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147.商談とお仕置き!!

改稿しました(2022年5月30日)

 翌日の夕方、私はシルヴィアさんの話にあった商人さんとの商談をしに王城に向かった。メアリーさんの部屋に入ると、メアリーさんとシルヴィアさんの他に、一人の女性が座っていた。

 女性は、私に気が付くとすぐに立ち上がる。


「お初にお目に掛かります。私は、ラメリア・ハウレンと申します。ハウレン商会の会長をしています」


 ラメリアさんは、茶髪を首元で揃えている。その茶色の眼は、全てを見透かすが如く鋭い。


「初めまして、ルナです」

「ルナちゃんも座って」


 メアリーさんが、私に席を勧める。それに従って、席に座ると、それを見てからラメリアさんが座った。私が貴族だから、待っていてくれたのかな。


「それで、モンスターの素材をお売り頂けるというお話だそうですが」

「あっ、はい。冒険者をしているので、モンスターの素材が多く手に入るんです。それを卸させて貰えないかと思いまして」

「なるほど。メアリーゼ様とシルヴィア様のおしゃっていた通りのようですね」


 二人が、ラメリアさんに説明しておいてくれたらしい。おかげでスムーズに話が進みそうだ。


「お持ちの素材を拝見してもよろしいですか?」

「はい」


 私は、妖狐やパック・ウルフ・リーダーなどの素材を取り出して見せていく。ラメリアさんは、その一つ一つをじっくりと見ていく。時折、ルーペを使って細かいところまで調べていた。


「どちらの解体屋をご利用なさっているのでしょうか?」

「えっと、自分で解体しています」

「え?」


 ラメリアさんは、目を丸くして固まった。アキラさんから教わってはいるけど、解体自体は、全部私がやっている。解体術自体、持っている人が少ないから、自分で解体しているっていうのは珍しいから、ラメリアさんが驚くのも無理はない。


「誰に師事を?」

「ユートリアのアキラさんです」

「!!」


 ラメリアさんは、目に見えて驚いていた。アキラさんの名前は、王都でも有名みたいだ。


「なるほど……あの方が、指導なさっているのなら、この状態は納得です。契約についてですが、こちらの方からお願いさせて頂きます」


 ラメリアさんはそう言って頭を下げた。突然の事にオタオタしていると、メアリーさんが笑いながら手助けをしてくれる。


「商談が成立したって事よ。細かいところも打ち合わせて、まとめておいたら?」

「分かりました」


 私とラメリアさんは、細かい部分を詰めていった。約三十分の話し合いによって、私の家に直接来て、素材を買い取っていくことが決まった。それと、基本的な対応は、マイアさんに頼むことになるとも伝えておいた。

