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121.ジパングへの道(2)!!

改稿しました(2022年5月30日)

 イーストリアから出て東へと向かう最中は、メレの沈静の歌を使用する。イーストリアまでは、別に使用しなくても対処できるくらいの敵しか出てこないので、メレの喉は温存しておいたのだ。


「この先は、森みたいだね。だけど、いつもよりも高い木だ」


 私達の目の前に広がるのは、巨大樹の森だった。私達の身長の十倍以上。高層ビルに近い高さのものもある。森全体から圧迫感がするくらいの迫力がある。


「整備された道もないし、ルナのバイクは使えないんじゃない?」


 シエルが先に見える景色を見てそう言った。確かに、整備された道は、森の手前までで、森の中には整備された道は存在しなかった。森の中もあんなに整備されていたのは、王都周辺だったからみたいだ。このまま森の中を月読で走れば、木の根で転ぶ可能性があると思われているみたいだ。


「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だよ。月読は、木の根っこくらいじゃ転ぶ事はないから。既に実験済みだからね」


 ジパングへと出立する前の期間で、月読の実験も色々としておいた。アイナちゃんの言っていたとおり、かなりの悪路でも安全に運転できた。それは、木が生い茂る森の中や沢山の石ころが転がっている荒れ地でも同じ事だった。だから、この巨大樹の森でも大丈夫だと思う。


「じゃあ、このまま進もうか。先導は、ルナがやってくれる?」

「そうだね。後ろから敵が来たら、メレの音の砲撃で対処する形でいこう」


 メレの方を見てそう言うと、歌いながらメレが頷いた。


「最悪、私の皓月千里でどうにかする?」


ソルは、メレがどうにも出来ないときは、自分が対処するかと訊いてくる。


「それは本当に最終手段かな。ソルが戦えなくなるのは、デメリットでしかないから」

「分かった」

「よし、じゃあ行こう」


 私が先頭になって巨大樹の森の中へと進んでいく。速度は、プティが出せる速度に合わせる。それでも徒歩などよりも、かなり速い速度だ。森の中に入って、五分ほどが経過しても、モンスターの姿は無かった。メレの沈静の歌が効いているにしても、離れていく気配すらも感じないのはおかしい。


「ソル、シエル、モンスターの気配はある?」


 心配になって二人に問う。メレに訊かないのは、歌っているからではなく気配感知のスキルを持っていないからだ。


「ううん、さっきから感知出来ないよ」

「私も同じ。ずっと移動しているのに、一つの気配もない。ここに入るまで、メレの歌の効果で離れていくモンスターの気配は感じていたから、気配感知はちゃんと作動しているはずなのに」


 二人も気配を感じないみたい。


「ここにモンスターはいないって事なのかな?」


 ソルは、気配を感じない事からそう推測したみたい。でも、私は別の事を疑った。


「気配遮断のスキルを持っているのかも。この前の王城襲撃でも、敵が持っていて、厄介だった。あれがあると、本当に気配を感じないんだ」

「つまり、霧の森よりも厄介になるって事?」


霧の森でも気配感知は使えなかった。一応、身近に来ると感じる事はあったんだけど、基本的に聞き耳での判断しか出来なかった。


「それは分からないけど。もしかしたら、ソルの言うとおり、モンスターがいないのかもしれないしね」

「でも、モンスターがいないなんて事あり得る? あの霧の森でさえ、大量のモンスターがいたんだよ?」


 霧の森という悪環境の中でもモンスターは、沢山いた。だが、この巨大樹の森は、霧の森みたいに見通しが悪いという事はない。ある程度遠くまで見通す事が出来る。通常の環境と言っても問題ないのに、モンスターは見当たらない。

 そんな状況を訝しんでいると、急に気配感知に反応があった。それも一気に大量のモンスターの気配だ。


「いきなり!?」

「ルナ! 速度を上げて!」

「分かった!」


 私は月読の速度を上げる。プティも速度を上げた。だけど、向こうの方が速い。月読の最高速度なら、逃げ切れると思うけどプティの速度では無理そうだ。そろそろ、後ろの方に姿が見えてくる。月読に付いているミラーで確認してみると、見えてきたのは狼の群れだった。

