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137.桜の森を抜けて!!

まったり回です

改稿しました(2022年5月30日)

 意識が浮上してくると、プティの上で揺られている事が分かった。爆発物精製を全力で使った結果、魔力が空っぽになり気絶したため、プティの上に乗せられて、運ばれているのだ。


「うぅ……」


 魔力不足により起こっている弱めの頭痛を押し殺して、目を開ける。すると、ミザリーの顔を下から見ていた。


「目覚めた!」


 ミザリーが嬉しそうに報告する。目だけを動かして周りを見ると、皆がそこにいた。全員、プティの上に乗っているのだ。


「ルナちゃん、おはよう。大丈夫?」

「うん……街に着いていないで、プティの上にいるって事は、あまり長い間気絶していたわけじゃないみたいだね」

「うん。ルナちゃんの気絶耐性が高いっていうのもあるけど、ミザリーちゃんの回復魔法で治ったみたいだよ」

「一応、気絶している時間を短縮するって魔法なんだけど、効果があって良かったよ」


 ミザリーの回復魔法のおかげで、通常の気絶時間よりも早く目覚める事が出来たらしい。回復役がいる事による恩恵が、意外なところで現れた。後は、シルヴィアさんとの修行で散々気絶を繰り返したのも大きい。これは、完璧に偶然だけどね。


「シエル、プティを止めて。さすがに、この人数を乗せての移動は厳しいでしょ?」

「まぁね。プティ、止まって」


 シエルの命令に従ってプティが立ち止まる。


「ありがとう、プティ」


 プティを一撫でしてから降りる。そして、月読を取り出して跨がる。すると、すぐにネロが後ろに乗った。


「こうして移動しているって事は、餓者髑髏は倒せたんだよね?」


 気絶してしまって、爆発させた後の事が分からない。だから、あの後、しっかりと餓者髑髏を倒しきれたのかが分からないのだ。


「ちゃんと倒せたにゃ。今は、中央の街に向かっているところにゃ」

「なるほど。オッケー。じゃあ、改めて出発しようか」

「了解。プティ、行って!」


 シエルがプティを走らせる。私は、その後に続いて月読を発進させた。十分程走ると、目的地である街に着いた。桜と同じピンク色の壁や屋根をしていた。この街の名前は、桜の里。見たそのままだ。