 ラメリアさんが来訪して来ても、私がログインしていないと対応出来ないとかにならないようにするためだ。


「では、私は失礼します。ルナ様、これからよろしくお願い致します」

「はい。よろしくお願いします」


 ラメリアさんは、私達に一礼してから部屋を出て行った。


「シルヴィアさん、メアリーさん、ありがとうございました」

「いえ、無事にまとまったようで良かったです」

「本当にね。気に入られたみたいだから、誠実に対応してくれると思うけど、あまり失礼の無いようにね」

「はい」


 その後、私はシルヴィアさんとメアリーさんと他愛のない話をしてから、王城を出て行った。


「さてと、まだ時間があるなぁ。ギルドでクエスト……いや、久しぶりにカエデに会いに行こっと」


 カエデを呪術師の村に送ってから、会いに行っていないので、久しぶりに会いに行くことにした。呪術師の村に転移して、階段を上っていく。


「ふぅ。相変わらず、高い場所だなぁ。あっ、カエデ!」


 上った直後に、カエデの姿を発見して呼び掛ける。


「ル、ルナさん!? どうしたんですか?」


 急に現れた私に、カエデは驚いていた。いつもの巫女服を着ているカエデは、こっちに駆け寄ってくる。


「久しぶりに、カエデに会おうかなって思って」

「そうなんですか。えへへ、ちょっと嬉しいです」


 カエデは、顔を少し赤くして照れていた。態々会いに来たから嬉しいと思っているみたい。こんな反応をしてくれるなら、会いに来た甲斐があったね。


「どう? 何か変わった事はなかった?」

「変わった事ですか? 特に無いですよ」

「それなら良かった。何かあったら、言ってね。何が出来るか分からないけど」


 私がそう言うと、カエデが一瞬だけ顔を強張らせた気がした。


「どうかした?」

「……いえ、何も無いですよ。もし、そんな時が来て、ルナさんが近くにいたら、頼らせてもらいますね」

「オッケー。任せてよ。これでも、そこらの人よりは強いと思うから」

「海賊のほとんどをやっつけている人達を、弱いだなんて思う人はいないと思いますよ?」

「……確かに」


 私達は、襲ってきた海賊達を返り討ちにした。その事は、カエデも知っている事だ。海賊をほぼ無傷で倒しきった私達の強さは、カエデも理解しているみたいだ。


「じゃあ、これ以上お邪魔してもあれだし、もう行くね」

「……はい」


 カエデが少しだけ寂しそうにする。


(何か、心の支えにでもなるものをあげられたら良いんだけど、何かあったっけ……?)


 私は、アイテム欄を見て、カエデにあげられそうなものを探す。結果、分かった事は、人にあげられるようなものを持ち合わせていないということだった。モンスターの素材か、武器か、シャルに貰った服かしかない。


「これとこれをあげるよ」


 私は、カエデにナイフと銃弾をあげる。


「これは……」

「お守り。銃弾は作ったものだけど、ナイフは前まで使っていたものだよ」

「あ、ありがとうございます! 何か、力が湧いてくる気がします」


 銃弾にもナイフにもそんな効果は無い。いや、ナイフはどうなんだろう。王城の宝物庫に置いてあったものだし、何かの曰く付きかもしれない。国王様達が、気が付いていないだけで。それでも、カエデが勇気を貰えるのなら、良いか。


「じゃあ、また来るね」

「はい。また」


 カエデに手を振って、私は呪術師の村から王都へと転移した。その後、私の屋敷に帰る。


「ただいま~」

「おかえりなさいませ、ルナ様」


 すぐにマイアさんが出迎えてくれた。


「今日は、どうなさいますか?」

「書斎を使うかな。後、マイアさんに話があるんだ」

「お話ですか。取りあえず、執務室の方でお待ちください。お茶をお持ちします」

「うん。分かった」


 私は、先に執務室に行き、机に座る。その三分後、マイアさんがお茶を持ってきた。私の前にお茶を置いて、自分は立ったままだった。メイドだと座っちゃいけないとかあるのかな。


「座っても良いよ?」

「ありがとうございます」


 マイアさんは、椅子を持ってきて前に座る。やっぱり、マイアさんは最初に会った頃の気弱な印象がなくなってきている。もう立派なメイド長だ。


「それで、話なんだけど……」


 私は、ラメリアさんと話して決まった事をマイアさんに伝える。


「な、なるほど……」


 さすがに、マイアさんもこれには驚いていた。


「だから、基本的にはマイアさん任せになると思うんだ。屋敷の地下室に、素材を保管出来ないかな?」

「えっと……出来ます。都合が良いことに、あそこは地下室が冷えるような刻印がされていますので、素材が腐るような事もないと思います」

「何でそんな刻印が……」

「身体を冷やすためですね。理由は明言しないでおきます……」


 また、ろくでもない理由なんだなと分かり、追求はしないでおいた。


「では、地下室に案内します」

「うん。お願い」


 マイアさんに地下室へと案内して貰った。地下室への入口は、家の端の方にあった。そこを降っていくと、石造りの地下室に出て来た。中には、何も置いていない。広々とした地下室だった。


