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ユートピア・ワールド~幻想的な世界で、私は、私の理想を貫く!~  作者: 月輪林檎
第4章 ジパング

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118.王都に来た理由!!

改稿しました(2022年5月30日)

 唐突に王都に現れたアーニャさんとアイナちゃんの二人に混乱していると、アーニャさんが思わずという風に吹きだした。


「ぷっ……ふふふふ。凄く驚いているわね。色々訊きたいこともあるでしょうけど、それは場所を移動してからにしましょう」

「は、はい」


 私は、先に進んで行くアーニャさんの後を追っていく。横には、アイナちゃんが並んだ。


「ルナちゃん、大活躍だったみたいだね。王都の中で、噂が流れていたよ。異界人で初の爵位持ちだって?」

「えっ……噂で流れてるの……? 全然気にしたことなかったよ」

「さすがに、貴族になったら噂になるわよ。貴族が増える事なんて、そうそう無いことのはずだもの」


 つまり、爵位を貰える程の功績を挙げた人が少ないということかな。私の前に爵位を貰った人はシルヴィアさんらしく、その前は何十年も昔の人みたいなので正しいという事になる。


「さてと、ここからは路地裏に入るわよ。しっかりとついてきてね」

「はい。分かりました」


 ヘルメスの館があった場所のような路地裏に入っていく。


「そういえば、どこに向かっているんですか?」


 アーニャさんは、迷いなく移動をつづけているので、確実に目的地があっての移動のはず。でも、どこに向かっているのか全く分からない。


「内緒よ。でも、きっと驚くと思うわ」

「?」


 アーニャさんの言葉に首を傾げる。


(驚くってどういうことなんだろう? 何か珍しいものでもあるのかな?)


 さっきとは別の意味で混乱していると、アーニャさんとアイナちゃんの二人が笑う。結局目的地の分からないまま、一分ほど歩いていくと目的地が見えてきた。


「え? 何で……?」


 私は目の前に見えたものに、思わずそう呟いた。だって、それはそこにあるはずがないものだから。呆然とした私を見て、アーニャさんとアイナちゃんにやにやと笑う。


「どうして、ここに()()()()()()があるんですか!?」


 そう。何故か、ユートリアにあるはずのヘルメスの館が王都の路地裏に存在したのだ。しかも、ユートリアにあるヘルメスの館そのままの姿だ。


「びっくりした? ようこそ、ヘルメスの館本店へ」


 アーニャさんがそう言って、ヘルメスの館に入っていった。私も後を追って中に入る。中もユートリアにあるヘルメスの館と同じ間取りだった。


「……中も全く同じなんですね?」

「そうね。全く同じものだから」

「???」


 よく分からない返事に、また首を傾げる事になってしまう。


「アーニャ様、少し言葉足らずですよ。それでは、ルナちゃんを混乱させてしまいますよ」

「ああ、それもそうね」

「? どういうことですか?」

「簡単な事よ。ルナちゃんがユートリアで通っていたヘルメスの館と、ここ王都にあるヘルメスの館は、全くの同一のものなのよ」

「へ?」


 理解は出来る。出来るんだけど、やっぱり疑問に思ってしまう。今いるこの場所が、ユートリアでも通っていたヘルメスの館って、どういうことなんだろうか。


「私が最後に出入りしたヘルメスの館の扉が、ここに通じる扉になるって事よ。だから、今、ユートリアの扉を開けても、ここには来られないわ。何も無い空き家に通じるだけよ」

「そ、そうなんですか……でも、なんでそんな風にしているんですか?」


 便利と言えば便利だと思うけど、何故そんな事をしているのか分からない。


「色々と本業以外にする事があってね。どこでも同じ作業を出来るようにしたかったのよ」

「本業以外に? それってやっぱり……」

「そうね。秘密よ。()()話せないわ」


 やっぱり秘密だった。アーニャさんに秘密があることは知っているから、特に問い詰めるような事はしない。


「でも、なんで王都に?」

「さっきの疑問ね。私達が王都に来たのは、ユートリアでの予定が全部終わったからね」


 アーニャさんはそう言いながら、いつもの席に座る。私も同じように席に座った。アイナちゃんは、カウンターでいつも通りお茶とケーキを用意してくれる。


「短い時間で結構な修羅場をくぐり抜けてきたみたいね。武具のメンテナンスをしておいた方が良さそうよ」


アーニャさんは、私の夜烏と黒羽織を見て、そう言った。結構、色々な戦闘を経てきたので、消耗している。


「それも頼もうと思っていたんです。お願いします」


 私はササッと着替えて、武具一式をアーニャさんに手渡す。


「黒闇天も消耗しているけど、夜烏と黒羽織の方が、かなり消耗しているわね。明日には直しておくわ」

「ありがとうございます」


 このタイミングで、アイナちゃんがお茶とケーキを持ってきてくれる。


「ルナちゃんは、これからどうするの? どこかに行くの?」

「うん。王都でシルヴィアさん達から修行を受けて、ジパングの方に向かうんだ。いつ頃ジパングに行くかは分からないんだけどね」

「ジパングに?」


 これには、アイナちゃんよりもアーニャさんが食いついた。


「はい。そこに古代兵器の情報が眠っている可能性があるので」

「……なるほどね。それなら、しっかりと準備した方が良いわね。黒闇天の方には改良を加えておきましょう。韋駄天も持っているって事は、ルナちゃんものになっているのよね?」

