎童子が立っていた。


「嘘……まだ生きているの……!?」


 まだ、ギリギリ動ける。私は戦うために立ち上がった。それと同時に、焦炎童子の身体の一部が灰になる。


「!?」


 私が驚いていると、焦炎童子は愉快そうに笑った。


「ふっ、まさか負ける事になるとはな……お前、名前は?」

「ルナ」

「そうか。ルナよ。お前は、まだまだ強くなれる。そこで、一つだけ助言を送ろう」

「助言?」


 突然何を言い出しているんだろうか。そう馬鹿馬鹿しく思ってはいるけど、何故か無視出来ない。


「飲まれるな。己の力として受け入れろ」

「は? どういうこと?」


 私がそう訊くと、焦炎童子はにやっと笑って、完全に灰になった。灰の中からカエデが出て来る。


「カエデ!!」


 私はボロボロの身体に鞭打ち、カエデの元まで走る。カエデは、灰の中で力なく横たわっていた。


「カエデ!!」


 カエデの上体を抱き起こして、呼び掛ける。すると、カエデが少しずつ瞼を開ける。


「ル……ナ……さ……ん……」

「うん。そうだよ」


 カエデは、私を認識すると、小さく笑う。


「助けて……くれて……ありがとう……ございます」

「そんな事、出来ていないよ。カエデを苦しませちゃったから。でも、もう大丈夫だよ。ユートピアに来れば、もう生贄にされる恐れもないから」


 そうやって安心させようとしていると、カエデは首を横に振る。何故、そうしたのか分からない私は戸惑う。


「ルナさんの……お守りの……おかげで……色々と……乗り越えられ……ました……」

「うん。カエデの支えになったのなら、良かったよ」


 段々とカエデが首を振った理由が分かり、涙が零れていく。焦炎童子を呼び出した時点で、もうこうなることは決まっていたんだ。


「最後に……助けに来てくれて……嬉しかったです……だから……ありがとう……」


 カエデは、涙を流しながら私に微笑んでそう言った。


「うん……どういたしまして」


 私がそう言うと、カエデは嬉しそうに笑い、目を閉じる。そして、身体の端から光になって消えていった。


「あ……ああ……うああああああああああああああああああああああああ!!!」


 私は慟哭した。皆も涙を流している。

 どれだけ理想を求めても、必ずそれを掴み取ることは出来ない。今までがうまくいきすぎていただけなんだ。

 私は、この出来事で、自身の理想が必ず実現出来るものではないということを思い知った。失ったものは、元に戻らない。私の心には小さく深い穴が空いていた。

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