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153.ジパングの資料室!!

改稿しました(2022年5月30日)

 部屋の中は、本棚が大量に並んでおり、資料室のようなものになっていた。アルカディアよりも整理がされているので、色々と調べやすい。

 ただ、ここまでの通路や部屋と少し感じが変わっていて、何故か息苦しさを感じた。

 そして、もう一つ他と違うのは、書物が劣化していないという点だ。それらが問題無く読めるであろう事は見て分かる。そのくらい、上の書物とは状態が違う。


「ここは、資料室兼保管室ってところかな。ここなら、有力な情報が集められるかもしれない」


 私はそう言って、資料室の中にある書物の背表紙を見る。そこには、黄金言語で、『ジパング経過報告 一』と書かれていた。その後も『二』『三』と経過報告が続いている。


「ジパングの経過報告が並んでる」

「きちんとまとめているんだね。ルナちゃん、読んでくれる?」

「もちろん」


 私は、経過報告の本を一冊取って、中を読んでいく。そこに書いてあったのは、ジパングの全貌だった。

 ジパングという古代兵器は、この遺跡ではなく、ジパングという島そのものだった。つまり、アトランティスやアルカディアを遙かに凌ぐ大きさの古代兵器ということだ。

 ジパングの効果は、金を含めたあらゆる鉱石の製造というものだった。今までの周囲に害を及ぼす古代兵器と比べて、良心的な能力に思えたけど、よくよく考えてみると、資源をほぼ無限に供給出来るというのは、かなりエグい能力とも言える。

 資源を気にせずに、武器を作り放題という事だからだ。多分、ここはそれを目的として作られているんだと思う。

 これは、錬金術の応用で、そこら辺の土や石の構成元素みたいなのを弄って、別の鉱石を製造していくという方法みたい。これが島中あちらこちらで起こっているために、鉱山が沢山生まれているということらしい。

 私は、これらの事を皆に伝えた。


「この島全体が古代兵器!?」


 シエルは、目を剥いて驚いていた。他の皆も声には出ていないけど、かなり驚いている。


「まさか、金の製造だけでなく、他の鉱石も製造出来るなんて……ですが、これで、ジパングに、多くの職人がいる事に納得が出来ます。黄金郷でも職人街でも、あれだけ密集しているのは、少し違和感がありましたから」


 メレの言う通り、黄金郷や職人街では、異常なまでに職人が集まっている。それは、鉱山が近くにあるシャングリラ以上だった。その理由も、天然の鉱山が近くにあるシャングリラとは比べものにならない程の資源が取れるためとなれば、少しは納得がいく。


「この経過報告は、どこの地域で、どれだけの鉱石が採掘出来たかをまとめているみたい。基本的に、うじゃうじゃ取れているみたいだね。一ヶ月で一億トン取れていた時期もあったみたい」

「もはや規模が分からないにゃ……」

「どの鉱石かにも寄りますけど、かなりの採掘量なのでは? 現実でも年間で五億とかの国はありますが、年間の話ですから」

「それが一年続いたら、十二億……そんな量を何に使うのかな?」


 ミザリーの疑問に皆も頭を悩ませる。職人が多いこの島なら、やっぱり武器でしょと言いたくなるが、そんなに大量の武器を製造して、どうするのかが全く分からない。


「輸出が目的かな? 一つの産業だろうし」

「ああ、なるほど」


 ソルが出した答えに、私は納得する。武器の輸出でお金を稼いで、さらに採掘しているって感じかな。後は、鉱石そのままでの輸出が考えられる。輸入してでも大量の資源が欲しいって思うのは普通だろうし。


「それが古代兵器の量産に繋がるのかな?」

『!?』


 何気なく紡がれたミザリーの言葉に、私達はハッとした。アルカディアやアトランティス、その他の古代兵器も、恐らくは、金属を使ったものがほとんどだろう。特に重要なシステム面は、機械も含まれているはずなので、金や俗にレアメタルと呼ばれる鉱石がふんだんに使われるはずだ。


「元々、古代兵器を量産させるために作られた古代兵器って事になるのか……」

「もはや、兵器じゃなくて施設って感じだけどね」


 シエルの言うとおりだ。今のところ、ジパングに他者を害するような能力は存在していない。なので、これは兵器というよりも、施設と言った方がしっくりくる。


「他に、何か情報になりそうなものは……」


 私は、経過報告の背表紙をざーっと見ていく。経過報告の本が、ずっと続いているので、ジパングは、本当に長い間稼働していたらしい。

 そんな中に、経過報告の本よりも遙かに薄い本が混ざっている事に気が付いた。それを引き抜いて、中を開くと、そこには楽譜のようなものが書かれていた。


「メレ、何か楽譜が混ざってた。読める?」


 特に背表紙も書いていなければ、表紙すらもまっさらになっている楽譜をメレに渡す。


「本当ですね。一応、歌詞も書いているみたいです。歌ってみますね」

「え?」


 私が見た楽譜には、確かに歌詞のようなものも書かれていた。だけど、それは私には読むことが出来なかった。この中で、語学系のスキルを一番持っているのは、確実に私のはず。その私が読めないものを、メレは歌ってみますねと言ったのだ。