「何も無いね」

「全部売り払いました」

「う、売り払った!? 売れたの!?」


 あまり口に出来ない様なものがあったって聞いているから、それが売れたということに驚いた。


「マニアックな人もいるんだね」

「色々な人がいますから。それよりも、どのような素材があるのですか?」

「こんな感じ」


 私は次々に素材を出していく。その十分の一くらいを出すと、マイアさんが止める。


「しょ、少々お待ちください。乱雑に置いてしまうと、何があるか分からなくなってしまいますので」


 マイアさんはそう言って、地下室から出て行くと、巨大なタンスを抱えて帰ってきた。


「!? マ、マイアさん!?」


 私は、すぐに手助けに入ろうとする。


「あ、大丈夫です。私一人で持てますので」

「え!?」


 そう言われてしまうと、手伝いにくくなってしまう。マイアさんは、タンスを地下室の端に置く。


「え~……マイアさん、お風呂入った時は、そんな筋肉質じゃなかったのに……何で、そんな力持ちなの?」

「そ、そうでしょうか? 人よりも力はありますけど、そこまでではないのでは?」

「それはない。ちょっと触らせて!」


 私は、許可を得る前にマイアさんの二の腕を触っていく。


「ぷにぷに」

「見たとおりですよ。特に鍛えているわけではありませんから」

「えぇ……これで、あれが持てるんだもん。すごいなぁ」


 私は、腕の方から段々と身体の方に手を持っていき、胸を揉む。


「ひゃ!?」

「あっ、柔らかい……」

「あ、あの……」

「家主命令! ちょっとだけ触らせて!」

「もはや、ちょっとではないと思うのですが……」


 私は、しばらくマイアさんの胸を堪能していた。そんなとき……


「何をしているんですか、ルナ?」


 冷え冷えとした声が地下室に響く。私は、即座にマイアさんの胸から手を離して、振り向いた。そこには、怖い笑顔でこちらを見ているシルヴィアさんの姿があった。


「シ、シルヴィアさん……何故、ここに……?」

「ルナが、マイアにお伝えせずに帰ってしまうかもしれないと思い、ここまで来たのですが、杞憂だったようですね」

「そ、それは勿論!」


 若干忘れていて、先にカエデの方に会いに行っちゃった事は黙っておこう。


「それで、一体何をしていたのですか?」

「ええっと……マイアさんが力持ちだったので、筋肉を確認している間に、胸の方に手が行ってしまっただけです!」


 堂々と答えれば大丈夫だろうと思い、そう言った。


「なるほど……」


 シルヴィアさんはそう言うと、笑いながら私の前まで近づいて来た。そして、私が瞬きをした瞬間、私の背後に回っていた。


「!?」


 すぐに振り向こうとするけど、その前にシルヴィアさんの手が素早く動いた。その手は、迷い無く私の胸に吸い寄せられていく。


「ふぎゃ!?」

「自分がやられて嫌だと思うことは、あまり人にやってはいけませんよ?」


 私は揉みしだかれながら、何度も頷く。シルヴィアさんは、私が反省したと判断してくれたようで、解放してくれる。


「はぁ……シルヴィアさん、変わりましたね……」

「今までは甘やかしてばかりでしたから、これからは厳しくさせて頂きます」

「えぇ~……」


 あの修行は厳しいものに入らないのかと思ったけど、リリさんの感じから、まだマシなんだろう。でも、シルヴィアさんは、後ろから抱きしめてくれる。こういうところは、優しいな。


「マイアは、ルナからこの屋敷の全権を預かる身です。商談も気を引き締めて行いなさい」

「は、はい!」


 マイアさんは、緊張しながら返事をした。全権を預かるってところが緊張の原因かな。


「その売り上げは、お給料と屋敷に必要なものに当てて。私に還元とかはしなくて良いよ」

「分かりました。より良い屋敷へとしていきます」

「うん。お願い」


 私の貴族としての商売が決まった。これで、屋敷の運営も給料も解決だ。これで、これからもジパングでの探索に集中出来るようになる。


 てか、瞬きの間に背後に回るって、シルヴィアさん、やば……

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