「そうですね。国王様から頂きました」


韋駄天も一緒に渡したから、アーニャさんは、少し驚いていたけど、すぐに察してくれた。


「使いやすさはどう?」

「普通に扱うことは出来ます。反動が黒闇天と違うので、そこら辺が難しいですが」


 韋駄天は、黒闇天よりも反動の感じが違う。連発の反動と単発の反動の違いなのかな。


「まぁ、銃の種類も違うからね。ルナちゃんならすぐに慣れるわよ。こっちも強化しておくわ」

「ありがとうございます」

「後は……敵の強さが、こことは違うから、それも気を付けた方が良いわね。別の危険で言えば、火山が危ないわね。あそこは今も活動しているからね」

「へぇ~、そうなんですね。古代兵器がそこら辺にないと良いんですけど」


 ジパングに火山があるのは知らなかった。出来れば、古代兵器に関わっていないと良いんだけど、私がこう思ったら嫌な方向で的中しちゃうんだよね。当たらないで欲しいけど。


「そうだ。アーニャさんってバイクの調子を見る事出来ますか?」

「バイクは……ちょっと専門外ね」

「そうですか……」


 月読が傷付いた時とかに見てもらおうと思っていたけど、さすがにアーニャさんでも、バイクは扱っていなかった。


(てか、バイクって、こっちの世界でも通じるんだ……)


 自分でバイクって言ってから、この世界に本当に存在するのかって思ったけど、杞憂だった。でも、絶対ユートピアの中にはないから、ディストピアにある感じなのかな。


(月読の整備……どうしよう……)


 月読の整備について考えていると、アーニャさんが口を開く。


「でも、アイナなら見る事が出来るわよ」

「へ?」


 まさかの言葉に、アイナちゃんを見る。


「うん。一応見れるけど……」


 アイナちゃんは頷きながらそう言った。アイナちゃんがバイクを見る事が出来るなんて驚きだ。


「じゃあ、壊れちゃったら、アイナちゃんにお願いしても良い?」

「うん。でも、先にどんなものか見せて貰っても良い? どういう仕組みだとかを知っておかないといけないし」

「良いけど、どこに出せばいい?」


 月読は大型なので、さすがに店中に出すわけにはいかない。


「じゃあ、裏の工房で出すと良いわ。使ってないスペースがあるから。ついてきて」


 アーニャさんについていって、ヘルメスの館の奥に向かう。初めて、ヘルネスの館の奥に入った。今まではカフェスペースにしか用がなかったから、当たり前だけどね。

 中は、色々な器具が置かれていた。机の上には沢山の資料が散らばっており、一部の床にも落ちていた。


「また散らかして……きちんと片付けてくださいね!」

「わ、分かってるわよ」


 アイナちゃんが工房の状態を見て、アーニャさんを叱ると、アーニャさんは視線を逸らしてそう言った。片付けは苦手みたい。


「それよりも、そっちのスペースを使って良いから」


 アーニャさんが指さした方には、少し広めのスペースが空いていた。所々に器具が置いてあるから、何かしらが置いてあったのかもしれない。私は、そのスペースに、月読を取り出して置く。


「結構格好いいデザインね。初めて見るわ」

「そうですね。動力は……内蔵型の魔力炉?」

「うん。そうだよ」


 アイナちゃんは、月読を軽く見ただけで動力を見抜いた。本当にバイクを見る事が出来るみたいだ。


「…………」


 アイナちゃんは真剣に月読を見ていく。私とアーニャさんは、邪魔をしないように、その様子を黙って見ていた。


「うん」


 アイナちゃんは一つ頷いて、私の方を見た。


「大丈夫そう。汎用パーツが結構あるし、形さえ保っていれば修復する事は出来るはずだよ」

「本当!? 良かった。それなら、安心して乗れるよ」


 アイナちゃんが月読の状態を見てくれるなら、有り難い。壊れる事を気にせず……は言い過ぎだけど、ビクビクと運転はしなくて良さそう。


「でも、安全運転は心掛けてよ。危ない運転や悪路でも、普通に走れるようなバイクみたいだけど、壊れないわけじゃないんだから」

「うん。分かってる」

「ルナちゃん、色々と無茶するからなぁ」

「あははは……」


 否定できなくて空笑いしか出来ない。


「さぁ、そろそろお茶に戻るわよ。積もる話もあるだろうしね」

「そうですね。アイナちゃん行こう」

「うん」


 私達は、いつも通りお茶をしながら楽しくお喋りをした。やっぱり、ヘルメスの館でのお茶は楽しい!!

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