140.二つ目の遺跡へ!!
改稿しました(2022年5月30日)
また一週間の個人行動を終えて、カルデラの物見櫓の広場で集まった。
「今日は、この近くにある遺跡に行くのですよね?」
「そうだよ。あるのは、火山の麓。だから、かなり危険かな」
「噴火したら、一網打尽になるかもって事?」
「そういうこと。メレの砲撃と私の爆発、ソルの鳴神は禁止かな」
「確かに、全部火山を刺激しそうだもんね。特にルナちゃんの爆発は」
ソルの言うとおり、一番火山を刺激しそうなのは私の爆発だ。本当に気を付けないと。
皆が集まった事を確認した私は、ネロの事をちらっと見る。それに気が付いたネロが、小さく頷いた。きちんと、皆に話す勇気が出たみたいだ。
「ちょ、ちょっといいかにゃ?」
「ネロちゃん? 全然良いけど、どうしたの?」
ソルが優しく微笑む。こういうとき、ソルのこの雰囲気は助かる。ネロも話し始める勇気が出てくるはずだ。私は、そういう気遣いが自然と出来ないから、ただただ待つしかなかった。
「実は……」
ネロが自分自身の現実の話を皆にしていく。皆は、ネロの話を黙って聞いていた。
「だから、皆のオフ会には、テレビ電話で参加したいのにゃ……」
「良いけど……それだと、誰かの家でやるって感じ?」
「その方が電波は安定するだろうから、そうだと思う。まぁ、私の家が妥当かな。お母さん達にも了承を取りやすいだろうから」
「じゃあ、その時は、ルナちゃんの家で集まるって事だね。夏休みまでは、お預け?」
「うん。皆が集まりやすい日にしよう」
そんな風に話しながら、ちらっとネロを見ると、嬉しそうに小さく笑っていた。皆が当たり前に受け入れてくれたからだろう。まぁ、ここで受け入れないって人は、そうそういないと思うけど。
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私達は、カルデラから出て、遺跡があるはずの火山の麓に向かっていた。
「今も煙がもくもく出ているにゃ」
「まぁ、活火山だからね。個別行動の時に、少しだけ情報収集したけど、小さな噴火を繰り返しているんだって」
「じゃあ、火山灰が、街に降り積もるんじゃないかにゃ?」
ネロの言うとおり、噴火の際に降ってくるものと言えば、火山灰や噴石だ。だが、それらが街に来てはいなかった。
「今も感じていると思うけど、カルデラの方面から強い風が吹いているでしょ? それで、火山灰とかは、基本的に全部向こうに流れていくんだって。だから、ここの反対側に行けば、沢山の火山灰が降り積もった場所になっているんだと思うよ」
「それはそれで、移動が大変そうにゃ」
「灰が積もった大地って事だもんね。まぁ、月読とプティなら大丈夫だと思うけどね」
そんな風に話しながら移動していると、山の麓に人工的に作ったであろう遺跡が見えてきた。ただ、その遺跡は、半分程、冷えた溶岩のようなもので埋まっていた。
「あれって、ちゃんと調べられるのかな?」
「どうだろう? 本当に溶岩が流れてやられているのなら、多分、中も潰れているよね」
「最悪、掘り起こす必要が出て来そうだね。でも、掘り起こすことが出来そうなのは、ルナさんの爆破弾とかになるんじゃない? そうしたら、また火山を刺激しそうだし……」
「まぁ、それは遺跡の状態を確認してから、考えれば良いよ。取りあえず、周囲から集まってきているモンスターをどうにかしないとね」
今、私達の周りには、尻尾に火が点いている狐が集まってきていた。狐達の名前は、妖狐。妖狐達は私達に追いついてくると、狐火を飛ばして来る。私達は蛇行する事で、狐火を避けていく。
相手は縦横無尽に動き回っているので、月読の銃弾だけでは倒しきれそうに無かった。だから、黒闇天も取り出す。
「銃技『複数射撃』」
十発の弾丸が、横に付けてきた妖狐達を撃ち抜く。さらに、月読の後部から、銃弾を撃ち出して、背後に付いた妖狐達も倒していく。
「『降りしきる光の雨』!」
ミザリーが手を空に掲げると、空から光の弾が雨のように降り注ぐ。妖狐達は、光の弾に何度も当たる事で、脚をもつれさせて転がっていく。火山を刺激しない遠距離攻撃を出来るのが、私とミザリーだけなので、必然的に二人で蹴散らしていくことになる。
五分程戦い続けると、妖狐の群れはいなくなった。
「さすが、ルナとミザリーにゃ」
「ふふん。でも、最近、メレの歌を抜けてくる敵が増えている気がするね。さすがに、先に進み過ぎたかな?」
「それはあり得るかもね。メレちゃんのスキルレベルが、ここの適正値じゃないのかも。ただ、それは、私達も同じかもだけど」
今までは、街を移動する度に、その街に留まって何かするって事がほとんどだったけど、今の私達は、素通りを基本としているので、力が通用しなくなってもおかしくはない。
