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133.地図と情報収集!!

改稿しました(2022年5月30日)

 港街から月読とプティを走らせて、ジパングの首都に着いた。名前は、黄金郷というらしい。街の入口に書いてあった。そして、黄金郷の中央にある物見櫓に着くと、


『黄金郷に着きました。都市間ポータルを起動します。飛びたい都市を思い浮かべながらポータルに入ってください』


 というアナウンスがした。


「本当に、黄金郷って名前なんだ。その割に、街に金が使われていないみたいだけど」


 中央の物見櫓まで、街並みを見てきたけど、どこにも金が使われている感じはなかった。名前は贅沢の街みたいな感じなのに、どちらかと言うと質素な職人街という感じだ。つまりのところ、外から見たまんまの街だった。


「ただ単に、金鉱山の近くに作った街なのかもしれないね。それで、今日はこれで解散にする?」

「うん。そろそろ皆もご飯の時間だろうし、今日はこれで解散。明日からは、学校もあるし、次の土曜までは、周辺の調査をするって感じにしようか。土曜日と日曜日で北の方にある遺跡に行ければ良いかな」


 取りあえずの予定を皆と共有すると、皆、了承してくれた。そして、ネロ以外の皆がログアウトした。


「ネロは良いの?」

「私はまだ大丈夫にゃ。だから、ルナに付き合うにゃ」

「ありがとう。じゃあ、雑貨屋から探そう。ここにも、街の見取り図があると思うんだけど……」


 物見櫓がある広場を見回すと、地図が貼られている場所を見つけた。


「えっと……雑貨屋……雑貨屋……」

「これじゃないかにゃ?」

「そこだね。よし、早速行ってみよう」

「にゃ」


 私とネロは、見つけた雑貨屋に向かった。中に入ると、ユートピアとは違うラインナップになっていた。


「色々なものが変わっているにゃ。これは……漢方にゃ?」

「根っことか葉っぱとか色々売っているね。自分で調合するって、形のものかな? そこにすり潰すためのものまで売っているし、ここで、生産職が増えるみたいな感じなのかな? そういえば、ユートピア・ワールドで生産職って見たことないかもしれないね」


 私が、ユートピア・ワールドを始めて、大体三ヶ月以上経っているけど、まだ生産職というものを見ていない。そもそもプレイヤーが経営している店すら見ていない。


「一応、いないことはないみたいにゃ。ただ、戦闘職よりもレベル上げが大変だって聞いたことあるにゃ。材料集めからしないといけないから、当然と言えば当然にゃ」

「なるほど。そう考えると、お金の問題もありそうかな。材料を買い取るにも、お金が必要だし、店を出すのにもお金が必要だし、維持費とかも掛かると思うから」

「経営は大変にゃ」

「軌道に乗るまでは、本当に大変だろうね。生産職が表に出てくるまで、どのくらい掛かるかな?」

「後、一、二ヶ月くらいは掛かるかもしれないにゃ」


 そんな事を話しつつ、ジパングの地図を選んでいった。今回は、全体図もあったので、キヨミさんから教えてもらった遺跡の場所も確認できる。他にも、この周辺の地図を購入して、物見櫓がある広場まで戻る。そして、いつもの噴水広場と同じように設置されているベンチに座る。まぁ、いつもと違って背もたれは無かったけど。


「えっと……キヨミさんが言っていた位置は、こことこことここと一番大きいのがここか……」

「改めて見ると、結構遠いにゃ」

「一番近いところでも、別の街からの方が近そうだね。やっぱり、土曜日は北の街まで移動しないとダメそうだね」

「それまでは、ここの周辺を徹底的に調べるにゃ?」

「うん、そんな感じかな。一応、ソルのために刀匠も探すけどね。ネロはまだ時間ある? ついでだから、近くの鍛冶屋に訊いてみない?」

「大丈夫にゃ。私も気になるから、行くにゃ」


 私達は、近くにある鍛冶屋に向かった。中に入ると、店舗部分と鍛冶場部分で分かれているにもかかわらず、少し熱気が伝わってきた。正直、鍛冶師さんが鉄を打っているところが見えるのかと思っていたけど、さすがにそんな事はなかったみたい。


「いらっしゃいませ。剣をお探しですか?」


 カウンターの向こうにいた店員さんが、私達に声を掛けてきた。


「いえ、そうではなくて、ちょっとだけお訊きしたい事があるんですが、大丈夫ですか?」

「はい。何でしょう?」


 店員さんは、少し怪訝な顔をしたけど、ちゃんと話を聞いてくれるみたい。


「ここに刀匠の方は、いらっしゃいますか?」

「刀匠……ですか?」

「はい」


 店員さんは、途端に困った顔をした。


(あまり訊いちゃいけない事だったのかな?)


