132.ミザリーと合流!!
改稿しました(2022年8月28日)
ジパングの港に転移した私達は、ミザリーの到着を待った。とはいっても、転移した時には船の姿が見えていたので、そこまで長い時間待つことは無かった。
「ミザリー! こっち! こっち!」
船から下りてきたミザリーを呼ぶ。ミザリーは、声の主である私を探してキョロキョロと見回していた。そして、飛び跳ねていた私を見つけて駆け寄ってきた。
「順調な船旅だったみたいだね」
「そうだけど……順調じゃ無い船旅ってあるの?」
「海賊の襲撃だね。私達の時はあったから」
「へ、へぇ~……」
これには、ミザリーも苦笑いだった。
「それじゃあ、改めて、こちらはミザリー」
「よろしくお願いします」
「私はソルだよ。よろしくね」
「私はシエル。よろしく」
「メレです。よろしくお願いします」
「ネロにゃ。よろしくにゃ」
取りあえず、皆の自己紹介は終わった。ちなみに、ミザリーのスキルはこんな感じだ。
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ミザリー[治療師]:『棍術Lv42』『光魔法Lv58』『回復魔法Lv72』「詠唱短縮Lv57」『光属性強化Lv45』『回復量増加Lv69』『暗視Lv53』『潜伏Lv46』『聞き耳Lv42』『魔力上昇Lv56』『速度上昇Lv57』『防御術Lv32』『回避術Lv46』『集中Lv42』『気配感知Lv23』『言語学Lv21』
EXスキル:『並列処理Lv52』
職業控え:[冒険者]
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棍術よりも魔法の方が、レベルが高いので、魔法主体で戦っているんだと思う。エレみたいな感じかな。
「ミザリーちゃんのメイスって、最初に貰えたスキルなの?」
「うん。棍術と回復魔法と回復量増加が最初のスキルだったかな」
「でも、棍術のレベルは、あまり高くないよね? どうして?」
スキル構成を知った時、少し気になった。スキルレベルが結構高いのに、一番に手に入れていたはずの棍術が比較的低いからだ。
「えっと、前のパーティーの時は、ずっと後衛で隠れているように指示されていたから」
「へぇ~」
回復役だし、当たり前と言えば当たり前かな。
「私達のパーティーでも、ミザリーは、回復をやってもらいたいんだけど、同時にメレの護衛も頼める?」
「護衛?」
「そう。メレは、攻撃が出来ないわけじゃないんだけど、基本的に味方もろともだから、専属の護衛がいてくれると有り難いんだ」
シエルの新しいスキルである着せ替え人形があるから、シエルも前線に出て来る事になる。そして、私も遊撃で動き回るタイプだから、あまり護衛に向いてはいない。となると、同じ後衛で、遠近に対応できるスキルを持っているミザリーなら適任だと思う。どのくらい接近戦が出来るかによるけど。
「な、なるほど……が、頑張ってみる!」
「ありがとう。じゃあ、取りあえずジパングの首都に向かおうか。ミザリーは、バイクと熊、どっちがいい?」
「へ?」
私の質問にミザリーは、ぽかんとしていた。説明するよりも見せる方が早いから、そのまま街の外まで連れて行く。そして、シエルはプティを起こして、私は月読を取り出す。
すると、ミザリーは、口をあんぐりと開けていた。確かに熊の人形が大きくなる光景は、慣れていないと驚くと思う。
「まぁ、プティの方が安定しているし、プティに乗ってもらおうか」
「そうだね。じゃあ、さっきと同じ組み合わせにしよう」
「オッケー。ネロ、後ろに乗って」
「にゃ」
「取りあえず、首都に向かうけど、その前に呪術師の村に寄ろう。ミザリーもポータルを登録した方が良いだろうし」
「分かった」
私達は、一度呪術師の村に寄った。私一人で迎えに行く事になると思っていたから、鎌鼬戦が億劫だなと思っていたけど、首都に向かう必要が出て来たから、また皆で対処出来る。戦い方も既に分かっているので、今度は瞬殺する事が出来た。そして、ミザリーもポータルに登録することが出来た。村の人達は相変わらずだったけど。
