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138.ネロの話!!

改稿しました(2022年5月30日)

 ベンチに座った私は、ネロが話し始めるのを待った。ネロの方から話したいと言った以上、私が促すのは違うと思う。ネロが話したくなくなったのなら、話さないで良いし、このまま話したいと思うならそれを待つという形で良い。

 そうして、五分程待っていると、ようやく口を開いてくれた。


「話っていうのは、私の現実についてにゃ」

「それは、本当に、私が聞いていい話?」


 ネロが、軽い気持ちで言っているわけじゃないって事は、その表情を見れば分かる。それでも、この確認はせざるを得なかった。


「いいにゃ。寧ろ聞いて欲しいのにゃ。出会ってから、これまで一緒に冒険したなかで、ルナ達なら話してもいいって思ったにゃ。でも、少しだけ不安があったから、一番信用しているルナに話すにゃ」


 ネロからしたら、信用できない人に話したくない内容みたい。だったら、私も覚悟を決めて聞かないと。私は、姿勢を正して、ネロに向き合う。


「私は、今、学校に通っていないにゃ。正確に言えば、学校に通うことが出来ないのにゃ」

「通うことが出来ない……?」

「そうにゃ。私は病弱で、小さな頃は、ずっと入退院を繰り返していたのにゃ。それでも元気な期間があるくらいには、回復していたのだけど、ある時から病状が悪化した状態で落ち着いてしまったのにゃ」

「それって、今も病状は芳しくないって事?」


 私が恐る恐る訊くと、ネロはこくりと頷いた。ちょっとだけ心にチクッと刺さるのを感じる。今、こうしている以上、きちんと生きているということは分かるけど、心配という心は残る。


「今すぐどうということはないにゃ。でも、外に出歩くことは厳しくなっていったにゃ。今は、自宅療養だけど、ずっとベッドの上で寝ているにゃ。そんな中で、お母さんが、ユートピア・ワールドを買ってくれたにゃ。これなら、他の子達みたいに遊べるんじゃないかって思ってくれたみたいにゃ」

「なるほど……優しいお母さんだね。実際、今も自由に動き回れているわけだしね」

「いつも迷惑ばかり掛けちゃっているけどにゃ。ただ、そういうことだから、皆とオフ会は出来ないのにゃ……」


 ネロはそう言って顔を俯かせた。


「そういうことか……」


 ネロの言いたかった事が分かった。さっき私達が話したオフ会に自分が行けないという事を伝えたかったんだ。本当は参加したいということも伝わってくる。


「何か方法があれば良いんだけどね。ネロの部屋に、お邪魔するわけにもいかないだろうし……テレビ通話だと、その場にいる感じが薄いだろうし……」

「テレビ通話……その手があったにゃ!」

「えっ!? それでも良いの!?」


 実際に会わないと意味がないと考えていた私は、ネロの答えに驚いた。


「直接会うことが出来ないのは、私が一番分かっているにゃ。でも、皆の現実の姿と会えるなら、テレビ通話でも楽しそうだにゃ。私には、人の友達もいなかったから、余計に楽しみだにゃ」


 ここら辺が、ネロが一人で行動していた理由なのかも。友達がいなかったから、誘える人もいなくて、ずっと一人でいたって事なのかも。


「そうなんだ。じゃあ、私達が初めての友達?」

「それは違うにゃ。いつも私がいる部屋の窓に、相手をしに来てくれる友達がいるにゃ」


 ネロのこの言葉で、色々と察することが出来た。


「それって絶対に人じゃないよね?」

「にゃ。猫にゃ。野良猫の三毛猫で、マタタビと名付けたにゃ。でも、猫アレルギーもあるから、窓越しでの語らいしか出来ないのにゃ」

「でも、ネロを支えてくれた大切な友達なんだね」

「にゃ」


 ネロは、私の言葉に満面の笑みになった。


「ネロのそんな笑顔初めて見た。可愛いね」

「にゃ。お母さんからもよく言われるにゃ」


 ネロは照れるでもなく、胸を張ってそう言った。まぁ、ネロらしいといえばネロらしい。


「このことはどうする? 私から皆にも伝えておく?」

「にゃ……いや、やっぱり私から話すにゃ。ルナに話したら、皆も受け入れてくれる気がしたにゃ」

「当たり前でしょ。友達なんだから」

「にゃ」


 ネロは、また嬉しそうに笑う。


「それにしても、猫が友達かぁ。だから、猫のスキルを手に入れたのかもね」

「このゲームは、そういう要素が関係するにゃ?」

「いや、絶対偶々だと思う。じゃないと、私に銃の要素がある事になるから」

「ルナは、現実では暗殺者にゃ?」

「いや、ただの女子高生だよ……」


 ネロとの話が終わり、私はログアウトして、現実に戻ってきた。そして、夕飯などを済ませた後、再びログインする。


「私、現実にいる時間よりもこっちにいる時間の方が長くなってるかも……?」


 実際は、学校とかで現実にいる時の方が多いはずなんだけど、なんとなくこっちの方が長くいる感じがしてしまう。


「こっちの方が、現実みたいになりそう。そこは気を付けないと。さすがに、お母さん達に怒られるかもしれないし」


 私は、王城に向かってメアリーさんの元に向かう。今回は、勉強会では無く、ジパングでの出来事の報告だ。私は、一つ目の遺跡で分かった事と、一応、今日の戦いなども報告していく。


「なるほどね。新月は、何かが復活出来る期間の事で……それには、儀式と祝詞と生贄が必要。ただ、命の篝火っているのが分からないかな……」


 メアリーさんは、私が話した内容からそんな事を考えだしたみたいだ。


「私も同意見です。命の篝火という言葉だけ、全く分からないんですよね」

「まぁ、遺跡の柱に書かれていたわけだし、ネロちゃんが見つけた遺跡の空洞を開く手段よね。ルナちゃんが無理矢理突破しなかったのは、黒騎士の件があったからだよね?」

「はい。下手したら、爆発して崩れるかもって思ったので……」


 黒騎士のアジトみたいな場所では、本を持って外に出ようとしたら爆発が起きた。あの遺跡では、黒騎士のアジトでの事を思い出し、無理矢理ではいかないようにした。


「うん。その対応で良いと思うよ。ただ、これで、ジパングに何か隠されたものがある事が分かったね」

「それが、古代兵器に繋がるものだと良いんですが……」

「そうだね。破壊できれば、それに越したことはないからね。もう次の遺跡の近くにいるんだっけ?」

「はい。ちょっと危険な場所にあるので、気を付けて探索していこうと思います」


 私がそう言うと、メアリーさんの表情が変わった。


「危険な場所って、本当に大丈夫なの?」

「多分、大丈夫だと思います。活火山の麓なんですよ」

「火山の麓……なら、あまり、山を刺激しないようにね」

「はい」

「じゃあ、ついでだから、軽く勉強しようか」

「あっ、はい……」


 勉強をするつもりが無かった私は、突然の勉強会にテンションが若干下がる。でも、必要なことなので、文句などは言わずに勉強する。そんな勉強会の最中に、メアリーさんがふと何かを思い出す。


「そういえば……」

「どうしました?」

「確か、ルナちゃんに渡す屋敷の掃除とかが、八割方終わったって聞いたんだよね」

「そうなんですか? じゃあ、そろそろ見に行かないと……明日の夜に、マイアさんを呼び出して貰う事って出来ますか?」

「分かった。何時頃が良い?」

「えっと、じゃあ、二十時でお願いします」

「了解」


 皆との探索は、また土曜日になるので、今週は屋敷の方に顔を出していくことにした。初めて見るから、少し楽しみだ。

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