 そして、実際にメレは鼻歌などではなく、歌として歌い始めた。つまり、きちんと歌詞を認識出来ているということだ。だけど、メレの喉から発せられているその音を私達は、ちゃんとした言葉として認識出来ない。英語をしっかりと理解していない人が洋楽を聴いているような感じだ。

 それは、メレが歌っている歌が共通言語では無いという事を表していた。

 一分程歌っていると、突如、メレがその歌を止めた。


「どうしたの?」


 メレが歌を止めた理由を訊いてみると、


「新しいスキルを手に入れました」


 なんと、今の歌で新しいスキルを手に入れたらしい。


「なんのスキル?」

「えっと、『聖歌』というユニークスキルみたいです。試しに歌ってみますね」


 すると、今までのバフ系の歌と違う感じがする。力が湧き上がるってよりも、何だか癒やされる感じだ。


「ちょっと資料室の外で、試してみようか」


 私達は、資料室の外に出て、色々と試してみた。結果、メレの聖歌は、HPとMPを回復させるものだということが分かった。ただ、歌っている間だけ、回復し続けるリジェネ系統のものなので、即効性はない。

 それでも、かなり便利なスキルだ。ミザリーの即効性のある回復魔法と並行して使えば、万全な体勢を維持することが出来そう。

 メレが新しい技を手に入れたところで、皆とは別れて調べものをする事にした。私しか、黄金言語を読めないので、皆が資料室にいても意味がないからだ。皆は、他のエリアの見逃しがないかを探しに向かった。

 私は、経過報告以外の本がないかを探していく。見逃しがないように、本は、基本的に回収しておく。この本は、メアリーさんの研究資料になるだろう。

 そうして調べていくと、さっきの楽譜以外に経過報告以外の本がもう一つあった。


「なんだろう、これ? ジパングのものじゃないよね……」


 表紙には、『巫女の祈り場』と書いてある。ジパングに存在するもう一つの古代兵器についての資料みたい。ここに置いてあるって事は、アルカディアとジパングを作った組織と同じ組織が作ったものだと思う。


「まさか二つの古代兵器の資料が見付かるなんて……これはどういうものなんだろう?」


 私は、この資料を読み進める。最初のページに使い道がないため放棄したという風に書いてあった。

 その使い方は、巫女と呼ばれる修行を積んだ者に、三つの遺跡で祈りを捧げさせる。その巫女を生まれた地から遠い場所で、少しの間過ごさせる。

 何の意味があるのだろうかと思っていると、その説明も書いてあった。私の他にも疑問に思う人が出て来ると踏まえての事だと思う。

 その理由は、生まれた地でずっと過ごす事は、心の純粋さを育てる事になるので、その純粋さを汚し、邪さを溜めるためらしい。


「意味分からない……」


 簡単に言えば、心に闇を抱えるとかなのかもしれない。同じ場所でずっと暮らしていれば、その土地の事しか知ることがない。つまり、外の娯楽などを知らずに、生きていく事になる。逆に、外のことを知れば、そっちの誘惑に惹かれてしまう。

 それが、心の邪さを溜めるって事に繋がるんだと思う。誘惑を振り切れたら、あまり意味ないけど。


「あれ? これって……」


 そこまで考えて、この事例がある人物に当てはまる事に気が付いた。


「カエデ……?」


 カエデの言っていた巫女という言葉。これが、この巫女の祈り場に関する事の可能性が出て来た。それに、カエデが一人でユートピアの方にいた理由もこれに当てはまる気がする。

 私は、すぐに続きを読み進めていく。

 そこには、新月の時に生贄に捧げる事で、鬼を降霊すると書いてある。つまり、巫女の祈り場は、鬼を生贄の身に降ろす事が目的って事だ。


「新月の時……昨日の夜は……ほぼほぼ新月に近かったはず……」


 私は、すぐに資料室を出て、皆を探す。すると、一層上のホールに皆がいた。


「皆! ちょっと、話があるんだけど!」

「何か分かったの?」

「ちょっと、別件!」


 私は、今調べた巫女の祈り場の事を皆に話す。唯一、カエデと接点のないミザリーは、少し戸惑っていたが、他の皆はすぐに険しい顔をする。


「すぐに確認しましょう! 今日は新月の日だったはずです!」


 メレが焦りながらそう言う。新月の情報がなかったから、有り難い。


「そうなの!? 皆、職人街に戻って、呪術師の村に転移しよう!」


 私達は、すぐに職人街へと向かった。

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