そして、今度こそ首都に向かって移動を開始した。組み合わせは、さっきと同じなので、後ろにネロが乗っている。故に、ネロと会話する事が多くなる。
「そろそろ夕暮れにゃ。もう少しで解散にゃ?」
「そうだね。皆のご飯の予定もあるし、そうなると思う。私は、少しだけ首都の雑貨屋を回るけどね」
「なんでにゃ?」
「ジパングの地図を買うためだよ。これから遺跡を回るために、必要だからね」
「なるほどにゃ」
プティの上に乗っている四人は四人で仲良く話していた。ミザリーも笑いながら話していたので、きちんと打ち解けているみたい。そんな中、ネロの様子が変わる。
「にゃ? 何か近づいてくるにゃ」
「どっち?」
「左にゃ」
また森に反応があるみたい。ネロの報告の数秒後に、私にも感知出来た。何か巨大な気配が近づいて来ている。
「ルナちゃん!」
「うん! エリアボスだと思う! 敵の種類によっては、鎌鼬と同じように止まって戦おう!」
「分かった!」
移動しつつ倒せるなら、それにこしたことは無い。皆が武器を握ったその時、森の中から猿みたいなモンスターが現れた。名前は、大狒々。大狒々は、何故か、気持ち悪い目線をこっち向けている。
「『戒めの光よ』!」
突然現れた光の鎖が大狒々の身体を縛る。
ウホッ!?
大狒々は、飛び出した勢いのまま、顔から地面に着地する。
「熊人形術『ベア・タックル』!」
地面で藻掻いていた大狒々をプティが撥ね飛ばした。宙へと舞う大狒々に、青白く輝く光の爪を生やしたネロが飛びかかる。
「『キャット・クロー』」
ネロの爪が一際輝き、数センチ大きくなり、大狒々を斬り裂いた。そこにさらに、ソルが接近する。
「抜刀術『朏・双葉』!」
大きな弧を描く斬撃が全く同じ軌道で往復する。大狒々の身体が上半身と下半身で真っ二つにった。その死体は、空中でソルが回収する。そして、落ちてくるネロを私が、ソルをプティがキャッチして、そのまま走っていく。
「出る幕がなかった」
「まぁ、そんな時もあるにゃ」
今回、一切戦闘に関わらず、エリアボス戦が終わった。この戦闘では、ミザリーの拘束がかなり大きかった。さらに、ネロとソル、プティの攻撃力が高いというのもあるかもしれない。
「ミザリーの光魔法って、攻撃系のものはないの?」
さっきは拘束系の魔法を使っていたので、少し気になったのだ。
「あるにはあるけど、光魔法は、補助系の魔法が多いかな」
「そういうものなんだ。私達、全員魔法使えないからパッとしないけど」
「逆に、今までよく魔法使い無しのパーティーでいたね。霊体の敵とか、魔法系のものがないと倒せないでしょ?」
「まぁ……霊体と戦わないし……」
私は、さっと目線を逸らしてそう答えた。私の苦手なものを知っているソルとシエル、メレは苦笑いをしていたけど、ネロとミザリーは首を傾げていた。
「ルナさんは、幽霊が苦手なんですよ」
メレが、二人に補足を入れた。すると、ミザリーは意外という顔をした。
「ルナさんって、意外と可愛いところがあるんだね」
「どういう意味さ? 私にだって苦手なものくらいあるよ」
「あの時の悪鬼羅刹っぷりは、凄かったけど……蘇った他のプレイヤーも完全に戦意喪失していたし」
「それとこれとは、別の話だよ!」
そんな風に話していると、正面に首都らしきものが見えてきた。
「あれが首都?」
「何だか、首都っぽくないにゃ」
ネロの言うとおり、ユートピアと比べると首都っぽさはない。色々な屋根にある煙突から、煙がもくもくと出ている。そして、街の中で、かなりの高低差がある。ジパングの首都は、山中に作られていた。鉱山街という言葉が合っている。
「刀匠……いるかな……?」
そんなソルの声が聞こえた。ソルが、ジパングに来た目的の一つである刀匠は、その情報を一端すらも掴んでいない。
(見た感じ、シャングリラみたいに沢山の職人が集まっているだろうし、さすがに、首都にはいるよね)
そんな事も考えつつ月読を走らせた。