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122.ジパングへの道(3)!!

改稿しました(2022年5月30日)

 パック・ウルフ・リーダーは、瞬く間に距離を詰めてきた。私は、黒闇天の引き金を連続で引き、パック・ウルフ・リーダーの頭を撃ち抜こうとする。しかし、十発全て避けられてしまった。


「他の狼と違って、素早さが桁違いで高い……!」


 パック・ウルフ・リーダーは、一気に距離を詰めてくる。私は、月読をパック・ウルフ・リーダーの前につけ、月読の後部から銃弾を放っていく。この攻撃もパック・ウルフ・リーダーの素早さの前では、無駄に終わってしまった。


(何か、有効な攻撃方法はないかな? 爆発物精製で殺傷力のある爆発を起こしたら、この巨大樹も倒れるだろうし控えた方が良いよね。下手すると、私も下敷きだし)


 この前の霧の森では、木々を吹き飛ばしても、自分の方には倒れてこないという確信があったから高威力で使ったけど、ここではそうはいかない。下手に、巨大樹の幹を削ってしまうと、巨大樹が倒れてくる可能性が高い。追っ手を振り切れるかもだけど、少しリスクが高いように思える。巨大樹の倒れ方によっては潰されてしまうだろうし、月読で逃げ切れる保証もない。


「でも、消耗中のソルがいる場所まで連れて行くよりも、そっちの賭けに出た方が良いかな!」


 私は、爆発物精製を威力最大、爆風最大、規模最大にして、背後の地面に仕掛ける。爆発までの時間は五秒。爆発までの間は、背後への射撃でパック・ウルフ・リーダーを牽制しておく。

そして、月読の速度を上げる。まばらに生えている巨大樹を避けられるギリギリの速度だ。

 五秒後、今までに無いくらいの大規模の爆発が背後で起った。爆風だけだったさっきと違って、爆炎も追ってくる。そのせいか、少しだけハンドルを持っていかれかけたけど、ぎりぎりで立て直した。

 そして、爆発を起こした代償として、大量のMPを消費したので、一気に身体の力が抜けた。それでも気合いで力を入れ直す。


「これで……って、そこまで甘くないか」


 爆炎の中から煤だらけのパック・ウルフ・リーダーが飛び出してきた。その顔は怒りに満ちていた。多分、背後にいた仲間が爆発でやられたからだと思う。


「それに、これは想定よりもヤバかったかも。威力も思っているより高かったし、仕方ないけど……」


 私の背後で、めきめきと大きな音がする。巨大樹が倒れてきているからだった。


「あの感じだと……隣の樹にぶつかって止まるかな」


 あの倒れ方なら、私に被害が来る可能性は低い。そんな風に安心していると、倒れた樹がもたれかかった樹をへし折ってドミノのように倒れてくる。


「普通、そんな事なる!?」


 本当に想定よりもヤバいことになった。このドミノ倒しがどんな風になるか分からないけど、その内、私達に追いついてきそうだ。


「どう考えても環境破壊だなぁ……うわっ!?」


 私の後を追ってきたパック・ウルフ・リーダーが、その前脚を叩きつけてきた。ギリギリで、月読を傾けて避ける事が出来た。


「銃技『一斉射撃』」


 入れ替えた爆破弾をパック・ウルフ・リーダーに向かって放つ。パック・ウルフ・リーダーは、その場から瞬時に飛び退いて避けた。

 そこから、パック・ウルフ・リーダーとのチェイスが始まる。互いに攻撃と回避を繰り返して、常に移動を続ける。他のパック・ウルフ達は、最後の爆発で倒し切れたみたいで、追ってくる事は無かった。


(互いに攻撃は避けられる。だから、決着が付くこともない……ソルなら、何とか斬る事が出来ると思うんだけど、全力で戦えるようになるまでの回復はまだだろうし……もう一度爆発を使えば、確実に気絶するし……打つ手が無いなぁ……)


 そんな風に考えている間も、黒闇天でパック・ウルフ・リーダーに銃弾を撃ち込む。ついでに、時間を即時に変えた小規模の爆発を起こすけど、それも避けられた。お返しとばかりに、パック・ウルフ・リーダーが噛み付こうとしてくる。さっきまでは、速度を上げたりして避けたけど、今回は別の避け方をする。

 車体を横倒しにして、車体で滑らせるようにして避ける。私の目の前に歯をかみ合わせたパック・ウルフ・リーダーの下顎が現れる。直ぐさま、そこに黒闇天の銃口をくっつける。


「銃技『零距離射撃』!」


 撃ち出された銃弾によって、パック・ウルフ・リーダーの下顎が吹き飛ばされる。私は、ステータスに任せて車体を起こし、再び走り出す。


「奥義級の技でも、まだ倒しきれないの!?」


 下顎を吹き飛ばされたパック・ウルフ・リーダーは、憤怒に染まった顔をしていた。怒りを力に変えたのか、さっきよりも速い速度で追ってきた。


「もう! 私のスキル構成なら、もっと効率の良い方法があるんだろうけど、そんなの考える頭、私には無いよ!!」


 パック・ウルフ・リーダーの攻撃を気合いで避けていっていると、前から気配が迫ってきていた。敵対反応では無く味方の反応だけど、プティやソルの速さじゃない。


「ガーディ?」


 考えられるのはシエルが持つガーディだけど、人形の気配は気配感知で反応しないので、誰かが乗っているという事になる。一番に考えられるのは、ソルだけど、まだ反動が抜けていないはずなので違う。誰が来ているのか考えていると、正面からその姿が見え始めた。


「え?」


 見えてきたその姿に、驚きを禁じ得なかった。なぜなら、それは……


「シエル!?」


 そう。見えてきた姿はシエルだったのだ。ただし、いつものシエルの格好じゃない。ガーディみたいな青黒い毛皮で出来た衣装を身に纏っている。犬耳を頭に付け、鋭い爪が付いたミトンのようなものを填めていた。そして、周囲の巨大樹を蹴って加速して迫ってきていた。その速さは、パック・ウルフ・リーダーに匹敵している。


「はあああああああああああ!!!!」


 パック・ウルフ・リーダーに急接近したシエルは、ミトンの爪を伸ばし、パック・ウルフ・リーダーの眼を斬り裂いた。


 ガアアアアアアアア!?