 そんな事を考えていると、奥の方から筋骨隆々の男性がやってきた。この店の鍛冶師さんみたいだ。


「どうした?」

「あっ、あなた。実は、お客さんが刀匠を探しているみたいで……」

「刀匠だぁ!?」


 鍛冶師さんがいきなり大声を上げたので、ネロがビクッと跳び上がって、私の後ろに隠れた。こういうところも猫みたい。ネロを安心させるためにも話を早めに終わらせないと。


「探しているのですが、お心当たりがお有りなんですか?」

「んなもん、ここ何十年も出て来てねぇよ」


 鍛冶師さんは腕を組みながらそう言った。さっきの大声は、驚いて出たものみたい。話してみたら、話し方がぶっきらぼうなところ以外、普通の人だ。


「そうなんですか?」

「ああ、そもそも刀を使えるやつがいねぇからな。剣術のスキルを持っていれば使えねぇことはねぇが、刀術を持っているやつと比べたら、天と地の差よ。見たところ、嬢ちゃん達は刀術を持っているようには見えねぇが?」

「私達の友人が持っているんです。出来れば、刀匠の手で最高の刀を打ってもらいたかったんですが……」

「なるほどなぁ……」


 鍛冶師さんは、少し悩んだ後に口を開いた。


「悪いが、黄金郷に刀匠はいねぇ。だが、刀匠についての情報はある。まぁ、ここらの鍛冶師は、大体知っているけどな。ここから北の方にある街に刀匠がいたらしい。それも確認出来るだけで、最後の刀匠がな。その足跡を追えば、もしかしたら出会えるかもしれねぇぞ」

「その人って生きているんですか?」

「どうだかなぁ。最後に姿が確認できたのは、三十年前って聞いた」

「案外、最近までいたんですね。その場所って地図で言うと、どこら辺なんですか?」


 私は地図を見せて場所を示してもらう。


「大体ここら辺だな。なんだぁ、この印は? ここにあるのは壊れた遺跡くらいなもんだぞ?」


 示してもらったのは、キヨミさんに教えてもらった遺跡のすぐ傍だった。そして、少し気になる事を言った。


「壊れたって……どのくらいですか?」

「俺が見た時は、辛うじて中に入れるくらいだな。俺もあそこに行ったときに、中を軽く見たが、何も無かったな」

「中に入れるのならよかったです。それで、ここに行けば、手掛かりがあるんですよね?」

「元々刀匠が住んでいた街だからな。あるかもしれないってだけだ。向こうの住人の方が、詳しいだろうから、そっちにも訊け」


 住んでいた街なら、ここよりも情報があるはず。これは、ソルにきちんと伝えておかないと。


「俺の知っている事はこれくらいだな。後は、鍛冶屋としての仕事しか出来ねぇ。何か入り用のものはあるか?」

「えっと……じゃあ、投げナイフみたいなのはありますか?」

「投げナイフか……投げることに特化したものもない事はないが、今はどんなのを使っているんだ?」


 私は、王城の宝物庫で貰ったナイフを取り出す。いくつか回収できなかったものもあるので、数は少し減っている。


「こりゃあ……投げる用のナイフではないな。ちょっと待ってろ」


 鍛冶師さんはそう言うと、店の中を移動してナイフの束を持ってきた。持ってきたナイフは、私が普段使いしているものよりも華奢な感じがする。


「これが投げナイフだ」

「何というか……弱そう……」

「まぁ、そうだろうな。投げナイフは、本来使い捨てだ。こんな上等なナイフを投げナイフにしている方がおかしい」

「あははは……」


 確かに、私が普段使いしているナイフは、かなり頑丈で何度も使い回せる。普通にナイフとして使うためのものだと思う。


「ただ、投げナイフとは違げぇが、こういうものもある」


 そう言って鍛冶師さんは台の上に、先端の尖った細長いものを置く。


「これは、棒手裏剣だ。ナイフとは違げぇが、こっちの方が刺さりやすいだろう」

「なるほど……」


 投げナイフと同じように扱えるのなら、こっちでも問題ない。それに、さっきのナイフよりも頑丈そうだ。


「これあるだけ欲しいです」

「それはありがてぇな。勘定を頼む」

「ええ、沢山購入して頂けるので、こちらはサービスで差し上げますね」


 店員さんが、棒手裏剣を仕舞えるポーチを付けてくれた。


「ありがとうございます。色々と情報を教えて頂いてありがとうございました」

「おう。気を付けて冒険しろよ」


 私は、ネロを連れて鍛冶屋を後にした。


「取りあえず、刀匠の手掛かりだけは見つけたかな。私は、これでログアウトするけど、ネロは?」

「私は、もう少し周りを探ってみるにゃ」

「分かった。じゃあ、また今度ね」

「にゃ」


 私はネロと別れて、物見櫓でログアウトした。

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