「皆、色々気になるのは分かるけど、先を急ぐよ。ここも登録しておいたから、いつでも来られるでしょ?」

「それもそうだね」


 私達は、桜の里から更に北に向かって移動する。その途中で、ソルが何かを思いついたようで、私の方に手を振る。


「ルナちゃん! ルナちゃん! 今度さ、皆でお花見しない?」

「お花見? ああ、桜だから?」

「そう! ここの景色は、凄く綺麗だからさ。向こうだと人が多いけど、里の中なら、住人の方々しかいないし、良い場所だと思うんだ!」

「なるほどね。向こうじゃ、場所取りから難しいもんね。良いよ。皆が良いなら、やろうか」


 私は、そう言って他の皆を見る。


「私も賛成。こんな綺麗な場所で、お花見するのは初めてだし」

「私もやりたいです。最近は、そんな事出来ませんでしたから。皆さんと一緒だと、凄く楽しそうです」

「私も賛成だにゃ。お団子食べたいのにゃ」

「私もやりたい。親睦会にもなりそうだし」


 皆、お花見に賛成した。それぞれの想いがあったけど、ネロだけは花より団子という感じだった。もう少し花の方にも目を向けてあげて欲しい。


「いつ頃やる? 来週の日曜日とか? あっ、でも、金曜日の夜とかに集まって、夜桜も良いと思うけど」

「ああ……う~ん……そうかぁ。どうしよう? 迷うなぁ」


 ソルは、お昼にやるか夜にやるかで迷っていた。どっちの景色も綺麗だろうし、普通の花見には普通の花見の、夜桜には夜桜の良さがあるので、迷う気持ちは分かる。

 私としては、どちらでも良いんだけどね。


「お昼! 夜も素敵だけど、やっぱりお昼にやりたい! 私にとってのお花見は、お昼のお花見だから!」


 ソルがそう宣言したことで、来週の日曜日の昼に、お花見をすることが決まった。冒険に出る前の息抜きという瞑目だ。


「楽しみが一つ増えたね。まぁ、それ以外に、問題が色々とあるけど」

「遺跡の調査とかね。ルナの読める文字があると良いんだけど」

「天界言語がなければ大丈夫! 分からない言語だったときは、メアリーさんに教えてもらえばいいし!」

「ルナって、勉強好きじゃないのに、そういうのは真っ先に学びに行くよね」


 シエルが呆れ気味にそう言った。言葉だけではなく、眼からも呆れているのが分かった。


「え~、だって気になるでしょ? 学校の勉強は、あまり気になることじゃないし……無理矢理感が好きじゃないんだよ……」

「ルナちゃんって、自分に必要とか思うと、ちゃんと勉強するよね。本当に、昔からそうだよ。それに勉強嫌いなのに、テストの点数はきちんと取るし」

「そういえば、皆さんの関係ってどうなっているの? あまり現実の事を訊くのは良くないけど、ちょっと気になる」


 ミザリーがわくわくしながらそう訊いた。現実の事を訊くのはマナー違反だけど、先に現実での事を話した私達も悪かったし、特に問題ない範囲だと思うから話すことにした。


「私とソルが幼馴染みで、シエルとメレがクラスメイトだよ。ネロとは、つい最近知り合ったから、現実での関係はないって感じ」

「へぇ~、だから、お互いの事をよく知っているんだね」

「特に、ソルとはね。互いに互いのやらかしを知っているしね」

「ルナちゃんは、特にトラブルに巻き込まれるからね。私も一緒に巻き込まれる事もあるくらいだし」


 私達の話をミザリーは、興味津々に聞いていた。他にも色々と話していると、ミザリーがふとこんなことを溢した。


「皆で、オフ会なんて出来たら、楽しそうだね」

「確かに、オフ会は、結構楽しいかもね。ここにいる皆なら、信用出来るし」

「オフ……会……?」


 この言葉に、メレが首を傾げる。多分だけど、オフ会について、全く知らないんだと思う。機械音痴だって言っていたし、SNSとかも一切やっていないようだから。確か、アイドルとしてのアカウントは、マネージャーが管理しているとか何とか言っていた気がする。

 今は、スマホの操作くらいならどうにかなっているけど、学校で初めてのパソコンの授業があった時は、五分に一回は、首を傾げていた。

 ただ、「音楽関係のものなら強いです!」と弁明していた。本当かどうか分からないけど、本人が言っているから本当だと思う。多分だけど。

 取りあえず、オフ会について教えてあげないと。


「オフ会は……なんて言えば良いのかな?」

「簡単に言えば、ネットで知り合った人達が、現実で会うことを言うんだよ」


 どう言えば良いか悩んでいると、シエルがすらすらと説明してくれた。すると、メレは、納得がいったというように手を打ち鳴らした。


「では、私達は毎日がオフ会ということですか?」


 メレがそう言った瞬間、シエルが吹きだした。ツボにはまったらしく、声を押し殺して笑っている。


「え? 違うんですか?」


 メレは、自分が間違った解釈をしてしまったと思い、あたふたとしていた。


「う~ん、もう既に現実で友達だし、毎日がオフ会って訳では無いよ。時々会うって形なら、オフ会って言う感じかな。多分だけどね」

「なるほど。難しいですね」

「色々終わったら、一度現実で会ってみようか。出来れば、夏休みくらいが良いけど」

「その方が、心置きなく会えるから良いかも」


 そんな話をしていると、ネロが黙っている事に気が付いた。寡黙そうなイメージがあるネロだけど、普通におしゃべりな子だから、こういうときでも積極的に話しそうなんだけど。


「ネロ? どうしたの?」

「にゃ。何でもないにゃ。私も楽しみだにゃ」


 ネロは、笑ってそう言ったが、少しだけぎこちない笑いだった。その事について訊きたいと思ったけど、あまり深入りして良い問題かも分からないので、この場では流すことにした。

 そんな風に色々と話していると、桜の森を抜けて別の地域へと変わった。そこは、今までの自然豊かな感じではなく、かなり荒れた場所だった。その中央の方には、大きな山が煙を上げている。恐らくは、火山だろう。


「エリアボス戦がなかったから、あの餓者髑髏が全方位のエリアボスだったって判断で良さそうだね」

「うん。シエルの言うとおりだと思う。てか、そう思いたい」

「ここは、火山のエリアって事にゃ?」

「うん。地図には、火山から少し離れた高台っぽい場所に、街があるみたい」

「じゃあ、ルナが先行して。私達は、後を追うよ」

「オッケー」


 私は、月読をプティの前に出して走る。そのまま真っ直ぐ進んで行くと、このエリアの街に辿り着いた。街の名前はカルデラという名前だった。


「着いた~……」

「ルナちゃんの予想よりも時間が掛かっちゃったね。餓者髑髏との戦いが、予想外だったからかな?」

「う~ん、餓者髑髏戦は、あまり時間が掛かっていなかったから、そうじゃないと思う。単純に、距離を見誤った感じかな。予想以上に移動時間の方に時間が取られちゃった。今日は、これで解散だね」

「分かった。じゃあ、また今度ね」


 ミザリーから順々に皆が落ちていく。そんな中で、ネロが黒羽織の裾を引っ張る。


「ん? ネロ?」

「ちょっと、時間良いかにゃ?」


 私に話したい事があるみたい。今日も、お母さん達は帰ってこないので、少し夕飯が遅くなっても問題はない。


「良いよ。向こうのベンチで話そうか」

「にゃ」


 私とネロは、物見櫓の広場にあるベンチに腰をかける。

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