115.新しい手掛かりを!!
改稿しました(2022年5月30日)
宴が終わった後、ログアウトして現実に戻ってきた私は、ソル、シエル、メレの三人に、王城で修行を行えるという事と次の目的地がジパングになったというメールを送った。すると、ものの数分で全員から分かったという返事が届いた。
「……王城での修行って、私も一緒に行くんじゃなくて、皆だけ王城に行くって事なんだけど、本当に大丈夫なのかな?」
ちょっと心配になったけど、皆が大丈夫と言っているのだから信じよう。私は、明日に備えて、すぐに眠りについた。
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次の日。今日も休日なので昼からユートピア・ワールドにログインして、王城へと向かった。今日は、メアリーさん、シルヴィアさんと一緒にレイク・クラーケンがいた湖にある遺跡へと向かう。あそこに刻まれている言葉から、情報を得るためだ。いつも通り、門番の人に荷持つ確認をしてもらう。
「ルナ殿、貴族の紋章は?」
「あっ、はい。首に掛けています」
私は、服の下に仕舞っていたネックレスを取り出す。そこには、授与式でもらった貴族の紋章と戦乙女騎士団の紋章がぶら下がっている。二つ掛けておくのも邪魔なので、一つのチェーンにまとめておいたのだ。
「いつでも取り出せるようにしておいてください。ルナ殿が貴族になったということを知らない方もいらっしゃるかもしれませんので」
「分かりました」
門番の人とそんなやり取りをしてから、王城の中に入っていった。
(この紋章も戦乙女騎士団の紋章と同じだと考えていたけど、ずっと見せておいた方が良いのかな?)
貴族としての紋章の取り扱いについて考えながら歩いていると、正面からメアリーさんとシルヴィアさんが歩いてきた。二人ともいつもの服装では無く、動きやすい服装になっている。
「あら、ルナちゃん。すれ違いにならなくて良かった。こっちの準備は整ったから、いつでも出発できるよ」
「ルナ様も、準備はお済みでしょうか?」
私が王城に来るまでに、二人は準備を整えてくれたみたい。おかげでスムーズに出発できそう。
「私も大丈夫です。すぐに出発しましょう」
「分かりました。では、こちらに来て下さい」
「はい!」
私は、シルヴィアさんとメアリーさんの後についていく。
「移動時間を短縮するために、馬車を使います」
「あそこって、崖以外に登る方法があるんですか?」
私達は、レイク・クラーケンがいた湖まで行くのに、断崖絶壁を登っていくことになった。そこから見える範囲は全部崖だったので、他に登っていく方法はないのだと思ったんだけど、実は違ったみたい。
「それは、アトランティス港からの道のりだけですね。王都からの道のりでしたら、馬車でも途中まで登ることが出来ます」
「へぇ~、そうなんですね」
あの断崖絶壁も王都方面に行けば、少し急な坂程度になるみたい。私も出来れば、そっちから登りたかったな。そうだったら、あんなに苦労して登る必要もなかった。
そんな風に話しながらシルヴィアさん達と歩いていると、正面に普通の馬車が見えてきた。
「あれ? 豪華な馬車では無いんですね?」
メアリーさんが乗るから、てっきり王族仕様の豪華な馬車があるんだと思っていた。でも、目の前の馬車は、そこら辺の街で走っていても違和感がない。それほどまでにシンプルな馬車だった。
「王族の移動で使うような豪華な馬車で移動してしまうと、また革命派のような者や盗賊などに襲撃されてしまう可能性がありますから」
「ああ……なるほど……」
多分、アリスちゃんの件とシャルの件があったからだ。メアリーさんの安全のためにも、地味な馬車で一般人を装っているのだと思う。まぁ、これでも襲ってくる人はいそうだけど。
「さぁ、乗って下さい」
「分かりました」
私とメアリーさんが馬車の中に入ると、シルヴィアさんが御者台に乗って馬車を走らせた。私達は、レイク・クラーケンがいた湖へと出発したのだ。
「そういえば、さっき王城にルナちゃんのお友達が来ていたよ。すぐにレオグラス兄様と闘技場に行っちゃったけど」
「そうだったんですか。すれ違いになったみたいですね」
ソル達は、先に王城に行っていたみたい。私がいなくても、ソル達はちゃんと王城に向かう事が出来たみたい。今は、レオグラス殿下との修行を行っている最中ってところだと思う。
