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139.貰った屋敷!!

改稿しました(2022年5月30日)

 翌日、私は屋敷を確認するために、マイアさんと合流した。どちらも場所を知っている王城前での待ち合わせだ。


「マイアさん、こんばんは」

「こんばんは、ルナ様。お待ちしておりました。早速、屋敷の方にご案内致しますか?」


 マイアさんは恭しくお辞儀をしながら、そう言った。少し前までのマイアさんとは大違いだ。この前会ったときは、もっとおどおどとしていた気がする。

 私も、主君らしく口調を改めておこう。


「マイアさん、何だか、少し変わったね?」

「そ、そうでしょうか?」


 私がそう言った瞬間、元々のおどおど感に戻ってしまった。


「あ、気のせいだった。マイアさんは、もっと自信を持っても良いと思うよ?」

「うぅ……頑張ります」


 そんな風に話しながら、マイアさんに案内して貰っていくと、大きな屋敷の前で止まった。その屋敷は、一般的な一軒家の十倍くらいの大きさがあり、四階建てとなっていた。正直、圧巻だ。


「ここが、ルナ様の屋敷です」

「え……でか……」

「一応、ルナ様がご使用為される居室などの掃除は終わっています。今は、地下室の掃除で苦戦しているところですね」

「へぇ~、マイアさんが一人でやっているの?」

「いえ、他に三人のメイドが働いています」


 さすがに、一人での掃除ではないみたい。まぁ、それでも三人だけみたいだけど。


「お給料も用意しないとだよね。どういう形で、渡せばいいの?」

「そうですね……一度、私が預かって分配する形にしますか? その方が、ルナ様も楽だと思います」

「それが確実かな。ネコババはダメだよ?」

「わ、分かってます! そんな事はしませんよ!」


 取りあえず、マイアさんに渡して他のメイドさんに分配して貰う方式の給料になった。これに関しては、マイアさんを信用する事にした。何か問題があったら、他のメイドさんからも報告が上がるだろうという考えもあるけど。


「では、中にどうぞ。ルナ様のお屋敷をご案内します」

「うん。お願い」


 敷地内に入ると、まずは前庭があった。ただ、前庭は、微妙に荒れていた。


「申し訳ありません。中の掃除を優先していましたので、庭の手入れは、まだ行っておらず……」

「ううん。全然良いよ。家の掃除の方が大変だっただろうし、任せている以上、私が文句を言うことはないよ」

「ありがとうございます」


 これだけ広い家の中を、徹底的に掃除していたら、前庭の方が疎かになっても仕方ない。そんなこんなで、初めて屋敷の中へと脚を踏み入れた。

 入ってすぐにあったのは、階段だった。入口の正面に階段がある。ただ、その前に大きなホールみたいな場所があった。


「ここが玄関です」

「ここが玄関!?」


 ホールみたいと思った場所は、玄関だった。私の常識からは、かけ離れている。


「でも、あそこにソファとか置いてあるよ?」

「応接室を用意するまで、来客にお待ちいただくときや応接室に案内する必要のないお客様と話すのに使います」

「えっと、その違いってどう分けるの?」

「あっ、すみません。そこまでは分からないです」

「じゃあ、シルヴィアさんとかに訊いておかないとだね。メモしておこう」


 これから、ここを使う上で、必要な事をメモしておくことにした。後で、シルヴィアさんやリリさん、ミリアに訊けば、色々と教えてくれるだろう。


「一階には、応接室や浴場があります。そして、二階に吹き抜けとなっている書斎もあります。書斎の本に関しては、青薔薇騎士団が検閲をして問題のないものだけ残されました。五分の一程が持っていかれましたが、その他は残っています」

