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107.王城内での戦闘(1)!!

改稿しました(2021年12月16日)

 隠し通路の中に入って、扉を閉める。これで、向こうからはただの壁にしか見えない。隠し通路は、かなり複雑だった。あっちこっちに分かれ道がある。てっきりまっすぐ繋がっていると思っていたから、若干戸惑う。


「えっと……これは、戻った方が良いかな?」


 周囲をキョロキョロとして、どこに行くべきなのかを考える。すると、通路の柱に傷のようなものがついていた。


「これは……目印かな?」


 シルヴィアさんは、あまり使われていないと言っていた。それに、定期的に点検もしていると。なら、柱も基本的に綺麗な状態のはず。他の柱には傷は一切付いていないし、この傷が人為的に加えられたものだというのは明らかだ。


「これに沿っていってみよう。これで無理だったら、外に出て無理矢理移動すれば良いし」


 私は、柱にある傷を頼りに進んで行った。分岐の度に柱を確認して、進むべき方向を確かめていった。すると、何でもないような壁に何かが引っかかっていた。


「これって、私がシルヴィアさんにプレゼントしたストラップだ。じゃあ、この壁が部屋に通じているって事だよね」


 ストラップを回収して、壁を押す。少しだけ引っかかりを感じるけど、問題なく開ける事が出来た。


「ルナお姉ちゃん!」


 中に入ると、アリスちゃんが飛びついてきた。取りあえず、抱きつかれたままだと動けないので、いつも通り抱き上げる。


「よかった。ちゃんと合流出来た。シルヴィアさん、ありがとうございます」

「いえ、気付いて頂けたようで良かったです」


 私は、ストラップをシルヴィアさんに返す。シルヴィアさんは、ストラップを腰に身につけた。


「国王様、既に敵が城内に侵入しています。敵が上がっていた壁の上部にワイヤーが括り付けられていました」

「そうか……ここに敵はいないかのう?」

「気配は感じません。ですが、それを隠していたとしたら、私にも分かりません」


 そう報告をすると、国王様はシルヴィアさんの方を見た。すると、シルヴィアさんがこくりと頷く。シルヴィアさんでも気配を感じないかを確認していたんだと思う。私とシルヴィアさん、どちらも気配を感じないと言われた国王様は、少し考え込んだ。


「今更、ここを離れる事はしない。シルヴィアは、ここの防衛を最優先に。ルナは、外の相手を減らしてきてくれるかのう?」

「外というのは、部屋の外って事ですか?」

「うむ。どこに敵がいるか分からん。注意して行くのじゃ。それと、なるべくなら、敵と確定していないものは、殺さないようにしておくれ」

「……分かりました」


 殺さないように行動するには、黒闇天ではなく吉祥天を中心に戦う必要がある。吉祥天の麻酔弾は、針が刺さらないと効果を発揮しないので、少し面倒くさい。でも、敵じゃない相手を殺すわけにもいかないので、同意した。


「じゃあ、行ってきます。アリスちゃんは、シャル達と一緒にいてね。シルヴィアさんが守ってくれるから。シャルも勝手に行動しちゃダメだよ」

「分かってる。アリス、おいで」


 アリスちゃんを降ろすと、アリスちゃんはシャルの元に駆けていく。その後に、メアリーさんとシルヴィアさんに目配せをしてから、部屋の外に出る。


「ふぅ……よし!」


 私は気合いを入れ直し、吉祥天を片手に歩き出す。そもそも王城内に敵の気配はない。外なら多くの気配を感じるけど、中は一切ないのだ。ということは、敵は気配遮断を持っていると考えられる。


「……それで、どうやってあぶり出せば良いんだろう?」


 そんな風に思いながら歩いていると、何だか嫌な予感が過ぎった。身体を止めて、上体を仰け反らせる。すると、さっきまで私の上体があった場所をナイフが通り過ぎた。その持ち主である執事の顔が苛立った様に歪む。その首に麻酔弾を撃ち込む。


