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111.褒賞(2)!!

改稿しました(2021年12月19日)

 国王様の執務室は結構遠いみたいで、少し歩いただけでは着かなかった。だから、一緒に歩いているシルヴィアさんと少し話をする事が出来た。


「褒賞を頂けるということでしたが、何を頂けるんでしょうか?」

「そうですね……どういった褒賞が頂けるかは、その人次第といったところでしょうか」

「その人次第ですか?」

「はい。その人の働き、身分、そういったものを考慮して決められます。私は、褒賞で一代貴族の地位を叙されました。その事もあり、姫様の護衛の任に就くことになりました」


 一代貴族は、叙された本人だけが貴族を名乗れるというものらしい。その地位は、男爵から伯爵まであるみたい。その人が行った功績によって変わるようで、シルヴィアさんは、子爵の爵位を得ているみたい。


「シルヴィアさんは、どんな功績で爵位を得たんですか?」

「スタンピードを止めた事と暴動を鎮圧した事、ついこの間まで行っていた戦争で敵大将を討ち取ったなどですかね」

「それって……お一人でやったんですか?」

「最初の二つはそうですね。戦争の方は、当時騎士団を率いていたので、騎士団と一緒にやった事ですよ。あれは……十五歳ぐらいの事ですね。リリウムが入団する少し前の事です」

「へぇ~、そうなんですね」


 こんな風に返事をしているけど、正直頭の中ではかなり混乱していた。スタンピードを一人で止めて、恐らくこの前の革命派のような暴動も一人で鎮圧して、戦争では敵大将を討ち取るって、どれだけ凄い活躍しているのって話だよ。と言うよりも、十五歳で、そんな事をしているって事が一番ヤバいと思う。そりゃあ、あんなに強くなるわけだ。


「ルナ様が、どのような褒賞を得られるかは分かりませんが、爵位を叙されても辞退だけはしないようにお願いします」

「それは……何故ですか?」

「陛下が爵位を叙すという事は、その方を信頼しているということに他なりません。それを断られるということは、陛下の信頼を蹴るということになります」

「つまり、国王様の信頼を受け取らないと、国王様の面目が立たなくなるって事ですか?」

「はい。褒賞を渡される場所には、他の大臣の方々も並びますから、そうなりますね」


 確かに、大臣さんが並んでいる中で、国王様から与えられるものを拒めば、国王様の面目が立たなくなるのも頷ける。それに、国王様の信頼そのものを拒むことにもなるし。でも、爵位か……


「国王様の意向だけで、爵位を渡されるんでしょうか?」

「普通であれば、大臣の方々から反対される可能性があります。ですが、ルナ様の功績ならば、反対されることは無いでしょう。それだけのことをルナ様はなさっているのですから」

「そうなんですか?」


 あまりパッと来なくて、首を傾げる。現実でもそういうことがあれば、もっと想像出来たのかな。そんな事を思っていると、シルヴィアさんは、珍しく深いため息をついた。


「ルナ様は、ご自分の為したことの重さを分かっていません。まず、ユートリアのスタンピードの解決。次にアトランティスの破壊。アルカディアの破壊。最後に、アリス様救出と革命派の殲滅。ルナ様を評価する材料が、こんなにも揃っているのです。大臣の方々も認めざるを得ないでしょう」

「異界人でもですか?」

「そうです。異界人であるということを差し引いても、爵位を与えられる程の功績があります。前代未聞ではありますが」


 つまり、私は、異界人初の……プレイヤー初の爵位持ちになる可能性があるって事か。う~ん、正直、爵位で得られる恩恵は大きいかもだけど、その分面倒くさい部分がありそう。ちゃんと考えていかないと。まぁ、なるとは限らないけど。