「ふむふむ」

「まずは、浴場の方から案内しますね」


 そう言われて案内された浴場は、館の半分くらいを埋める程の大きさだった。


「……何これ?」

「浴場です。前の持ち主が、お風呂好きということもあって、かなりの大きさになっています。愛人の方々とご利用なさっていたらしいです」

「うぇ……」

「ご安心ください。既に、隅から隅まで磨き上げてあります」


 マイアさんが笑顔でそう言った。ここを隅から隅までなんて、大変だっただろうに。


「そうなんだ。マイアさん達って、この屋敷に住むわけでしょ? メイドの皆にも、自由に使って良いって言っておいて」

「良いんですか!?」


 マイアさんは、何故か驚いていた。


「それならそれで、時間を決めて頂いても良いんですよ?」

「いいよ、いいよ。こっちの世界に、ずっといるわけでもないし、皆の方が長くいるだろうから」

「分かりました。一応、今からでも入れますけど、入っていかれますか?」

「う~ん、屋敷の説明が全部終わってからにしようかな」

「分かりました。では、次は書斎です」


 マイアさんは、浴場とは真反対の方向に向かう。書斎は、浴場から離れた場所に作られているみたい。湿気対策とかかな。


「こちらです」


 マイアさんの後に続き中に入ると、そこには学校の図書室を遙かに凌駕する書斎があった。


「広すぎ……」

「色々な書物を集めていたみたいですからね。図書館にない書物もあったみたいです。今残っているものに含まれているか分かりませんが」

「へぇ~、色々と調べてみる必要がありそうかな。ここはもう良いよ。今度来たときに調べて見るから。次に行こう」

「はい。応接室はご覧になりますか?」

「う~ん、今度でいいや」

「分かりました。では、二階ですね」


 私とマイアさんは、二階へと移動した。


「二階は、先程の書斎と食堂のみです」

「へぇ~、じゃあどっちも半分半分くらいなんだね」

「食堂の方は、二種類ありまして、ルナ様が使用される小さめのものと客人を招くための大きめのものになります」

「ああ……パーティーを開く時って事ね。使う機会はなさそうかな」

「いえ、きっと使う事になりますよ。そのために、掃除も済ませてあります」

「うへぇ~……嫌だなぁ」


 私は、本当に嫌だという顔をする。それを見て、マイアさんは、小さく笑った。


「貴族としてのものもあるかと思いますが、王城から国王様達がいらっしゃる事もあると思いますよ」

「あっ、そういうことか。それなら、仕方ないかな」

「はい。では、三階に向かいましょう」

「うん」


 次に三階へと上がっていった。


「ここは、客室が並んでいます。その内の一つは、現在私が使っています」

「うん。手伝って貰っている他のメイドさん達にも使って良いって伝えて。通勤時間とか短縮出来るでしょ? うちに泊まるようなお客さんは来ないだろうし」

「分かりました。最後は、四階にある部屋はルナ様の部屋になります。執務室、寝室の二部屋ございます」


 この屋敷は、一階と二階が同じ広さで、三階と四階は少しずつ狭くなっている。私の執務室は教室くらいの大きさ。寝室は、その倍くらいだった。執務室の方は、机やら本棚やらがあり、しっかりとしていた。見るからに執務室そのものだ。ただ、寝室の方は、タンス以外何も無かった。


「これが寝室? 床で寝るって事?」

「ち、違います! 前のベッドは、捨てたんです。まぁ、色々とあったはずなので……」

「ああ……まぁ、こっちで寝る予定は、まだないからゆっくりで良いよ」

「分かりました。極上のものを仕入れます!」

「ああ、うん。お金は出すね。取りあえず、五十万渡しておくから。妥当な給料とベッド代にして」

「分かりました。後は、地下室ですが……その……ご覧になりますか?」


 マイアさんは、何か言いにくそうにしている。


「地下室って、掃除中なんだっけ? 一応、見ていこうかな」

「そ、そうですか? あの……少し覚悟してください。色々見たくないものもあると思いますので」

「え……そんなまずいものがあるの?」

「えっと、前の持ち主の性癖的なものが……」

「……この別荘って、そういう目的のものなの?」

「ええっと……言いにくいですが、そうですね」


 この屋敷は、イルランテ卿がそういう目的で利用していたみたい。潔癖症ではないけど、凄く嫌悪感がある。


「うん。地下室はやめておく。ごめんね、そんなものの掃除まで任せちゃって」

「いえ、仕事ですから」


 マイアさんは、胸を張ってそう答えた。メイドとしての仕事に誇りを持っているのかもしれない。


「それじゃ、さっき行ったお風呂に入ろうかな」

「ごゆっくりどうぞ」

「え? あんな広い場所を一人で使ったら、不安になるよ。一緒に入ろう?」

「えっ? で、ですが……」


 マイアさんは、少し迷っていた。正直、あんなプールみたいな場所に一人でいると、落ち着かない。だから、マイアさんも一緒に入ってくれた方が、私は気が楽だ。


(マイアさんをその気にさせるには……そうだ! 女の子のアピール技を使おう!)


 私は、マイアさんを上目遣いで見て、寂しそうな顔をした。これで、マイアさんを黙ったまま説得する。上手くいくか心配だったけど、マイアさんは折れてくれた。


「分かりました。ご一緒します」

「やった」


 私とマイアさんは、一緒に浴場まで向かった。脱衣所で服を脱いで中に入っていく。マイアさんは、メイド服に隠れて分からなかったけど……その……凄かった。


「ここで身体を洗ってから、中に入ります」

「へぇ~、向こうの世界と一緒だね」


 浴場には、現実の温泉とか同じようにシャワーなどが備え付けられている。こっちの技術力も結構高いんだね。私は、テキパキと身体を洗って、マイアさんと一緒に湯に浸かっていく。


「ふぅ~……」

「気持ちいいですね……」

「うん。でも、やっぱり、この広さは要らないよね」


 私は、湯船から周囲を見回してそう言った。


「そうですね。大所帯にならないと、あまり必要ないかもですね。でも、ここで泳ぐことも出来ますよ?」

「お風呂で泳ぐのはお行儀が悪いよ?」

「……」


 マイアさんは、スーッと目線を逸らした。


「やったね?」

「ちょっとですよ。ちょっと……」

「まぁ、それで癒やされるなら良いけど」


 私はそう言って、自分から泳ぎ始めた。普段、こういう温泉とかでは絶対に出来ないけど、自分の屋敷だからやっても問題ないだろう。それに、私自身がやることで、マイアさんも気兼ねなくやれるようになるだろうし。


「そういえば、マイアさんっていくつなの?」

「えっと……十八ですね」

「やっぱり年上だった」

「ですが、今のままで良いですよ。私は雇われている方ですし、ルナ様は貴族ですから」

「うん。分かった」


 そのまま三十分くらいマイアさんと話しながらお風呂を楽しんだ。今日は、屋敷の確認を終えて、ログアウトした。

 思っていた以上に、しっかりとした屋敷で驚いたけど、これから利用するものだから慣れないといけないかな。どう使おうか考えておこう。

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