「ぐ……う……」


 眠りについた執事を近くの部屋に引きずる。中には、何人かのメイドさんがいて、私が入ると唖然としていた。


「あっ、お気になさらず。ちょっと襲われたので、身元を明らかにしようと思いまして」

「あっ、はい」


 メイドさん達は、こくりと頷いてそう言った。こっちが冷静に言ったから、向こうも騒ぐことが出来ず、唖然としたままだった。


「えっと……この人が誰だか分かりますか?」


 私は、執事の人の服を漁りながら、メイドさんに訊いた。


「確か、二ヶ月前に入った執事だったかと思います」

「二ヶ月前……まぁ、必ずしも、昔からいるってわけじゃないよね。何かおかしな事はありませんでしたか?」

「……私達とは担当が違うので、詳しい事は分かりません」


 メイドさんの一人がそう答えた。周りのメイドさんもその通りと頷いている。服の中からもこれといって素性が分かるものはなかった。ただ、何かの瓶が入っていた。


「これは……毒?」


 私がそう言うと、メイドさん達が怯えるのが分かった。


「縄とかありますか? この人を縛らないといけないので」

「あっ! はい!」


 メイドさんの一人が駆け出して、大量の麻紐のようなものを持ってくる。それを受け取り、執事を縛っていく。初めて人を縛るけど、意外とうまく縛り付ける事が出来た。


「空き部屋はありますか?」

「向かい側がそうです」

「ありがとうございます。これから、度々戦闘音が聞こえるかもしれません。なるべく、ここから出ないようにお願いします」


 そう言ってから、部屋を出る。さすがに、生きている敵をメイドさん達が仕事をしている場所に放置させることは出来ないので、メイドさんに教えて貰った空き部屋の中にあったタンスに入れておいた。


「取りあえず、襲ってきた人は敵認定で大丈夫だよね。この人は、情報源として生かしておくけど、他は倒そう」


 この攻防で一つだけ分かった事があった。それは、敵が執事などの王城内で仕事をする人に扮している可能性が高いということ。つまり、敵味方を見極めることは厳しい。


「手当たり次第って事も出来ないし。無防備に歩くしかないかな? でも、さっきの不意打ちは偶々防げただけだし……」


 そんな事を考えていると、敵が城内に潜入した事が気配感知で分かった。


「まずは、確実な敵の排除から」


 私は、反応がする方に向かって走っていく。最近、ずっと気配感知を意識して動いていたからか、少し離れていても敵の位置が三次元的に分かるようになった。おかげで、敵がどこから侵入してきているのかが分かった。いくつか場所がある。


「国王様達に一番近いところから対処しよう」


 私は敵が侵入した箇所に向かって駆けていった。そこには、初めての王城に戸惑っている敵の姿があった。装備などから、それがプレイヤーであろう事が分かる。ということは、潜入している敵についてなんて知らないはずだ。下手に攻撃したら、またトラウマを植え付けることになりそう。でも、そんな事気にしている暇なんてない。私は、吉祥天を握りしめる。ここは王城の四階。つまり、上がってくるには軽装備じゃないといけない。前にいる敵もかなり薄い装備をしている。それなら、麻酔弾の針でも貫けると思う。


「銃技『複数射撃』!!」


 放たれた麻酔弾が、全て敵に命中する。五人いた内四人が眠りについたけど、一人が眠りに抵抗している。そこに瞬時に近づき、その顎を掌底で打ち抜いた。その結果、目の前の敵は眠りについた。


「ふぅ……これで全員無力化させる事が出来た。ただ倒すんだと、生き返っちゃうからね」


 私は、念のためもう一発ずつ麻酔弾を撃ち込んでおく。多分、致死量には届いていないから、大丈夫なはず。


「さっき、沢山紐を貰っておいて良かった。どんどん縛っていこう」


 そうして五人の敵を縛り付けると、


『『捕縄術Lv1』を修得しました。最初の修得者のため、ボーナスが付加されます』


 縛り付けるスキルを手に入れた。そのおかげで、なんとなく効率の良い縛り方を出来る様になった。


「ここで目覚められても困るし、外に吊しておこう」


 私は、縛った人達を窓の外に吊していく。


「よし! じゃんじゃん行こう!」


 私は、王城内を駆け回って、敵をどんどんと束縛していった。そして、最後の一団を捕まえるために移動すると、なんとなく見覚えのある姿が見えた。


「はぁ……」


 思わずため息が出る。相手もこっちに気付いて、睨み付けてきた。それでも私は気後れしていられない。ここで出会った大切な人達を守るために。

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