「着きました。こちらが、陛下の執務室です」


 そんな事を話している内に、国王様の執務室まで辿り着くことが出来た。シルヴィアさんに案内された扉の前には、二人の親衛隊みたいな人が立っていた。


「ルナ様をお連れしました」

「少々、お待ちください」


 親衛隊の二人が、部屋をノックする。


「ルナ様がお越しになりました」


 親衛隊の一人が扉に向かってそう言うと、


『入って良い』


 部屋の向こうから、国王様の声が響いてきた。


「ルナ様、私は部屋の外でお待ちしております」

「あっ、はい。分かりました。いってきます」


 私が前に出ると、親衛隊の二人が扉を開けてくれた。私は、二人に頭を下げてから中に入っていく。


「失礼します」

「うむ、良く来たのう。そっちに座るといい」


 私は、国王様に勧められて、国王様の正面の空いている椅子に座る。


「さて、早速打ち合わせを始めるとするかのう」

「はい」

「まず、ルナに与える褒賞じゃが、一つは爵位を与えようと思っておる」


 シルヴィアさんと話していたから、爵位と言われても動揺せずに済んだ。でも、国王様の言葉に少し引っかかる事があった。


「あれ? あの……今、一つっておっしゃいましたか?」

「うむ。今日の朝、大臣達と話し合って決めた事じゃが、一つでは足りないのではないかとなってのう。爵位は確定しておるのじゃが、他に何か欲しいものはあるかのう?」


 また突然欲しいものと言われても、正直あまり思いつかない。


「欲しいもの……あの、この間の宝物庫から持ち出させて頂いたものっていうのは……」

「無しじゃな。それは、もう既に、ルナに与えたものになっておる。無論、銃だけで無くナイフも同じじゃ」


 褒賞を宝物庫の韋駄天とナイフに当ててもらおうとしたけど、ダメだった。あの時点で、私のものになっていたみたい。嬉しいけど、解決はしていない。


(う~ん……どうしようか……)


 私が悩んでいると、国王様が助け船を出してくれる。


「ふむ。では、あれを与える事にしよう」

「あれ……ですか?」


 何のこと分からずに、首を傾げる。


「うむ。ちょうどレオグラスが、持って帰ってきたものの中にあったものなのじゃが、小さいながらも容量が多いマジックバックを与える」

「それって、かなり貴重なものなのではありませんか?」

「そうじゃな。だからこそ、褒賞にも相応しい品というわけじゃ。これは、先に渡しておくとしよう」


 国王様が、机の上に置いてあった鈴を鳴らす。すると、扉が開いて、さっきの親衛隊の人が現れた。


「レオグラスが持ち帰ったマジックバックを持って参れ」

「はっ! かしこまりました!」


 親衛隊の人が、すぐに動き出す。


「爵位の授与は、四日後の昼を予定しておるのじゃが、ルナの予定は大丈夫かのう?」

「はい。四日後なら大丈夫です」

「うむ。なら、決まりじゃ。諸々のやり方は、シルヴィアに教えてもらうと良い。あやつは、一度爵位を叙しておるからのう。一通りのやり方は知っておるはずじゃ」

「はい。分かりました」


 そこまで話したところで、親衛隊の人がマジックバックを持ってきた。マジックバックと呼ばれるそれは、私がいつもマガジンを入れている腰のポーチよりも小さかった。


「ご苦労。これが、ルナへの褒賞の一つじゃ」

「有り難く頂きます」

「うむ。では、四日後の昼にまた会おうぞ」

「はい」


 私はマジックバックを受け取って、国王様の執務室から出て行く。


「良きものを頂いたようですね」

「はい。それと、爵位も頂けることになりました。そのことで、シルヴィアさんから、作法を学ぶようにと言われました」

「分かりました。ルナ様、そのような場に出たことは無いということよろしいですか?」


 私が出た事がある式は、卒業式とかぐらいなものなのだ。絶対にその時の事は役に立たない。


「はい。出た事は無いです」

「では、最初から、しっかりとお教えします。まずは、姫様の執務室に戻りましょう」

「はい!」


 それから、三日間。毎日シルヴィアさんのところに通って作法を、徹底的に叩き込んでもらった。色々と気を付けないといけない事があるので、結構大変だった。でも、何とか形にすることだけは出来た。


 そして、若干の不安を抱えながら、爵位も貰う日がやって来た。

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