152.遺跡の最深部へ!!
改稿しました(2022年5月30日)
ソルの刀を手に入れたところで、今日は解散となった。私も夜ご飯を食べるために、ログアウトする。そして、夜ご飯を食べた後、再びユートピア・ワールドにログインした。
私が向かった先は、王城や屋敷では無く、アーニャさんの元。つまり、ヘルメスの館だ。
「あっ、ルナちゃん、おかえり」
「ただいま、アイナちゃん。アーニャさんいる?」
「うん。いるよ。お茶も飲むでしょ?」
「うん」
私がいつもの席に着いて、二人が来るのを待つ。最初に来たのは、アイナちゃんに呼ばれたアーニャさんだ。
「いらっしゃい、ルナちゃん。今日は、武器の調整か何か?」
「いえ、アーニャさんに訊きたいことがあって来ました」
私がそう言うと同時に、お茶の準備を終えたアイナちゃんが席に着く。
「それで、私に訊きたい事って?」
「実は、ジパングで刀匠に出会ったんです」
「それは良かったわね。ソルちゃんの刀は作って貰えた?」
「はい。作って貰ったというよりも、出来ていたものを頂いたという形ですが」
「そう」
アーニャさんは、少しだけ思案顔になった。
ここで、色々な探りを入れても、アーニャさんに対しては無駄に終わるだろう。だから、単刀直入に訊いて、手間を省く。
「アーニャさんって、レンゾウさんという方と知り合いですか?」
私がそう訊くと、アーニャさんは少し間を置いた。
「そうよ。ジパングに行った時に知り合ったわ。その時以来、会っていないけどね。刀についても、その時に教えてもらったわ」
「やっぱり、そうだったんですね」
やっぱり、ネロが聞いた「相変わらずだな」の言葉は、アーニャさんを指していった言葉だということが分かった。
(この若さ(見た目)で、ここまでの知識とか知り合いの多さって凄いと思う。でも、本当に何歳なんだろう。レンゾウさんも若く見えているけど、何か見た目通りの年齢に思えないし)
そんな事を考えていると、アーニャさんが怖い顔をしてこっちを見ていた。私の考えが見抜かれている。年齢の話題は、絶対にやめておこう。
だから、もう少し別の事を訊いてみよう。
「レンゾウさんが遺跡を調べていたんですが、何かご存じないですか?」
レンゾウさん本人に訊いても、気になるからだということしか言っていなかった。それは、本当の事だと思ったけど、別のアプローチから見てみれば、別の事が分かるかもしれない。
「……いや、特に分からないわね」
「そうですか」
この分だとレンゾウさんは、本当にただ興味本位で動いていたんだと思う。他に訊きたい事もないので、そのまま世間話をしてから、王城に向かい、ジパングの報告をしておいた。まだどういうものかは分かっていないので、ただ、古代兵器は見つけたということだけ話しておいた。
メアリーさんも国王様も、無理はしないようにと言っていた。今のところ無理のしようもないから、大丈夫だと思う。
今日は、その報告などを済ませてログアウトした。
────────────────────────
翌日、私達は、再び遺跡へと向かった。今日は、下り階段で下へと向かうルートだ。
私達が降りて行くと、上にあったのと同じホールに出た。ホールは、上と一緒で通路が二つ伸びている。そして、下り階段はまだ続いていた。つまり、最低でも三層の構成になっている事が分かる。
「思ったよりも大きい施設だね」
「確かに、三層以上あるなら、横に広いアルカディアよりも大きさがありそう。ただ、一つの街を内包している分アトランティスの方が、大きいかも」
二層に降りて来たソルとシエルはそう話していた。二人とも、二つの古代兵器を経験している分、大きさの推定が早かった。
「二層も石で構成されているんですね。石を掘って作ったんでしょうか?」
「それなら、かなり長い年月を掛けたんだね」
メレとミザリーは、ずっと石で構成されている面で、色々と話していた。広さよりも石で出来ている事の方が興味あるみたいだ。
「ここも全然音がしないにゃ」
「全体が同じ石での構成みたいだね。それだけ音が出る施設だったのか、音に関する何かをしていたのか。色々考えられそう。まぁ、一番の問題は探索に時間が掛かりそうって事だけどね」
