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104.まだ終わっていない可能性……

改稿しました(2021年12月15日)

 翌日、学校に登校して、すぐに顔を伏せて仮眠に入った。結局、今日の睡眠時間は、二時間ほどしか取れなかった。朝の家事を怠るわけにもいかないので、早起きは必須だったのだ。

 授業は寝ないように気を付けながら、昼休みまで過ごす。そして、日向、大空、舞歌と一緒にお昼ご飯を食べていた。


「それじゃあ、救出自体には成功したんだね?」

「うん。おかげで寝不足だよ」

「それ、記事になってるよ。『一人のプレイヤーによってクエスト参加者が全滅』だって」

「ふぅん。それってイーストリアで?」

「うん」


 完全に私の事だね。ご飯を口に運びつつ、今後の事を考える。


「でも、一つ問題があってさ」

「問題ですか?」

「うん。アルカディアのクエストはクリアしたでしょ? 三人も表示出てきたよね?」


 三人が同時に頷く。


「そのアリスちゃん救出もクエストだったんだけど、クエストのクリア表示でなかったんだよね。それが少し心配でさ。本当はもっといたかったんだけど、今日が学校だから、向こうにいるわけにもいかなかったんだよ」


 向こうが心配だけど、こっちの生活を疎かには出来ない。私にとっての現実はこっちなんだから。


「確かに、それは問題かもね。私も協力したいけど、今日は部活があるからなぁ」

「私も予定が入ってるんだ」

「すみません。私も……」

「まぁ、さすがに仕方ないよ。アリスちゃんは、王城内に入っているし、シルヴィアさん達もいるから大丈夫だと思うけどね。はぁ、早く放課後になって欲しいよ」


 私達が、そう話していると、二人のクラスメイトの男子が近づいて来た。その顔は険しかった。何だか嫌な予感……


「おい。今、アリスって名前が出たと思うんだが」


 態々人の話を盗み聞きしているとは思わなかった。


「出たけど、それがどうかしたの?」


 私がそう訊くと、男子の一人が机を思いっきり叩く。


「お前のせいで、クエストに失敗しそうじゃねぇか!!」

「……あの場にいた人って事?」

「ああ、そうだ。てめぇに頭を撃ち抜かれたよ! 巫山戯やがって!」

「敵対している勢力に、それぞれいるんだから、倒す倒されるは当たり前でしょ。そんな事で怒鳴られても困るんだけど」


 この二人は、昨日の夜にあの場所にいたみたい。つまり、革命派のクエストを行っていたということだ。


「お前のせいで、うちのパーティーメンバーがトラウマになったんだぞ!」

「だから? 国の王女を攫った時点で、何が起こるか分からなかったの? 誰かしらが救出に来るはずだと思わなかったの?」


 トラウマになったっていうと、最後まで生き残っていたあの女の子かな。あの子が一番怖がっていたから。それでも、私が怒られるようなこととは思わない。だって……


「そもそも、あんな小さな女の子を誘拐して縛り上げて、それこそトラウマになるとは思わなかったの? 自分達も同じようなことしておいて、自分達が似たような目に遭ったら、ぶち切れるんだ。巫山戯ているのは、そっちなんじゃないの?」


 じろっと睨んで、そう言うと、二人とも黙り込んだ。そして、ばつが悪くなったのか、舌打ちをして自分達の席に戻っていった。


「あれだけ? 何しに来たんだろう?」

「文句言いたかったんじゃないの? ただ、意外とポンコツなのかもね。情報を得る事が出来たでしょ?」

「ん?」


 大空が、ため息をつく。


「はぁ……、()()()()()()()()()()って言っていたから、まだ終わりじゃないって事だよ。油断はしないようにしな。今日の夕方、あいつらも向こうに行くはず。つまり……」

「向こうに行って、少し経ったら、何かが起こる可能性があるって事だね。あっ、そうだ。アリスちゃんに黒羽織を返して貰わないと」

「まぁ、朔夜ちゃんの本領が発揮出来る夜が舞台になる可能性が高いから、心配ないかもしれないけどね。シルヴィアさんもいる事だし。明日は、創立記念日で休みだから、徹夜も出来るしね」