それも大規模な群れだ。気配感知で感じる分でも百近くいる。名前は、パック・ウルフ。群れを成して獲物を狩るモンスターみたいだ。


「メレ! 音の砲撃をお願い!」

「分かりました!」


 メレは沈静の歌を止め、背後を向く。そして、メガホンを取り出して大きく息を吸った。


『わああああああああああああああああ!!!』


 メレが放った音の砲撃が後ろから追ってきていたパック・ウルフ達に命中する。十数体のパック・ウルフが宙を舞っていった。だけど、すぐに他のパック・ウルフが集まり、空いた穴を埋めた。


「数が多すぎる……ソル!」

「分かってる! メレちゃん、入れ替わって!」

「はい!」


 メレとソルは自分達の位置を交換する。そして、走っているプティの上でソルが立ち上がる。


「抜刀術『皓月千里』!」


 ソルが放った奥義がパック・ウルフ達を襲う。パック・ウルフ達は次々と両断されていくが、その全てを倒す事は出来なかった。残り数十匹が駆けて追ってくる。最初に現れた時から、総数がどんどん増えている。


「嘘……一体、何匹いるの?」


 力が抜けてしまったソルをメレが引き寄せて座らせる。


「どうする、ルナ!?」

「メレの声は温存! 増強の歌に変更して! 私が移動して倒してくる! その間に、シエル達は奥に移動していって!」

「分かった!」


 私は、ハンドルを切って、シエル達から離れる。そして、パック・ウルフ達の方に正面から向かう。


「月読での実戦。どれだけ使えるか確かめさせて貰うよ!」


私は、月読のハンドルにあるボタンの一つを押す。すると、月読の正面から銃弾が放たれた。

 銃弾が命中したパック・ウルフは、バランスを崩して倒れていった。それでも、まだまだパック・ウルフはいる。私は、黒闇天を引き抜いて、パック・ウルフ達に向けて構える。


「銃技『精密射撃』『複数射撃』」


 パック・ウルフの頭に目掛けて放たれた銃弾は、十発全部命中した。


「リロード術『次元装填』」


 座標指定してリロードしようとするが、マガジンを入れ替える前に弾の入ったマガジンが後ろに飛んでいった。


(月読に乗っているせいで、私が前に進む速度が速すぎるんだ。自分の脚で走る速度での次元装填と同じ考えじゃ、リロード出来ない。でも、今から調整するのは無理だ。なら……)


 私は、月読に付いているボタンの一つを押す。すると、月読のフロントホイール付近に付いた装甲から、鋭利な刃物が生えた。これは、月読の接近戦用の機構だ。その状態のまま、速度を上げて、パック・ウルフに突っ込んでいく。月読から飛び出た刃物によって、パック・ウルフ達が斬り裂かれていく。


(これでも大して減らせない……それに、霧の森のゴブリン達と違って、群れで移動しているのに、それぞれがある程度ばらけているから爆発で倒せるとは限らない……いや、威力を最小にして、爆風を最大にすれば……)


 私は、パック・ウルフの群れの中を縦横無尽に動き回って、何匹も斬り裂いていってから、群れの中央に移動する。そして、爆風を最大にした爆発物を精製して、一気に離れる。その一瞬後、背後で爆発が起こり、凄まじい爆風が巨大樹の森を駆け巡る。その爆風は、私の背中にも叩きつけられる。私は更に、速度を上げて移動する。


「あっぶな……月読が浮き上がるかと思った」


 サイドミラーで背後を確認すると、パック・ウルフ達がゆっくりと起き上がるところだった。あの爆風でも、半分しか倒せなかった。倒れた半分は、巨大樹に叩きつけられているので、運良く木々の間に吹き飛ばされたのだろう。でも、多少のダメージを与えられたみたいで、さっきまでの速度は出ないみたいだ。


「ん? あれは……」


 パック・ウルフの中に一際大きな個体がいた。それは、一番の後ろの方にいたみたいで、今まで見かける事は無かった。


「絶対に、ボス個体だ。群れのリーダーってところかな」


 私が見つけたモンスターは、パック・ウルフ・リーダーと言う名前のモンスターだった。この個体が、巨大樹の森のエリアボスだ。こいつを倒せれば、このまま東に向かう事が出来る。


「ソルが消耗しているから、私がここで倒すのが一番だよね……」


 私は、ハンドルから手を離して、黒闇天をリロードする。ちょっと不安定になるから、あまりやりたくないんだけど、仕方ない。同時に、パック・ウルフ・リーダーの速度が上がった。巨大樹の森のボス戦が始まる。

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