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113.宴へ!!

改稿しました(2021年12月20日)

 約一時間に及んだ着せ替えの結果、私のドレスの色はネイビー色で、スカート丈は膝下くらいまでになった。ノースリーブにするかどうかで、リマリーさんが悩んでいたけど、最終的に半袖に落ち着いた。ノースリーブだと私が恥ずかしがると考えたみたい。まぁ、実際正しい。さすがに、ノースリーブでいるのはちょっと恥ずかしいから。

 アクセサリーは、さっき貰った貴族としても紋章が刻まれたネックレスを掛ける。紋章は円形の中に刻まれていて、二本の銃が交差して、その後ろに大きな三日月が描かれている。私の貴族としてのモチーフが刻まれているみたい。


「さっきは足元まであったので、膝下までだと纏わり付かなくて動きやすいですね」

「さっきくらいの長さでもいいと思うのですが、初めての宴ですもんね。さすがに、動きにくいと疲れてしまいますから」


 膝丈のスカートは、学校の制服と同じくらいの長さなので、それで慣れているっていうのもありそう。


「そうですよね。踊らないで済むと良いんですが……」

「初めてだということは、他の人達も知っていると思うので、無理矢理誘われる事は無いと思いますけどね。もし、誘われるようなことがあれば、シルヴィア様を頼られると良いでしょう」

「シルヴィアさんも、もしもの時は私と踊りましょうって言っていましたけど、女性同士で踊るっていうのは有りなんですか?」


 アニメとか漫画、映画とかだと、こういうダンスは、女性と男性で踊っているイメージがある。逆に、同性で踊っているイメージの方が少ない。何かしらの決まりがあるんじゃないのかな。


「有りといえば有りです。ですが、基本的に、こういう場は出会いの場でもあるので、異性でやることが多いですね」

「う~ん、私は興味ないですし、シルヴィアさんの後ろに隠れています」

「それが良いでしょうね」


 リマリーさんと話しつつ、身支度をしてもらっていると、シルヴィアさんが帰ってきた。


「ご用意は出来ましたか?」

「はい。丁度今できました。もう宴が始まるんですか?」

「いえ、もう少し掛かると思います。ですが、先に入場しておき、空気に慣れておく方が良いと思いまして」

「なるほど、分かりました」


 私は椅子から立ち上がり、シルヴィアさんに近づいていく。


「ストラップを付けてくださっているのですね」


 シルヴィアさんは、私の腰で揺れる黒い花のストラップに気が付いた。


「はい。さっきまで、ちゃんとした式の中だったので、やめておいたんですけど、宴なら良いとリマリーさんから許可を得たので付けてみました」

「それに、そのドレスも良くお似合いですよ」

「ありがとうございます! では、リマリーさん行ってきますね」

「はい。私も食事の配膳などで、会場にいますので、何かあればおっしゃってください。シルヴィア様がお力になれないときには、駆けつけますので」

「はい、ありがとうございます!」


 私とシルヴィアさんは待機室から出て行って、会場へと向かった。会場は、体育館の二倍ぐらいの広さがあった。中には、既に何人かの参加者が集まっていた

 る。そこに集まっている人達は、本当に煌びやかな衣装を着ている。いつもの夜烏と黒羽織だったら、完全に浮いてた。


「一応、端の方に寄っておきましょう」

「はい」


 シルヴィアさんと一緒に会場の端っこに行き、しばらく待っていると、次々に人が入ってきた。


「凄く沢山の人が来るんですね?」

「ルナ様は、見ていられないのでご存知ないと思いますが、式の場には今いらっしゃっている人数の倍以上の方がいらっしゃいました」

「……じゃあ、ここに来る人数は、最低でもこの倍って事ですか?」

「はい。それ以上ですね。当然のことですが、ルナ様を知らない方もいらっしゃるので、揉め事は起こさないようにしてください」

「……はい」


 今までの行いから、そんな事無いと言えない。でも、自分から揉め事を起こしたことはないと思うんだけどな。それから、三十分くらい経つと、会場の半分が埋まるほどの人数が集まった。ざっと、五百から六百人ぐらいだと思う。それと同時に、いつの間にか集まっていた音楽隊が盛大に音楽を奏で始める。