「でも、気を付けてくださいね」

「うん。ありがとう」


 お昼ご飯を食べ終えて、残りも授業を終えた後、自宅に帰った。簡単な夕食を食べて、お風呂に入ってから、ユートピア・ワールドにログインする。


 ────────────────────────


 ユートピア・ワールドに入ると、空は夕暮れだった。周囲の騒がしさは、普段通りなので、まだ何も起こっていないはず。


「王城に急ごう」


 王城に向かって駆け出す。王城内に入ろうとすると、門番の人に止められる。


「どうかしたんですか?」

「いえ、ルナ殿にお伝えすることがあるのです。今日は、このままシャルロッテ殿下の執務室に向かってください。シルヴィア殿がお待ちになっています」

「分かりました。ありがとうございます」


 門番の人にお礼を言ってから、シャルの執務室に向かった。扉をノックすると、すぐにシルヴィアさんが開けてくれる。


「少々お待ちください」


 シルヴィアさんがそう言うと、シャルがこっちに来た。


「ルナ、ありがとう。アリスを救ってくれて」


 シャルが頭を下げる。


「気にしないで。私がやるべきと思ったからやっただけだよ。でも、これで終わりじゃないみたい」

「どういうこと?」


 シャルの顔が、少し強張る。シルヴィアさんも同じだ。


「向こうの世界で、ある事が分かったの。協力していた異界人が、依頼を失敗しそうだって言っていたんだ。だから、まだ終わっていないはず」

「なるほど……シルヴィア、父上のところまで」

「はい。ご案内します」

「ルナ。私は、何も出来ない。だから、お願いがあるの」

「うん。皆を守るよ。私は、ここにいる皆が好きだから」

「……ありがとう」


 シャルと別れて、シルヴィアさんの案内で国王様の元に向かう。国王様は、昨晩と同じ部屋にいた。


「ルナか。良く来てくれたのう」

「いえ、それで、国王様に、改めてお話があります」

「ふむ。申してみよ」

「今回の騒動は、まだ終わっていない可能性が高いです」

「何じゃと!?」


 私はシャルにしたように、今日の昼にあった事を伝えた。


「ふむ。なるほどのう……」


 国王様は、少し考え込む。


「地下牢の異界人は?」

「昨晩にいなくなってから現れていません。もしかしたら、もう死んでいる可能性もあります」

「牢屋は特殊性ではないんですか?」


 昨日考えていたプレイヤー用の牢屋に入っていないのかな。


「後日護送予定でした。ここの地下牢は、その処理をされていません」

「だとしたら、万全の状態で生き返っている可能性が高いですね。地下牢に運ぶまでに、目隠しはしていましたか?」

「はい。していました。牢に入れた後も同様です」


 つまり、目に見えないまま、自分を殺して生き返ったのかもしれない。そしたら、噴水広場で復活するはずだ。目を隠した事で得られる利点は、王城の構造を知られないということだけど。


「地下牢の監視は続けよ。そして、王都内、王城内の巡回を密にせよ」

「はっ!」


 官僚が次々と動いていく。


「ルナ、アルカディアに行って、戦乙女騎士団を呼んできて欲しい。緊急事態じゃ」

「分かりました。すぐに行ってきます」


 私は、すぐに王城を飛び出して、噴水広場に向かった。そして、アルカディアの移動集落に転移する。


「あっ、またアリスちゃんに会う前に来ちゃった……まぁ、いいや。すぐにリリさんと合流しよう」


 移動集落から少し離れた場所に、戦乙女騎士団の旗が見える。私は、その旗の下に向かった。


「リリさん!」

「ルナさん? どうかなさいましたか?」

「はい。実は緊急事態なんです。王都内、あるいは、その周辺で何かが起こる可能性があります。戦乙女騎士団の皆さんも、至急王都に向かって欲しいと国王様から言伝を預かりました」

「……分かりました。聞いていましたね、アザレア?」

「はい。全隊! 王都への帰還準備に取りかかれ!」


 アザレアさんの指示で、戦乙女騎士団の団員さん達が動き始める。


「ルナさんは、このまま転移でお戻りください。伝達をしてくださってありがとうございます」

「いえ、では、失礼します。リリさん達もお気を付けて」


 リリさん達への伝言を終えた私は、転移で王都に戻る。王都の様子は変わりない。いつどこで、何が起こるのか分からないので、僅かな違いがないか、つい確認してしまう。


「今のところ何もなさそう。とりあえず、国王様の元に戻らないと」


 王城内の、さっきまでいた部屋に向かう。これからの異変に備えるために。

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