「でも、地道にやるしかないにゃ」
「そうだね。取りあえず、通路を進んでみよう」
私達は、上層で操作室があった方の通路を進んで行く。すると、そっち方面は居住区になっているらしく、また何もない部屋が続いていた。行き止まりまで進んでから、通路を戻って反対方向へと進んでいく。
そっちには、居住区のような部屋では無く理科室のような部屋が続いていた。
「何だろう? 研究区みたいな感じかな」
「でも、何の研究をしていたんだろう?」
「そこら辺に散らばっている資料みたいなので、分からないかな?」
ソルにそう言われて、部屋を見回すと資料みたいなのが、本当に散らばっていた。ただ、そのどれもが操作室にあった本のように劣化している。つまり、読むことは出来ない。試しに、表紙を開いてみたけどバリバリに割れて読めるような状態ではなくなった。
「ダメだ。ここの資料を読むのは無理だね。自分達で色々と考察してみよう」
「そうですね。でも、ここの設備は、完全に壊れていますし、私達だと専門的な器具を見ても、どんなものか分かりませんよ?」
「メレの言うとおりなんだよね……」
私達では、専門的な器具からどういう研究をしてきたかは分からない。ただ、何となくだけど、分析するための器具みたいなのが多いように思えた。
「何かの成分を分析していたのかな?」
「だとしたら、どういうものを分析していたかが問題だね。それにしても……この器具達もディストピア製なのかな?」
「そうなんじゃない。ディストピアの技術力が高いのは、アトランティスやアルカディアを見ていたら分かるし」
ディストピアの技術力には、本当に感服する。現実に似た機械に魔法を落とし込んで、こんな風なものまで作り上げるんだから。
「ここは情報がないから、次の部屋に移動しよう」
私達は、次々に研究区の部屋を見て回ると、一つの部屋に金が落ちていた。実際に見たことはないけど、どこからどう見ても金そのものだ。
つまり、この研究区は金の成分を分析していた可能性が高い。
「ジパング……金……黄金郷……ここは、金を製造する古代兵器なのではないでしょうか?」
「なるほどね。それだと、ここは製造した金を確かめるための施設かもしれないね。他の部屋も探して、情報を集めてみよう」
私達は、研究区の部屋を回っていき、他に情報となりそうなものがないかを探す。しかし、情報になりそうなものは、一切なかった。ただ、他の部屋にも金が落ちていたので、私達の考えは当たりかな。
「研究区の探索は、これで終わりだね。次は、下の階層を調べよう」
「そうですね」
私達は、下の階層へと降りていった。そこよりも下へと降りる階層はなかったので、全三階層で確定だ。三層目は、今までのような通路は、一方にしかなかった。
それまでと違う作りに、少しだけ警戒しながら進んで行くと、これまたこれまでと違い、固く閉ざされた扉を発見した。
「扉にゃ」
「押して開くかな?」
私達の中で力が強いソルとネロが、扉を押すけど、微動だにしない。そもそも取っ手がないので、引っ張ることも出来ない。
(アルカディアと違って、権限を持っていないし、壊すしかないかな)
私がそう思いながら、何となく扉の横に手を置いてみると、私の手が読み取られた。
『え!?』
この出来事に私以外の皆が驚く。私は、アルカディアと一緒だったんだと思ったくらいで、あまり驚かなかった。どうせ、赤く反応して開かないパターンだろうし。
でも、そんな私の予想はすぐに外れた。
『アルカディアの権限を確認。立ち入りを許可します』
そんなアナウンスが流れ、扉が開いた。
「え!?」
これには、さすがに私も驚いた。開かないだろうと思っていたものが開いたからだ。このことから、アルカディアとジパングを作ったのは、同じ組織だったと考えられる。恐らくだけど、アルカディアとジパングで、互いの権利を持つ人も入れるようにしていたんだと思う。
「少し都合が良すぎる気もするけど、中に入ろう」
私はそう言って、皆と一緒に中へと入っていった。