「始まりました。少し立食して来ましょう」

「そうですね」


 私とシルヴィアさんは、用意された食事を少しずつ食べていく。すると、スッと誰かが近づいて来た。


「ルナさん、こんばんわ」

「ミリア、こっちにも来てたんだ」


 最初に話しかけてきたのは、まさかのミリアだった。ミリアは、私に挨拶すると、隣にいるシルヴィアさんに緊張しながら挨拶する。


「えっ、えっと、こ、こんばんわ、シ、シルヴィア様」

「こんばんわ、ミリア様」


 ミリアとシルヴィアさんが挨拶を交わすと、ミリアは、嬉しそうに笑った。


「シルヴィアさん、ミリアは、シルヴィアさんのファンなんですよ」

「そうなのですか。少々気恥ずかしいですね」

「あっ、そっ、その握手して貰っても良いですか?」

「はい」


 ミリアは、シルヴィアさんと握手すると、幸せそうな顔をする。何だか、少しだけ胸がもやっとする。


「ルナさん、男爵位おめでとうございます」

「ありがとう。まさか、私も爵位を貰えるとは思わなかったよ」

「私と同じ立場になりましたね。私も、一応爵位を継ぐことが出来ましたし」

「そうなの!?」


 ミリアは、アトランシア卿が持っていた爵位をちゃんと引き継げたみたい。王都に来た目的の一つを達成する事が出来たって事だね。


「はい。まだ、勉強の途中ですので、アトランティス港に戻る事は出来ませんが」

「でも、一歩近づいたね。良かったじゃん!」

「はい。あっ、他の方にも挨拶をしないといけないので、ここで失礼しますね」

「うん」


 ミリアは、シルヴィアさんに一礼して、私と手を振ってから去って行った。昔からの付き合いがあるんだと思う。アトランシア卿について色々な宴に行っていたのかも。


「私も挨拶回りをした方が良いんでしょうか?」

「いえ、ルナ様に特定の付き合いはありませんので、ルナ様から向かう必要はありません。それに、こっちからいかなくても向こうから来るでしょう」

「…………」


 シルヴィアさんがそう言った途端、沢山の貴族の方々が挨拶に来た。基本的には、挨拶と軽い会話だけだったけど、時々こっちに一歩踏み込んでこようとする人もいた。全部、シルヴィアさんが止めてくれたけど。


「はぁ……入れ替わり立ち替わりで、こんなに来るとは思いませんでした」

「そうですね。初めての異界人の貴族ですから」


 貴族からの挨拶が終わると、会場が一際騒がしくなった。


「なんですか?」

「中央でダンスが始まったようですね。少し端に移動しましょう」

「はい」


 私達は、なるべくダンスに巻き込まれないようにするべく、端に移動しようとした。でも、その前を塞ぐように、誰かが現れた。


「ご機嫌よう、ルナ殿。どうか、私と一曲お願い出来ませんか」


 さっき、一歩踏み込んでこようとしてきた貴族の一人だ。


「えっと……え……」

「断りはしませんよね? せっかく貴族の仲間になったのに」


 ニヤニヤとしながら、こっちを見ている。私を利用して、自分を持ち上げようとしているのかも。異界人で初めての貴族である私と踊れば、他の貴族が、仲が良いと勘違いするかもしれないから。それで、何かしらの取引でもするのかな。でも、それなら、当初の予定で行く。


「私、シルヴィアさんと踊るので。これにて失礼します」


 私は、シルヴィアさんと向き合う。この状況を予期していたので、一切の戸惑いもなくシルヴィアさんが、私に手を差し伸べる。当然、私は、その手を取る。そして、二人で揃ってダンス会場に向かった。貴族の男は、唖然としながら、私達を見送った。


「すみません、シルヴィアさん。まさか、本当にこうなるとは思いませんでした」

「私も同じ思いです。先に、姫様達に会っておくべきだったかもしれないですね」

「ああ……それはそうかもですね」


 確かに、シャル達と談笑している姿を見れば、多くの貴族は踏み込めなくなるだろう。色々な噂が出て来るかもだけどね。


「でも、シャル達は、どこにいらっしゃるんですか?」


 この宴が始まってから、シャル達の姿を見ていない。これじゃ、会おうにも会えない。


「今は、恐らく二階席でしょうか?」

「じゃあ、すぐに会うことは出来ないんですね」

「頻繁に下に降りてはいけないので、時間を見計らって降りて来ると思っていたのですが、タイミングが悪かったのかもしれないですね」


 王族の人達が、頻繁に降りて来たら、貴族の人達も心が安まらないだろうし、色々と気を利かせないといけないみたい。


「シャルだったら、勝手に降りてきそうですけどね」

「いえ、それは無いでしょう。今日は、レオグラス殿下が付いていますから。姫様も大人しくしているはずです。そういう勝手をしてしまえば、確実に怒られてしまいますから」


 思っていた以上にレオグラス殿下は、常識人のようだ。まぁ、シャルが自由奔放すぎるだけだと思うけど。


「さて、準備はよろしいですか?」

「は、はい!」


 話しているうちにダンス会場まで来ていた。


「私と息を合わせてください。そうですね……修行の時を思い出すと良いと思います」

「修行……」


 シルヴィアさんとの修行では、相手の動きを先読みして、動くというものをやったりもしていた。シルヴィアさんが、わざと動きを察知されやすく動いてくれていたけど、私の攻撃は、一切シルヴィアさんに当たらなかった。あの時の感覚を思い出せということなのかな。つまり、シルヴィアさんの動きを先読みして、合わせて動いていけば良いはず……


 音楽隊の方々が、壮大な音楽を奏で始める。シルヴィアさんの手を取って踊り始める。シルヴィアさんのステップに合わせて、私自身も動いていく。シルヴィアさんがどう動きたいのか、それを考えて動き続ける。さすがに、練習なんてしていないので、動きがぎこちなくなってしまった。そのせいか途中で、躓いて後ろに倒れそうになったけど、その度に、シルヴィアさんがフォローしてくれた。おかげで、なんとか形にはなっていたと思う。


『『舞踏術LV1』を修得しました』


 約五分間のゆっくりとしたダンスだったけど、疲労感が半端ない。後半は、スキルのおかげで、少しだけマシになったんだけどなぁ。私は、シルヴィアさんに支えて貰いつつ、ダンス会場から遠ざかろうとする。すると、私達の前を沢山の貴族達が塞いできた。


「何故?」

「恐らく、今のダンスで、ルナ様が踊れると判断されたようですね」

「確実にシルヴィアさんのおかげなんですが……」


 貴族達の眼からしたら、私は十分に踊れると判断されるらしい。私は当然のことながら、シルヴィアさん以外の人と踊るつもりは無い。さて、どう切り抜けたものか。

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