(どんな修行か分からないけど、地獄の修行になるんだろうなぁ)
そんな事を思いつつ、メアリーさんとの話を続ける。
「ルナちゃんもレオグラス兄様との修行をやるんだよね?」
「一応、私も修行を受けるので、レオグラス殿下に頼むことになると思います」
「いえ、ルナ様は私との修行になります。それと、今はレオグラス殿下がやっていますが、ソル様も私との修行になりますね」
私とメアリーさんが修行について話していると、御者台の方からシルヴィアさんがそう言った。
「もう担当が決まっていたんですか?」
「はい。それぞれの戦い方に合わせようということになりまして。私は、速度重視のお二人を担当し、レオグラス殿下はその他の方々を担当するということになりました」
実は、あの宴の間にソル達の簡単な戦い方を、シルヴィアさんとレオグラス殿下に伝えておいた。そこから、自分達で担当する人を決めていたみたい。
「じゃあ、いつもと変わらない感じですね」
「いえ、いつもよりも厳しくいかせてもらいます。より強くなって頂くために」
「お、お手柔らかに……」
あれ以上に厳しい修行なんて、私も文字通り死んでしまうかも。私は、思わず苦笑いをしてしまう。そんな私の様子を見て、メアリーさんは色々と察した顔になった。
「頑張って」
「はい」
こんな感じで色々と話ながら進んで行った。道中、敵の気配を感じては、黒闇天で撃ち抜いて倒していった。
そして、大分進んだところで、シルヴィアさんが私達の方に振り返る。
「そろそろ馬車を止めます。そこからは歩きになりますので、準備をしておいて下さい」
「分かりました」
馬車で行ける限界の場所まで来たみたい。そこからは歩きで、湖まで向かう事になる。シルヴィアさんの確認の三分後、馬車が完全に止まる。
「降りましょう、メアリーさん」
「分かったわ」
私とメアリーさんは、馬車から降りる。同時に馬を近くの木に留めたシルヴィアさんがこちらに来た。
「では、参りましょうか」
「メアリーさんは、シルヴィアさんの傍にいて下さい。敵は、私が倒します」
「分かった」
メアリーさんは、シルヴィアさんの傍に移動する。私が守っても良いんだけど、シルヴィアさんの方が確実に守れる。確実な方を優先する。
私達は、レイク・クラーケンがいた湖まで歩いて移動していく。その間に私達を襲撃してくる敵は、私が一掃していった。この辺りの敵は、最近戦ってきた敵よりも遙かに弱いので、韋駄天の練習に丁度良かった。弾をばらまくように撃つのではなく、全弾を敵に当てるつもりで撃っていく。そんな私の戦闘を見ていたメアリーさんが感心していた。
「初めてルナちゃんの戦闘を見るけど、普通の兵士達とは全然違う感じがするね」
「ルナ様は、銃をお使いになりますので、私達のような剣を使った戦い方とは全く違うかと」
「まぁ、これでもシルヴィアさんには勝てないですけどね」
シルヴィアさんからしたら、そんなに相手にしたことがない武器を持っている相手なのに、こちらが有利ということは一切なかった。いつも良いようにあしらわれてしまう。
「もうすぐ追いつかれると思いますよ」
「全然背中が見えないですけどね。それはそうと、湖の近くまで着きました」
話している間に、湖付近に着いた。まだ、少し遠くから見えている程度だけど、近づきすぎたらレイク・クラーケンが出てきてしまうので、ここで一度止まる。メアリーさんの安全を優先するためだ。
「では、私が倒しに向かいます。ルナ様は、メアリーゼ様をお願いします」
「分かりました。気を付けて下さい」
「はい」
シルヴィアさんは、そう返事をすると、湖に向かって駆けていった。シルヴィアさんが縄張りに入ったからか、すぐにレイク・クラーケンが出て来た。
「うわぁ……あれがレイク・クラーケン? 名前だけは、聞いたことあるけど、思っていた以上にでかいわね」
「結構、強敵なんですけど、まぁ、シルヴィアさんにかかれば……瞬殺ですね」
私がそう言ったと同時に、レイク・クラーケンが真っ二つに斬り裂かれた。それに、私の見間違えじゃなければ、湖の水面を走っていた。本当に色々と規格外の方なんだ。
「……さすがはシルヴィアね」
これには、メアリーさんも苦笑いをしていた。
「私達も湖に向かいましょう」
「分かった」
レイク・クラーケンという脅威がなくなったので、私達も湖に移動した。