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103.無事救出完了!!

改稿しました(2021年12月15日)

 アリスちゃんを逃がした方に向かって走り続けていると、正面から馬蹄の音が聞こえ始めた。私は、すぐに韋駄天に手を掛ける。音の感じから、馬は複数いると分かったからだ。走りながら、銃弾を精製していたから、マガジンのストックも増えている。

 気配感知には何も引っかかっていないけど、念のためだ。段々と、音の正体が見え始める。


「騎士団?」


 それは、私が見たことのない鎧を着た人達だった。戦乙女騎士団と似ている感じがするから、騎士団なのではと思ったのだ。


「あなたがルナ殿ですね?」


 先頭を走っていた爽やか風な男がそう言った。


「はい。あなた達は?」

新緑騎士団(フォレストナイツ)です。私は、レギウル・パムイオンといいます。この先で、アリス殿下を保護し、ルナ殿が一人で戦っているという話を聞いて、向かっている途中でした」

「なるほど。では、アリス殿下は、無事なのですね?」


 念のため、アリスちゃんを殿下と呼ぶ。普通に呼んだら、怒られる可能性もあるからだ。私の事を知っている人相手だったら、普通に呼ぶんだけどね。


「はい。ルナ殿もご無事のようで、何よりです。こちらにお乗り下さい。王都までお送りします」

「ありがとうございます」


 レギウルさんの後ろに乗らせてもらう。レギウルさんは、私が乗ったことを確認すると、すぐに馬を走らせた。レギウルさんの馬を先頭にするように、他の団員も付いてきていた。


「敵は、もう全滅しましたか?」

「はい。追い掛けてきていた人達に関しては、全て倒しました。ただ、向こうにも異界人が協力していたみたいなので、もしかしたら、復活した人が追い掛けてくる可能性もあります」

「異界人が!? それは、少しまずいですね……」

「王都に転移出来るからですか?」

「ええ」


 私達プレイヤーは、転移ポータルで都市間移動をする事が出来る。さっきのイーストリアから王都にも移動出来るはずだ。私も噴水広場まで行けば転移できたけど、アリスちゃんがまだ道中にいる可能性と、敵の真っ只中に突っ込むようなものということで、走って戻る事にしたんだ。


「ですが、王都で行動に移るような事はないのでは? さすがに、向こうに不利な状況だと思いますし」

「どうでしょうか。向こうは、形振り構わず、やる可能性があります。殿下の護衛には、かなりの人数を割いておきましたが、少し心配です」

「なるほど。すみません。その面を考えると、私の戦いは、火に油を注ぐ行為だったかもしれません」

「いえ、殿下の安全を考えての行動を、非難するなんて出来ませんよ。取りあえず、全力で駆けていきましょう」


 レギウルさんとの話で、嫌な予感がするも、私は、馬に跨がっているしか無い。このまま何事もなく終わればいいのだけど。私のこの想いは、この少し後に裏切られた。


「レギウルさん! あれ!」


 私が指さした方向、王都の街から煙が上がっていた。王都の灯りもあって、まだ暗い夜のうちでも、煙が見える。王都で、あんな煙が上がったことはないので、異常事態で間違いない。


「くっ! 本当になってしまいましたか……! 第四から第六部隊は、反対方向に回れ! 第一から第二は、このまま正面に向かうぞ!」

「「はっ!!」」


 新緑騎士団が二手に分かれて進んで行く。私達は、そのまま正面に向かって、進んで行く。ここから見える光景では、門の向こうに人だかりが出来ている。恐らく避難してきた住人だと思う。この状態だと、馬で中に入るのは難しそうだ。だから、私は、門の近くに来たと同時にハープーンガンを取り出した。


「私は、先に向かいます!」

「え!?」


 ハープーンを撃ち出して、空を舞う。一度、ハープーンを外して、別方向にある建物に撃ち出して、身体を引っ張る。それを繰り返して、高速で移動していく。人だかりは、想像以上に多かった。そして、王都の煙の正体は、王城の近くに存在した。


「急ぐ必要はなかったみたい」


 王城の近くで、プレイヤー達が暴れたみたい。イーストリアで見た覚えがあるから、デスペナのまま、こっちに来たプレイヤーだ。そのプレイヤー達は、腕と脚を切断されている。その状態でも生きているのは、プレイヤー特有の耐久値の高さ故かな。その傍では、剣に付いた血を振り落としているシルヴィアさんの姿があった。


