131.カエデが住んでいる村!!
改稿しました(2022年5月30日)
カエデが住んでいる村の中に入ると、周りからの視線が刺さった。
「すみません。少し排他的な部分があるので……でも、私を助けてくれたということを知れば、少しは寛容になるはずですから、我慢して頂けると幸いです」
「うん、大丈夫」
神様を祀る場所と聞いていたし、宗教関連の何かがあると考えてはいた。だから、排他的な感じがあってもおかしくはない。そんな中、村の中央にある物見櫓の前を通ると、アナウンスが流れた。
『呪術師の村に着きました。都市間ポータルを起動します。飛びたい都市を思い浮かべながらポータルに入ってください』
どうやら、ここは呪術師の村と言うらしい。カエデは、この呪術師の村の巫女をやっているみたい。
「こちらです。この先を進んで行けば、私が住んでいる社があります」
「へぇ~……あの山の中にね……」
私達の視線の先には、山の中に続く長い階段があった。シャングリラにあった王立図書館に続く階段よりも長い階段が……
「何でああいう神社的なやつって、山の上にあるんだろう……?」
「山岳信仰というものですね。昔は、山などが信仰の対象になっていたようですよ」
「へぇ~、そうなんだ」
山に続く階段に絶望しつつ、ふと疑問に思ったことを口にしたら、メレが答えてくれた。
「まぁ、何はともあれ、頑張ろう!」
『お~う(にゃ)!』
私達は意を決して、階段を上がっていった。結果、大体五分程で上り終える事が出来た。
「思っていたよりも、簡単に上れたね」
「正直、シャングリラの王立図書館までの階段みたいだろうと思って、覚悟していたんだけどね。多分、階段の角度の問題かな?」
「私は、用事がなかったから上っていないけど、ルナとソルが言うなら、かなりヤバかったんだね」
シエルは、王立図書館には行っていないらしい。メレとネロも同じみたい。まぁ、普通の人は入れないから、尚更用事はないだろうけど。
「カエデ!」
私達が階段に関する話をしていると、社の方からしゃがれた声が聞こえた。
「キヨミ様……」
「全く、どこをほつき歩いていたんだい!! 予定では、昨日には着いているはずだったろう!!」
「すみません……少し、トラブルに巻き込まれてしまいまして……この方々に助けてもらったんです」
まぁ、言っている事は間違ってはいない。ただ、トラブルの一つは、船に乗り遅れるというお間抜けだったんだけどね。
「ふむ……本当かい?」
キヨミと呼ばれたお婆ちゃんが、そう言って私達を睨んだ。
「はい。そうです」
一応代表して、そう答えた。ここで、違うと言う意味がないしね。
「そうかい。どうも、ありがとうね。カエデが連れてきたということは、何かしらの礼をしたいという事だろう。まぁ、この村の出入りだけは許可するよ。おい! この事を村に皆に伝えてきな!」
「はい!」
近くにいた巫女さんが急いで階段を下っていく。転ばないように気を付けて欲しい。
「後は……そうだね。何か訊きたい事はあるかい?」
キヨミさんが、そう訊いてくる。このタイミングを逃したら、情報を得る事が出来ないかもしれない。そんな予感が、私の中でした。
「えっと、ジパングで一番大きな遺跡は、どこにありますか?」
「ん? 遺跡?」
キヨミさんが怪訝な顔をする。そこまで変な事を訊いているわけではないと思うんだけど、何かもっともらしい理由を付け加えた方が良さそうだ。
「実は、私は古代言語を学んでいまして、それらが書かれている遺跡に興味があるんです」
遺跡に興味があるのは本当だけど、それだけじゃない。そういう昔のものには、古代兵器についての情報がある可能性がある。古代兵器についての情報が無い以上、こういう場所から近づいていくしかない。
「ふむ。そういうことかい。こっちについてきな」
そう言ってキヨミさんは歩き出した。私達は後についていく。カエデも一緒についてこようとすると、
「カエデは、向こうで身体を清めて来な!」
「は、はい……では、私はここで失礼します。送っていただきありがとうございました」
「どういたしまして。またね」
「はい……また……」
私達は、カエデと手を振って別れた。ただ、別れるとき、カエデの表情は何故か暗かった。私達と別れるのが、寂しいのかもしれない。でも、ここに来れば、また会えるから問題ないよね。
そう思いつつ、キヨミさんの後をついていった。案内されたのは、色々な巻物が置かれた資料室のような場所だった。
「確か……これだったかね」
キヨミさんは、大きな巻物を取り出して、近くの机に広げた。それは、このジパング全体が印された地図だった。
「今いるのがここ。そして、あんたらが行きたいって言う大きな遺跡は、この大陸の北側にある」
今私達のいる場所は、大陸の南側。キヨミさんの言うとおりなら、遺跡は真反対にあるみたい。
「他にも遺跡はありますか?」
「確か、こことこことここにあったかね。さすがに全ては知らんよ」
キヨミさんは、他に三箇所の遺跡を指し示してくれた。ただ、基本的に北側に偏っているようで、南にあると言われたのは一つだけだった。それも、大分中央よりだけど。
「行くなら、首都に寄ってから行くんだね。そこなら、地図も買えるはずだ」
「なるほど。分かりました。情報を頂きありがとうございます」
「カエデを助けてくれたんだ。これくらいはなんてことないよ。じゃあ、頑張って行くんだね」
「はい。本当にありがとうございました」
情報を得た私達は、カエデが住む社を後にした。
「良い情報を手に入れたにゃ?」
「うん。遺跡から情報を得られる可能性は高いと思うからね。今までの古代兵器は、そこにあるって、情報が最初からあったりしたから、今みたいに何も情報がないって事は初めてなんだ。だから、古代兵器の情報が残っている可能性がある遺跡の情報は、重要なんだよ」
「では、ここを少し探索してから、港に戻りましょうか。ミザリーさんを迎えに行かないといけませんから」
「そうだね。少しだけ、この村を探索しておこう。皆で手分けしてまわってから、物見櫓に集合ね」
私達は、手分けして呪術師の村を見て回ることになった。次の目的地が決まっているため、皆で一緒にミザリーを迎えに行く事が出来るようになった。
この呪術師の村で、色々な情報を手に入れる事が出来ると考えていたんだけど、次に集合した時に見た皆の顔で、上手くいかなかった事が分かった。
「ダメだった?」
「うん。色々と見て回ったけど、何も分からなかった。勇気を出して、村の人と話そうとしてみたんだけど、そもそも話せなかったよ」
「私も同じ。掲示板みたいなのも見たんだけど、特に情報は書いてなかった」
「私もです。村の端っこに行きましたが、これといった情報はありませんでした。でも、その端っこに、お地蔵が置いてありましたね」
「メレのと同じかどうかは分からないけど、私が行った端の方にも地蔵が置いてあったにゃ」
ソルとシエルは、私と同じく情報を手に入れられなかったけど、メレとネロがお地蔵を発見したみたい。それが何か分からないけど、一応覚えておこう。
「それじゃあ、ミザリーと合流しに行こう。あまり、歓迎はされないみたいだし、カエデも無事に送り届けることが出来たしね」
正直、もう少し色々な情報が得られると思っていたんだけど、カエデが思っていたよりも排他的だった。これ以上長居しても、意味がない。
(カエデは、もう少し歓迎してくれると思っていたんだろうね。それにしても、呪術師の村か……何かありそうだなぁ……)
そんな風に考えつつ、私達はジパングの港街に転移した。