 痛みで一瞬怯んだパック・ウルフ・リーダーに、シエルが踵落としを決める。パック・ウルフ・リーダーの頭が地面にめり込む。


「ルナ!」

「銃技『一斉射撃』!」


 爆破弾を十発撃ち込む。シエルの踵落としで、意識が揺らいだパック・ウルフ・リーダーは避ける事もできずに、全て命中する。爆煙から出て来たのは、もう動かなくなったパック・ウルフ・リーダーだった。

 私は、月読をパック・ウルフ・リーダーの死体に近づけて止める。その傍に、シエルも降り立った。


「ふぅ……大丈夫だった、ルナ?」

「うん。少し危ないところだったけど、大丈夫だよ。てか、その格好どうしたの? ガーディみたいで、可愛いけど」


 気になっちゃったので、シエルに訊いてみた。


「新しいスキルだよ。この前のイベント報酬のやつ。『着せ替え人形』って言うんだ。私の持っている人形を身に纏うことが出来るの」

「じゃあ、プティにも慣れるんだ。人形合体の人と人形版だね」

「まぁね。ただ、合体以上に魔力を消費するから、長続きはしないんだけど」


 そう言った途端、シエルとガーディに分かれた。


「ソルとメレは?」

「この先に、空いている空間があったから、そこにいて貰ってる。本当なら、あそこでこのボスみたいなのと戦うはずだったのかもね」

「まぁ、偶々空いているだけなのかもだけど。後ろに乗って。そこまで飛ばすよ」

「オッケー」


 月読の後ろにシエルが乗る。私は、パック・ウルフ・リーダーを回収してから、走り出す。急いで向かわないといけないので、さっきの戦闘の時と同じくらいの速度で走った。


「ちょっ!? これ速すぎ!!」

「そんな事ないよ。平地だったら、もっと速く走れるし」

「それとこれとは別の話でしょおおおおおお!!!」


 シエルの叫びを無視して、先を急ぐ。そして、ものの数分で、ソル達の場所まで移動する事が出来た。


「お待たせ。大丈夫だった?」

「ルナちゃん、お疲れ様。ごめんね、役に立てなくて」

「今回は相手が悪かったよ。まぁ、ボス戦の時にはいて欲しかったけど」

「ボスも倒したのですか?」

「多分ね。あれがボスじゃなかったら、色々とおかしいし」


 パック・ウルフ・リーダーの強さだったら、ボスで間違いないはず。


「取りあえず、このまま東に移動しよう。ソルの消耗は大丈夫?」

「大丈夫。通常戦闘が出来るくらいには回復してるよ」

「よし。シエル、プティに移って……って、大丈夫?」


 私の後ろにいたシエルは、グロッキー状態になっていた。


「大丈夫……なわけあるかぁ!! はぁ、死ぬかと思った……」


 シエルはそう言いながら月読から降りて、プティの方に歩いて行った。


(う~ん、あの速さはシエル達には厳しいのかな? てか、シエルはガーディの姿になってあれ以上の速度出していた気がするけど……自分で出すのと人が出しているものとじゃ感じ方が違うのかも)


 とにかくその方向で納得することにした。


「じゃあ、このまま出発!」


 私達は、巨大樹の森を抜けて、その先にある港町まで移動した。


「ここからジパング行きの船が出てるの?」

「王都で調べた限りだとね。今日のところは、ここで切り上げようか」

「そうだね。さすがに疲れたや。続きは明日?」

「ソル達の時間が大丈夫ならね」

「私は大丈夫だよ」

「私も平気」

「私も大丈夫です」


 全員、明日の予定はきちんと空いているみたいだ。


「じゃあ、続きは明日って事で、ここで解散しよう」


 私達は、港町で解散した。皆ログアウトした後、私は情報収集するため港町に残った。


「一応、周辺の地図は買えたけど、ジパングの地図はなかったなぁ。これは向こうで買うしかないか。後は、船の時間を調べに行こう」


 私は港の方に向かっていく。アトランティス港と同じように沢山の船が並んでいる。でも、漁船のようなものがほとんどだ。


「定期船が出ているみたいな話だったんだけどなぁ。船のチケットが売ってそうな場所は……」


 港を見回して、船のマークみたいなものが掛けられている小屋を見つけた。私は、すぐにそこまで移動する。


「あのジパングまでの定期船は出ていますか?」

「はい。ここから出ていますよ。今日の分は全て出てしまったので、また明日ご利用ください」

「そうなんですか。夜は出ていないんですね」

「海のモンスターは、夜の方が危険ですので」

「分かりました。ジパングまでどのくらい掛かるんですか?」


 一応所要時間を訊いてみる。


「海の状態にもよりますが、大体三時間程です」

「なるほど、ありがとうございました」


 お礼を言ってから離れる。


「三時間も掛かるんだ。思っていたよりも、ユートピアから離れているんだな。ちょっと楽しみかも」


 ある程度の情報も手に入ったので、私もログアウトした。明日は、いよいよジパングへと向かえる……はず!

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