「シルヴィアさん!」

「ルナ様、こんな夜更けに何をしているのですか?」

「実は、アリスちゃんを助けに行っていたんです。もう戻ってきているはずなんですが」

「そうですね。アリス様は、現在王城内に入られています。そのアリス様を狙って、この者達が攻撃をしたわけですが」


 アリスちゃんは無事に帰ってくる事が出来たみたい。救出作戦は成功したと考えて良さそうだ。やっぱりこのプレイヤー達は、アリスちゃんを狙っていたみたい。クエストクリアのためだろうけど。


「アリスちゃんに怪我は!?」

「ありません。羽織っていたコートのおかげで、攻撃の余波を受けても無傷でした。あれは、ルナ様のものですね?」

「はい」


 黒羽織は、きちんとアリスちゃんを守ってくれたみたいだ。


「助かりました。それと、この者達をご存じですか?」

「私と同じ異界人です。イーストリアで交戦しました。一度倒しているので、弱っていますが、戦えないということはありません」

「だから、ここまで飛んできたということですね」


 プレイヤー達は、気絶している。腕と脚を切断されたという事実に耐えきれなかったのかもしれない。


「腕と脚を止血して、牢屋に閉じ込めなさい。猿轡も忘れないように」


 シルヴィアさんが近くの兵士に指示する。

 一応、手とかを使わなくても、ログアウトは出来るから問題ないと思うけど、同じプレイヤーとしては、かなり痛い仕打ちだと思う。まともにゲームをプレイする事すら出来なくなるからね。もしかしたら、ユートリアでリリさんが話していたような牢屋なのかもしれない。いつ頃まで縛られたままなんだろう。


「この人達は、いつまでこのままの姿に?」

「この者達が、情報を吐くまででしょうか。それは、陛下次第となります」

「そうですか。一応、私が得た情報も伝えておきたいのですが、国王様はおやすみになっていますよね?」

「アリス様の事もあって、起きていらっしゃいますが、それは、重要なお話でしょうか?」

「今回の黒幕について」

「中で話しましょう」

「ルナ殿!」


 ようやくレギウルさんが到着した。馬での移動は無理なため、馬から降りて走ってきたみたいだ。


「シルヴィア殿もご一緒でしたか。これは一体?」

「王都内に賊が入り込んだんです。レギウル殿、この者達を地下牢までお願いします。既に手配はしていますが、いつ起きて暴れるか分かりません」

「承知しました。アリス殿下のご様子は?」

「少々お疲れ気味のようですが、大きな怪我はありません」

「では、無事にこちらまでお送り出来たということですね。それは良かった」

「ええ、では、私達は失礼します」


 レギウルさんと別れて、王城内に入る。


「まっすぐ陛下達が待機している部屋まで向かいます。付いてきてください」

「はい」


 王城内を歩いていき、ある部屋の中に入る。中は、多くの人が歩き回っていた。国王様は、テーブルについて考え事をしていた。


「陛下、ルナ様から報告が」

「そこに座りなさい」


 国王様は、近くの席を指さす。私は、そこに座る。


「アリスが無事に帰ってきた。ルナ、礼を言おう」

「いえ、こちらも無事に救出出来て良かったです。それで、今回の革命派の行動についてですが」

「ああ、話を聞こう」

「黒幕は、イーストリア領主と思われます。領主に協力していた異界人の女性から、その証言を受けました。実際、囚われていた場所は、領主の館でした。あそこの領主の顔を知らないので、あの場にいたかは分かりません」


 下手すると、館を爆破したときに死んでいる可能性もあるけど。


「なるほどのう」

「それと、領主の館の一部を爆破しました。その報告も後々に来るものと思います」

「うむ。それは構わない。仕方のない事じゃ」


 国王様は、疲れた顔をしていた。色々と対応に追われているからだと思う。


「すぐに、イルランテ卿の裏を洗うのじゃ。いや、まずは、引っ捕らえて話を聞き出せ。それと館で働いていた従業員も、こっちに連れてくるのじゃ。話を聞くことにする」

「はっ!」


 国王様が指示すると、官僚の人達が、慌ただしく動き始める。


「ルナ、今日はもう遅い。明日の夕方に、また来てくれるかのう?」

「分かりました。失礼します」


 私はシルヴィアさんは、部屋を出て行く。


「ルナ様は、どちらまで行かれますか?」

「噴水広場までです」

「お送りします。今は、油断なら無い状況ですので」

「ありがとうございます」


 シルヴィアさんと一緒に噴水広場まで行った私は、シルヴィアさんに見守られながらログアウトした。そこで、私は、ある事に気が付いた。


「クエストクリアの表示が出てきてなかった……? じゃあ、まだ終わりじゃないって事?」


 もう一度ログインしたいと思いながらも、明日いや、もう今日か。今日は学校もあるから、完徹は出来ない。もやもやとした気持ちの中、私は眠りについた。

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