表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SISTER××COMPLEX  作者: 佐倉桜
2
23/23

過去1

阿部あかりと阿部‘’ひかり‘’。


私とあかりは一卵性の双子だ。

見た目はまるで同じ。

髪型と服装が同じだったらきっと誰も見分けがつかない。


私たちは幼い頃、とても仲のいい双子だった。

いつも何をする時もずっと一緒。


でも、小学校高学年の頃。


母は、突然私に厳しくなった。



あかりはとても頭が良く、勉強が得意だった。

得意なのは勉強だけじゃなくスポーツも。

おまけに趣味は手芸と料理で、本当になんでも出来る完璧な女の子だ。


母は、そんなあかりを自慢の娘だと誇らしげに褒めていた。


それに比べて私はというと、勉強は苦手。

運動神経も悪ければ、これといった趣味もない。


母はそんな私に厳しかった。


「どうしてこんな事もできないの!?あんたみたいなのがあかりの双子の妹だなんて、ありえない!私の娘だなんてありえない!」


母はそう言って私をいつも叱っていた。


怒った母はとても怖かった。


怖い顔で私を怒鳴りつけ、頬を強く叩き床に思い切り突き飛ばす。

時には物を投げつけられることもあった。


父はその頃、仕事が忙しく家に帰ってくることは月に数回で、母はそんな父にいつもイライラしていた。

たまに父が帰ってきてもいつも喧嘩ばかり。

そして父が家に帰ってくる回数はどんどん減っていった。


「あかりだけ…あかりだけ産まれてくれば良かったのに。どうして双子で産まれてきたの。ひかりなんて、いらない」


それが母の口癖だった。



母の虐待は徐々にひどくなっていった。


中学生になってからは、私だけ家に入れてくれないこともあった。

真冬の寒い時期に、家の前で扉を開けてくれることをずっと待っていることもあった。


私にだけご飯を食べさせてくれなかったり、

着た洋服も洗ってくれなかったり。


だけど、あかりにはいつも優しくしていた。


私はあかりが羨ましかった。

勉強も運動も努力しても人並みにしかできなかった私を、母は許してくれず虐待は酷くなっていく一方だった。


けど、あかりは私を助けてくれなかった。

いつも母から虐められる私を見て見ぬふりで誤魔化していた。


母に嫌われるのが怖かったんだろう。

私のように虐待されたくなかったんだ。


そりゃそうだよなと、私は思った。


小さい頃はあんなに仲が良かったのに、

私たちは家で一言も会話をしなくなっていた。


けど、学校ではあかりはいつも楽しそうに私に話しかけ、母とのことを励ましてくれていた。


あかりと違って口下手で引っ込み思案な私は、学校でも友達がなかなか出来ず一人でいる。

あかりは、そんな私のそばにいてくれた。



「ごめんね…ひかり。助けてあげられなくて」


「仕方ないよ。あかりはママから気に入られてるんだから、私のせいで嫌われる必要ない」


いつもそう返す私に、あかりは悲しそうな表情を浮かべていたことをよく覚えている。



──自分は、出来ないことなんて何一つなくて

母からも虐められないくせに。

同情なんていらない。


だったら、私を助けてよ。



私の体は、既に痣だらけだった。


毎日、母に殴られて虐められて。

体も心も痛くて。


なのに、あかりは。

母から愛されて、出来ないことなんて何一つなくて。


──なのにどうしてそんなに悲しそうな表情をするのか。



私は、その頃からあかりに憎しみと妬みを抱くようになっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