「まぁ、そこら辺は、どうにかして補っていければ、良いかな」
そんなこんなで、二つ目の遺跡に着いた。遺跡は、遠くからみたとおり半分以上を熔岩が固まったもので覆われている。それには入口も含まれている。
「本当に、埋まってる。さて、どうしようか?」
「取りあえず、周辺を調べてみればいいんじゃない」
「う~ん、シエルの言うとおりにしてみようか。皆、手分けして周辺を探索。メレは、私と一緒に行こう。何かあったら、フレンド通信で連絡して」
「了解」
私達は、皆で手分けして遺跡周辺を探索する事にした。メレは、一人だと危ないから、私と一緒に行動してもらう。他の皆は、一応戦える力を持っているしね。
「ここの柱は、文字も何もないですね」
「無いというよりも、表面が溶けている感じかな」
「噴火の影響で、酸性雨が発生したのかもしれないですね」
「へぇ~……噴火の影響で酸性雨になるんだ?」
「火山ガスの中に含まれている二酸化硫黄が雨や霧や雪に溶け込んで強い酸性のものになるんです。ちなみに、工場の廃棄ガスなどにも硫黄酸化物や窒素酸化物が含まれていて、これも酸性雨の原因になります」
私が、ぽかんとしていると、メレが簡単に説明してくれた。
「よく知っているね」
「予習復習は大事ですよ?」
「私、一夜漬け派」
「それで成績を維持出来る方がおかしいですよ」
「やらないといけない勉強はしっかりとやるからね。実際は、ソルの方が異常だよ。授業だけで、ほとんど理解してテスト勉強なんて軽くしかしないんだから」
本当にソルは、何でもそつなくこなす。テストも簡単に高得点を出していたし。
「羨ましいです」
「本当にね。まぁ、それよりも手掛かりだよ。ここら辺の柱は、全部酸性雨のせいで溶けて、何も読めない状態になっているし、次は遺跡本体の方を見てみよう」
「分かりました」
私とメレは、遺跡本体を調べていく。
「何か文字見付かった?」
「いえ、こちらもほとんどが溶けているようです。長い間、さらされ続けたのかもしれませんね」
「はぁ……取りあえず、皆が戻ってくるのを待とう」
「そうですね。その間、少しでも削っておきますか?」
「スコップとかピッケルは無いから、何か適当なもので掘れないか試してみようか」
そう言ってアイテム欄の中を見ていると、メレが、得意げな顔をしながら、隣で大きなスコップを持っていた。
「何で持ってるの?」
「王都で見つけたときに、何かに使えるかなと思いまして」
「……メレって、結構無駄遣いするタイプ?」
「違いますよ。今だって、役に立ちそうじゃないですか」
「結果的にはだけどね。まぁ、いいや。私がやるよ。メレよりも力はあるから」
「そうですね。お願いします」
私は、メレからスコップを受け取って埋まっている部分を掘ろうとする。しかし、振ったスコップは、呆気なく弾かれてしまった。
「硬っ!!」
「岩ですからね」
「ちょっと傷は付いているみたいだけど、掘るのは無理そう」
「そうですか……やはり、発破しかなさそうですね」
「はぁ、二番目の遺跡は諦めよう」
「そうですね」
私とメレは、皆が戻ってくるまで、色々な方法で足掻いたけど、結局岩を破壊する事は出来なかった。そして、最初に帰ってきたのは、ネロだった。
「遺跡の裏の方には、何も無かったにゃ。火山を登るだけになったにゃ」
「上から見下ろす事は出来た?」
「出来たにゃ。でも、遺跡の上は、完全に塞がっていたにゃ。そこから入る事は出来なさそうだったにゃ」
「ダメか~」
別の方法で入れるかと思ったけど、ネロの話を聞く限り無理そうだ。次に帰ってきたのは、ミザリーとシエルだった。
「向かって右に向かったんだけど、得に何も無かったよ。私は、その後、火山に登ったんだけど、そこも何もなかったよ」
「私は、火山を迂回する形で、ガーディに乗っていったんだけど、遺跡らしいものも何も見付からなかった。これが、目的の遺跡って可能性が高いと思う」
「ダメか~」
シエルは、この遺跡が目的地じゃないという可能性も疑って探索してくれていた。でも、その可能性もないみたいだった。
最後に、ソルが帰ってきた。
「左側に行ったけど、何も無かったぁ……」
「ソルもダメか。じゃあ、やっぱり諦めよう!」
「ルナちゃんが諦め良いと、何か怖いね」
「失礼な。本音を言えば、諦めたくはないけど、諦めないと前に進めないし、仕方ないよ」
ここで、この遺跡に執着していても先には進めない。私の目的は、古代兵器であって遺跡じゃない。情報がない遺跡なら、そもそも用はないのだ。
「それじゃあ、このまま北に移動しよう!」
『おー!』
私達は更に北へと進んでいく。だけど、私達は気が付かなかった。火山に不穏な動きがある事に。